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[SPIEL\'18] ヨーロッパゲームコレクター協会の今年のテーマは「プレイされる本」。本とゲームとの多彩な関係が一望できる展示レポート
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印刷2018/10/29 20:25

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[SPIEL'18] ヨーロッパゲームコレクター協会の今年のテーマは「プレイされる本」。本とゲームとの多彩な関係が一望できる展示レポート

画像集 No.002のサムネイル画像 / [SPIEL'18] ヨーロッパゲームコレクター協会の今年のテーマは「プレイされる本」。本とゲームとの多彩な関係が一望できる展示レポート
 世界最大級のボードゲーム見本市SPIEL'18。ここでは,ボードゲームの試遊や購買だけではなく,講演やサイン会などの各種イベントも連日開催された。その中でもとくに興味深いのが,ドイツのマールブルクに拠点を置くヨーロッパゲームコレクター協会(European Society of Game-Collectors,以下ESG)のブースだ。

 このブースでは,協会メンバーが所有する希少なゲームが数多く展示されているだけでなく,それらが毎年異なるテーマに基づいて体系的に陳列されている。このため,欧米のゲーム文化がさまざまな側面から理解できるのだ。残念ながら日本やアジアのゲームにスポットは当てられていないが,欧米のゲーム文化史を知ることは,我々にとっても少なからぬ意義があるはず。

 そんなESGの今年のテーマは「プレイされる本(Gespielte Bücher)」。 今年も,協会名誉会長のRudolf Rühle氏による解説ツアーに参加してきたので,写真を中心に紹介しよう。

Rudolf Rühle氏
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本からゲームへ


 本とアナログゲームとの間には,どちらも紙でできているという共通点だけでなく,多彩な関わり方が存在しうる。その中でも多いのが,「本を原作としてゲームが作られる」というケースだ。
 とくに,絵本,コミック,童話を元にしたアナログゲームは,原作の世界をさらに楽しめるという構造になっている。

ディズニーやアステリクスなどの定番コミックはゲームの数も多い
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フランス語圏で生まれたコミック雑誌「タンタン」の各キャラクターの人気も根強い
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ツェフィッシャーの「オスカル」は,日本では知名度が低いが,ドイツでは90年代まで版を重ねた人気コミックだ
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コミックといえば,Marvelのヒーローも忘れてはならない
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ドイツといえばメルヘン。ということで,童話をもとにしたゲームも多い
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ブッシュ「マックスとモーリッツ」もドイツで定番の児童書だ
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ケストナー「エミールと探偵」も人気。3種類のゲームが制作されている
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ロフティング「ドリトル先生」のカルテット
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プロイスラー「小さい魔女」
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「世界最大のベストセラー」ともいえる「聖書」も忘れてはならない。昨年のSPIELでも紹介したように,聖書にちなんだゲームは山のようにある
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 ほかにも,冒険小説や探偵小説など,ゲームと相性がいい小説のジャンルは数多く存在する。

ゲーテの「ファウスト博士」
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キプリング「ジャングルブック」
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ロビンソンクルーソーものもある
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ロビンフッドや怪傑ゾロもゲームで人気のキャラクター達だ
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シャーロックホームズも現在に至るまで多くのゲーム制作者やプレイヤーを魅了してきた
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カンバーバッチ版ホームズのイメージも最近では強い
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陳列棚の一つはアメリカ特集になっていた。西部劇,世界探検ものなど,アメリカで出版された本のゲームが並んでいる
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ゲームから本へ


 一方で,SFやファンタジーのジャンルとなると,本とゲームとの関係はより複雑になる。本の原作からゲームが製作されることもあれば,その逆に元々はゲームだったものがノベライズされる,ということも頻繁に起こるからだ。

頻繁にゲーム化されたファンタジーといえば,トールキンの「指輪物語」だろう。指輪物語のブームと並行するようにして,数々のゲームが製作されている点に,あらめて驚かされる
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 また現代では,ゼバスティアン・フィツェックに代表されるように,ゲームというジャンルを自らの作品を表現する場として肯定的に捉える作家も多くなってきている。

フィツェックの小説に基づくゲームは,今年のSPIELでも注目されていた
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シェッツィング「深海のYrr」,ハイツ「悪魔の祈祷書(Des Teufels Gebetbuch)」など,現代のベストセラー小説は間を置かずにゲーム版も発売されることが少なくない
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ケン・フォレットもゲーム化される小説を数多く執筆している現代作家だ
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 個人的に気になったのが「彷徨う本の修道院(Abtei der wandernden Bücher)」だ。この作品は,エーコの「薔薇の名前」にインスパイアされただけでなく,本がゲーム中で主要な役割を果たしているという点でユニークである。ちなみに,ESGのブースに展示されていたのは,1993年に200個限定ですべて手作りで制作された超限定品だ。
 現在は20〜30万円で売買されているとのことで,間違いなく今回の展示品中でもっとも貴重なゲームといえるだろう。内容が気になるという人は,廉価版の「Abtei der Rätzel」がリリースされているので,そちらで確認してみるといいだろう。

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 本がそのままゲームになっているというケースも存在する。こう書くと,4Gamer読者であれば「ゲームブック」を思い浮かべる人がほとんどだろうが,意外なことに,ゲームブックは出展されていなかった。
 ここでいう本とはスゴロクや迷路といった平面的なゲームを複数扱う雑誌を指している。頒布形態としての書籍との相性が非常によいということもあり,こうした雑誌は古くから出版されてきた。また,新作ゲームの発表機会を提供するだけでなく,オリジナル版が絶版になってしまったゲームを復刻する上でも大きな役割を果たしている。

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 Rühle氏は,「アナログゲームと本」というのは非常に大きなテーマのため,網羅しようとするとホールがまるまる1個必要になってくると述べていた。とはいえ,今回のESGの展示は,両者の双方向的な関係を十分把握できるものになっていたように思う。
 毎年のテーマは協会メンバーの推薦・投票で決まるということで,来年の展示も今から楽しみだ。もしSPIEL'19に行く予定があるのならば,ぜひESGブースにも足を運んでみてほしい。

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