テストレポート
「iPhone 15 Pro Max」テストレポート。ハイエンドらしい飛躍を遂げたが,真価を発揮するのはもう少し先か
外観から見ていこう。
iPhone 15 Pro Maxに触れて初めに思ったのは,「Pro Maxではなく,普通のProのような触り心地だ」ということ。普段使っているiPhone 13 Pro Maxよりも,かなり小さく感じたからだ。iPhone 15シリーズでは,ディスプレイのベゼル幅を狭くすることにより,従来製品と比べて筐体を小型化したので,それが効いているのかもしれない。
実際に持ってみると数値よりもサイズの違いを感じるのだ。iPhone 15シリーズで,筐体の端が少し丸くなり,持ちやすくなったことも影響しているのかもしれない。
また,iPhone 15 Pro Maxでは,側面のフレームにチタニウムを採用することで,既存製品と比べて軽量化を実現したのもポイントだ。iPhone 13 Pro Maxの公称本体重量が約238g(前世代の「iPhone 14 Pro Max」は約240g)のところ,iPhone 15 Pro Maxは約221gと,20gほど軽くなっており,手に取ると違いがはっきりと分かる。
冒頭でも触れたとおり,iPhone 15 Pro Maxのディスプレイは,約6.7インチサイズで,解像度が1290×2796ドット,最大リフレッシュレートは120Hzと,実のところスペックはiPhone 14 Pro Maxと変わらない。屋外での最大輝度が2000cd/m2と明るく,日差しが強い場所でゲームをプレイしても表示が見やすいのは利点と言えよう。ちなみに,ディスプレイ表面のカバーガラスには,セラミッククリスタルを組み込んだ高耐久素材である「Ceramic Shield」を採用する。
インカメラとセンサーを含めた部分がパンチホール型なのも,既存製品と同じだ。この領域を使用した「Dynamic Island」も利用できるのだが,対応アプリが少ないのが惜しい。
たとえば,ゲームをしているときに,Dynamic Islandにタイマーを表示して敵のリポップを管理できるといった使い方ができると便利そうに思う。iPhone 15シリーズでは,Pro以外のモデルもDynamic Islandが使えるようになったので,今後対応アプリが増えるかもしれない。
iPhone伝統のミュートスイッチはアクションボタンに置き換え
iPhone 15 Pro Maxは,側面にも新たな機能が加わった。それは左側面に備える「アクションボタン」で,初代iPhoneから搭載していた着信/消音スイッチを置き換えるものだ。アクションボタンには,カメラやライト,ボイスメモといったアプリの起動だけでなく,ショートカットなども1アクションで使用できる。位置情報ゲームの起動を割り当てておけば,移動先に着いてすぐにゲームを立ち上げられるというわけだ。
iPhone 15シリーズにおける大きな変化といえば,下側面の接続コネクタタが,Apple独自のLightningから,USB Type-Cへと切り替わったことだろう。最近では,電動シェーバーでさえUSB Type-Cポートで充電できるようになりつつあるが,ようやくiPhoneもその環に加わったわけだ。Appleの表記によると,対応する規格はProシリーズが「USB 3」,スタンダードシリーズが「USB 2」であるという。転送速度から判断すると,それぞれUSB 3.2 Gen 2,USB 2.0というところだろう。
筆者個人の利用シーンとして,充電は自宅にあるワイヤレス充電器で行い,写真などのデータ共有はクラウドストレージを経由している。USB Type-Cを搭載したとはいえ,使い勝手が劇的に変わるわけではない。ただ,PC用に持ち歩いているUSB Type-C対応充電器をそのまま使えるのは便利だ。無線LANやモバイル通信が不調なときに,USBメモリでデータをやりとりできるのも,もしものときに役立つかもしれない。
また,iPhone 15シリーズのUSB Type-Cポートは,DisplayPort Alternate Modeに対応しているので,特別なアダプタを使わずに,単体のディスプレイや「XREAL Air」といった製品と接続できるのもメリットと言えようか。
なお,iPhone 15シリーズに付属するUSB Type-Cケーブルは,規格がUSB 2.0なので,Proシリーズで有線を使った周辺機器接続を多用する人は,USB 3.2 Gen 2対応ケーブルを別途用意しよう。
iPhone初の光学5倍ズーム搭載
iPhone 15 Pro Maxのアウトカメラは,標準と広角,望遠の3眼構成となっている。このうち,標準カメラにおいて,写真の高画質化技術「Photonic Engine」を活用することで,1つの標準カメラで24mm(35mm換算,以下同),28mm,35mmという3種類の焦点距離で撮影できるのがポイントだ。筆者の場合,レンズ交換式カメラで,28mmや35mmの単焦点レンズを使うことが多いので,この機能は歓迎したい。
また,iPhone 15 Pro Maxには,新開発の屈曲光学系「テトラプリズム」を採用しており,iPhoneとしてはじめて光学5倍ズームに対応した望遠カメラを搭載している。焦点距離は120mmで,48mmの次が120mmというのは,ちょっと癖があるものの,屋外の風景写真に適しているだろう。
「モンスターハンターNow」をプレイするついでに,写真も撮影したので,いくつか作例を紹介する。「iPhone 14 Plus」を使ったときにも感じたのだが,Photonic Engineの効果は強力で,iPhone 13 Pro Maxで撮影した写真と比べると,明るく色彩豊かな印象だ。
A17の性能は高いが,真価を発揮するのはこれから
iPhone 15 Pro Maxは,搭載SoC(System-on-a-Chip)に新開発の「A17 Pro」を搭載したのも見どころだ。A17 Proは,2基の高性能コアと4基の高効率コアを組み合わせたCPUに,6基のGPUコア,AI処理用のNeural Engineなどを統合するSoCだ。
とくに注目すべきはGPUコアで,新たなマイクロアーキテクチャを採用しており,前世代の「A16 Bionic」と比べて,性能が最大20%向上したという。
実際に「Geekbench 6」と「3DMark」を使用して,iPhone 15 Pro Maxの性能を検証した。なお,ASUS製Androidスマートフォン「Zenfone 10」の検証結果も合わせてグラフを作成した。A17 Proと「Snapdragon 8 Gen 2」を比較する目安としてほしい。
まずは「Geekbench 6」の結果からだ。CPUテストのSingle-Core ScoreとMulti-Core Score,GPUテストの結果をグラフ1にまとめた。ZenFone 10は,使用するグラフィックスAPIが異なるので,GPUテストの結果からは省いている。
CPUテストで,iPhone 15 Pro MaxとiPhone 13 Pro Maxを比べると,約1.2倍の性能向上が見て取れる。GPUテストの結果では,iPhone 15 Pro Maxのスコアが約1.3倍となり,大きく差が開いた。SoCの世代が2世代違うとはいえ,ここまでの差になるとは思わなかった。
続いて,3DMarkだ。クロスプラットフォーム対応テストである「Wild Life Extreme」を実行した結果をグラフ2に示す。
iPhone 15 Pro Maxのスコアは,iPhone 13 Pro Max比で約1.33倍,ZenFone 10比で約1.1倍であり,ここでもA17 Proの性能が発揮された形だ。
A17 Proは,ハードウェアベースのレイトレーシングへの対応も目玉である。そこで,レイトレーシングテスト「Solar Bay」を実施した結果がグラフ3だ。
傾向としては,Wild Life Extremeと似ているが,iPhone 13 Pro MaxのSoCである「A16 Bionic」は,ハードウェアレイトレーシングに対応していないので,その影響からかスコア差がさらに開いているのがポイントである。またグラフ2と並べてみると,iPhone 15 Pro Maxのグラフィックス性能が,2023年のハイエンドAndroid端末を上回っていることも明らかだ。
なお,実際のゲームとして「原神」をプレイしたのだが,テストの段階ではVer.4.1のアップデート前で,iOS 17への最適化が行われていなかった。iPhone 15 Pro MaxとiPhone 13 Pro Maxのいずれも,動作が安定しない場面があったので,評価は保留としたい。筆者はメインで使うスマートフォンをiPhone 15 Pro Maxに変更する予定なので,届き次第改めて検証したいところ。
ベンチマークテストによって,性能の高さを示したA17 Proだが,その真価を発揮するのはもう少し後だろう。まず,スマートフォン向けゲームでのレイトレーシング対応は,これからといった状況だ。
また,iPhone 15シリーズの発表に合わせて,「バイオハザード RE:4」や「バイオハザード ヴィレッジ」,「DEATH STRANDING Director's Cut」といった大作ゲームをiOS向けに提供することも明らかになっている。いまのところ,対象機種はiPhone 15 ProとiPhone 15 Pro Maxだけで,こうしたゲームが登場すれば,A17 Proの優位性がますます生きてくる。
[TGS2023]バイオハザードをiPhone/iPad向けにリリースする理由とは。川田将央氏と神田 剛氏に聞く
iPhone 15 Pro,iPad,Mac向け「バイオハザード RE:4」と,iPhone 15 Pro,iPad向け「バイオハザード ヴィレッジ」が,2023年に配信となることが発表された。カプコンの川田将央氏と神田 剛氏に,移植の経緯や今後の展望を聞いたので,その模様をお届けする。
個人的には,AppleのグラフィックスAPI「Metal 3」で実装した超解像技術「MetalFX Upscaling」に対応したゲームが増えることを期待している。MetalFX Upscalingによって,画質を維持しつつ,フレームレートを上げられれば,原神や「崩壊:スターレイル」といったリッチなグラフィックスのゲームを,より快適にプレイできるようになるだろう。原神は,Ver.4.1でMetalFX Upscalingを利用できるので,どのくらい変わるのか気になるところだ。
性能面でも機能面でも飛躍を遂げたiPhone 15 Pro Max
性能も大幅に向上しているが,実際のゲームやアプリにそれが反映されるまで,もう少しかかるかもしれない。なお,iPhone 15シリーズは,端末の温度が高温になってしまうという症状も報告されている。筆者もベンチマークテストを続けていると,側面が熱くなることを確認した。ただ,iPhone 13 Pro Maxも同じ様に熱くなるので,OS側に原因があるのかもしれない。
一部の報道によると,Appleは,この熱問題に対応したOSのアップデートを予定しているとのことで,気になるという人は様子を見つつ,自分に合った製品を検討するといいだろう。
AppleのiPhone 15 Proシリーズ製品情報ページ
Apple公式Webサイト
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