インタビュー
「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏インタビュー。描くものすべてに意味を持たせ,より分かりやすいMMORPGに
さらに,ドイツのケルンで8月15日〜19日まで行われたGamescom 2012にあわせ,新スクリーンショット,新イラスト,そして実機でのデモプレイが披露されるなど,ここにきて急展開を見せている(関連記事)。
Gamescomでのデモプレイ終了直後に,新生FFXIVのプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏に日本のメディア合同でインタビューが行われた(関連記事)。とはいえ,それだけで新生FFXIVのすべてが明かされたわけではない。というわけで,4GamerではGamescomの終盤,8月18日にあらためて吉田氏に単独でインタビューを行い,追加の質問を行った。
とにかく熱いドイツのファン。日本のファンに向けての新情報公開は?
4Gamer:
Gamescomでは,一般のお客さん(主にドイツ人)に向けて,ステージイベントという形で新スクリーンショット,新イラスト,そして実機でのデモプレイなどを公開しましたが,ステージの上からみた反応はいかがでしたか。
吉田直樹氏(以下,吉田氏):
非常に良かったと感じています。とくにファイナルファンタジーシリーズをご存じの方は,抜群に良い反応ですね。デモプレイではチョコボをジャンプさせたのですが,その瞬間の歓声などは最高でした。
4Gamer:
確かに会場では,妙な一体感みたいなものが感じられましたね。
ステージイベントの様子 |
吉田氏:
実機の映像を見せたときに,「こんなにサクサク動くのかっ!」という感じは,こちらにも伝わってきました。
4Gamer:
ウワーっと歓声があがるイメージではなく,息を呑む感じですね。
吉田氏:
MMOを分かっている人達が見ているなと。
4Gamer:
ステージイベントはGamescomの会期中,複数回が行われましたが2度,3度といらっしゃる人などはいましたか。
吉田氏:
ええ,何回もきてくれた人がいるのは分かり,かなり嬉しかったですね。また,ステージイベントとは別にサイン会も実施したのですが,FFVIIのリミットブレイクゲージのタトゥーを掘っている人がいました。
4Gamer:
本気ですね。
吉田氏:
しかもゲージがレベル3まで溜まっているんですよ(笑)。ほかにも,僕がサインした名前を腕に彫っていいかと聞いてきたのですが,それはさすがに止めました。大丈夫,気持ちは受け取ったからと。FFファンの方は本当にすごかったです。
4Gamer:
まだ新生FFXIVが完成していないにも関わらず,すごい熱ですね。
新生FFXIV プロデューサー兼ディレクター 吉田直樹氏 |
実はステージイベントの合間に休憩を取っていたときに,エアリスのコスプレをした女性が僕に気がつくと,写真を一緒に撮ってくれといってきたんです。まあ,それは普通なんですが,その子が一緒にいたカメラ担当の人に,「ミスったら分かってるだろうな」という感じのものすごい剣幕で指示を出していたのにびっくりしました。僕に向かって話しているときと,指示出ししているときの表情のギャップがすごくて(笑)。
4Gamer:
ドイツのFFファンにもすっかり認知されましたね。
吉田氏:
まあ,新生FFXIVがとか,僕がという話はこれからで,それがファイナルファンタジーの強さなんだと思います。
4Gamer:
そんな熱いファン達に向けて,ステージイベントではPvPの実装とリミットブレイクという要素があることを発表しました。ゲーム内のコンテンツと戦闘の一要素を並列で紹介したのはなぜでしょうか。
吉田氏:
PvPに関してはやっぱりドイツだからというのが理由の一つです。ドイツの人はPCゲームが大好きでFPSもそうですし,対人戦が大好きですからね。リミットブレイクは,MMOに詳しいドイツの人達に「こんな派手なことをやるんだ。MMOになってもFFだよね」と思って欲しかったので,イベントの締めとして紹介することにしました。
4Gamer:
日本のファンからしてみると,ドイツ人が羨ましいといった感じですね。あえて実機映像の公開などをドイツで行ったことには,何か特別な理由があるんですか。
吉田氏:
答えは単純で,タイミングがあったからです。ただし,新生XIVは本当に特殊なプロジェクトですから。これが「ファイナルファンタジーシリーズ最新作です!」っていう,通常のプロジェクトであれば,もう半年くらいはPR活動を控えてもよいかと思っていました。
4Gamer:
といいますと?
吉田氏:
僕達が体制を引き継いだのが2010年12月10日で,そこからですらまだ,今日の時点でも2年も経っていません。すでに動いているものを運営しながら大規模な修正を行い,並行してゼロから新たなものを作る,と内々で決めたのも2011年1月下旬です。本来であればじっくり作って,リリース日から逆算してPR活動を開始するのが普通なんです。
4Gamer:
現行のサービスを動かしながら新しいものを作るという,前例のないパターンなので,PR活動のタイミングも手探りというわけですね。
吉田氏:
ええ,まさに不眠不休で作業を続けており,現行版のアップデート計画を進めつつ,開発内での言葉の定義といった,本当に基本的なところから新生XIVのプロジェクトをスタートさせました。それこそ全タスクを洗い出し,それを実現するためにはどんな技術を使うのか,そもそもミドルウェアを採用するのかフルスクラッチでいくのかなど。そんななかで最初に取りかかれたのがグラフィックスエンジンのコーディングなんですが,それでも2011年6月からです。
4Gamer:
実作業がスタートしてまだ1年と2か月なんですね……。
吉田氏:
そんな状況ですので,本来であればもっとFIXしたデータを吟味して出すべきかなと。開発進捗から見ればPR活動はまだ早いわけです。それでも僕らは,新生XIVを少しでも早くお届けしたいと思い,あらゆる作業を並行で行っています。結果PR活動も開発と並行になっていて,出来上がり次第お見せするという感じですね。そうやって作業を続けている中,実機の映像が表に出せるようになったのが,ちょうどGamescomのタイミングだったというわけです。
4Gamer:
E3から2か月しか経っていないこのタイミングでも公開された情報はかなりありました。日本のファンは東京ゲームショウ(TGS)に期待してもいいですか。
吉田氏:
とりあえずプレイアブルのクライアントを展示して云々というのは考えていません。というのも,TGSには新生FFXIVのような生粋のMMORPGになじみのない人達がたくさんいらっしゃいます。そのなかで「さあ,遊んでください」といってもあまり多くは伝わりませんので。TGSではストレートに映像を流しつつ,「FINAL FANTASY XIV」は生まれ変わります,というのをアピールしていきます。
ただ,9月1日と2日にはファイナルファンタジーシリーズ生誕25周年を記念した,「FINAL FANTASY展」を行いますので,僕達はそっちにフォーカスしようと思っています。
4Gamer:
確かにそのほうがFFファンにダイレクトに届きますね。
吉田氏:
TGSにプレイアブル出展すれば,既存のプレイヤーは喜んでくれるでしょうが,TGSにはいろいろな人がいらっしゃいますので,誤解を生まないためにも,そういう選択をしました。実際にプレイできる環境はβテストとして用意しますので,そちらに期待していただければと思います。
4Gamer:
では,テストについて聞かせていただきます。ステージイベントでα(サーバー負荷テスト)を2012年秋,βテストを2012年冬に実施すると発表されていましたが,各テストの規模感を教えてください。
吉田氏:
αテストに関しては,比較的小規模なものを予定していますが,段階を踏んで参加者を増やしていきます。テスト開始直後に大混乱,といった事態は避けたいので。
βテストは,もちろんαテストの安定度次第というのもありますが,こちらも段階に応じて参加者を増やしていこうと思っています。
4Gamer:
どちらのテストも,現行のプレイヤーが参加しやすいものを想定していますか。
吉田氏:
もちろんです。これまで多くのフィードバックをいただいていますので,新生FFXIVにどれだけそれらが生かされているのかを見てほしいですね。
4Gamer:
現行のサービスが動いているなかで,それに代わる新サービスのβテストが行われるということは,あまり前例がありませんので,あえて確認しますが,テストのデータはワイプされますか。
吉田氏:
αテストとβテストの初期に関しては確実にワイプします。ただし,βテストの後期フェーズでは,まだ100パーセントそうだと決めたわけではないですが,ワイプせずにそのまま正式サービスに引き継ぎたいと考えています。とくにPCのオンラインゲームに慣れていない人は,データが消える可能性があるということをご存じないと思いますので。
4Gamer:
PS3の新生FFXIVでMMOデビューという人も大勢いるでしょうからね。ところで,データワイプの可能性があるということは,現行プレイヤーがテストに参加するときは,新キャラクターが増えるようなイメージでしょうか。
吉田氏:
そうですね,αテストやβテストの初期には完全に新キャラで参加していただこうと思っています。もちろん,現行のキャラクターをコンバートして新生FFXIVでも使えるようにしますので安心してください。
4Gamer:
現行のキャラクターを新生FFXIVに移せるのは嬉しいのですが,「これを機に作り直したい」と思う人もいるのではないでしょうか。種族やカスタマイズ箇所も増えますし。
吉田氏:
キャラクターの見た目を1回だけ変えられるようにはするつもりです。ただし,自由度が高いぶん,オペレーションには気をつけなきゃと。「新キャラを作ったつもりだったのに,間違えて既存キャラクターのカスタマイズをしてしまった!」なんていうことは避けないといけませんので。
4Gamer:
現行プレイヤーにとっては嬉しい心遣いですね。
吉田氏:
ただ,悩んではいたんですよね,さすがに性別まで変えてもいいものかとか。
4Gamer:
確かに。
吉田氏:
結構衝撃があると思うんですよ,ルガディンのアニキ的な人が,新生FFXIVが始まったときに,可愛らしいミコッテになっていたら(笑)。
4Gamer:
カミングアウトですか。
吉田氏:
ええ,それもどうなんだろうと。ただ,長く付き合っていただくキャラクターになりますので,新生時の1回だったらいいかなと。
4Gamer:
現行のサービスが動いているなかで,まったく新しいサービスがスタートするというのは,多くのプレイヤーにとっても初めての経験になります。新生FFXIVサービスインに際して,現行のプレイヤーが気をつけるべきことなどがあれば教えてください。
吉田氏:
アカウントはそのまま使えますので,新生FFXIVクライアントをダウンロードしてインストールしていただくといった感じで,特別な手続きは必要ありません。現行プレイヤーの皆さんに余計な負担をかけたくはありませんので,クライアントを再インストールするだけ,という形にしたいと思っています。
4Gamer:
サーバーも同じと考えていいですか。例えば,現行のデュランダルでプレイしている人は,新生のデュランダルに移るといったような。
吉田氏:
はい,そうなります。
4Gamer:
新生FFXIVの発売はPCとPS3が同時にスタートするとのことですが,機種ごとにサーバーを分ける予定はありますか。
吉田氏:
機種やプレイ歴によって制限を設けるということは考えていません。ですが,初めての方はやはり新サーバーでプレイしていただいたほうがいいとは思うので,サーバー選択の導線設計もきっちりとやるつもりです。
あくまでも一例で未確定ですが,現行のサーバーを「レガシーワールド」と表示するとか。
4Gamer:
それをそのまま実行すると「レガシー隔離だ」的な反応がありそうですね。ですが,現行の「ラグナロク」が海外向けとうたわれているように,なんらかの形でサーバーの情報が開示されていて,プレイヤーがそれを理解して選択できるというのは,ある意味理想だと思います。
吉田氏:
もちろん隔離とか,そういう意図があってのことではなく(苦笑)ファイナルファンタジーということで,MMOに詳しくない方もたくさん入ってこられると思いますので,なるべく分かりやすくしていきたいですね。
4Gamer:
そういえば,ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼアという正式名称はこれからも変わらないのでしょうか。
いえ,サブタイトル部分,「新生エオルゼア」というのは変わります。そこはエクスパンション(大型アップデート)ごとにイメージイラストごと一新させていきます。今回のロゴでいうと,下の線が惑星ハイデリンを表しており,その上に冒険者達がいて,世界が一新するという意味で「A REALM REBORN」と書いてあるんです。
4Gamer:
そうなんですね。いつまで“新生”なんだろうとは思っていました。エクスパンションごとにイラストやサブタイトル変える理由を教えてください。
吉田氏:
常に新しいものとして見せていきたいという思いからです。例えば,ファイナルファンタジー15が発表されたら,XIV(14)は一つ前のFFになってしまいますから。あと,新生XIVからはパッチにもタイトルをつける予定です。例えば,PvPが実装されるパッチに「Defender of the Realm (Patch 2.01)」とか名付けるといった感じで。PRもそんな風に行っていくつもりです。
「FINAL FANTASY XIV」公式サイト
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FINAL FANTASY XIV(旧)
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア
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ファイナルファンタジーXIV
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