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AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
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印刷2019/01/07 02:00

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AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU

 ここ数年,AMDは年初に「その年に市場投入するモバイルプラットフォーム向けのプロセッサラインナップ」を発表しているのだが,2019年も御多分に漏れず,新製品「2nd Gen. Ryzen Mobile Processor with Radeon Vega Graphics」(以下,第2世代Ryzen Mobile)を発表した。

画像集 No.002のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU

Robert Hallock氏(Senior Techical Marketing Manager, CPU/APU Technologies & IP, AMD)
画像集 No.020のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
 米国ラスベガスで現地時間2019年1月8日に開幕するCES 2019のタイミングで追加情報も得られると思われるが,本稿ではAMDのRobert Hallock(ロバート・ハロック)氏による事前プレゼンテーションの内容を基に,新世代プロセッサの概要をまとめてみようと思う。
 それに先だってお伝えしておくと,ラインナップは以下のとおりだ。

  • Ryzen 7 3750H:4C8T,TDP 35W,CPU最大クロック4.0GHz,CPU定格クロック2.3GHz,GPU演算ユニット数10基,GPUクロック1400MHz,共有L3キャッシュ容量4MB
  • Ryzen 7 3700U:4C8T,TDP 15W,CPU最大クロック4.0GHz,CPU定格クロック2.3GHz,GPU演算ユニット数10基,GPUクロック1400MHz,共有L3キャッシュ容量4MB
  • Ryzen 5 3550H:4C8T,TDP 35W,CPU最大クロック3.7GHz,CPU定格クロック2.1GHz,GPU演算ユニット数8基,GPUクロック1200MHz,共有L3キャッシュ容量4MB
  • Ryzen 5 3500U:4C8T,TDP 15W,CPU最大クロック3.7GHz,CPU定格クロック2.1GHz,GPU演算ユニット数8基,GPUクロック1200MHz,共有L3キャッシュ容量4MB
  • Ryzen 3 3300U:4C4T,TDP 15W,CPU最大クロック3.5GHz,CPU定格クロック2.1GHz,GPU演算ユニット数6基,GPUクロック1200MHz,共有L3キャッシュ容量4MB
  • Ryzen 3 3200U:2C4T,TDP 15W,CPU最大クロック3.5GHz,CPU定格クロック2.6GHz,GPU演算ユニット数3基,GPUクロック1200MHz,共有L3キャッシュ容量4MB


12nmプロセス技術を採用して製造される第2世代Ryzen Mobile,ゲーマー向けモデルがラインナップに


画像集 No.003のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
 さて,いきなり結論からだが,今回発表された第2世代Ryzen Mobileは,2017年末から2018年初頭にかけて発表された「Raven Ridge」(レイヴンリッジ)こと「Ryzen Processor with Radeon Vega Graphics」APU(以下,第1世代Ryzen Mobile)の改善版である。

 2000シリーズの型番を採用していた第1世代Ryzen MobileはGLOBALFOUNDRIESの14nm「14LPP」プロセス技術を用いて製造され,CPUマイクロアーキテクチャとしてオリジナルの「Zen」,GPUマクロアーキテクチャとして「Vega」を採用していた。それに対し,3000シリーズの型番を採用する第2世代Ryzen Mobileの製造でAMDは12nmプロセス技術を採用し,また,CPUマイクロアーキテクチャを「Zen+」へリファインしてきた。同社がそう断言しているわけではないものの,第2世代Ryzen Mobileで採用しているのは,14LPPの派生となるGLOBALFOUNDRIESの12nm「12LP」プロセス技術のはずだ。

Ryzen Mobile 3000Hシリーズはゲーマー向けノートPC市場の一部を狙う
画像集 No.021のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
 デスクトップPC向けRyzenプロセッサで,14nm世代の「Zen」から12nm世代の「Zen+」へ改良が進んだときがそうだったように,第2世代Ryzen Mobileにおいても,スペック上の見どころはCPU動作クロックの引き上げだ。
 しかも重要なことに,第1世代Ryzen MobileでAMDはTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が15Wの2000Uシリーズのみを用意し,薄型ノートPC用プロセッサと位置づけていたのが,今回はTDP 15Wの3000Uシリーズとは別に,TDP 35Wの3000Hシリーズを新たに用意し,こちらをゲーマー向けノートPC用プロセッサと位置づけているのである。

第2世代Ryzen Mobileの3000Hシリーズでは,単体GPUと組み合わせたゲーマー向けノートPCが登場する予定になっている。スライドに映っているのはASUSTeK Computerのエントリーゲーマー向けモデル「FX505DY TUF GAMING」で,本機ではRyzen 7 3750HもしくはRyzen 5 3550HとノートPC用「Radeon RX 560X」GPUを組み合わせたモデルとなっている
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AMDが公開したスペック一覧
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 同時に発表となった「Athlon 300U」ともども,スペック一覧を表1にまとめたので参考にしてほしい。CPUの物理コア数や論理スレッド数,GPUコアのCompute Unit数上限は第1世代Ryzen Mobileから変わっていないので,ポジティブに表現すれば「TDP 35W版の登場で,より高いCPUコアクロックを期待できるようになった」,ネガティブに表現すれば「基本的には動作クロックの向上分しか性能向上は見込めない」プロセッサということになる。

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 Hallock氏によると,第2世代Ryzen MobileでAMDは,約5年前のノートPCからの買い替え需要を喚起するというテーマを掲げているそうだ。
 これは,Microsoftの市場調査チームが出した「世界中のノートPCユーザーにおけるノートPC買い換えサイクルが平均4.8年」というデータに基づいているという。

 約5年前のノートPCだと,Broadwellマイクロアーキテクチャを採用した第5世代Coreプロセッサ搭載機が想定されるそうで,それらを使い続けているようなユーザーに対し,満足度の高いノートPCプラットフォームを提供することが重要だという結論にAMDとしては至ったとのことである。

 では,どういうメッセージで「5年前のノートPCを使っているユーザー」に第2世代Ryzen Mobileを訴求するかだが,AMDでは以下の6項目がアピールポイントとして考えているそうだ。

  • より長いバッテリー駆動時間(Battery Life):システム全体の省電力性を引き上げている
  • 音声操作による復帰(Voice Wake):音声コマンド「Hey Cortana」によるスリープ状態解除に対応する
  • 4Kビデオストリーミング対応(4K Streaming Capable):Netflixなど主要なビデオ配信サービスにおける4K HDRをサポートする
  • より高いゲーム性能(Gaming):主要なゲームタイトルを妥当な解像度とフレームレートでプレイ可能にする
  • より長いビデオ再生時間(LA to Tokyo Video):古いシステムだとソフトウェア処理になってしまうようなH.265のデコードにGPU側で対応し,最大10時間のビデオ再生を可能にする
  • モダンスタンバイ対応(Modern Standby):Windows 10のモダンスタンバイを利用可能にする

2015年前後に登場したノートPCにはない,第2世代Ryzen Mobile搭載ノートPCがもたらす新要素としてAMDは6点を訴求する
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 「5年前のノートPCと比較するなんてAMDはなんて弱気なんだ!」という突っ込みへの対応も抜かりなく(?),AMDは最新のIntel製CPUとの比較も忘れていない。
 AMDが「同価格帯競合製品」と位置づけるIntel製CPUに対しては互角かそれ以上に立ち回れるという。

画像集 No.007のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
Ryzen 5 3500Uと「Core i5-8250U」(4C8T,TDP 15W,最大3.4GHz,定格1.6GHz,UHD Graphics 620統合)とでPC総合ベンチマークやデザインおよびオフィスアプリケーションで性能を比較した結果というグラフ
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こちらはRyzen 7 3700UとCore i7-8565U(4C8T,TDP 15W,最大4.6GHz,定格1.8GHz,UHD Graphics 620統合)とで「Rocket League」「Dota 2」「Fortnite」の性能を比較したというグラフ

 論旨としては,「GPU性能が効くゲームプレイやメディア関連機能はVega世代のRadeonを統合している分だけ競合よりも優秀です」「CPU性能はZen+世代への移行効果もあって競合と拮抗します」といったところか。

 なお,第2世代Ryzen Mobile搭載ノートPCの登場時期は「2019年中」(Hallock氏)。ただ,本APUに対応したドライバソフトウェアの提供は第1四半期中にも始まるそうなので,早ければ本四半期中に搭載機の流通が始まるものと見られる。

第2世代Ryzen Mobile対応のRadeon Softwareは2019年第1四半期中に始まる予定。従来のRadeon SoftwareはリリースごとにAPUをサポートしなりなかったりしたが,2019年はすべてのRadeon SoftwareがAPUをサポートすることも予告された
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Chromebook市場向けに28nm世代のA6およびA4 APUも投入


A-Series APUがChromebookへ
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 AMDはCES 2019のタイミングでもう1つ,Chromebook向けAPUの市場投入についても発表を行った。
 今回リリースとなったのは,「A6-9220C」「A4-9120C」の2製品。スペックは表2にまとめたとおりだが,「製造プロセス技術が28nm」「A-Seriesを冠している」「型番が9000シリーズ」「統合するGPUがRadeon R4」といった事実を踏まえるに,「Stoney Ridge」世代のAPUという理解でいいだろう。

画像集 No.011のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU

※2019年1月10日19:30頃追記
 初出時,Chromebook向けAPUをBristol Ridge世代と紹介していましたが,Stoney Ridge世代とあらためました。


AMDが公開しているスペック概要。CPUコアはExcavatorベースのはずだ
画像集 No.013のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU
 ただし,6WというTDPはこれまでのStoney Ridgeになかったものなので,そこがChromebook向けとしての大きな特徴ということになる。

 AMDは,Chromebook市場向けにAPUを提供していく理由について,

  • 近年,Chromebook市場が年率8%で拡大していること
  • 競合であるIntelがこの市場にあまり力を入れていないこと

などを挙げている。

AMDがChromebook市場へ進出するのは,市場とIntelの動向から,勝算があると判断できたためだそうだ
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 「AMDが考える勝算」の根拠は第2世代Ryzen Mobileとほぼ同じ。要は,Intel製CPUと比べてCPU性能が同等で,GPU性能では上回るというところにあるというわけだ。

A6-9220Cは「Pentium N4200」(4C4T,TDP 6W,最大2.5GHz,定格1.1GHz,HD Graphics 505統合),A4-9120Cは「Celeron N3350」(2C2T,TDP 6W,最大2.4GHz,定格1.1GHz,HD Graphics 500統合)に対してCPU性能では互角,GPU性能では上位なので優位性があるという。このアピール自体はAMDがAPUを語るときの常套手段だ
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7nm世代に向けた露払いとなる第2世代Ryzen Mobile


 すでにAMDは「2019年は,競合に先駆けて7nmプロセス採用製品を投入していく」という発表を行っている。なので,今回のモバイルプラットフォーム向け第2世代Ryzen Mobile発表のインパクトは決して大きいものではないと思うが,「今年もAMDはローエンドからハイクラスまで,モバイル分野にもラインナップを揃えていく」という意思表明は,ブランド力を維持するうえで非常に重要である。

画像集 No.019のサムネイル画像 / AMD,第2世代「Ryzen Mobile」プロセッサを発表。12nmプロセス技術を採用して製造される「Zen+&Vega」なAPU

 日本市場だとAMD製APUベースのノートPCがあまり浸透していないため,読者の関心をそれほど惹かないかもしれないが,世界のノートPC市場では依然としてAMD対Intelの戦いが続いている。なので,AMDがこの市場でも戦いを継続していることは,業界動向を理解するうえで知っておいて損はないだろう。

 とはいえ,4Gamer読者にとってはやはり「Zen 2」マイクロアーキテクチャ,そしてそれを採用する次世代デスクトップPC向けRyzenと,「Navi」ベースの次世代Radeonが気になるところだと思う。
 CES 2019でこれらの情報が出てくるようであれば,あらためてお伝えしたい。

AMD日本語公式Webサイト

  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen,Zen+)

  • 関連タイトル:

    AMD A-Series(Bristol Ridge)

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