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ボードゲームの教育的な価値を戦略的に普及させてきた企業・すごろくやが社会貢献賞を受賞。「第18回FOST賞授賞式」レポート
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FOSTは,シミュレーションやゲーミングといった技術の利用を,社会や文化の中で促進させる研究課題への助成事業と,その成果を広く還元する普及啓発事業を活動の柱とする財団である。
会場では2024年度にFOSTが支援・助成した研究の中から,最も優れたものを表彰する第18回FOST賞をはじめ,若手研究者を対象とする第12回FOST新人賞,ゲームの研究・開発・応用に関連して社会貢献した人物,または人材を対象とするFOST社会貢献賞が発表された。
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第18回FOST賞に選出されたのは,立命館大学 政策科学部 准教授 豊田祐輔氏による,「地域知と若者知の融合による事前復旧・復興思想策定手法としてのゲーミング・シミュレーションの有効性に関する研究」だ。
この研究は,地域防災にあまり参加しない若者が,復旧・復興の地域知に焦点を当てたゲーミング・シミュレーションに参加し,ほかの地域の地域知を獲得して洪水被災後の復旧・復興構想を彼ら自身で提案するという,実践的災害マネジメント学習手法の開発を目指した内容である。
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豊田氏は,この研究を大きく2段階に分けて進めたとし,まず「独自のゲーミフィケーションを開発し,地域知を収集」して,「収集した地域知をゲーミング・シミュレーションに入れ込んで,災害時の仮想体験を可能にした」と説明する。
またゲーミング・シミュレーションを使った研究は,「なぜこの費用が研究に必要なのか」を財団などに説明するべく資料を揃えなければならないことも多いそうだが,FOSTは理解が早く,スムーズかつ集中して研究を進められたと話していた。
第12回FOST新人賞に選出されたのは,明治大学大学院 情報コミュニケーション研究科 大塩浩平氏による,「リーガル・マインド養成ゲームの制作手法と調査 -合法的なルール・メイカーを目指すDX時代の新たな法教育の土台づくりに向けて-」だ。
この研究は,選挙権や裁判員制度の対象年齢引き下げに伴い,若年層が法律の適用に必要とされる思考方法である「リーガル・マインド」を習得する必要性が高まっていることを踏まえたものだ。
DXの進展を背景に法教育プログラムであるDRAAW+Cフレームワークを活用した「リーガル・マインド養成ゲーム」を開発し,その学習・教育効果を評価している。
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大塩氏は,自身が修士課程時代にリーガル・マインドについて学ぶことが多かったそうで,自分でもこの思考方法の普及に貢献するべく,今回はゲームという切り口からアプローチしたという。
研究を進める過程では「あまりゲームっぽくない」といった厳しい指摘も受けたが,教育関係者や弁護士など法律の実務家の協力を得て,会話パートに生成AIを使いインタラクティブにするといった改善を施していったとのこと。
まだゲームの開発は継続しているが,今後は論文や研究成果の発表をしていくと意気込みを見せた。
FOST社会貢献賞に選出されたのは,ボードゲームを専門に扱う企業・すごろくやだ。すごろくやは2006年に創業し,現在は東京都内でボードゲームショップ2店舗を運営,自社製品の企画制作,海外製ゲームの国内向けローカライズ,全国小売店への卸流通事業,イベント運営,そして講座・研修の開催など,ボードゲームに関する事業を包括的に行っている。
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受賞の理由としては,愛好家の趣味的なものと捉えられてきたボードゲームを,「親子で体験できる知的な存在で,子どもの知性の健全な発達に必要なものとして,戦略的に普及させていること」「講習会などを開催し,ボードゲームの教育的な価値を積極的に社会へと訴えてきたこと」の2つが挙げられた。
またドイツのゲーム企業・HAVAの製品を日本に紹介したという点も評価されているという。
すごろくや 代表取締役 丸田康司氏は,自身がかつて「MOTHER2 ギーグの逆襲」や「風来のシレン」シリーズの開発に携わっていたことを紹介。
やがて,ゲーム開発者がボードゲームの知識を得ることにより,ビデオゲームのクオリティ向上につながるのではないかと考えるようになり,すごろくやを設立したと語った。
また社内では,常々「仕事とは社会貢献である」と説いているとのことで,今回の受賞は非常に光栄であり,今後もあらゆる世代に向けてボードゲームに関する活動をしていくと展望を語っていた。
公益財団法人 科学技術融合振興財団 公式サイト
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