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[GDC 2017]ピンチはチャンスに変えられるはず。田畑 端氏が「FINAL FANTASY XV」の開発を振り返ったセッションをレポート
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印刷2017/03/02 20:02

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[GDC 2017]ピンチはチャンスに変えられるはず。田畑 端氏が「FINAL FANTASY XV」の開発を振り返ったセッションをレポート

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 スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY」シリーズが欧米でも高い人気を得ていることは言うまでもないだろう。
 その最新作「FINAL FANTASY XV」PS4 / Xbox One。以下,FFXV)のディレクターを務める田畑 端氏が,GDC 2017の招待枠講演として「FINAL FANTASY XV:A Challenger Once Again」(ファイナルファンタジーXV。再び挑戦者となった私)と題したトークセッションを行った。

※2017年3月3日14:40 Luminous Studio Proのムービーを追加しました。

「FINAL FANTASY XV」ディレクター 田畑 端氏
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 ゲームデザインや技術面などが取り沙汰されることが多い本作では珍しく,田畑氏の考える「ゲーム制作哲学」的な内容が語られたので,本稿でレポートしよう。

このセッションのテーマは「Target」「Team」「Result」の3つであることがまず話された
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目標は600万本という未知の数字


 田畑氏は11歳のとき,競技スキーの地区代表となり,“希望の星”的な選手として送り出されたらしいのだが,その大会ではあっけなく敗退してしまった。そして田畑氏に勝利したライバルはライバルで,全国大会ではあえなく敗れてしまったという。

 わずか11歳にして「この世界には上の上がいる」という事実を身にしみて感じ,「勝つためにはチームで勝負すべき」という教訓を得た田畑氏がリーダーを務めるチームが,スクウェア・エニックスのビジネスディビジョン2(以下,BD2)である。

 このBD2がFFXVを開発したわけだが,その道のりは最初から険しかったと田畑氏は振り返る。
 というのも,マーケティング部門の市場調査で,FFXVの予想売上本数は全世界500万本以下になるだろうと予測されてしまったのだという。500万本という数字自体は常識的に考えれば相当な本数だが,伝説的なシリーズの作品であることを考慮すると,それほど高いわけでもない,ということだろう。これを田畑氏は,深読みすれば「500万本を超えられないようでは,お前に次はない」という宣告に感じたのだとか。

今回私は成功者として登壇しているのではない。一人の挑戦者として見てほしい,と語った田畑氏
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 しかし田畑氏は,この市場調査がはじき出した500万本という数字を遙かに上回る,600万本という目標を設定した。
 それまで氏が関わったFF関連作品は携帯ゲーム機用で,据え置き型のナンバリングタイトルの開発はFFXVが初。「600万本突破」という目標も,経験のない数字だった。
 田畑氏は「登山に例えるなら,過去作は日本国内の3000メートル級。FFXVは6000メートル級のマッキンリークラスに相当する挑戦に思えた」と当時を振り返る。

ファイナルファンタジーシリーズの父である坂口博信氏も,FF新作を手がけるたびにこのキーワード「これが最後のチャンスだ」を使っていたという
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目標は大きく600万本に設定!
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FFXVプロジェクトは,3000メートル級の登山経験者が6000メートル級に挑戦するくらいの高いハードルだった
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 しかし,重圧のかかるゴールを自ら設定して追い込むことは,田畑氏自身,そして開発チーム全体を鼓舞・奮起させることにつながったようである。
 FFのナンバリングタイトルを開発した経験を持つ者は少なかったようだが,どのメンバーも一芸に秀でていたようで,田畑氏はBD2を「Mass Of Mastery」(熟練工の集団)と表現。そのリーダーとして,約200人それぞれの専門性を効果的に活かすようなマネージメントを心がけ,FFXV開発プロジェクトを指揮していったとのこと。

田畑氏をリーダーに据えたゲーム開発チームとしてBD2が組織された
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チームメンバーは盟友・戦友である
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BD2のメンバーは一芸に秀でた人材が多かった
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スランプに陥った2015年夏


 チームマネージメントは順調に進み,2015年3月には「FINAL FANTASY 零式 HD」PS4 / Xbox One)の初回限定盤特典として,体験版「FINAL FANTASY XV -EPISODE DUSCAE-」(以下,EPISODE DUSCAE)をリリース。
 EPISODE DUSCAEは,製品版でプレイヤーが体験できるゲーム要素のおよそ半分が入っていて,発売まであと1年以上も残すこのタイミングで,これだけのものが提供できたことには田畑氏も満足したという。
 この段階からは,コンテンツ部分を作り込んでいけば完成が見えてくるので,「どれくらいの時間をかければ完成するか」の逆算も可能になるのだ。

 だが,このまま一気に完成に突っ走れるか……と思った矢先,2015年の夏から秋にかけて,開発チームはなぜか勢いを失い,スランプに陥ってしまったという。

 そんなある日,田畑氏が出勤しようとすると,6歳の娘さんが走り寄ってきて「いつまでパパは忙しいの?」と聞いてきたのだという。「まだしばらく忙しいかな」と答えると,娘さんは涙ぐんでしまったのだとか。
 このとき,自分達を支えている家族の大事さに気付かされた田畑氏は,ここであえて立ち止まることを決断。家族を会社に招いての「家族サービスデー」を定期的に開催するようにした。

ファミリーデー開催がチームのスランプを救った!?
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チームメンバーの指に注目「1」と「5」で「XV」を表している
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 こうした試みがきっかけで,チームメンバーは崩れてしまった仕事と家庭のバランスを取り戻し,開発にも再び勢いが出てきた。マスターアップを終え,DAY1パッチの仕込みも完了し,発売日を待つのみとなったが,そこで突然のトラブルが舞い降りてくる。
 それは発売前にFFXVを入手したプレイヤーによる,SNS等を使ったネタバレを伴うネガティブな情報拡散だった。

 これはマーケティング戦略上悪影響が出かねない重大な事象だったようで,田畑氏も一般のファンに「そうしたネガティブキャンペーンには影響されないように」と注意を喚起するしか手がなかったと振り返る。

 ただ,こうした問題は,大作・人気作では避けられないことであり,今後は無理に押さえ込むよりも,そうしたネタバレをする人達をマーケティングに巻き込んでいくようなユニークな手段を試してみたいと氏は述べていた。具体的なアイディアは明かされなかったが,ピンチをチャンスに変えるような秘策があるようだ。

発売月の11月に突入し,全世界同時発売の予告動画も公開され,高まる期待感。しかし,発売直前にトラブル発生
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それはフライングゲットとネタバレによる悪意のあるネガキャンだった
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この点についてはやや悔しい結果に終わったようで,「次回はネガキャンを巻き込んだ新しいマーケティングに挑戦したい」と田畑氏
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「Luminous Studio」がNVIDIAの協力によって「Pro」に進化する


 かくしてFFXVは,2016年11月29日に発売され,2017年1月末には,パッケージ版の出荷本数とダウンロード販売本数の合計が目標だった600万を突破。これを受けて田畑氏は「次回作の開発にもつながるような“新たな目標”を設定することができた」と発言。なんとも意味深な発言に来場者のどよめきが収まらないまま,「我々の新しい取り組みをご覧ください」と,世界初公開となる映像を上映した。

発売後1か月で,掲げた目標を達成!
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世界のゲームメディアからも高い評価を獲得した
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 それは「Luminous Studio Pro」という名前の新ゲームエンジンを紹介するラッシュ映像であった。FFXVの開発では,スクウェア・エニックスが自ら開発するゲームエンジン「Luminous Studio」が採用されたことを知っているゲーマーは多いだろうが,そこに「Pro」が付けられている。


 続けて,「Luminous Studio Pro」の開発にNVIDIAが協力することも発表された。具体的には,さまざまなゲームエンジンへ採用が進んでいるNVIDIAのゲーム開発支援ライブラリ「GameWorks」をLuminous Studioに統合していくという方向性になるらしい。

「Luminous Studio」が「Pro」になって「NVIDIA」とコラボレーション
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Deep Learningを活用した機械学習型AIは,モンスターがプレイヤーと戦えば戦うほど手強くなる?
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 田畑氏は「草木の表現,流体シミュレーション,毛髪表現,機械学習型AIなどの要素をGameWorksから取り込んでいく予定」と述べている。
 もともとLuminous Studioはスクウェア・エニックス社内で活用するエンジンだったはずで,これまでも技術デモを作ったり,開発途中のFFXVを引き合いに出して機能を解説したりといったことはあったが,社外技術を取り込んだことを積極的にアピールしたことはなかった。
 今回の発表は,もしかしたら商業ゲームエンジンとしての社外提供を視野にいれたもので,「Pro」というキーワードも,その差別化のためなのか?

 そのあたりを関係者に聞いて回ってみたのだが,「今のところ,何も言えません」「我々が新たに設定したゴールについての情報は順次開示していきます」という返答を得るに留まった。
 果たして真相は……? 何にせよ,続報に期待したい。

GDC会期中に行われたNVIDIAの技術カンファレンスにも田畑氏が登場。PC版FFXVの可能性を聞かれると,笑いながら「ノーコメント」と叫んだ
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草木の表現にGameWorksの「Turf Effects」を採用
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流体シミュレーションには「Flow」を採用
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動物や人物などのキャラクターの毛髪表現には「HairWorks」を利用する
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