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「最先端技術は私たちの生活をどのように変えるか?」というテーマに,「WebX」で日本IBMとトヨタが語った現実的な未来像
ゲームやエンターテイメントと直接関係するセッションではないが,我々の「生活」にWeb3やブロックチェーンなどがどのような影響を及ぼしうるのか,それぞれの立場から興味深い話が語られていたので,ここで簡単に紹介しておきたい。
平山氏はまず,Web3の世界で重要なポイントとして「GoogleやAmazonといったベンダーが主導となってサービスを提供する時代から,いろいろな会社が複合してサービスを提供する形態に変わること」「ブロックチェーンを中心に,お金や著作権などに関するセキュリティ,コンプライアンスの管理ができるようになった」という2点を上げる。とくに「蓄積されたデータを誰がどこに格納し,改ざんされない形を保証するか」を,非中央集権的な形で実現できることが重要であると語った。
そのうえで,フードロス問題にも言及。ブロックチェーン技術を活用したダイナミックプライシングを導入することで,「匿名性を保ちつつ必要な情報だけを見て(価格)競争するといった形が実現できる」といった見解も示していた。
一方,間島氏はブロックチェーン技術について,トヨタが提供するMaaS(Mobility as a Service。「地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるもの(国土交通省)」)である「my route」での活用を念頭に置きつつも,「地域の移動を活性化し,その地域の経済をより良くすることを目指すうえで,あまり人が来てくれない,過疎に近い地域をいかに盛り上げるか。その地域を好きになって,その先に“人が動く”ということを重視したい」「Web3の技術でもそうじゃなくても,ユーザーにとってはあまり関係がないので,それを気にしないでいられる状態まで行けるといい」とコメント。また,個人の移動履歴をどのように管理するかといった課題を念頭に,「(現状では)Aという鉄道会社とBというバス会社,商業施設で何かのチケットを提供するような場合に,いくらずつ配分するかの精算が手間になる」として,「裏側の業務効率化」がブロックチェーン技術によりもたらされることに期待を寄せていた。
最後に竹田氏から,「エンターテイメント以外の分野でブロックチェーンが活用され,私達の生活が変わるのはいつ頃くらいだと考えているか?」と問われると,平山氏,間島氏は時期こそ明言しなかったものの,それぞれ「会計システムなどの基盤技術としてブロックチェーンが導入されることで,エコシステムやビジネスが展開されていく」(平山氏),「Web3みたいなことを気にせず,お客様にそうした技術を使ってもらえるよう,しっかりサービスを提供していきたい」(間島氏)と展望を語っていた。
両者共,「華々しい未来が近い将来に必ず訪れる!(ので,投資を!)」といったノリではなく,「既存の技術やサービスを少しずつ置き換えていくことで,やがて人々の生活が変わるかもしれないが,その背景にどんな技術が使われているかなどは別に気付かれなくてもいいんです」といった姿勢が印象に残るパネルディスカッションだった。
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