2020年5月7日22:00,ビジネスノートPC向けAPU「
Ryzen PRO 4000」シリーズ計3製品を発表した。本製品は,2020年1月に発表となったノートPC向けAPU「
Ryzen 4000」シリーズをベースに,企業向けの機能を搭載したプロセッサである。いずれもゲーマー向けの製品ではないが,既存の一般PC向けのプロセッサにはない特徴も備えているので,かんたんに概要を紹介しておきたい。
薄型ノートPC向けの3製品を用意
これまでのノートPC向けRyzen 4000シリーズは,ゲーマー向けノートPCをはじめとする高性能ノートPCを想定したTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)45Wの「H」シリーズが4製品と,薄型ノートPC向けとなるTDP 15Wの「U」シリーズが5製品というラインナップだった。一方,今回発表したRyzen PRO 4000は,いずれもTDPが15Wクラスの製品となる。各製品のおもなスペックを下にまとめておこう。
- Ryzen 7 PRO 4750U:8コア16スレッド,定格クロック1.7GHz,最大クロック4.1GHz,L2キャッシュ容量4MB,共有L3キャッシュ容量8MB,TDP 15W
- Ryzen 5 PRO 4650U:6コア12スレッド,定格クロック2.1GHz,最大クロック4GHz,L2キャッシュ容量3MB,共有L3キャッシュ容量8MB,TDP 15W
- Ryzen 3 PRO 4450U:4コア8スレッド,定格クロック2.5GHz,最大クロック3.7GHz,L2キャッシュ容量2MB,共有L3キャッシュ容量4MB,TDP 15W
Ryzen PRO 4000シリーズは,既存のRyzen PRO 3000シリーズを置き換える製品となる。なお,スライド中にあるCACHE(キャッシュメモリ容量)の値は,L2とL3の合計だ
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基本的なスペックは,ノートPC向けRyzen 4000シリーズにおける同クラスの製品とそれほど変わらない。しいて言えば,最上位モデルのRyzen 7 PRO 4750Uは,既存の「Ryzen 7 4800U」(8コア16スレッド,定格クロック1.8GHz,最大クロック4.2GHz)と比べて,動作クロックが100MHz分低めだ。加えて,Ryzen 3 PRO 4450Uは,ノートPC向けRyzen 3シリーズで初となる4コア8スレッド対応製品というあたりが特徴と言えよう。
一般向けのRyzen 4000シリーズとRyzen PRO 4000シリーズとの違いは機能面で,Ryzen PRO 4000シリーズでは,AMDが「AMD PRO Technologies」と呼ぶ企業向けの機能群を対応する。これは,IntelでいうところのIntelの「Intel vPro Technology」(以下,vPro)に相当するもので,「AMD
PRO
Security」「AMD
PRO
Managebility」「AMD
PRO
Business
Ready」という3つの特徴を備えている。
一般向けのRyzen 4000シリーズ(※スライドのU-SERIES欄)とRyzen PRO 4000シリーズとの違い。Ryzen PRO 4000シリーズは,大規模ビジネスに適したセキュリティ機能をサポートする点が違いとなる
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AMD PRO Technologiesにおける3つの柱
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AMD PRO Technologiesを構成する技術要素は,今回が初出というわけではなく,これまでAMDが開発に取り組んできたエンタープライズ向け機能の集大成といったところだ。ただ,Ryzen PRO 4000シリーズが,Intel vProに引けを取らないセキュリティ機能や企業向けの管理機能を提供していることは記憶にとどめておくといいかもしれない。
AMD PRO Securityのメモリ暗号化技術「AMD Memory Guard」は,vProにはないRyzenならではの機能だとAMDはアピールする
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薄型ノートで競合以上の性能を実現するRyzen PRO 4000シリーズ
AMDは機能だけではなく,Ryzen PRO 4000シリーズにおける性能の高さも強調する。AMDがとくにアピールしているのは,マルチスレッド性能の高さだ。前世代の「
Ryzen PRO 3000」シリーズに対して,2倍以上の性能向上を果たしたという。ただ,8コア16スレッド対応CPUと4コア8スレッド対応CPUでの比較なので,これくらいの性能向上は当然と言えようか。
Ryzen 7 PRO 4750Uと前世代のRyzen 7 PRO 3700Uとの性能比較。マルチスレッド性能が132%も向上したという
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これにより,ビジネス向けアプリやブラウザにおいて,Ryzen PRO 4000シリーズは,前世代製品を大幅に上回る性能を備えており,ベンチマークテストによっては,競合のCore i7シリーズを上回る性能をRyzen 5シリーズが発揮できるというのが,AMDの主張だ。
ビジネス向けアプリの性能を前世代製品と比べたスライド。とくにExcelの性能が大きく向上しているのが目を引くところだろう
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Ryzen 7 PRO 4750Uと競合のCore i7-10710U(6C12T,定格クロック1.1GHz,最大クロック4.7GHz,TDP 15W)との性能比較。競合以上の性能を持つとAMDはアピールする
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ミドルクラス市場向けであるRyzen 5 PRO 4650Uの性能を,競合であるCore i5-10510U(4C8T,定格クロック1.8GHz,最大クロック4.9GHz,TDP 15W)と比較したスライド
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テストによっては,Ryzen 5 PRO 4650UがCore i7-10710Uを上回る性能を発揮するという
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Ryzen PRO 4000シリーズを搭載したノートPCは,HPやLenovoといったメーカーから登場する予定とのことだ。中でもLenovoは,ビジネス向けノートPCであるThinkPadシリーズから一気に4製品をラインナップするそうだ。
長年AMD製CPUを採用してきたHPからは,2-in-1タイプののHP ProBook x360とHP ProBook 445/455の最新世代としてRyzen PRO 4000シリーズ搭載モデルが登場するそうだ
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LenovoのThinkPadシリーズからは4製品が登場する
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このところ,一般消費者向けやゲーマー向けのPCでRyzen搭載のノートPCが徐々に増えてきた。Ryzen PRO 4000シリーズによって,ビジネスPCにもその波が訪れるかもしれない。仕事用PCを探していたという人は,Ryzen PRO 4000シリーズ搭載製品の動向をチェックしておくといいのではなかろうか。