2024年10月11日,マーベラスが主催するインディーゲームインキュベーションプログラム
「iGi indie Game incubator」(以下,iGi)は,プレゼンテーションイベント
「2024 Demo Day」(デモデイ)を開催した。
iGiはスペインのバルセロナで運営されているインキュベーションプログラム「Game BCN」の成功事例に基づいて行われている産学官連携プログラムだ。神戸市や神戸電子専門学校,大阪電気通信大学などが参画しており,プログラムも日本向けにカルチャライズされている。
iGiのDemo Dayは,30社を超える国内外のパブリッシャやゲーム関連企業に向けて,プログラム第4期生として採択された6チームが開発タイトルのプレゼンテーションを行うものだ。
プログラム期間中,各チームは約400時間におよぶ国内外の専門家によるメンタリングを受けており,それぞれのタイトルはより魅力的に進化を遂げている。なお,第4期生はこのDemo Dayをもって,プログラムを卒業となる。
iGiのプログラムマネージャーを務めるマーベラスの
知念さおり氏は,イベントの冒頭で,第3期生のコタケクリエイトが開発した
「8番出口」のセールスが100万本を超えたことなどを例に出し,同プログラムの活動が実を結び,卒業生が活躍している状況は嬉しいと語った。
知念さおり氏
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会場には,iGi卒業生が同プログラムの支援を受けて開発したタイトルや,新作などもプレイアブル出展されていた
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2024年の実績として,BitSummit Driftおよび東京ゲームショウ2024のiGiブースには,約1.3万人が訪れたことや,iGiの卒業生コミュニティが活発に活動していることなどが紹介された
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後述する6チームによるプレゼンのあとには,iGiのアドバイザーであるルーディムス代表の
佐藤 翔氏が登壇した。佐藤氏は今回のDemo Dayにはアジア諸国から参加したパブリッシャが増えたこと,政府機関や教育機関,業界団体などからの参加者が多数来場したことから,過去最大の参加者数となったことを明かす。また,経済産業省主催の次期クリエイター育成事業「創風」が2024年よりスタートしたことにも触れ,iGiの活動が着実に根付いていることを紹介した。
佐藤 翔氏
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iGiは,創風のゲーム部門のプログラム運営を行っている
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佐藤氏は第4期生に向けて,「それぞれのゲーム作りはこれからであり,iGiのサポートも終わりではない」と呼びかける。すなわち今後は,iGiの卒業生として,お互い交流したり,協力したりできるというわけである。
またゲームクリエイターは,パブリッシャや投資家と対等な関係であり,大企業であろうが資産家であろうが,堂々と交渉してほしいとし,「皆さんのゲームをどんな形で世に送り出すかを決めるは,皆さん自身であることを絶対に忘れないでください」と語った。
さらに参加者や卒業生の活躍により,iGiの支援したゲームを知っている人が世界中の国や地域に存在する状況になっていることも語られた。佐藤氏は,「海外のメディアでも取り上げられており,iGiの存在感が日本だけでなく世界において増している」と述べていた。
第4期生によるプレゼンテーションタイトルを紹介
ここからはプログラム第4期生6チームによるプレゼンテーションの内容を紹介しよう。
●プレゼンテーションタイトル
●黒ニ狂 -Summoner of Greats-」<lidlocks>
lidlocksの
「黒ニ狂」(クロニクル)は,歴史上の偉人を召喚して戦うカジュアルストラテジーゲームだ。lidlocksの
熊沢新之助氏によると,本作は歴史好きだという氏自身の「ナポレオンと信長は,どちらが強いか」という妄想から開発がスタートしたという。
熊沢新之助氏
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lidlocksのメンバー紹介
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本作の具体的な内容は,歴史上の偉人を召喚し,拠点を奪い合うタワーオフェンスタイプのRTSだ。熊沢氏は,一般的なストラテジーには「難しそう」「時間がかかる」「とっつきにくい」といったイメージがあり,どちらかといえばコアゲーマーが好むジャンルであると説明する。そこで,誰でも楽しめるカジュアルなストラテジーゲームとして作っているのが本作だという。
本作の特徴は3つあり,1つめは
「ユニークな偉人デザイン」だ。本作には200人以上におよぶ,74の国と地域の偉人たちが登場し,それぞれ史実上の行動に沿ったキャラクターデザインと解説が施されているという。
会場では,えんどう豆の交配実験により遺伝子を発見したメンデルのキャラクターが紹介された
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2つめの特徴は,
「カジュアル・シンプル」だ。1回のバトルは3分で決着するが,その短い時間にストラテジーの楽しさが凝縮されており,初心者から上級者まで多彩な戦術を楽しめるという。なお本作は現在シングルプレイ用として開発されているが,将来的にはプレイヤー同士の対戦モードの導入も視野に入れていると明かされた。
本作のバトルにおいて重要なのは,「キャラクターの選択」と「召喚するタイミング」の2つだけで,詰め将棋のようにシンプルで奥深いという
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3つめの特徴は
「ストーリー」で,本作は「偉人の肖像画」をテーマにした独自色の強いファンタジーとなっている。美しいイラストとアニメーションにより,歴史に詳しくなくとも世界に没入できるそうだ。
●「Indomitable Blade」<NanbuWorks>
NanbuWorksの
「Indomitable Blade」(インドミタブルブレード)は,ダークファンタジーの世界をベースにしたローグライクシミュレーションRPGだ。
南部休み氏
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NanbuWorksの
南部休み氏はシミュレーションRPGの大ファンで,深い世界設定と没入感の中で,ゲーム的にもモチベーションを持って長く遊べるタイトルがほしいと思い,本作を開発している。
NanbuWorksのメンバー紹介
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南部氏は,昨今のシミュレーションRPGの大きな潮流が,「重厚な物語を持つもの」と「ローグライクをセールスポイントにしたもの」の2つになっていることを指摘する。そこで「Indomitable Blade」は両者の魅力を融合し,
リッチなナラティブを備えつつ,ローグライクのリプレイ性を併せ持つタイトルにしようと考えたそうだ。
本作は北欧風の中世ファンタジー世界が舞台。主人公たちはその世界に住む1つの民族で,ある出来事をきっかけに大国と戦争をすることになる。
ストーリーでは,民族の文化を捨てて大国に取り込まれるのか,それとも民族のアイデンティティを優先して滅ぶのかという選択を描き,価値観が目まぐるしく変化する現代に訴求することを目指すそうだ。
また本作のバトルでは,通常攻撃によって相手キャラクターの体力ではなく,攻撃力や守備力,意志力や素早さといった各種のパラメータを削っていくことが紹介された。
たとえば,守りが堅い相手に対しては守備力を削る,厄介なスキルを持つ相手は意志力を削って1ターン休みにする,といったように局面に応じた戦術を組み立てることが求められるのだ。
一方ローグライクの部分では,プレイごとにストーリーの展開や仲間が変化する。1マップごとのプレイは10〜15分,1周あたり40マップ前後の攻略が必要となり,プレイ時間は合計8〜10時間におよぶという。またローグライクなので,仲間が全滅したら当然最初からやり直しとなるが,それはマップ単位で行われることも示された。
なお本作は,東京ゲームショウ2024にも出展されており,「ファイナルファンタジータクティクス」や「タクティクスオウガ」など往年の名作シミュレーションRPGを手がけた松野泰己氏が「完成が楽しみ」と感想を述べたというエピソードも披露された。
●「MotionRec」<HANDSUM>
HANDSUMの
「MotionRec」(モーションレック)は,自分の動きの軌跡を記録・再生することでステージを進むレコードパズルアクションだ。
HANDSUMの
Shoma氏によると,本作ではプレイヤーの操作する
キャラクターの動きを記録し,任意の場所でそれを再生してゲームを進めていく。
たとえば,高い場所に登りたいが,足場がないとしよう。その場合は,あらかじめリフトに乗って高い場所に登る動きを記録してから再び登りたい場所に行き,その記録を再生する。そうすると,足場がなくとも目指す場所に登れるというわけである。
Shoma氏
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HANDSUMのメンバー紹介
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開発当初は,このゲームメカニクスが伝わりにくいという課題があったそうだが,カセットテープをモチーフにすることで多くの人に理解されたという。
また操作をシンプルにして,とくに[L1]ボタンを「記録」,[R1]ボタンを「再生」に配置したことにより,カセットプレイヤーを操作しているような遊びを実現したことも紹介された。
本作はゲームのメカニクスに加え,ピクセルアートやチップチューンミュージックも評価されており,すでに多数のメディアで取り上げられていることや,BitSummit Driftではゲームデザイン最優秀賞にノミネートされたことも紹介された。また,イベントに出展すると子どもたちに人気であることなども示された。
●「nerd: tracing dayline」<Evan>
個人ゲーム開発者・
Evan氏の
「nerd: tracing dayline」(ナード:トラッキング デイライン)は,
「1曲のためのゲームを」というコンセプトをもとに制作されたアドベンチャーゲームだ。
Evan氏
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たとえば,ゲームのエンディングで主題歌が流れるとき,プレイヤーは多くの場合,歌詞や楽曲の盛り上がりにゲームのストーリーを重ねるだろう。その体験は,普通に聴くよりも,高い解像度でその主題歌を理解することになる。
本作では,歌詞にストーリーを重ねるだけでなく,メロディをBGMに,楽器を効果音に,目に入る画面構成を演出に,といった形で主題歌に関するあらゆる要素をゲームに重ねていき,初見のプレイヤーにもさらに高い解像度で楽曲を聴かせるという。これがコンセプトである「1曲のためのゲームを」につながるというわけだ。
本作の主人公は,転校生の女の子である。彼女は人と接することが苦手だが,友達を作るため,会話をするための話題や選択肢を集めて,クラスメイトとの交流を重ねていく。
教室で相手が学級日誌を書いているのを待つあいだ,学校からの帰り道,海岸線を臨む街といった環境の中で,プレイヤーは彼女が何を思い描くのかを選択していき,それが主題歌の流れるエンディングのミュージックビデオとして結実する。
●「Reso-Seeker」<R太ゲームス>
R太ゲームスの
「Reso-Seeker」(リゾシーカー)は,プールやホテルといったリゾートを舞台とする探索アクションだ。
いわゆるメトロイドヴァニアと呼ばれるジャンルのゲームは世界設定が,「暗い」「シリアス」「怖い」といったものが多い。しかし,R太ゲームスの
R-ta氏はそれを明るくできないかと考え,舞台をリゾートに設定した。また,R-ta氏が幼いころにリゾートに赴いたとき,ホテルや周辺施設を探索した経験も企画のベースにあるのだという。
R-ta氏
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本作では,リゾート内にあるホテルやフードコーナーなどのエリアを探索し,謎解きをして仲間やスキルを獲得し,ボスを倒すと新しいエリアに行けるようになる。それを繰り返して最後のボスを倒すと,めでたくエンディングとなる。ほかにも隠し部屋やお土産集め,仲間との交流イベントといった寄り道要素が存在する。
本作の大きな特徴は,
現実世界に近いリゾートで旅行気分が楽しめることだ。会場では,主人公がホテルの部屋からスタートしてエレベーターでロビーやアトリウムへ移動し,次いで水の仕掛けがあるプールエリアへ向かうことが示された。
そのほか特徴として,リゾートならではアクティビティを楽しめるサブイベントの豊富さ,ポップで精巧な手描きアニメーション,驚きとコメディの連続で飽きさせないストーリーが紹介された。
●【産学官連携 / 特別枠】「SHADOW LEAP」<Leapers(神戸電子専門学校)>
Leapers(神戸電子専門学校)の
「SHADOW LEAP」(シャドウ リープ)は,夜の世界で影を操る力を持つ主人公を操作し,爽快なアクションや自身の影分身との共闘を駆使して敵を倒していくアクションゲームだ。
Leapersの
阿部晃大氏によると,本作のコンセプトは「シャドウクローンアクション」。具体的には「NieR: Automata」のようなコンボや回避を用いた激しいバトル,「GHOST RUNNER」のようなスピーディーな移動,「HADES」のローグライク要素を融合させることを目指したそうだ。
阿部晃大氏
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Leapersの紹介
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本作の大きな特徴は,
影分身と共闘できることにある。たとえば影分身と位置を入れ替えて異なる敵を攻撃したり,影分身に敵を空中に打ち上げさせたりすることで,バトルを有利に進められる。
また移動が楽しいことも特徴として挙げられた。本作ではバトルパートと移動パートが分かれており,簡単な操作でマップを爽快に駆け回れるという。
そして,近未来と日本を掛け合わせた独特の世界も特徴的だ。日の昇らない常夜の世界は,サイバーパンクと昔ながらの日本の要素が融合しており,ゲームへの没入感を高めている。