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  • 発表日:2008/03/18
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印刷2008/03/18 22:00

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「GeForce 9800 GX2」登場。ハイエンドGeForceはマルチダイカードに

 

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GeForce 9800 GX2リファレンスカードのイメージ

 北米時間2008年3月18日,NVIDIAはGeForce 9シリーズ初のハイエンドモデルとなる「GeForce 9800 GX2」を発表した。「GX2」型番といえば1カードに2基のGPUを搭載した“2階建て”グラフィックスカード「GeForce 7900/7950 GX2」を思い出す読者も多いだろうが,実際,GeForce 9800 GX2もやはり,2基のGPUを実装した製品,いわゆる「デュアルダイグラフィックスカード」(デュアルGPUグラフィックスカード)となっているのが最大の特徴だ。
 本稿では,2008年2月18日から米サンフランシスコ市で開催された「GDC 2008」の会期中に行われた事前説明会の内容を基に,NVIDIAの新しいハイエンド製品を説明してみたい。

 

 

GeForce 9800 GX2はGeForce 8800 GTS 512×2!?

 

 さて,GeForce 9シリーズとしては,先にミドルクラスGPU「GeForce 9600 GT」がリリース済み。GeForce 9800 GX2は,「GeForce 8800 GTX/Ultra」の後継として,GeForce 9シリーズで不在となっていたウルトラハイエンドモデルの座に君臨することとなる。NVIDIAによる想定売価は599〜649ドルだ。

 

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1GPU当たり128SPで,カード全体では256SPを搭載する。スライドの左右が切れているのは,NVIDIAの公式資料がそうなっているため。以下も全部左右が切れているのでご容赦を

 気になるのはGPU 1基当たりのスペックだが,GeForce 9800 GX2 GPUは65nmプロセスで製造され,搭載する汎用シェーダユニット「Streaming Processor」(以下,SP)数は128基。トランジスタ数は7億5400万だ。GPUの3Dエンジン部はGeForce 8800 GTX/Ultraとほぼ同じで,DirectX 10/プログラマブルシェーダ4.0(Shader Model 4.0,以下SM4.0)への対応に留まる。
 ……NVIDIAから公式のコメントは出ていないが,この基本仕様は2007年12月に発表された「GeForce 8800 GTS 512」とまったく同じ。GeForce 8800 GTS 512は,128基のSPを搭載する“フルスペック版G92”として注目を集めたが,GeForce 9800 GX2は,GeForce 8800 GTS 512相当のG92チップを2基利用して,SP総数256基のデュアルダイグラフィックスカードに仕立て上げていると考えられる()。

 

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 GeForce 9800 GX2の論理ブロックダイアグラム

 

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基本スペック公式資料

 このことから,GPU 1基あたりのグラフィックスメモリバスはGeForce 8800 GTS 512や「GeForce 8800 GT」と同じ256bit幅となる。ただし「G92コアに搭載された,バスデータのロスレス圧縮技術により,実行帯域幅は(NVIDIAの)これまでの256bitバス幅製品と比べて向上している」とNVIDIAは主張する。
 コアクロックは600MHzで,SPの動作クロック(シェーダクロック)は1.5GHzとなるが,こちらはGeForce 8800 GTとまったく同じ。グラフィックスメモリ容量は1GPU当たり512MBで,カード全体では1GB(512MB×2)搭載する計算だ。メモリチップはGDDR3 SDRAMで,動作クロックは2GHz相当(実クロック1GHz)。グラフィックスメモリクロックはGeForce 8800 GTS 512よりも60MHz高く,ウルトラハイエンドモデルとしての面目を保った格好となる()。

 

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※ 1GPU当たり

 

 カードは2スロット仕様で,接続インタフェースはPCI Express 2.0。カード長は267mm(※突起部除く)で,全体が箱のような構造ですっぽりと覆われ,基本的に基板はPCI Expressインタフェース部分しか見えない。NVIDIAが公開するイメージ図によれば,2枚のカードが冷却ユニットを挟み込むような構造になっているようだ。

 

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NVIDIAが公開したGeForce 9800 GX2の構造図

 

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6+8ピン電源コネクタの隣に,2ピンのデジタルサウンド入力コネクタを用意するGeForce 9800 GX2。HDMI出力時はサウンド出力にも対応する

 外部インタフェースはデジタル/アナログRGB(DVI-I)×2,デジタルYCbCr&RGB(HDMI)×1をサポート。ただし,単体でNVIDIA SLI(以下,SLI)動作することになる関係上,NVIDIAコントロールパネルから「マルチGPUパフォーマンスモード」(※SLI動作モード)を選択すると,1ディスプレイ接続となる。「マルチディスプレイモード」の選択時に同時出力可能なのは2画面だ。
 電源供給は8ピンと6ピンの二段構えで,両方に電源を供給しないと動作しない。公称消費電力は,ハイエンドビデオカードらしく約197Wとのことで,なかなかの“大食漢”ぶりである。

 なお,用意されるSLIブリッジコネクタは一つで,GeForce 9800 GX2を2枚同時に利用することによるQuad SLI動作がサポートされる(が,発表時点でドライバは用意されていない)。対応チップセットはnForce 680/780/790シリーズとなる。

 

 

Hybrid SLI技術に対応PureVideo HDは新世代バージョンを搭載

 

 GeForce 9800 GX2は,AMDプラットフォーム向けグラフィックス機能統合型チップセット「nForce 700a」シリーズで利用可能な「Hybrid SLI」技術にも対応する。

 

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GeForce 9800 GX2はGeForce Boostにも対応するが,実際に活用される局面は少ないはず

 Hybrid SLI技術は「Hybrid Power」と「GeForce Boost」の二つの技術からなるが,GeForce 9800 GX2はこの両方に対応する。Hybrid SLIについては2008年1月7日の記事で紹介済みだが,ここでも簡単におさらいしておこう。
 Hybrid Powerは,そのシステムで動作させたアプリケーションが3Dグラフィックスを積極活用していた場合に限って単体グラフィックスカードを活用し,そうでないときはチップセットに統合されたグラフィックス機能(=グラフィックスコア)を活用することで,消費電力を抑えるもの。一方のGeForce Boostは,単体グラフィックスカードとチップセット統合型のグラフィックス機能が協調して3Dグラフィックスをレンダリングするものだ。

 もっとも,GeForce Boostについては「GeForce 9800 GX2も対応はしている」といったところで,GeForce 9800 GX2とnForce 700aシリーズのグラフィックス機能――「GeForce 8200」と名づけられている――とでは性能格差がありすぎるため,実際に活用されることはあまり想定されていない。事前説明会での動作デモもHybrid Powerのみに留まっていた。

 

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Hybrid SLIでパフォーマンス重視モードに変更すると,チップセットに統合されたグラフィックス機能がキャンセルされ,GeForce 9800 GX2が活用される。3Dデモ動作時におけるシステム全体の消費電力は253Wに

 

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Hybrid SLIを消費電力重視モードへと移行。今度はチップセット側のグラフィックス機能が利用され,GeForce 9800 GX2への電力供給がカットされる。消費電力は102Wへと降下した

 

 

 PureVideo HDのフィーチャーは,GeForce 9600 GTと同等のものがサポートされ,H.264やVC-1といった高解像度ビデオ(≒Blu-rayやHD DVD)映像のデコードに対応している。このあたりは2008年2月8日の記事に詳しいので,興味のある人は参考にしてほしい。

 

 

 

“GeForce 8800 Ultraの1.5倍”がターゲットQuad SLIでは4-way AFRのみのサポートに特化

 

 GeForce 9800 GX2の最大性能はSLI最適化が成された3Dアプリケーションでのみ発揮されるが,NVIDIA公表のデータでは,GeForce 8800 Ultra比で1.5倍程度のパフォーマンスが期待されるようだ。

 

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GeForce 9800 GX2に関するNVIDIAの公称性能データ

 先ほど述べたQuad SLI動作時は,「4-way AFR」(AFR:Alternate Frame Rendering)にのみ対応するよう,ドライバの動作モードが変更されたという。

 GeForce 7900/7950 GX2時代のQuad SLIは,4-way AFRのほか,単一フレームを4基のGPUでレンダリングする「4-way SFR」(SFR:Split Frame Rendering),そして1枚のGeForce 7900/7950 GX2カードが2-way SFR動作し,もう1枚のカードが次のフレームを2-way SFR処理するという「AFR of SFR」をサポートしていた(※詳細は筆者連載のバックナンバー「マルチチップソリューション『Quad SLI』の詳細」を参照)。GeForce 9800 GX2では,これらをあえて非サポートとしたわけだ。

 

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GeForce 9800 GX2のQuad SLI動作時は,4-way AFRモードのみが正式サポートされる

 

 

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GeForce 9800 GX2のQuad SLI動作時は,2-way SLI(=シングルカード)時と比べて1.5〜1.8倍のパフォーマンスを得られるいう

 そもそもSFRモードは,非SLI対応ソフトへの“簡易SLI対応モード”として用意されていたモノだった。NVIDIAとしては,SLIがそれなりに市民権を得て認知が進んだ今,AFR of SFRモードを表向きは幕引きとすることによって,SLIパフォーマンスが最大発揮されるAFRモードに一本化したいということなのだろう。
 NVIDIAによれば,Quad SLI時の4-way AFRにより,カード1枚時(=2-way AFR時)の1.5〜1.8倍のパフォーマンスが期待できるとのこと。つまり,GeForce 8800 Ultra比では約2.25倍(=1.5×1.5)以上ということになる。
 2008年3月時点でGeForce 8800 Ultraの流通量は極端に少なくなっているが,価格はおよそ9万円程度。想定売価が599〜649ドルで,予想実売価格8万円台後半と目されるGeForce 9800 GX2が,ほぼ同じ価格で2倍以上のパフォーマンスを叩き出せるのであれば,コストパフォーマンス度外視のウルトラハイエンド市場という観点において,なんとか納得できなくもないモデルラインナップにはなっていると思う。

 

 

“まとめ〜ハイエンドGPUはマルチダイ時代へ突入する

 

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GeForce 9800 GX2の分解図を別の角度から

 2008年1月28日に発表されたAMDのハイエンドモデル「ATI Radeon HD 3870 X2」も,GPUを2基搭載したソリューションだ。NVIDIAのGeForce 9800 GX2は,この動きに呼応したものといえそうだが,2社が揃ってデュアルダイ構成を採ってきたことは,今後のグラフィックスカード(≒GPU)の動向を示唆する,重要な出来事だといえる。

 もともとハイエンドGPUは,膨大な数のトランジスタを内包するビッグチップであり,はっきりいって歩留まりが良くなかった。にもかかわらず,民生(=エンドユーザー)用として現実的な価格で売ることを余儀なくされていたために利幅も小さく,(一般ユーザーが考えるほどには)“おいしい商売”ではなかったのだ。
 NVIDIAやAMDは,そのハイエンドGPUを,数段上の価格設定で“ワークステーション向けのOpenGL対応GPU”や“GPGPU向けベクトル演算プロセッシングカード”としても販売してきているが,そもそもこれら特殊市場は大きくない。しかし,ハイエンドGPUは技術力誇示のためのイメージリーダー的存在となっているため,退くに退けないという事情もあった。

 そういった経緯を踏まえて,NVIDIAとAMDがいずれもハイエンドに2GPU仕様のラインナップを据えたのは,“1ビッグチップ設計”が技術的限界に来た……というよりむしろ「商売として成り立つ限界点に到達してしまった」ということなのだろう。両社はいずれも「G92」「RV670」といった,エントリーハイエンドともミドルハイともいえる単一デザインのGPUを開発し,そのスペックを変更することで広範囲なラインナップで売りさばく腹に切り替えてきたのだ。
 2008年以降,グラフィックスカードのハイエンド,とくにウルトラハイエンドモデルは,しばらくの間,マルチダイデザインが主流になると見込まれる。

 

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