プレイレポート
[GDC 2024]NVIDIAやMicrosoftも協力を仰ぐキャラクター会話生成型AIシステム「Inworld」の最新デモ「The Quinn Ambassador」をテストしてみた
Inworld公式サイト
Inworldは,700万ドル規模のシード資金を調達して,2021年にカリフォルニア州マウンテンビューで設立されたAIソリューションメーカーで,「ゲームキャラクターの脳」を目指したミドルウェアの開発を行っている。GDC 2024期間中には,Ubisoft Entertainmentが,Inworldの技術を利用した「Neo NPC」を発表しており(関連記事),NVIDIAの「Covert Protocol」やMicrosoftの「Narrative Graph」にも協力し,Antler InteractiveのアクションRPG「Cloudborn」や,USDOGが開発するVRアドベンチャー「Area One」などのインディーゲームにも使われ,Inworldブースを賑わせていた。
つまり筆者個人にとって今回の「The Quinn Ambassador」との対話は,前回の屈辱に対するリベンジといったところになる。
「The Quinn Ambassador」は,クインとその友人が格闘ゲームと思しき対戦に熱中しているところにマイクで話しかけると,クインがリビングルームにある段ボールでできたようなスペースに入って話相手になってくれるという趣向だ。基本的な流れは,話しかけてきた人間が,ファンタジーゲーム好きの「ドラゴンスレイヤー」なのか,SFアクションが好きな「エイリアンシューター」なのかを判断するというものになっている。
ただ,まともに答えていても堂々めぐりをするだけであまり面白くない。本来なら,こちらの話に対して,その答えを生成するのがAIの能力であるはず。そこで,会話とは無関係に「マリオをプレイしたいです」と話しかけると,「マテオという天文学者については……」などと,すっとんきょうなことを言い始めた。
まさかマリオを知らないのか,それとも権利関係で答えをはぐらかしているのか,あるいは筆者の発音がひどかっただけなのか,この時点では判断しづらい。そこでテーマとはまったく関係なく「チキンナゲット」というキーワードを出してみると,今後は少しイラついた顔をして,「じゃあ,これからはあなたをキャプテン・チキンナゲットと呼ぶわね」などと,筆者を愚弄するようなことを言い始めたのだ。
やり取りを聞きながら隣で大笑いしていた参加者に「AIに馬鹿にされた最初の人間になったな」などと言われつつ,そそくさと逃げるようにデモを終えたが,確かに「Origins」よりも「The Quinn Ambassador」では会話のキャッチボールを続けられただけでなく,筆者からある種の感情を引き出すことに成功している。会話はどこか人間的だ。
すでにUnreal EngineやUnity向けのSDKも配布されている「Inworld」だが,今後,NVIDIAのメタヒューマンに感情が追加されたり,UbisoftのNPCたちがプレイヤーとリアルなやり取りを楽しんだりするようになるのだろうか。「脳を持ったゲームキャラクター」たちの将来の一端を垣間見たような気がする。
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