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データベースの拡充は,それ自体に価値がある――ボドゲ界のキーマン達が語りあった「アナログゲームミュージアム設立記念イベント」レポート
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印刷2023/05/26 14:30

イベント

データベースの拡充は,それ自体に価値がある――ボドゲ界のキーマン達が語りあった「アナログゲームミュージアム設立記念イベント」レポート

 2023年5月13日と14日に開催された「ゲームマーケット2023春」は,2日間で2万2000人を超える来場者を記録し,大盛況と共に幕を下ろした。筆者が初めて取材した2007年では,開始早々に1000人超えを達成する“快挙”が会場アナウンスで流れたと記憶しているから,それから15年で20倍以上になったというのは,まさしく快挙であろう。それだけアナログゲームの認知度が年々拡大し続けているということでもあり,発表される新作タイトルも今や膨大な数となっている。

 ここまで規模が大きくなれば,単にプレイして楽しむだけではなく,その収集・分類・保存も必要なのではないか――かような問題意識を1つの核として設立されたのが,一般社団法人アナログゲームミュージアム運営委員会(以下,AGM)だ。

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 本稿ではゲームマーケット2023春の2日目,5月14日に開催された,このAGMの設立記念イベントの模様をレポートする。イベントは3部構成となっており,設立の目的や資料の分類方法の紹介,さらには豪華ゲストを交えて今後の展望の議論も行われた。

アナログゲームミュージアム 公式サイト



第1部:アナログゲームミュージアム設立宣言


 第1部は,AGM代表理事の草場 純氏によるスピーチと,AGMの設立宣言が行われた。
 ゲームマーケットの創立者として知られる草場氏だが,とりわけ近年は,より広い層にアナログゲームが受け入れられるようになってきた実感があるという。ならば「次の夢」として,アナログゲームの文化的な価値を高めたいと思うようになったそうだ。

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 アナログゲームには遊び本来の“楽しさ”のほかにも,さまざまな楽しさがある。ゲーム会の楽しさ,戦略の楽しさ,分析の楽しさ,インスト(ゲームを教えること)の楽しさ,収集の楽しさ,語り合う楽しさ,創作の楽しさ,イベントの楽しさなどなど,挙げればキリがないだろう。
 こうした“楽しさ”を広げていく試みは,商業ベースで一定のカバーがなされているが,そのうえで草場氏は,より多面的かつ独自の「文化」としてのゲーム,という価値観を発信する拠点が必要だと感じたそうだ。
 ゲームの歴史を「文化」として専門に扱う遊戯史学会(1988〜2020年)にも草場氏は参画していたが,同会は中心メンバーであった増川宏一氏が亡くなる前年に解散しており,「文化」としてのゲームの歴史を研究する場は,今は限られている。

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 では,なぜミュージアムなのか? ゲームは「遊び」であるがゆえ,プレイする側もさほど重きを置かず,簡単に捨てられてしまうことが珍しくない。個人としてのコレクターは少なくないものの,当人が亡くなればコレクションは簡単に散逸してしまう。ベストセラーになったゲームも細かなバージョン違いは見過ごされがちだし,インディーゲームは容易に失われ,各地に伝わる“郷土のゲーム”は記録をせねば途絶えてしまう。こうした問題意識から,まずは数多あるゲームの収集・分類・保存が必要だろうと考えたそうだ。
 折しも草場氏は,神奈川・大磯にある一軒家を親族より相続したこともあり,これを使ってAGMが実現できないかと考えたという。ゲームはプレイして初めて,その真価が分かるもの。故にゆくゆくはゲームの貸出や珍しいゲームを体験する場を提供したいと考えているが,まずはその第一歩として,基礎研究の拠点が必要だ。

 すでにAGMでは,ゲームマーケット運営本部に提供された見本や個人のコレクションなど,2000点ほどの資料を受け入れ,これらの整理を開始している。また,「図書館総合展フォーラム2022 ボードゲーム目録作成ワークショップ」(於:近畿大学)のようなイベントも開催している。
 ところが専従の職員がいるわけではなく,有志での作業を手探りで進めている段階だ。故にアーカイブ構築に協力し,あるいは運営資金の一部として会費を支払う会員を,目下募集しているとのこと。年会費は4000円(会費はPixiv Fan Box経由で月額400円)。いわば「協力型ゲーム」に参加するつもりで会員になってほしい――草場氏はそう呼びかけ,AGMの設立を宣言した。

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第2部:アナログゲームミュージアムの活動と展望


 第2部は司会の井上奈智氏が,続く登壇者を紹介するところからスタートした。AGMでデータベース化作業(カタロギング)を担当しているWG(ワーキンググループ)の面々だ。

 まずSNSで「格闘系司書」を自称する高倉暁大氏が,「図書館におけるボードゲーム利用の実態とAGMの役割」を発表した。高倉氏はデジタルゲーム・テーブルトークRPG・ボードゲームなど,ゲーム全般の愛好家であると自身を紹介。その情熱から,図書館におけるゲーム利用をサポートしているという。また井上氏との共編著で「図書館とゲーム」という本を出している。

高倉暁大氏
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 高倉氏によれば,現状,全国では74館の図書館がアナログゲームを扱っている。これは単にボードゲームを所蔵しているだけでなく,実際にプレイできたり貸出しを行っていたりするところも少なくない。ところが,ひとえにアナログゲームといっても,さまざまな作品があるので,プレイ時間や人数,コンポーネントなどがはっきりしないと管理が難しい。
 また最近ではアナログゲームを卒論のテーマに選んだ学生からの問い合せが来ることも珍しくないが,そのすべてに高倉氏が対応するのは不可能だ。このため参考資料となるデータベース(目録)は必要不可欠であり,実現すれば司書によるレファレンスはもとより,図書館の相互貸借機能なども可能となる。

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 続いて登壇した元図書館職員でありゲームデザイナーでもあるアドル氏は,「アナログゲームの目録作成と今後の展望」と題してゲームデザイナーの立場からデータベースの必要性を語った。デザイナーとしても,データベースがあれば,「ネタかぶり」を避けることができるし,「パクられた!」などのコンフリクトが発生したときも,発行年から「どちらの発表が先か」を見分けられる。またゲームの傾向を分析することで,どのテーマやメカニクスを採用するべきか,戦略を立てる参考にもなる。プレイヤー視点で見れば,データベースを駆使して自分の知らないゲームを探すことだってできるだろう。

アドル氏
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 また元図書館員という立場から語るなら,そもそも図書館でゼロから個々のゲームの情報を書き起こすには手間がかかる。データベースがあれば施設でも所蔵しやすくなるし,イベントや展示を行うのも楽になり,図書館でのゲーム収集がいっそう活性化することだろう。
 ここでアドル氏は,プロ・アマ問わずボードゲームのデザイナーに対して,奥付にゲームの情報をしっかり記入しておいてほしいと呼びかけた。奥付があれば,それを参照して目録データの作成ができるし,誤った情報で登録することも避けられる。なお,ここでの奥付とは,正式なゲームタイトルとその読み方,制作者(デザイナーやイラストレイターなど),発行年月日,発行者といった情報のことである。

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 最後に登壇したのは大阪国際工科専門職大学講師(常勤)の福田一史氏だ。氏はゲームアーカイブとメタデータ作成を専門にしており,「アナログゲーム目録AGMサーチの概要」と題して,AGMで作成しているデータベースと,既存サイトのそれがどう違うのかを説明した。

福田一史氏
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 まず,カバー範囲が異なるという。現状,アナログゲームのデータベースとしては,国内なら「ボドゲーマ」,国外では「BoardGameGeek」などが存在するが,それぞれのコミュニティの参加者がよくも悪くも恣意的に記述する性格を持つため,カバー範囲や情報の精度に濃淡がある。
 対してAGMでは,現物主義に支えられた事実ベースの情報を柱とし,メジャー作品からインディー作品まで幅広い範囲をカバーすることを旨としている。そしてゆくゆくは,コミュニティ型のデータベースとメタデータレベルで結びつけ,互いの不足を補いつつ,Web全体で1つの巨大なデータセットを構築したいと話していた。

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 ここから福田氏は,AGMのオンライン目録(AGMサーチ)の現物を紹介し,そのアクセシビリティを紹介していった。加えてこれらの情報を活用することで,オンラインでの展示(ゲームの紹介)も可能になる。現在はサンプルが2点公開されているのみだが,コロナ禍のように施設利用に制約がある場合には,代替にもなりえるという考えだ。

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 3人の発表を終え,来場者からの質疑応答が寄せられた。まず,「テーブルトークRPGのシナリオ集やゲームブックなど,出版物の形をとっているゲームは対象とするのでしょうか?」という問いに対しては,「当然,収集対象です」との回答。「現物は失われているが,電子データのみ残っているものはどうするのでしょうか?」という話については,「今のところ現物主義が中心だが,将来的にはカバーしたいと思います」とのことだった。


第3部:アナログゲームミュージアムに期待すること

 
 第3部は,ドロッセルマイヤーズ代表の渡辺範明氏に司会をバトンタッチし,外部的な目線からAGMの将来を語るパネルディスカッション「アナログゲームミュージアムに期待すること」が開催された。参加者はゲームデザイナーのカナイセイジ氏と,ゲームマーケット前事務局長の刈谷圭司氏,グループSNE代表の安田 均氏,これまたゲームデザイナーの米光一成氏,そして草場 純氏だ。

左から草場 純氏,カナイセイジ氏,刈谷圭司氏,安田 均氏,米光一成氏,渡辺範明氏
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 トークはまず,カナイ氏によるぶっ飛んだコメントからスタートした。曰く「ミュージアムというと,SFアニメなんかにある,ごく小さなメモリーチップにあらゆる情報が入っているものなんかを期待しちゃいますよね(笑)」とのこと。これが場の空気を暖めると,絶妙の間で刈谷氏が「カビが生えないように温度や湿度を保つとか,保存が大変そう。データベース作成で手間がかかる部分は,それこそChatGPTなんかにやらせては」と話し,話題を“リアル寄り”に戻していく。
 一方,安田氏は「素晴らしい試みで,全面的に賛同です。僕はそれこそダンジョンズ&ドラゴンズの初版から,サポート雑誌・ドラゴンの創刊号から,珍しいものを揃えていましたが,阪神淡路大震災でコレクションにも被害を受けてしまった経験があるんです。ある意味で,個人所蔵の限界ですね」と,AGMの活動に賛意を示した。

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分散型ミュージアムの提案


 米光氏は,「私は文化庁メディア芸術祭の審査委員をやっていたことがあるんですが,メディア芸術と呼ばれる漫画なんかの場合,あちこちに分散して保存するというのがコツだと分かっています。そうすれば水害の恐れなんかも分散されるわけです」と前置きしつつ,「だから大磯にAGMができるなら,安田さんが神戸に“安田ゲーム記念館”を作る形にしたらよいのでは」と,安田氏に話を振る。安田氏も「いいですね。ストーリーゲーム部門は任せてください」とノリノリな様子だった。

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 これを受けて渡辺氏は,「全国にミュージアムを分けて,それらの所蔵品を相互貸借の対象としたり,AGMサーチで包括的に検索できりしたら最高ですね」とまとめ,草場氏も「誰か1人の権威が全部やるのではなく,それぞれが得意なことに取り組み,ネットワーク連携するという分散主義は,私の理想にかなっています。私は言い出しっぺにすぎず,私がいなくても回ってほしいですし,AGMは半ばもうそうなっているんです」と請け合う。
 さらに刈谷氏は,「各地の廃校がミュージアムに転用されているんですが,それこそテーマやメカニクスごとに分けて地域ごとにゲームのミュージアムがあれば,地域振興にもつながるのではないでしょうか」と提案した。

 一方,安田氏は「各地におもちゃの博物館は多いんですが,なぜかゲームの博物館はないんですよね。あとはドイツのラベンスバーガーのように,メーカーがミュージアムを作っている例もありますよ。カナイさん,いかがですか(笑)」と話を振ると,カナイ氏は「私が作ったら“ラブレター博物館”になりますよ。ラブレターはカード枚数の少ないミニマムな設計が特徴ですが,そういったタイプのカードゲームを集めると,ものすごい数になりそうですね(笑)」と苦笑していた。

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公共性と会員への配慮の兼ね合い


 トークはここから,AGMの中立性の話題へと移っていく。「確かに海外にはメーカー主導のミュージアムは珍しくありませんね。ただ,企業主体の施設には力がありますが,所蔵や紹介等に関する“史観”が,どうしても偏ってしまうんですよ。もちろん,そういったものも大事ですが,AGMは中立でありたいんです」と草場氏。
 これに安田氏は,「よく理解できます。必要なのは,まず正確なデータですからね。これは特定サイトの批判ではありませんが,アーカイブそのものに,点数やランクを紐づけないでほしいと思います。僕は『ボードゲーム・ブロードウェイ』というレビュー本を出したばかりなんですが,批評は僕ら個別のレビュアーの役割ですから。逆にちゃんとしたデータベースがあれば,評論じたいも活性化しますよ」と答えた。

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 刈谷氏が「ゲームマーケットのサンプル品をAGMに受け入れていただくようになったのは2年ほど前からで,それ以前は参加者に放出していました」と話すと草場氏は,「それではゲームが散逸しかねないと思いましたので,アークライトとちゃんと契約を結んで,AGMでサンプル品を受け入れる形になりました。ゲームマーケット出展者にとっても,サンプル品を会場でお客さんに見てもらい,その後に大磯のAGMでちゃんとした温度・湿度管理のもとで保管してもらえるというのは嬉しいことだと思います」と補足を加える。
 ただ,サンプル提供は任意であるため,カナイ氏のようなクリエイター目線から見ても,周知が徹底されているとは言い難い。そのため,刈谷氏は「ゲームマーケット出展者への呼びかけがいっそう充実するように要請したいと考えています」と述べ,草場氏も「企業に対して新製品の見本提供を募ったり賛助会員制度を設けてAGMへの入会を促していったりすることを考えています」と展望を語った。

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 ここで渡辺氏から,賛助会員になるメリットについての質問が入った。草場氏は,「貸出も開放したいのは山々ですが,アナログゲームはそれこそコマやカードが少し欠けるだけでプレイが難しくなるため,不特定多数への貸出は現段階で難しいんです」と苦渋の様子。ここに米光氏が助け舟を出し,「AGMに現物があるということ,それ自体に価値があります。そもそもソーシャルゲームのような運営型のデジタルゲームは保存が難しい。それに比べたらアナログゲームは,基本“モノ”があるだけ全然マシです」と話した。

 さらに渡辺氏が「偏りなくアーカイブに登録されるという公共性と,資金提供に参加する会員へのメリットの釣り合いをどう取るかは厄介な話ですね」とコメントすると,応えて安田氏は,「そこはゲームという新しい文化を作っているという意識を,一人一人に持ってもらうことが大事なのではと思います」と述べる。
 米光氏も,「アナログゲームが普及してきたと言っても,低く見られることはまだまだ多いんです。ちゃんとしたデータベースがあって,歴史研究や批評を手掛ける人がいる,というだけで,確実にゲームの価値は上がります」と同意。刈谷氏は,「本来は公的な補助などで賄われるべき事業だと思うんですが,まだそうなってはいないので,どう持ちこたえるかが大事ですよね」と総括した。


提言,呼びかけ,総括


 イベント終了時間が迫り,トークは締めに入っていく。
 草場氏は,「AGMは“モノ”を扱う施設ですが,“コト”としてのイベントを今後もたくさん計画しており,会員にはそうしたイベントへ優先的に参加できるようにしたいと考えています。ぜひ会員になってください」と観客に呼びかけた。

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 カナイ氏は,「現在,Tabletop Simulatorのように仮想空間でアナログゲームをプレイできる環境も整いつつあります。ぜひ場所を取らない電子データも受け入れてください。入手が難しいインディーゲームは電子データで代行するのが現実的と思いますし,AGM会員にはヴァーチャル環境でのプレイに参加できる権限を与えれば,入会の動機づけになるかもしれません」とユニークな提案を投げかけた。

 刈谷氏は,「アーカイブの分散の話は,会場にいる方に市町村長になっていただくのが手っ取り早そうですが(笑),そうでなくても廃校のような“ハコ”に心当たりのある関係者がいれば,AGMと連携を試みていただければと思います」と語った。

 安田氏は,「ドイツには,ゲームの刊行データなどをまとめた年鑑本が刊行されている時期がありました。作るのは本当に大変みたいですが,AGMにはぜひ,ああいったものを作っていただければと思います」と,評論家ならではのコメント。

 米光氏は「アーカイブ事業そのものが困難ですが,(会場を見て)こんなにたくさんの人に集まってくれていることそのものに希望を感じます」と感想を述べた。

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 最後に渡辺氏は,「公正中立でいたい,という草場さんの精神は出発点として大事だと思います。その精神に学んだうえで,アーカイブ事業は公共的な試みなのですから各々の得意分野で頑張って互いに補い合っていけば,困難と思える課題も乗り越えていけるのではないか,というのが今回,学んだことでした」と締めくくった。

 こうして,多岐にわたるトピックの飛び交ったAGM設立記念イベントは幕を閉じた。基礎研究としてのAGMは順調に進んでいるようで,第3部の登壇者のような最前線のクリエイター陣からも期待が持たれている。とりわけデータベースが充実するだけで,文化としてのゲームの価値が上がるというのは納得のいく話で,草場氏の抱いた夢と現実の距離は意外と近いのかもしれない。
 ただデータベースの拡充と同時に,データベースを企画へと繋げる“見せ方”を心得ている,キュレーターの育成も鍵になるのではないか。例えば,「カナイセイジに影響を与えたゲーム20選」とか,「米光一成のアイデア帳」とか,「安田 均の未単行本化ゲームレビュー一覧」とかが観られれば,興味を持つ人は多いだろう。筆者としては,そんなことを考えさせられたイベントだった。
 ローマは1日にしてならず。まずはAGMがたくさんの会員を獲得し,長く事業が継続することを期待したい。

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アナログゲームミュージアム 公式サイト

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