2015年8月27日21:00,AMDは,新型GPU「Fiji」の短尺カード用モデル「
Radeon R9 Nano」(以下,
R9
Nano)を正式に発表した。液冷仕様の「
Radeon R9 Fury X」
(以下,
R9
Fury
X)とほぼ同じスペックを備えながら,
Mini-
ITX仕様のマザーボードと組み合わせるのに適した,
長さ約6インチ(約
152.4mm)という短いカードサイズを実現しているのが特徴だ。
発売は9月10日21時の予定で,北米でのメーカー想定売価は
649ドル(税別)とされている。
リファレンスカードの場合,ビデオ出力インタフェースはDisplayPort 1.2×3とHDMI 1.4×1(左)。電源コネクタは8ピンタイプが1つだけだ(右)
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AMDが公開したR9 Nanoのスペック
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R9 Nanoの存在自体は,E3 2015に合わせて
Fijiのラインナップが発表されたときに公表されていたが,約15cmというカードサイズにFijiを搭載する以上,R9 Fury Xや空冷仕様の「
Radeon R9 Fury」(以下,R9 Fury)と比べて,相応にスペックダウンされるのではないかと推測されていた。
それが蓋を開けてみれば,演算ユニットである「Compute Unit」の数は64基,総シェーダプロセッサ数は4096基と,スペックはR9 Fury Xとまったく同じだ。積層メモリ技術で製造された「High Bandwidth Memory」(以下,HBM)をグラフィックスメモリとして4GB搭載する点や,GPU内部の構造も,R9 Fury Xと変わっていない(
表)。
リファレンス仕様のブースト最大クロックは,R9 Furyと同じ1000MHzであるため,総シェーダプロセッサ数が3584基であるR9 Furyをスペック的にはしのいでいるわけだ。それでいて,公称典型消費電力は175Wと,R9 Furyの275Wから100Wも低くなっているのだから驚かされる。最大消費電力は相応に上がるだろうが,それでも大したものだ。
R9 Nano搭載カードの構成
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R9 Nano搭載カードの基板写真。HBMにより,GPUパッケージ上にグラフィックスメモリを搭載しているおかげで,コンパクトサイズながらも無理のある設計には見えない
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AMDでは,2年前のハイエンド製品である「
Radeon R9 290X」(以下,R9 290X)とR9 Nanoを比較して,カードサイズは40%小さく,グラフィックス性能では30%も上回るとアピールしている。また,NVIDIAの「
GeForce GTX 970」を搭載するMini-ITX仕様のグラフィックスカードと比較して,4K解像度で表示したゲームでは,30%高速であるとのことだ。
長さ約15cmのR9 Nanoは,R9 290Xのリファレンスカードよりも40%小さい(左)。Mini-ITXフォームファクタのマザーボードと組み合わせて,ハイスペックなゲームPCを構築できると謳われている(右)
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4096基のシェーダプロセッサを搭載し,R9 290Xよりも30%高速とアピール
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Mini-ITXサイズのGeForce GTX 970搭載カードと,4K解像度表示におけるゲームの表示性能を比較したグラフ
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メーカー想定売価がR9 Fury Xと同じ649ドルということは,国内での価格も,それと同じ10万円超えになると思われる。前評判次第では,R9 Fury Xを超える価格になることもありそうだ。しかし,コンパクトサイズの空冷タイプでR9 Fury Xと同じスペックとなれば,この価格でも登場直後に争奪戦となるのは必至だろう。実機がどれくらいの性能を発揮できるのか,今から楽しみだ。