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印刷2024/08/23 20:39

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これからブロックチェーンゲームを開発する人へ。「モバイルゲーム領域にブロックチェーン技術を導入する為の実践的ノウハウ」レポート[CEDEC 2024]

 2024年8月22日,ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」にて,オカキチの伊藤真彦氏によるセッション「モバイルゲーム領域にブロックチェーン技術を導入する為の実践的ノウハウ」が行われた。

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 本セッションは,ブロックチェーンゲームプラットフォーム「KUSOGeeeeee」の構築にあたって伊藤氏が得た知見を共有するというものだ。ブロックチェーンとは何か,ゲーム市場にどのような影響をもたらすのか,といった概要から,ブロックチェーンゲームの最前線,未来についてまで,技術者/サービス責任者それぞれの目線から語られた。
 なお,発表の内容はあくまで調査当時の伊藤氏の個人的な見解であり,主催であるCESA(コンピュータエンターテインメント協会)の法的見解を示すものではないとのことだ。

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 伊藤氏によると,ブロックチェーンはその存在意義,メリットが難解であり,とりあえず使えば新しいものが産まれるという,夢の技術ではないそうだ。
それを理解せずにプロジェクトを始動してしまうと,悲惨な結果になってしまう可能性が非常に高く,今回はそれを伝えるためにセッションを開いたと言っても過言ではという。

 そもそもブロックチェーンとは,正体不明の人物(もしくは団体)であるサトシナカモトにより発明された,暗号技術を駆使した台帳システムだ。データベースとも言えるが,書き込みしかできないという点で,台帳と呼ぶほうが直感的だという。
 サトシナカモトは銀行のシステムに不満を持っており,金融機関を介さず,直接インターネット上でお金のやり取りができないかと考えた。しかしそれでは誰かが不正をした場合,それを検証することができない。そこでサトシナカモトは「ビットコイン:P2P電子通貨システム」という論文を公開した。これにより,P2Pネットワーク上に改ざん防止のため暗号化したデータを保存する形式“ブロックチェーン”と,それを利用した暗号通貨「ビットコイン」が誕生した。

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 ビットコインは,そのネットワーク上に参加することで,いつでも誰でも運営に協力が可能だ。運営を手伝った人には報酬として仮想通貨が支払われるので,お互いにデータのチェックをし合うコンピュータが勝手に増えていくという構想になっている。この「ビットコインの運営を手伝う」というのがいわゆる「マイニング」と呼ばれるものだ。なお,そのマイニングの報酬は,ビットコインを送金する際の手数料(ガス代)から支払われている。

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 その後,ビットコインがうまく機能したことにより,ブロックチェーンの応用例が登場する。その代表が,ビットコインの開発を手伝っていたヴィタリック・ブテリン氏が考案した「NFT」だという。NFTは,ブロックチェーンで管理するデータにIDを採番することで,お金以外のもの(コンサートのチケットや製品の保証書など)も管理できる仕組みだ。誤解されやすい点として,NFTはあくまで所有権を管理するものであり,データそのものの複製や改ざんは検知できない。

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 こうした応用例は「ワールドコンピュータ構想」と呼ばれ,これまで自社サーバーやクラウドインフラなどで会社がサーバーを維持していたものを,ブロックチェーン上にロジックを構築し,インフラ代はガス代として利用者が支払う仕組みにすれば,新しいサービスを展開できるのではないかと考えられている。ブテリン氏はこれを「Web3」と呼んでいる。
 ただし,現在の技術ではブロックチェーンの処理能力は現行のサーバーに比べて圧倒的に遅く,技術的に可能ではあるものの,まだ時代が追いついていないと伊藤氏は語る。

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 続いて,ここまでの話をふまえ,話題はブロックチェーンとゲームデザインの関係に移っていく。
 伊藤氏によると,こうしたブロックチェーンの技術を利用してゲームをデザインすることに,ほかの技術で実現できない何かがあるのかというと……とくにないという。

 仮想通貨はゲーム内通貨と違いはないし,誰がどんなキャラ/アイテムを持っているかは,これまでのシステムで充分管理できていたため,データの保存,管理という視点では,ブロックチェーンを使うことによる新しい技術は何もないそうだ。これは,オカキチが運営するNFTマーケットも例外ではなく,究極的にはブロックチェーンを使わずに運営できるとのこと。

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 ではなぜブロックチェーンを採用するのかというと,「データの所有権を売買すること」が,文化として受容されたことに価値があるからだ。ゲームで言えば「リアルマネートレードが形を変え,公式に許される手段として生まれ変わった」と考えられる。
 そのため,価値の所有と譲渡をコンセプトとしたゲームとの親和性が高く,何らかのモチーフをNFTとし,売買を楽しむため,価値あるものが何で,なぜ価値が生まれるか,誰がそれを買うのかを,創造,設計することが求められる。

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 また,こうした文化は,ゲームにおける「Play to Earn」と,「トークノミクス」という概念を作り出した。Play to Earnとは,需要と供給がないと成立しないNFTの売買に,仮想通貨を介することで「1人でもくもくと遊ぶだけでも稼げる」という仕組みを構築すること。トークノミクスとは,その仕組みを持続させるためのエコサイクルを考えることだ。傾向として,トークノミクスを採用するブロックチェーンゲームの多くは,初期投資として数万円のNFTを購入しないと遊べないものが多いという。しかしそういったゲームはスタートするまでの心理的ハードルが非常に高く,新規ユーザーが増え続けるというのは,希望的観測に則った仕組みだ。

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 さらに問題なのが,多くのユーザーはゲームを遊ぶのではなく,ゲームが話題になる前にコインを購入しておき,ゲームの認知度が高まったところで利確するという動きを行うため,リリース日直前に高騰し,リリースとともに暴落するという事態になりがちだという。

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 もちろんそういった事態を回避するため,利確,長期保存を目的とするガバナンストークンと,ゲーム内の活動を目的とするユーティリティトークンの2種類を用意する「デュアルトークミクス」という設計も検討されている。それでもなお「利益を確定する目的でトークンが売却される」という前提がある以上,トークン価格は常に下落に向かう圧がかかることになる。
 こうして「儲かるので面白くなくてもユーザーが集まる」というコンセプトのゲームは「儲からないし面白くないゲーム」になり,損切りからの離脱が起きてしまう。

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 伊藤氏は,現状のオカキチではこれを設計,制御するのは不可能だと判断し,リアルマネートレード再発明の側面にフォーカスすることにしたのだという。

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 ここで話題はブロックチェーンゲームの歴史へと移った。最初のブロックチェーンゲームは,2017年にリリースされた「Crypt Kitties」で,ゲームというよりもマーケットのUIに近い,シンプルなタイトルだ。翌年の2018年には,独自トークンによるトークノミクスを備えた「Axie Infinity」が登場する。東南アジアを中心に爆発的なヒットを記録し,Axieクローンと評価できるタイトルも多数リリースされた。
 そして2021年に,歩いてトークンを稼ぐ“Move to Earn”という概念を生み出した「STEPN」がリリースされ大ヒット。Axieと並び黎明期の主役として語られているという。

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 その後,無数のWeb3,ブロックチェーンゲームがリリースされ,近年ではリッチなグラフィックスを持つコンシューマゲーム寄りの作品も登場し,そういった中にはゲームで勝つことでトークンを稼げる“Win to Earn”が採用されることもあるそうだ。

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 こういった流れは日本国内でも当然見られ,Axie Infinityのイラストを国内で売れそうなものにしたり,STEPNのトークノミクスを採用し,ゲームは限界までシンプルにしたりと,さまざまな試みが行われた。
 中でも,サービス終了タイトルをブロックチェーンゲームとして焼き直す動きが多く見られるという。これはゲームにふれる前から数万円の投資を要求する仕組みを考えると,すでにファンがいるIPを使用するのは妥当な判断とも言える。しかし,やるからにはファンががっかりしない形にすることが望ましいと伊藤氏は述べる。もちろん新規IPの立ち上げも少なからずあり,オカキチが運営する「ちゃんごくし!」シリーズもその1つだ。

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 そんななか韓国から,リアルマネートレードがもっとも生きるジャンルであるMMOPRGを主体としたブロックチェーンゲームが日本へ上陸予定であるという。そもそも中国や韓国はMMORPGの開発力が高いということもあり,「遊ぶだけで儲かる」というだけの低予算タイトルは一瞬で終わるかもしれない,と伊藤氏は危惧していると語る。

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 最後に,いざブロックチェーンゲームをリリースしようとする際の注意点がいくつか紹介された。
 まず,仮想通貨,NFTに関する法整備はまだまだ進行中であり,ビジネスモデルが固まった段階で,法律面に問題がないか,仮想通貨に詳しい弁護士へ相談したほうがいいという。とはいえ,現在日本の政策はWeb3,ブロックチェーンを活用した取り組みに対して推進寄りの思考であり,海外で実現できるビジネスモデルが,日本で実現できないということは現状確認していないそうだ。ただ,自社の業務が,国への事業申請が必要になる「暗号資産交換業」「資金移動業」に該当しないように気をつけることは重要だという。

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 このほか,AppleやGoogleの審査についても触れられた。現状iOS,Androidにおいて,仮想通貨,NFTに関わるアプリがリリースできる前提で規約が改正され,とくにAppleは明示的かつ厳しい内容になっているという。また,CESA,JOGA,MCF3団体が協力して「ブロックチェーンゲームに関するガイドライン」を刊行しているそうだ。これには伊藤氏が述べた内容を含め,かなり詳細に記載されているので,社内で読み合わせするべきだという。

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 また,技術的な問題として,ブロックチェーン上の処理は,受理されるまで早くても数分単位,長ければ1時間や2時間ほどのラグがあり,さらにそこそこの頻度で正常に処理されないこともあるそうだ。そのため,NFTや仮想通貨を管理するサービスは,異常系に対して過剰なレベルでケアが必要だと注意を促した。

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