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[GDC 2019]「パンツァードラグーン」シリーズを二木氏と吉田氏が振り返る。むちゃな挑戦がシリーズを支えた
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印刷2019/03/21 21:01

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[GDC 2019]「パンツァードラグーン」シリーズを二木氏と吉田氏が振り返る。むちゃな挑戦がシリーズを支えた

 北米時間2019年3月20日,アメリカ・サンフランシスコで開催されているGame Developers Conference 2019にて,「パンツァードラグーン」シリーズの開発者である二木幸生氏吉田謙太郎氏が,当時の開発状況を振り返るセッションが行われた。本稿では,その内容をまとめて紹介しよう。

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二木幸生氏
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吉田謙太郎氏

 二木氏がセガ・エンタープライゼス(現セガゲームス)に入社したのはおよそ27年前。その1年後に,セガサターン向けのレーシングかシューティングを作ろうという話が持ち上がったそうだ。二木氏はレースゲームを作りたかったそうだが,すでに「ゲイルレーサー」があったため,3Dのシューティングを作ることになったという。

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 当時のシューティングといえば,戦闘機のような硬い乗り物がメインだったが,バーチャファイターで人型のモデルが柔らかい動きをしているのを見た二木氏は,それと同じことをやりたいと思ったそうだ。
 そして,「乗ってみたいものはなんだろうと」考えたときに浮かび上がったのが,ドラゴンだったのだという。これで,「ドラゴンに乗るシューティング」という基本方針が決まったわけだ。

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最初はホーミングレーザーではなく自力で狙う仕様だったことや,ファンタジーもので考えていたことも明かされた。世界観は企画が通ったあとに作り込んでいったそうだ
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二木氏は,自身が一番好きな「スターブレード」のように,プレイヤーが物語を体感できるシューティングを目指したという
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 パンツァードラグーンのビジュアルコンセプトは,アートディレクターの楠木 学氏が手掛けており,氏が制作した架空の文化や風景といったコンセプト資料をゲームデザインに落とし込んでいったとのこと。
 ゲームの舞台背景にある「旧世紀」というワードを作ったのは二木氏で,ゲーム上で起きる不条理なこと,設定的におかしいところが出てきても,旧世紀だからということで納得してもらえるようにしたそうだ。

ゲーム中に登場する,白い素材と特徴的なラインで構成された構造物が,旧世紀のコンセプトデザインになっているという。また,大友克洋氏の画集で見た「幻魔大戦」のベガも参考にしたとのこと
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 旧世紀と同じように,パンツァードラグーンの世界観を特徴付けているのが帝国の存在である。帝国のデザインは,第一次世界大戦における戦車や戦艦といった無骨な兵器と,旧世紀の兵器を組み合わせたもので,なかでも意識したのは,目立つシルエットと巨大感だという。

ドラゴンは旧世紀の生物兵器なので,白い装甲を装備している。攻性生物も,旧世紀のものは白い装甲を,そうでないものは外しているという
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 パンツァードラグーンは,星の自浄能力が消えつつある世界が舞台となっており,過去に高度な技術を使った戦争によって破壊された星が,長い年月をかけて自然に還っていくというイメージがもとになっている。
 こういった設定を開発者が大切にすることで,その後に続く「パンツァードラグーン ツヴァイ」(以下,ツヴァイ)や「AZEL -パンツァードラグーン RPG-」(以下,AZEL)も,パンツァー世界のビジュアルを守って作られたそうだ。

セガサターンの開発機の製作が遅れていたことで,開発が進められない期間が2か月ほどあったからこそ,世界観にこだわる時間ができたらしい
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PlayStationは徹底的にライバル視


 PlayStationとセガサターンは同時期に発売されているが,3D性能はPlayStationのほうが高いという評判は,セガ内部でも話題になった。二木氏も,プログラマーの須藤順一氏と共にPlayStationのお披露目イベントに参加し,そこで見た「リッジレーサー」に相当な衝撃を受けたという。
 その時の後遺症か,いまだに初代PlayStationのことを考えるイラっとするそうで,「プレイステーション クラシック」のCMは見るたびに辛い思いをしたと告白し,会場の笑いを誘っていた。

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 ただ,セガサターンはある意味で究極の2Dハードであり,非常に優れたスクロール表示能力を持っていたと二木氏は語る。したがって,PlayStationを超えるには,スクロールをうまく使って画面や空間の広がりを表現する必要があった。

 セガサターンの3D表現能力は,変形スプライトで構成されている。しかし,当時はポリゴンの数だけテクスチャを用意しなければならず,テクスチャも歪んでしまうような状態だったらしい。ただ,パンツァードラグーンの場合は,オリジナルのテクスチャ切り出しツールをプログラマーが用意してくれたので,それでテクスチャマッピングを行ったという。
 それでもPlayStationと比べれば,半透明の機能やポリゴン同士の描画演算は,かなり貧弱なものだったそうだ。結果的にそれが,パンツァードラグーンの乾いた世界観にうまくマッチして,PlayStaitonにはできない表現に成功したと二木氏は述べる。


シューティングに特化した「ツヴァイ」。ストーリーに特化した「AZEL」


 そうした努力によって,「パンツァードラグーン」はシューティングとストーリーの双方で好評となり,それぞれに特化した続編を作ることになった。シューティングに特化した「ツヴァイ」と,ストーリーに特化した「AZEL」でチームを分け,同時に制作が進められたのだ。

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 「ツヴァイ」を受け持つことになった吉田氏は,パンツァードラグーンでは力技でどうにかしていた部分を解決しようと試みる。たとえば,ゲームが進むたびに大きく難度を引き上げることで,物語をクリアしたら終わってしまうという問題を引き伸ばしていた点については,プレイヤーのスキルに合わせて自動で難度を変えるシステムを導入。これは,時代を先取りしたシステムだったと,吉田氏は振り返った。

ドラゴンの種類を追加したり,進化させたり,ボムに代わるバーサクアタックを実装したりと,ツヴァイでは新しい要素がたくさん盛り込まれた
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スクロールの描画にいろいろな制限があったため,ドラゴンが飛び立つシーンを実現させるのに,プログラマーは大変苦労したという
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ADECシステムによってプレイヤーの腕前をゲームに反映し,敵の硬さなどをリアルタイムで調整していた
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 「ツヴァイ」と並行して開発が進められた「AZEL」だが,二木氏にとっては今まで一番苦労したプロジェクトだったと振り返る。当時は,背景をレンダーにしてキャラのみをモデルにするのが主流だったが,それをすべてを3Dで作ろうとするなど,今考えてもむちゃくちゃなことをやっていたという。
 シューティングをRPGのバトルに置き換えるという時点で,普通のRPGとあまりにもコンセプトが異なっていたため,一年経ってもまともなものができず,戦闘システムの責任者を入れ替えたりもしたそうだ。

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バトルシステムの置き換えにはそうとう苦労したらしい
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街の中では自由に移動できるようにし,昼と夜の概念も導入。それに伴いライティングも実装している。今では当たり前なことばかりだが,当時はよくやろうと思ったものだと二木氏
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モーションキャプチャは磁気式を採用したが,ノイズが多いため,グリッドをおいて作り直しやすいよう動画も並行して撮ったという
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 「AZEL」は,とにかく新しいことをやりすぎて,それによって仕様の決定が大幅に遅れたり,疲れたスタッフの間で軋轢が起きたりもしたようだ。フル3Dのゲームを作るということで50人近くのスタッフを抱えることになったが,それを管理する経験もなければチケットシステムもない。ゲームこそ完成までこぎ着けたが,コストが掛かりすぎた結果として,チームは解散となってしまった。

 それでもゲームを完成させられたのは,ゲームを新しいものに変えようという流れが業界全体にあったからだという二木氏。とにかく思いついたものをやってみるという空気があり,とくに当時のセガには若い力に満ち溢れていたからこそ,「パンツァードラグーン」のような作品を世に送り出すことができたと語る。そして,「気持ちだけは今でも若いので,今後もいろいろなことに挑戦していきたい」とこれからの意気込みを見せ,セッションを締めくくった。
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