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「Ryzen 7 2700X」「Ryzen 5 2600X」レビュー。第2世代Ryzenは,そのゲーム性能でついに競合を捉える
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印刷2018/04/19 22:00

レビュー

高クロックになった第2世代Ryzenは,そのゲーム性能でついに競合を捉える

Ryzen 7 2700X,Ryzen 5 2600X

Text by 米田 聡


 北米東部時間2018年4月19日9:00,「Pinnacle Ridge」(ピナクルリッジ)という開発コードネームで知られていたRyzen Desktop 2000シリーズ(以下,Ryzen 2000)が正式発表となった。
 4月13日の記事でお伝えしているとおり,4Gamerではそのうち「Ryzen 7 2700X」「Ryzen 5 2600X」の評価キットを入手しているが,本稿では,両CPUのゲーム用途における性能と日常作業における性能を明らかにしてみたい。

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「高クロック化したRyzen改」と言えるRyzen 2000


 Ryzen 2000シリーズの製品概要は別記事でお伝えしているので,ぜひそちらをチェックしてもらえればと思うが,一言でまとめるなら,「高クロック版Ryzen」ということになるだろう。

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 第1世代Ryzenは「Zen」マイクロアーキテクチャを採用し,GLOBALFOUNDRIESの14nm LPP(Low-Power Plus)プロセス技術を用いて製造されるのに対し,今回の第2世代Ryzenは「Zen+」マイクロアーキテクチャを採用し,GLOBALFOUNDRIESの12nm LP(Leading Performance)プロセス技術を用いて製造されるという違いはある。この違いについてAMDのJoe Macri(ジョー・マクリー)CTO兼コーポレートフェローは,「第1世代Ryzenに比べて第2世代Ryzenは,従来と同じ電圧および消費電力で,より高いクロックを実現できるようになった」と述べていた。これが“第1世代Ryzen改”的な存在と言えるRyzen 2000のキモというわけだ。

 もちろん新要素として,定格クロック以上で動作するCPUコアの数を従来よりも増やした「Precision Boost 2」や,モデルナンバー末尾「X」付きの製品で最大クロックよりさらに高い動作クロックで動作する「XFR2」といった機能もある。ただこれらも基本的には高クロックで動作しやすくするためのものなので,第1世代Ryzenの高クロック版というRyzen 2000シリーズの立ち位置をブレさせるものではない。

モデルナンバー2000系Ryzenの新要素であるPrecision Boost 2と,第2世代Ryzenの新要素となるXFR2が機能面での見どころだ
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 CPUマイクロアーキテクチャ上の違いはないとAMDも認めているだけに,Ryzen 2000シリーズの基本的な振る舞いは第1世代Ryzenと変わらないことになる。であれば重要なのは高クロック化によりRyzen 2000の性能がどれだけ上がっているかという部分で,本稿ではそこを重点的にチェックしていくことになる。


第1世代Ryzenの8C16Tおよび6C12Tモデル,そして競合製品と比較


製品ボックス
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 というわけで入手したRyzen 7 2700XとRyzen 5 2600Xだが,4月13日の記事でお伝えしているとおり,いずれもCPUクーラーの付属した製品版だ。
 プロセッサパッケージはもちろん1331ピンのAM4で,Socket AM4マザーボードと互換性がある。

Ryzen 7 2700X。8コア16スレッド対応の,シリーズ最上位モデルだ
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Ryzen 5 2600X。6コア12スレッド対応のX付きモデルである
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 両製品の主なスペックを,それぞれの置き換え対象となる「Ryzen 7 1800X」および「Ryzen 5 1600X」,競合の6コア12スレッド対応CPU「Core i7-8700K」と比較したものが表1だ。
 Ryzen 7 2700Xは8コアまでのRyzenとして初めてTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が105Wと100Wの大台に乗っているので,それが実際の消費電力にどのような影響を与えるかというのは重要なチェック対象になるだろう。一方のRyzen 5 2600Xは,こうして見るとRyzen 5 1600Xを置き換える製品だというのがよく分かると思う。

※1 メモリスロット数および利用するメモリモジュール数によって制限あり
※2 利用するメモリモジュール数によって制限あり
※3 統合型グラフィックス機能のことを指す
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CROSSHAIR VII HERO
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F4-3400C16D-16GSXW
 第2世代Ryzenの評価キットに「X470」チップセット搭載マザーボードが2枚入っていたことを覚えている読者もいると思うが(関連記事),今回のテストにあたっては,そのうちASUSTeK Computer(以下,ASUS)製の「ROG CROSSHAIR VII HERO(WI-FI)」(以下,CROSSHAIR VII HERO)を用いる。

 メモリモジュールは,やはり評価キットに入っていたG.Skill International製のDDR4 SDRAM 8GBモジュール2枚セット「F4-3400C16D-16GSXW」を使う。
 F4-3400C16D-16GSXWは最大DDR4-3400(≒PC4-27200)の16-16-16-36設定でアクセス可能な,いわゆるオーバークロックモジュールだ。今回は本モジュールの利用にあたってXMPプロファイルを利用するようAMDの指定が入っているため,Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600XではXMPプロファイルによるDDR4-3400の16-16-16-36設定を用いることになる。
 ただ,Ryzen 2000の公式サポートはあくまでもDDR4-2933アクセス設定だ。すべてのユーザーが高価なDDR4-3400モジュールを購入できるわけでもないだろう。というわけで今回は,メモリアクセスタイミングは16-16-16-36で固定のまま,CPU定格であるDDR4-2933へ落とした設定でもテストを行うことにした。以後,グラフ中ではCPU名の後ろに「(3400)」「(2933)」と付記して区別するので,その点はご注意を。

 比較対象として用意したのは先に表1でまとめた3つのCPU,Ryzen 7 1800XとRyzen 5 1600X,そしてCore i7-8700K(以下,i7-8700K)だ。Ryzen 7 1800XとRyzen 5 1600Xのテストでは「X370」マザーボードを用意する選択肢もあったが,X470とX370の間にはSSDとメインメモリをキャッシュとして使ってHDDを高速化する新機能「StoreMI Technolgy」に対応するか否かの違いしかないことから(関連記事),今回,新旧RyzenのテストではマザーボードをCROSSHAIR VII HEROで統一することにした。スコアもこのほうが比較しやすいはずだ。

 そのほかのテスト環境は表2のとおり。Ryzen 7 1800XとRyzen 5 1600X,i7-8700Kのテストでは,DDR4-2666の16-16-16-36設定で固定している。要はCPU側のリファレンス仕様におけるサポート上限のアクセス設定で固定したということだ。

テストシステム
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 なお,表には示していないが,今回CPUクーラーはサイズ製の空冷式サイドフローCPUクーラー「MUGEN 5 Rev.B」で固定した。AMD自慢のWraith Prismクーラーを使わないのは,同クーラーがAM4プラットフォーム専用で,i7-8700Kの冷却に利用できず,いきおい,テスト対象のCPU間でCPUクーラーを固定できないためだ。MUGEN 5 Rev.Bは冷却能力が高い製品なので,AMDやIntelの純正クーラーと比べて高いベンチマークスコアが出る可能性はあるが,今回はそれよりも冷却能力を揃えることを重視したのでご注意を。

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 テストに用いるアプリケーションは大きく分けてゲーム系と一般アプリケーション系の2種類だ。
 ゲーム系では,4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0に準拠したテストを行う。解像度設定は2560×1440ドットと1920×1080ドット,1280×720ドットの3パターンとした。極端に低解像度な1280×720ドットという条件を加えたのは,GPU描画負荷の低い状況でどのような傾向が見られるかを確認するためである。

 一方,一般アプリケーションのテストでは今回,CPUベースで3Dのレンダリングを実行する「CINEBENCH R15」(Release 15.038)とPC総合ベンチマークである「PCMark 10」(Version 1.0.1493),そして動画変換を行うトランスコードソフト「ffmpeg」(Nightly Build Version N-86691-gc885356),そしてのテストを行う。各テストの方法はそれぞれ考察の直前に紹介したいと思う。


ゲーム性能の強化が目を惹く第2世代Ryzen


 以下,グラフ中に限りRyzen 7を「R7」,Ryzen 5を「R5」と省略して書くことをお断りしつつ,テスト結果を見ていこう。
 まずは3DMark(Version 2.4.4264)の結果からだ。グラフ1は「Fire Strike」の総合スコアからだが,「スコアにおけるGPUの比率が高い「Fire Strike Ultra」「Fire Strike Extreme」だとスコアはほぼ横並び。そこで“無印”を見てみると,トップを取ったのはi7-8700Kだった。その理由は後で考察したい。

 一方,Ryzen 7 2700XではDDR4-3400設定時よりDDR4-2933の設定時のほうがスコアは高くなっている。ほぼ誤差だが,少なくともより高速なメモリアクセス設定がそのまま優位性にはつながっていないわけである。メモリアクセス設定に応じたスコアが得られない理由はなんとも言えないものの,まだBIOS(≒UEFI)に最適化の余地がかなりあるということなのかもしれない。
 一方のRyzen 5 2600Xだと,DDR4-3400設定時のほうがDDR4-2933設定時より高いスコアを示している。

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 続いては事実上のGPUベンチマークとなる「Graphics test」の結果をまとめた「Graphics score」だ。用いるグラフィックスカードが同じなのでグラフ2のスコアはどれも変わらない……と書くつもりでいたが,実際には“無印”のFire Strikeでスコアに若干の変動が見られる。

 気になるのは,総合スコアと同様に,Ryzen 7 2700XでDDR4-3400設定時のスコアがDDR4-2933設定時と比べて低くなる傾向を見せていることだが,「Fire Strike系テストでは,プラットフォームを問わず,CPUとGPUを揃えてテストしたとき,Graphics scoreが高く出るとPhysics scoreが低くなり,Physics scoreが高く出るとGraphics scoreが低くなる」という相補の関係があるので,それが原因ではないかと筆者は考えている。つまり,Ryzen 7 2700XはDDR4-3400設定時にかなり高いPhysics Scoreが得られているので,それに引っ張られてGraphics scoreが落ちてしまった,という可能性である。
 少なくとも,Graphics scoreとPhysics scoreの相補関係については断言できるので,筆者の中ではこれが理由でほぼ間違いないだろうといった感じになっている。

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 今回はCPUの評価なので,「Bullet Physics」をCPUベースで実行する「Physics test」のスコアをまとめた「Physics score」がある意味で最も重要ということになるが,グラフ3を見ると,Ryzen 7 2700Xの2条件が頭一つ抜け出している。DDR4-3400設定時のほうがDDR4-2933設定時よりスコアは若干高いものの,前述のとおりPhysics testが高いとGraphiscs Scoreが落ちる。
 3DMarkでは当然,Physics testよりもGraphiscs Scoreのほうが総合スコアに反映するウェイトが大きいので,総合スコアではDDR4-2933設定時のほうがスコアが高くなってしまったわけである。

 いずれにせよRyzen 7 1800Xに対してRyzen 7 2700Xのスコアは10〜11%程度,i7-8700Kに対して11〜13%程度高いので,「有意に高い」と言ってしまっていい。
 最大クロックで比較するとRyzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xよりも約8%高いだけなので,ここはPrecision Boost 2とXFR2の効果と見ていいのではないだろうか。

 Ryzen 5 2600Xのほうはスコアを見る限り若干不安定で,Fire Strike UltraだとDDR4-3400設定時のほうがDDR4-2933設定時を上回るものの,Fire Strike Extreme以下の負荷だと逆転現象が生じている。この不安定さはやはりBIOSの完成度に原因があるのではなかろうか。
 ただ,実スコア自体は対Ryzen 5 1600Xで105〜114%程度,対i7-8700Kでも94〜100%程度といったところなので,おおむね順当な性能向上が得られているとは言ってよさそうだ。

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 後で考察するとしたグラフ1の話に戻ると,Fire Strikeの“無印”でトップスコアを示したのはi7-8700Kだ。Physics scoreでRyzen 7 2700Xが文句なしのトップのスコアを記録し,Graphics Scoreも決して低くない。普通に考えればRyzen 7 2700Xが総合スコアでもトップに立って然るべきなのに,なぜこういうことになっているのか?

 理由は,Fire Strikeの「Combined test」にある。
 Combined testはCPUとGPUの双方を駆動してレンダリングと物理計算を同時に行うテストだが,その結果をまとめたグラフ4を見ると,Fire Strike UltraとFire Strike Extremeではおおむね横並びながら,Fire Strikeの“無印”だとi7-8700KがRyzen勢を圧倒しているのだ。
 なぜこんな結果になるか断言はできないが,1920×1080ドット相当のFire Strike“無印”ではCPUのI/O性能やメモリ周りのアーキテクチャが影響を与えやすい可能性はある。

 Ryzen系CPUは4コア8スレッドを1つのCPUモジュール「CPU Complex」(以下,CCX)として構成する仕様で,CCXあたりのL3キャッシュ容量は8MBとなる。つまり,今回テストしているRyzenでL3キャッシュは2基のCCXに分かれるという,Intel製CPUにはない設計を採用しているので,これがCombined testに負の影響を与えているのかもしれない。

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 次にグラフ5は3DMarkからDirectX 12世代のテストとなる「Time Spy」の総合スコアをまとめたものだ。
 DirectX 12は以前から「マルチスレッド処理が効果的」と言われているが,それを証明するかのようにTime Spyではマルチスレッド性能に優れたRyzen 7 2700Xが僅差ながら全体トップに立った。気になるのはDDR4-3400設定時のスコアがDDR4-2933設定時よりも低い点だが,ここはやはりBIOSの完成度に起因するのではないかと見ている。

 Ryzen 5 2600XもTime Spyでは若干スコアを伸ばしており,Ryzen 5 1600Xより3〜5%程度高いという結果になっている。

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 Time SpyのGraphics scoreも総合スコアと同じ傾向を示す。DirectX12のテストであるTime Spyだけに,ここのスコアもCPUのマルチスレッド性能に若干引っ張られ,結果として僅差ながらRyzen 7 2700Xが全体トップとなった。

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 Time Spyの純然たるCPUテストとなる「CPU test」の結果をまとめたものがグラフ7だ。
 Ryzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xに対して8〜11%程度,Ryzen 5 2600XはRyzen 5 1600Xに対して10〜14%程度高いスコアを示した。つまり,クロック比以上のスコア向上が得られている。
 全体としてより描画負荷の高いTime Spy Extremeでスコアは縮まる傾向にあるものの,総じて順当にスコアは向上していると言っていい。

 Time Spy“無印”でRyzen 7 2700Xがi7-8700Kに対して約16%高いスコア差を付けている点も注目しておきたいところだ。

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 以上を踏まえつつ,実ゲームアプリケーションの結果である。
 グラフ8〜10は「Prey」の結果だ。解像度2560×1440ドット条件だとスコアはほぼ横並び。1920×1080ドット条件でも平均フレームレートはGPUの描画性能で頭打ちになっているようで横並びだが,最小フレームレートには第2世代Ryzenと第1世代Ryzenとの間で違いが生じている。

 さらに極端なのが1280×720ドット条件だ。この解像度では平均フレームレートがGPUのスループットで頭打ちになってしまっているが,最小フレームレートは第1世代Ryzenと比べて第2世代Ryzenで大きく伸びている。ゲームの描画がスムーズになったということで,これはやはりCPU性能の伸びを反映したものと考えていいだろう。
 メモリアクセス設定による違いは,Ryzen 7 2700X,Ryzen 5 2600Xともはっきりしない。3DMarkでもメモリクロックの効果にはばらつきが見られたので,実ゲームだと分かりにくくなるのはある意味で自然なことと言える。

 なお,1280×720ドット条件で最小フレームレートが最も高いのはi7-8700Kだった。平均フレームレートでは僅差だが,Preyに関して言えば,ほんのわずかながら,まだi7-8700Kに分があると見てよさそうだ。

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 続いて「Overwatch」のスコアをまとめたものがグラフ11〜13だが,解像度条件によるスコアの頭打ちも,CPUによるスコア差もほとんどないという結果になっている。
 あえて言えば1920×1080ドット条件におけるi7-8700Kと,1280×720ドット条件における6コアRyzenの最小フレームレートがそれぞれ若干低いが,「Overwatchをプレイする限り,今回取り上げたCPUはどれを使っても大差ない」とするのがおそらく正しいのではなかろうか。

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 グラフ14〜16は「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)のテスト結果である。2560×1440ドットと1920×1080ドットの2条件でスコアはほぼ横並びだ。GPU性能で抑えられ,平均,最小ともに変化が小さくなってしまっていると考えられる。

 一方,1280×720ドット条件では,Ryzen 7 2700X,Ryzen 5 2600Xともに,前世代に対し最小フレームレートが有意に向上している。Preyと似た傾向なので,CPU性能の伸びが反映されていると見ていいだろう。最小フレームレートが伸びた結果として,1280×720ドットでRyzen 7 2700Xがi7-8700Kと肩を並べるスコアになったわけだ。

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 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)のテスト結果をまとめたものがグラフ17〜19となる。
 ここでは解像度条件で平均フレームレートが異なるため,少なくとも1920×1080ドット条件以上で相対的なGPUボトルネックによるスコアの頭打ちは出ていないと断言できるわけだが,テスト対象のスコアは見事に横並びだ。
 最も描画負荷が低く,相対的にCPU性能差がスコアを左右しやすくなる1280×720ドット条件だと,平均フレームレートでRyzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xに対して106〜108%程度,Ryzen 5 2600XはRyzen 5 1600Xに対して約110%というスコアなので,第2世代Ryzenは置き換え対象となる第1世代Ryzenに対して順当に高いCPU性能を示していると言えるだろう。
 対i7-8700KだとRyzen 7 2700Xのスコアは92〜93%程度なので,やや分が悪いと言えるかもしれないが,Ryzen 7 1800Xだと対i7-8700Kのスコアは約87%と,1割以上のスコア差があるので,ずいぶん見栄えがよくなっていることは間違いない。

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 グラフ20〜22は「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)のテスト結果だ。
 Wildlandsでも解像度条件で平均フレームレートが異なるため,1920×1080ドット条件以上でGPU性能の相対的なボトルネックによる影響は受けていないわけだが,大枠でスコアは横並びと言ってよさそうだ。
 よく見ると,最も高いスコアを示しているのはi7-8700Kで,逆に最も低いのはRyzen 5 1600Xとなり,Ryzen同士の比較だとDDR4-3400設定のRyzen 7 2700Xが安定して高めのスコアを示しているので,CPUの性能差が出ていないわけではない。ただ,ここは「ほとんど変わらない」と評したほうが正確ではなかろうか。

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 なかなか面白い傾向になったのが,ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター」公式ベンチマーク(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)である。

 グラフ23はその総合スコアをまとめたものだが,見事にスコア差が付いている。しかも,GPU性能がスコアを最も左右しやすく,スコア差も縮まりがちな2560×1440ドット条件を除くと,Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600Xのいずれでも,DDR4-3400設定のほうがDDR4-2933設定よりも明確に高いスコアを示しているのだ。
 1920×1080ドット条件で比較すると,DDR4-3400設定はDDR4-2933設定よりもRyzen 7 2700Xで約5%,Ryzen 5 2600Xで3〜4%程度高い。これはインパクトのある結果と述べていい。

 また,第2世代Ryzenと第1世代Ryzenのスコア差も大きい。1920×1080ドット以下の条件で比較したとき,Ryzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xに対して8〜19%程度,Ryzen 5 2600XはRyzen 5 1600Xに対して10〜19%程度も高いスコアを示している。
 伝統的にIntel製CPUの強いFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチでDDR4-3400設定のRyzen 7 2700Xが1920×1080ドット以下の条件でも91〜92%程度にまで詰めてきている点にも注目したいところだ。

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 グラフ24〜26と見ると,第2世代Ryzenでは最小フレームレートに改善があり,競合とのスコア差を詰めている気配も感じられる。Ryzen 7 2700Xは1920×1080ドット条件で最小フレームレートを落としており,まだ最適化が足りていない可能性も感じられるが,逆に言うとそれでこのスコアなのだから立派である。

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 ゲームテストの最後は「Forza Motorsport 7」(以下,Forza 7)だ。ここではグラフ27〜29にスコアをまとめている。
 平均フレームレートに着目すると,Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600Xはいずれも,解像度条件を問わず,スコアを上げてきている。ただ,Ryzen 7 2700Xでは最小フレームレートが落ち,「平均フレームレートが向上した一方,フレームレートの安定度は低下した」傾向を示している。また,Ryzen 5 2600Xだと1920×1080ドット以下の解像度条件でDDR4-3400設定とDDR4-2933設定との間にスコアの大きな違いが生じている。

 全体としてはここでも「現実的な解像度条件においてRyzenは競合製品とのスコア差を詰めた」とまとめていいのではなかろうか。

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 以上,ゲームにおける性能をまとめてみた。絶対的にはまだi7-8700Kが優勢な局面があるものの,動作クロックが上がり,メモリアクセス設定も上がった第2世代Ryzenは,ゲーム性能におけるギャップを確実に詰めてきていると言っていい。多くのタイトルで「1920×1080ドット解像度以上なら互角」になっている点も押さえておきたいところである。


H.265のエンコード性能で第2世代Ryzenがトップを奪還


「CINEBENCH R15がイチオシ」感のあるスライド
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 ゲームに続いては一般アプリケーションの性能を見ていこう。まずはAMDイチオシのベンチマークとも言えるCINEBENCH R15からだ。
 テスト結果はグラフ30のとおりだ。Ryzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xに対して約9%,i7-8700Kに対しては25〜26%程度高いスコアで,競合を圧倒していると断言してしまっていいだろう。Ryzen 5 2600Xも,Ryzen 5 1600Xに対して12〜13%程度高いスコアを示し,i7-8700Kに対しては97〜98%程度と,同じ6コア12スレッド対応CPUとして,かなりいい勝負に持ち込んでいる。
 ここでは第2世代RyzenでPrecision Boost 2とXFR2の効果が出たと言っていいのではないだろうか。

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 続いてはPCMark 10だ。今回はCPUのテストということで,「PCMark 10 Extended」の「Custom run」を選択し,OpenCLと動画処理のハードウェア支援をいずれも無効化している。Custom runだと総合スコアが出ないため,個別のテストグループでスコアを比較することになる。

 結果はグラフ31のとおりだ。Webブラウジングやアプリケーションの起動速度などPCの日常作業における快適さを見る「Essentials」では,Ryzen 7 2700X,Ryzen 5 2600Xともに前世代から順当なスコアの上昇が確認できた。Ryzen 7 2700XのDDR4-2933設定は若干低めのスコアになっているが,全体としてRyzen 7 2700XのスコアはRyzen 7 1800Xに対して4〜8%程度,Ryzen 5 2600XはRyzen 5 1600Xに対して7〜8%高い。
 もっとも,トップに立ったのはi7-8700Kだった。動作クロックが高く,シングルスレッド性能も高いので,こういう結果になるのは当然だろう。
 ワープロや表計算と言ったビジネス系アプリケーションの快適さを見る「Productivity」も傾向自体は同じだが,Ryzen 7 2700XよりRyzen 5 2600Xのほうが安定してスコアが高い点は少々気になった。

 一方,3Dレンダリングや動画の編集加工を含む「Digital Content Creation」では,8コア16スレッド対応のRyzen 7 2700XがRyzen 7 1800Xに対して9〜10%程度ものスコア差を付け,全体でもトップに立った。i7-8700Kがこれに続き,その次がRyzen 5 2600XとRyzen 7 1800Xという3番手グループだ。
 おおむねCINEBENCH R15などと似た傾向であり,マルチコアをフルに活かすクリエイティブ系のアプリケーションではPrecision Boost 2などの効果がよりはっきりと出るようである。

 最後のGamingは3DMarkのFire Strikeをウインドウモードで動作させるテストなので,取り立てて言及する必要はないだろう。先の3DMarkにおける結果とおおむね同じ数字が出ている。

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 CPUで行う処理の典型的な例と言える,ソフトウェアベースの動画トランスコード性能もチェックしておこう。
 ここでは,FFXIV紅蓮のリベレーターで実際にゲームをプレイして,それをキャプチャした「7分25秒,ビットレート437MbpsのMotion JPEG形式,解像度1920×1080ドット」という録画データをソースとして,ffmpegから「libx264」を用いてH.264/AVC形式に変換するのに要する時間と,「libx265」を用いてH.265/HEVC形式に変換するのに要する時間をそれぞれ調べた。使用したバッチファイルは以下のとおりだ。

del avc.mp4
del hevc.mp4
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx264 -preset slow -tune animation -crf 18 -threads 0 avc.mp4} >MPEG4_score.txt
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx265 -preset slow -crf 20 hevc.mp4} >HEVC_score.txt

 以前のCPUベンチマークの記事と比較するとffmpegに対して-v:bオプションの指定を削っていることに気づくかもしれないが,「-crfオプションを指定した場合には-v:bオプションが無視される」ことを受けての変更である。処理負荷は従来のCPUのレビューで使用した設定と変わらない。

 というわけで結果はグラフ32のとおりだ。エンコードの所要時間を見ているので,グラフのバーは短いほど高速ということになるが,比較的負荷の低いH.264/AVCでRyzen 7 2700XはRyzen 7 1800X比約92%,i7-8700K比87〜88%程度の時間で処理を終えている。またRyzen 5 2600XはRyzen 5 1600Xの91〜93%程度の時間だ。これはかなり優秀な結果と言っていい。
 H.265/HAVCでも,Ryzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xに対して約91%,i7-8700Kに対して95〜96%程度の時間で処理できている。Ryzen 5 2600XはRyzen 5 1600X比で約90%だ。H.265/HAVCのエンコード性能では6コアのi7-8700Kが8コアのRyzen 7 1800Xを上回る状況が続いていたのだが,HEDT(High-End DeskTop)向けのRyzen ThreadripperやCore Xといった特殊なCPUを除く,デスクトップPC向けCPUにおけるエンコード最強の座を奪還した格好だ。

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 以上,一般的なPCアプリケーションのテストを行ってみたが,クリエイティブ系アプリケーションやトランスコードを前にすると,Ryzen 2000シリーズはAMDが謳うとおりの性能を発揮できると言っていい。少なくともRyzen 7 2700Xはi7-8700Kより確実に高速だ。


性能が上がった分だけ消費電力も順当に上がったRyzen 2000シリーズ


 最後に消費電力計測結果をまとめてみたい。
 今回は,4Gamerベンチマークレギュレーション20世代以降で採用した「EPS12Vの消費電力からCPUの消費電力を測定する」方法を使ってCPUの消費電力を調べることにした。具体的には,各アプリケーション実行中に記録したログからピーク値を「最大値」としてまとめ,さらにログから典型的な消費電力値としての「中央値」もまとめることになる。
 このとき,OSの起動後,30分放置した時点における最小の消費電力値を「アイドル時」のスコアとして取得するが,最小値を取るので中央値はない。

 まず最大値のスコアはグラフ33のとおりだ。一見して分かると思うが,各CPUで最大値を記録したのはffmpegによるトランスコード実行時で,新旧Ryzen 7が210W超えとなった。
 TDPとまったく違うじゃないかと思うかもしれないが,繰り返すと,これはあくまでも最大値なので,TDPと異なるのはむしろ当然だ。Precision Boost 2やXFR2の効果で,CPU温度がさほど高くないときーーそれこそトランスコードなら開始直後などーーにガッと電力を“喰う”挙動が入ったということだろう。
 そのほかのアプリケーションでもRyzen 7 2700XはRyzen 7 1800Xと比べてざっくり10〜15W程度高い数字を示している。

 また,Ryzen 5 2600Xも前世代のRyzen 5 1600Xに比べると最大値の上げ幅が大きい。ffmpegで比較すると,Ryzen 5 1600Xが約93Wに対してRyzen 5 2600Xは約123Wなので,インパクトはむしろこちらのほうが大きいかもしれない。

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 グラフ34は中央値をまとめたものになるが,ここでも最も高い値を示したffmpegを見てみるとRyzen 7 2700Xは130W超級で,Ryzen 7 1800Xより13〜15W程度高い。TDPの引き上げ量を若干上回るレベルで中央値の増大はあるわけだ。
 Ryzen 5 2600Xに至っては,Ryzen 5 1600XとTDPが同じなのにもかかわらずスコアは20〜23W程度も高くなっていた。

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 Ryzen 2000シリーズは順当に性能が上がった分,消費電力も上がった。Ryzen 7 2700XはTDPの値も上がっているのでまあそんなもんだろうと思うかもしれないが,Ryzen 5 2600Xのほうは6コア12スレッドのCPUとしてやや扱いづらくなってしまった印象がある。


AMDが主張するとおりの性能を示し,「ゲームで弱い」を払拭した第2世代Ryzen


AMDが示す「Ryzen 7 2700Xの,i7-8700Kに対する優位性」
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 AMDは,第2世代RyzenとなるRyzen 2000を「ゲーム性能では競合と肩を並べ,マルチスレッド処理に最適化されたクリエイティブ系アプリケーションの性能では圧倒する」CPUだとアピールしている。
 果たしてそれが真実かというのがチェックポイントだったわけだが,4Gamer的に最も重要なゲーム性能では,確かに競合とのスコア差をかなり詰めた。4Gamerは第1世代Ryzenについて「性能は本物だが,ゲーム性能だけあと一歩」という評価を与えていたが,第2世代Ryzenに「あと一歩」感はもはやない。AMDも認めるとおり,勝ちきってはいないものの,ゲーム性能で競合を捉えたと言ってしまっていいのではなかろうか。

 そして,クリエイティブ系のアプリケーション性能は,これまで以上に洗練された。Ryzen 7 2700Xは文句なしにi7-8700Kより高速だ。また,Ryzen 5 2600XもRyzen 5 1600Xに対して「アプリケーションの快適さ」のレベルを上げ,一部のテストでは同じ6コア12スレッド仕様のi7-8700Kに迫っているあたりも注目できるところだ。

 気になる点があるとすれば,第2世代Ryzenの消費電力の大きさだろうか。とはいえ性能の分だけ消費電力が上がっただけとも言えるので,ここは致し方ないのかもしれない。

 気になる国内発売時点における税込の予想実売価格は以下のとおり。

  • Ryzen 7 2700X:4万1100円前後
  • Ryzen 7 2700:3万8900円前後
  • Ryzen 5 2600X:2万8100円前後
  • Ryzen 5 2600:2万4818円前後

 第1世代Ryzenの“初値”を思い出すと,Ryzen 7 1800Xで税込6万4600円前後だった。なのでRyzen 2000シリーズのそれは明らかに手頃だ。
 ゲーム性能面,プレイしたゲームの映像を編集したりトランスコードしたりする処理速度の面,そして価格面。いずれの側面でもゲーマーに勧めやすいCPUとして第2世代Ryzenが登場することを歓迎したい。

AMD,「Ryzen Desktop 2000」CPUを正式発表。動作クロックが向上し,メモリ周りの最適化が進んだ第2世代モデル


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