お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2017/01/20 00:00

連載

【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦

島国大和 / 不景気の波にもがく,正体はそっとしておいて欲しいゲーム開発者

画像集 No.001のサムネイル画像 / 【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦

島国大和のド畜生 出張所

ブログ:http://dochikushow.blog3.fc2.com/


 皆さんデスマーチしてますかー(挨拶)。
 私はそろそろ突入カモです(返しの句)。

 さてそんな話はさておき,任天堂のニューハード。やってきました「Nintendo Switch」
 3月3日発売です。もうすぐじゃん! 2万9980円(税抜)! 普通じゃん! 高さ102×横239x厚さ13.9mm,約297g(Joy-Con取り付け時約398g)! 据え置きハードとしては超小型軽量!

 細かいことを言えば,え? 本体ストレージ容量が32GBしかないの? とか(microSDXCカード対応なので,拡張はできます),持ち運びを前提にするとでかいかな,重いかな,とか。iPad Air2のWi-Fiモデル(高さ240×幅169.5×厚さ6.1mm,437g)ぐらいの大きさと重さなので,扱いに困るほどではないですが。

 しかし,これは今のゲームシーンに対する挑戦がめっちゃ詰まったハードだと思います。

 さぁいろいろひねくれた視点で見てみましょー!
 残念ながら仕事では絡んでないので,公式発表その他からの推測が多くなりますが,逆に業務上知りえた知識の守秘義務を気にしなくていいので,ブイブイ行きますよ。

画像集 No.003のサムネイル画像 / 【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦


任天堂ハードの“新しい提案”


 かつて絶対王者として君臨した任天堂のハードですが,最近はそれほどの威圧感はありません。「任天堂にはノウハウがあるけど,サードパーティはそれがなくて使いこなせず,結果サード離れを招く」みたいな言い方をされたりもしますよね。

 とはいえ実際のところ,スーパーファミコンも大概作りにくい独特なハードでしたし。ゲームボーイだって通信対戦まわりの仕様とかは「えええ??」と思いますよ(自分は直接開発したことないのでまた聞きですけど)。

 開発会社としては,売れてるハードが正義なんです。だって,出せば売れる確率が高いわけですから(そういう意味でもっと正確に言えば「作ったソフトが売れるハード」が正義です)。どんなに作りにくくて,どんなにエキセントリックな仕様のハードでも,売れるならそれに向かってゲーム出します。

 ではなぜ,任天堂のハードは,サードパーティがソフトを作りにくいなんて言われたりしたのでしょうね? それは多分,NINTENDO64以降のハードには大抵“新しい提案”があり,それを使いこなしてくるのは任天堂のソフトばかり,という状況から想起されたんじゃないかと思っています。

 ほら,振り回して操作するWiiのコントローラ(Wiiリモコン)とか,CD-ROM全盛の時代に発売されたNINTENDO64のロムカセット採用とか。あれはもうポリシーの発露ですよね。

 んで,なぜサードパーティはその“提案”に合わせてゲームを作らないのでしょう。
 そりゃサードパーティからすれば,1つのハードに特化したゲームを作り込むのはリスキーです。そういうのはプラットフォーマーの仕事ですしね。

 任天堂自身は,気合を入れて自社ハードの仕様に特化したゲームを作って採算を取るのが正しい道ですが,サードからすれば,他で使いまわせない特化したゲームを作るのはバクチです。
 さらに言えば,変わったことをやるにはやはり研究開発が必要です。研究開発ってすぐにはお金になりませんし,そもそもその分野のゲームは任天堂がハード開発と合わせて研究してるわけですから,後追いで同じような方向で勝負するのも愚策です。

 そんなことなら,売れるのがほぼ確定している人気シリーズの続編をほかのハードで出しますよね。ほら,任天堂以外のメジャーハードは,変な個性を出さずにきっちりと性能を手堅いところに押し上げてバランスとってくるじゃないですか。
 そういう状況を見ると,サードは任天堂ハードを使いこなせない,みたいな言説になるわけですけど。使いこなそうとしない,と言ったほうが正しいです。使いこなしたいと思える状況が来れば使いこなしますよ。はい。

 だって,Wiiリモコンが顕著ですけど,もうぱっと見,普通のゲームをやらせる気がないじゃないですか。標準のコントローラでああいう強い主張をしてくるのは凄いですよ。

 そういう意味で,任天堂のハードはいつも“新しい提案”の印象が強いです。
 この“新しい提案”こそがハードのウリであり,今後のゲームシーンではこれが流行る,みたいな任天堂の読みと,流行らせてやる,という意気込みたいなものに見えるので,任天堂の新ハードの発表はいつも楽しみなんです。

 あ,PS陣営の新しい提案も面白いですよね。コントローラをビカビカ光らせたり,光ったマイク売ってみたり……と思ってたら,PS VRで役に立つとか。
 Xbox陣営は,Kinectで花を咲かせてほしいですね。あれ,素晴らしいのに日本だと欲しいソフトが……。
 話がワキにそれたので次に。


任天堂の歴代ハード,そしてSwitchのウリは何?


 ゲームハードを出すってことは「他のハードとは違う」「こんなに新しい」「このハードでしかできないゲーム」みたいなものが期待されるわけです。
 先ほど書いたように,ここに“ポリシー”が感じられるのが任天堂のハードのグっとくるところです。

 例えば,NINTENDO64とかは「スーパーマリオ64」が遊べるハード,として設計されたんじゃないかと思います。
 そんなもん任天堂のハードなんだからマリオが出るのは当たり前じゃないかと思うかもしれませんが,そういう意味ではありません。まずスーパーマリオ64という実現したいゲームシステム,メカニクスがあったとして,それを実現するにはZバッファ(深度情報),パースペクティブテクスチャ(深度情報に合わせてテクスチャを拡大・縮小する機能),3Dスティックが必要だったということです。
 あのゲームは,同世代のゲーム機,例えば,セガサターンとかPlayStationとかプレイディアでは,忠実な再現は無理なわけです。

 ちょっと話がそれますが,PlayStationなどは,Zバッファやパースペクティブテクスチャがない分は「ポリゴンを細分化すればいいじゃない(細分化すると見栄えがZバッファ程ではないけどマシになる)」「スクラッチパッド(PSに搭載されている,小容量だが高速動作するメモリ)を使えば速度が稼げるからできないわけじゃないよ」と工夫しつつ,アナログコントローラを発売するという力技も駆使して対応してました。それでも類似のゲームが出せるまでには時間を要しましたが(一例としてマリオ64が1996年,サルゲッチュが1999年)。

 話を戻すとWiiは,言うまでもなく加速,角度センサーのついたWiiリモコンが最大の売りだったと思います。出るまでは誰もキラーと思っていなかった,体重計型コントローラのWii Fitが大ブレイクして,狙ったとは思えないホームランが出てましたが。

 個人的には,任天堂ハードだとゲームキューブが大好きなのですが,あれはあまり特殊な遊びを提案しない手堅いハードで,「大乱闘スマッシュブラザーズ」とか「セルダの伝説 風のタクト」とか,やはり手堅いゲームが出ています。
 しかし販売台数では苦戦していましたから,任天堂的には「やはり新しい遊びの提案が必要だ!」という思いを強くしたかもしれません。

 こういった感じで,マイクロソフトやソニー陣営がスペック競争を繰り広げる中,任天堂はちょっと違う態度を取ることが多かったわけですが,さてSwitchのウリは何でしょうね。

 Switchのコントローラ「Joy-Con」。わざわざ名前付けてきてるだけあって,かなりの特殊仕様です。
 本体左右にコントローラを付けたり,外したり,2人で使ったりと,複数の遊び方が提案されています。

 まぁそんなこたぁどうでもいいです(個人の感想)。

 Switchの「ほかのハードとは違う」を全て背負っているのは,このコントローラじゃないでしょうか(個人の予想)。
 あのコントローラは「センサーの塊」「ギミックの塊」です。ちょっともうやり過ぎなレベル。Wiiリモコンやヌンチャクもやり過ぎ感あふれてましたが,今度のもかなりギミック満載ですね。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦

 コントローラを使って遊ぶほとんどの遊びを網羅しようとしているんじゃないでしょうか。これだけてんこもりのコントローラってほかにはないですから,スイッチに特化したゲームは他のハードでは遊べません。
 この快感はSwitchでだけ! みたいなゲームを作ることができます。●●先生の作品が読めるのはジャンプだけ! 的な強さを感じます
 いつもの強引な相撲を取りに行く任天堂ですよ。イカス!

 では特徴をざーっとならべてみましょー。

●振動表現が細やか
 バイブによるブルブルだけでない「HD振動!」(触ってないからよくわからないやー)

●傾きセンサー,加速センサーが細やか
 スペックの詳細はよくわからないのですが,Wiiリモコンでとった杵柄もあり,期待してよさそうです。
 コントローラを振り回し,手をびょんびょん伸ばして戦う対戦ゲーム「ARMS」の体験映像が公開されていますが,コントローラの振り方をちゃんと捉えることができるなら,かなり夢が広がります。
 きっとバンダイナムコが「ベラボーマン」を出してくれることでしょう(個人の願望)。

●モーションIRカメラ内蔵
 え? なんかシレっと凄いもの内蔵してんぞ。グーチョキパーを認識できるぐらいの精度らしいですよ。
 簡易キネクトみたいな使い方ができるかもしれないし,コントローラ側に付いてるってことは,なにか予想外の使い方が現れるやもですよ。
 オプションじゃなくて標準実装というのがいいですね。ハードの数さえ出れば,開発する意義が出てくるので。
 この機能の情報はあまりなくて,本体同時発売の「1-2-Switch」で片鱗が見えるだけですから,今後に期待ですね。

 この,コントローラを中心に新しい遊びを提案してくるあたりは非常に任天堂っぽいのでファン的には期待が持てるんじゃないでしょうか。技術革新によって,センサー類や長持ちするバッテリーなどが揃って,このコントローラが実現できたんでしょうね。

 とまぁずいぶん味付けが濃いです。
 非常に任天堂臭い。凄いですね。


Switchは任天堂の救世主となるか


 ゲームハードの成否は,キラーソフトの有無で決まります。ほら,PS VRのキラーソフトを思い出してください。

 さて気を取り直してSwitchはなにがキラーでしょう。

 個人的には「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」でFixです。これのトレイラーをみて購入を決意しました。あと,とりあえず「スーパーマリオ オデッセイ」「Xenoblade 2」が出るからわりと安心感ありますね。
 ゲームハードは,キラータイトルが2本あれば大抵満足です(個人の感想)。

 開発者視点としては,任天堂ハードのような,特殊なハードには厄介な部分もあります。
 パッドの振動に対応しなきゃ,全部のモードに対応しなきゃ,あの機能も使わなきゃ,機能使ってないとネットで叩かれるな,といった微妙な話もありますし,プラットフォームが推奨するようなゲームでないものを作ろうとすると,機能的にむしろ厄介なこともあるんです。例えば「FINAL FANTASY VII」は,PlayStationのモーションJPG再生機能がないと実現できないので,セガサターンでもNINTENDO64でも無理だったんす。

 トガったハードは,同じようなトガり方をソフトに求めるんですね。

 最近の任天堂は,メディア的な視点だと勝ち組企業としてではなく,スマホの登場によってツライゲーム会社という扱いを受けています。そこに出てきたSwitch。結構なギミックを仕込んで,さあ巻き返せるか! みたいなところも気になりますね。

 と言っても,みんながスマホを生活必需品として持っている状態から,ゲーム専用機を購入してもらうにはなかなかにつらい立ち位置にあります。
 今となっては記憶に薄いですが,PS2はDVDプレイヤー,PS3はBlu-rayプレイヤーとしての立ち位置があったことも思い出しておきましょう。
 純粋にゲームのために新しいハードを買うか。長く続く不景気,スマホで遊べる無料ゲームに慣れた市場に対して,大変な挑戦ですね。

画像集 No.002のサムネイル画像 / 【島国大和】Nintendo Switchに見る任天堂のポリシーと挑戦
 また,任天堂はほかのメーカーよりキッズを強く意識しています。ひどい課金やエロに対して企業としてちゃんと対処しており,親視点から見て,子供に安心して与える事ができます。
 Switchもスマホと連動して子供のゲームプレイ時間が確認できるなど,購入を躊躇する親御さんのことを良くわかってる作りですよね。

 願わくば,こういうほかのプラットフォームとはまた違う立ち位置を志向しているプラットフォームには健闘してほしいものです。
 やっぱり任天堂の方向性は面白いですよ。好き嫌いは分かれると思いますが。

 個人の好みを言えば,ハードはプレーンでシンプル,変わったことをするならソフトでする,っていう作りのほうが,ハード発売後の流行り廃りなどに対応できて好きなのですけど。
 そんなことを気にせず,保守的な考えを持つ人が最も多いはずのコントローラに,毎度ガッツリ手を入れてくる任天堂はポリシー持ってるよなぁと。

 それでは今回はこの辺で! 取り急ぎ!

■■島国大和■■
有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人で,不景気の波にもがく,正体はそっとしておいてほしいゲーム開発者。「シン・ゴジラ」の舞台裏では,スケジュールの無理を押したリテイクが繰り返されたことを知って「庵野えげつねぇ」となりつつも,「必要な無駄仕事はある」と思い至ったという島国氏。ただ,「自分でやるのヤダし人にさせるのは100倍ぐらいヤダ」だそうで,そりゃごもっとも。
  • 関連タイトル:

    Nintendo Switch本体

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:11月27日〜11月28日