Snapdragon 710のパッケージ
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中国時間2018年5月23日,Qualcommは,SoC(Sys
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-on
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-Chip)新製品「
Snapdragon 710 Mobile Platform」(以下,Sn
ap
dra
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710)を発表した。搭載製品は2018年第2四半期以降に登場の見込みである。
ミドルハイクラス市場向けSoCとして2月にラインナップへ加わったSnapdragon 700シリーズ,その第1弾となるSnapdragon 710では,ミドルクラス市場向けSoCである「
Snapdragon 660 Mobile Platform」(以下,Snapdragon 660)と比べ,端末側で動作するエッジAIの処理性能が最大2倍に達しているという。いわく,AI機能を活用するようなアプリを高速に動作させられるとのことだ。
Snapdragon 710のブロック図
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CPUコアとGPUコア,および内蔵DSPコアで行うAI処理性能が2倍に向上したという
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表は,Snapdragon 710とSnapdragon 60を比較したものだが,Snapdragon 710では採用するプロセス技術の微細化が入り,「
Snapdragon 845 Mobile Platform」と同世代に移行しているのが分かる。
表 Snapdragon 710とSnapdragon 660の主なスペック
|
Snapdragon 710 |
Snapdragon 660 |
型番 |
SDM710 |
SDM660 |
製造プロセス |
10nm |
14nm |
CPUコア |
Kryo 360 |
Kryo 260 |
物理コア数 |
8 |
8 |
最大動作クロック |
2.2GHz |
2.2GHz |
GPUコア |
Adreno 616 |
Adreno 512 |
APIサポート |
DirectX 12,OpenGL ES 3.2 |
DirectX 12,OpenGL ES 3.2 |
メモリコントローラ |
LPDDR4X 1866MHz |
LPDDR4X 1866MHz |
統合型モデム |
Snapdragon X15 LTE |
Snapdragon X12 LTE |
通信速度 |
LTE Cat 15,下り最大800Mbps |
LTE Cat 12,下り最大600Mbps |
Snapdragon 710は,CPUコアとして,Qualcomm独自CPUである「Kryo」の第3世代となる「
Kryo 360」を8基採用している。ここでちょっと面白いのは,Armの「big.LITTLE」アーキテクチャで言うところのbig側(高性能側)CPUコアが2基なのに対して,LITTLE側(高効率側)CPUコアが6基という非対称の構成になっている点だ。CPUコアを8基搭載するQualcomm製SoCで一般的な構成は,big側×4基+LITTLE側×4基であるが,Snapdragon 710搭載端末では,CPUコアに求められる処理性能と消費電力のバランスが少し異なるということなのだろう。
Qualcommのプレゼンテーション資料を見ると,高性能(Performance)側CPUコアが2基,高効率(Efficiency)側CPUコアが6基であることが明らかになっている
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GPUコアの「
Adreno 616」について,今回も詳細は明らかになっていないものの,前世代のGPU(※具体的なGPU名は未公開)と比べてグラフィックス性能は35%向上しており,ハイエンド向けSoC以外では初めて4K HDRビデオ再生にも対応するのが特徴とのこと。また,4Kビデオ再生時やゲームプレイ時のバッテリー消費は,Snapdragon 660と比べて40%も低くなっているそうだ。
Adreno 616の利点を説明したスライド
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そのほかにも,内蔵するLTEモデムが「Snapdragon X15 LTE」となり,
Sn
ap
dra
gon
660よりも通信速度が最大30%も向上しているという。
通信機能関連の特徴を示したスライド。Snapdragon 660よりも最大30%高速であるという
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処理性能とバッテリー消費に関するスライド。総合的な性能はSnapdragon 660より20%向上し,バッテリー消費も大きく減っているという
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謳い文句どおりの性能を発揮できれば,ミドルハイクラス市場向けスマートフォンにおけるゲームの表示品質や快適さも改善されそうだ。日本市場だとおそらく2018年後半以降に登場するであろう搭載端末が楽しみである。