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AppleのXR HMD「Vision Pro」が6月28日に国内発売決定! ゲーム・エンタメ目線で見たときの価値は?
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印刷2024/06/11 08:00

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AppleのXR HMD「Vision Pro」が6月28日に国内発売決定! ゲーム・エンタメ目線で見たときの価値は?

 米国時間2024年6月10日,Appleは,独自の開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference」(以下,WWDC24)に合わせて,同社独自のXR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「Apple Vision Pro」(関連記事)を,6月28日に日本でも発売すると発表した。予約受付は6月14日10:00から開始する。
 内蔵ストレージ容量が異なる3モデルをラインナップしており,256GBモデルが59万9800円,512GBモデルが63万4800円,1TBモデルが66万9800円となっている。

Vision Pro
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 筆者は,2024年2月にアメリカでVision Proが発売となったときにハワイへ行き,ひと足さきに入手した。それ以来,「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を活用して一足先に利用している。

筆者のVision Proは,2月にハワイで購入したものだ
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 Vision Proとはどんな製品で,ほかのXR機器とどう違い,購入価値はそこにつながっているのだろうか? ゲームや映像を試しながら,その辺を少し説明してみたい。


問題は「高くて重いこと」なのだが……


 まず先に,Vision Proの問題を指摘してしまおう。現状では,購入するにはかなり度胸のいる機器であるのは間違いない。
 そもそも,価格が約60万円からと,かなり高い,というのは最大のハードルだろう。2月に購入して以来,筆者はかなり数の人々に体験してもらい,感想を聞いてきたが,「これが20万とか15万なら買ってもいい」という声は多かった。絶対値として,価格の高さは如何ともし難い。

 また,重量の問題も深刻だ。
 選択する「Light Seal」(※遮光用の付属フード)やヘッドバンドによって変化するものの,いわゆるヘッドセット部だけで,重量は600g〜650gある。MetaのXR HMD「Meta Quest 3」が,公称本体重量約515gだから,かなり重い。
 しかも,Vision Proは,外付けのバッテリー(約353g)を除外しての数字だ。使っているの不快感の大半は,この重量を顔と頭で安定的に支えるためのものである。
 すなわち,高価で不快,というのがVision Proの欠点であり,ネットでよく見るVision Proに対する否定的な意見も,この2点に集約できる。

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 他方で,「Vision Proの体験に(それに見合った)価値がないか」というと,そんなことはない。ほかのXR機器では体験できない「質の違い」が,Vision Proにはあり,それをどう見るか……ということなのだ。

 逆に言うと,AppleはXR機器を作るうえで,価格や重量で課題があったとしても「まずは,価値ある質の違いを提示できるデバイスを作ろう」と考えた,ということなのだ。
 ある意味,「開発者向けデバイス」を作ろうとしたのであり,「Appleの考える水準」をVision Proで示そうとした……とも言えるだろう。

※Appleは,Vision Proのことを「空間コンピューティングデバイス」と呼んでいるが,あえて本稿では,総称的な形で「XR機器」と呼ぶ。


他製品を圧倒する画質


 質の違いとはどういうことか?
 複数の観点があるが,まずは「画質」だ。Vision Proを身に付けてみると,見える画像が精細で,違和感が少ないことに気づく。

 Vision Proは周囲の情景を撮影するカメラを内蔵しており,そこからの映像を仮想空間内で再構築したうえで,さらにCGを重ねて「現実空間にCGが混在して見える」様子を実現する。俗にいう「ビデオシースルー方式」のMixed Reality(複合現実感)なのだが,この画質がきわめて自然だ。
 ビデオシースルー方式のMixed Reality対応HMD自体は,そこまで珍しいものではない。Meta Quest 3やPICO ImmersiveのVR HMD「PICO 4」でも実現されているし,今後はもっと対応機器が増えるだろう。ハーフミラー的な仕組みを使った「光学シースルー方式」によって,実景とCGを重ねるアプローチもある。

 ただ,どちらにしても違和感のない画像を作るのは大変なことだ。Mixed RealityやAugment Reality(AR)を標榜する機器は多く,宣伝のためにさまざまなプロモーションビデオ(以下,PV)が作られている。しかし技術的な制約から,PVと実際の表示にはかなりの差が生まれていた。
 Meta Quest 3は,その差が小さいデバイスなのだが,それでも「解像度の不足」に加え,「現実空間の歪み」「距離感の不自然さ」を抱えていた。

 だがVision Proの場合,PVと体験の差が非常に小さい。現実と同じ解像感というわけではないし,コントラストも弱いとは感じるが,それでも,圧倒的に違和感が小さい。PVとほぼ同じ体験,と言って差し支えない。


 Vision Proで,高品質なMixed Realityが実現できている理由は3つある。
 ひとつめは,「使っているディスプレイの画質が高い」こと。両目で約2300万画素,片目あたりの解像度は,約1インチに3800×3000ドット(ドットピッチ7.5μm)というディスプレイは,一般消費者向け(と言えるか微妙な価格ではあるが)にも売られている製品としては,最高クラスの解像度である。
 XR機器における解像感は,ディスプレイパネルとレンズを含めた設計で決まるため,パネルが高解像度だから目に見える映像の解像度も高く感じる,という単純なものではない。それでもVision Proは,「現実に比べて解像度が粗い」と感じにくい水準である,と考えてもらえれば十分だ。一般消費者向けでこの水準に達している機器は,現状Vision Proくらいである。

 2つめは「歪みがない」ということ。ビデオシースルー式は構造こそ単純だが,リアルな形で作るのは意外と難しい。「距離による歪み」はその典型だ。
 人間の目はピントを変えられるし,脳内で補正もしているので,視界が歪んで見えることはほぼない。しかし,カメラはそうではない。中距離はきれいに見えても,近距離で映像を拡大すると,違和感が出ることは多い。また,複数の小さなセンサーを組み合わせているMeta Quest 3のようなパターンでは,センサーから得られた画像の組み合わせ方で,歪みが発生したりもする。
 こうした違和感は,ソフトウェアで補正可能とはいえ,けっこう大変な作業だ。Meta Quest 3は,システムソフトウエアの継続的な改良により,この課題をかなり解決しつつあるが,それでも不自然さは残っている。

 一方でVision Proは,不自然さが非常に小さい。目の前にあるスマートフォンの画面を見ても歪まないし,着けたまま周囲を歩き回っても,机の端に小指をぶつけたりしない。

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 3つめは「視線認識を活用していること」。
 本稿では,Vision Proで撮影したスクリーンショットを多数紹介していくが,この画面が一部ぼけて見えるかもしれない。しかしこれは,実機で体感できる画質そのものではない。Vision Proは視線を認識して,その中央部だけを高画質にレンダリングする「Foveated Rendering」(フォビエイテッドレンダリング)を採用することで,処理負荷を軽減している。そのため,スクリーンショット全体を見ると,視野中央以外がぼやけているように記録されるのだ。
 しかし実際の体験では,精細さを感じやすい視野中央はちゃんと高い解像度で描かれていると,感じられるのだ。

 こうした工夫を使って,周囲の実景の中に自然な形でCGが重なるので,Vision Proでは,PVと同じレベルの良い体験ができるのである。

Vision Proのメニュー画面。実景と自然に重なっている。実機での3D映像はもっともっと自然だ
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コンテンツ体験は圧倒的


 その結果として感じるのが,「コンテンツ体験の快適さ」だ。
 画質が良いので,映画やドラマなどの動画体験が非常に良い。「空中に巨大なディスプレイが浮かんで,そこで映画が見られます」という製品は多いが,Vision Proの体験は,まさにその言葉どおりである。

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 Vision Proでは,Vision Pro専用のアプリやコンテンツだけでなく,iPad用のアプリも動く。
 本稿執筆時点では,Vision Proはアメリカ版で,OSも「AppStore」も,アメリカ仕様だけだ。そのため,日本国内で流通しているアプリの一部しか使えないないことや,アメリカでも,iPad版アプリをVision Proで使わせないアプリ提供元があることには留意が必要だ。たとえば「Netflix」は,Vision ProでiPadアプリを使わせていない例のひとつとなる。

 とはいうものの,Vision ProにおけるiPad版アプリの動作は,非常に快適だ。「Amazon Prime Video」や「Kindle」のアプリは,なんの問題もなく使えている。映像配信についていえば,大型テレビやプロジェクタで見るのと,遜色ない画質で楽しめる。他のXRデバイスでは「そこそこ快適である」レベルなのだが,Vision Proならば,ガチでAV機器と勝負できるレベルの体験になっているのだ。

 さらに,これが「Apple TV」経由,もしくは「Disney+」経由で配信される「Vision Pro専用の3Dコンテンツ」になると,圧倒的に楽しい。Appleは,Apple TV経由で大量の3D映画を配信しており,ディズニーも,マーベルやスター・ウォーズといったフランチャイズ作品を中心に,サブスクリプションの中に3D作品を入れている。

アメリカのApple TVでは,Vision Pro向けの3D映画が多数配信されている
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3D版がある映画を再生するときには,「3Dで再生するのか,それとも2Dで再生するのか」を聞いてくる
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 3D映像の質感は非常に高く,一般消費者向けとしては最高品質と言っていい。もちろん,映画によっては書き割り感のある不自然な作品もあるのだが,アトラクション級の楽しさを提供してくれるものもある。CGアニメ作品,たとえば「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の3Dクオリティは非常に高くて見やすいし,MCU作品である「ドクター・ストレンジ」は,まるでビデオドラッグのような体験だ。

近年のマーベル作品は,3D版が用意されているのだが,とくに完成度が高い「ドクター・ストレンジ」の3D版もある
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 残念ながら,これらの配信コンテンツは,著作権保護の関係で再生画面がキャプチャできないし,3D再生での立体感を伝えるのも難しい。しかし,「スクリーンショットでの見た目よりもはるかに画質が高く,ほかと隔絶したクオリティ」であることは断言できる。

 操作は,視線と手で行う。視線がマウスのようなポインティングデバイスに,人差し指と親指を打ち合わせる「タップ」という動作が,マウスのクリックに相当すると考えれば分かりやすい。
 一般的なXR機器では,専用コントローラを手に持って,狙った場所を指し示す,という操作を採用している。手を認識してコントローラの代わりにする場合もあるが,どちらも「手を上に持ち上げて,指し示す」動作に近い。Vision Proでも,手を持ち上げてオブジェクトを直接「触る」操作もできるのだが,ほとんどの場合は,視線+手元の指タップだけでいい。手を持ち上げる必要がないので,疲れが非常に少ないのだ。

 この操作体系は,どんな姿勢で使っていてもおおむね問題ない。だから,ソファにもたれかかって腕は持ち上げないとか,寝転がってしまって胸の辺りで指タップするとか,そんな感じでもいい。本体が重いこともあって,そういうちょっと自堕落な姿勢のほうが,快適だったりする。

 極端に聞こえるかもしれないが,3D表示も含めて,「目の前に巨大な,画面だけのiPadがある」という表現が一番近いかもしれない。


Vision Proはゲームをどう扱っているのか


 ではVision Proの特徴や利点が,ゲームにどう効いてくるのだろうか?

 ひとつの方向性は,「巨大なリモート画面として使う」というやり方だ。
 Macの画面を持ちこむこともできるし,PCにおける「Steam Link」や,PlayStation 5/4の「PS Remote Play」も使える。Vision ProにBluetoothのゲームパッドをペアリングすれば,なんの不自由もなくプレイできる。iPadの上でリモートプレイ系が使えることと同じ,と考えればいいだろう。

Mac上で動いているゲームを,Vision Proを使って,飛行機内でも大画面でプレイできる
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Steamのリモートプレイである「Steam Link」も,iPad版アプリを介してプレイ可能。もちろんゲームパッド対応だ
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 ただし,現状ではSteam LinkとXboxの公式アプリ(iPad版)はあるもの,PlayStationについてはiPad向けが公開されていないので,非公式リモートプレイアプリである「MirrorPlay」の利用をお勧めする。

PlayStationのリモートプレイは,SIE純正ではないリモートプレイアプリ「MirrorPlay」を使って実現
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 2つめはもちろん,「Vision Pro専用のゲームを楽しむ」こと。
 Vision Pro専用アプリとして公開されるゲームも増え始めており,「XR関連で最初に収益を上げるのはゲーム」という鉄則は健在のようだ。

 現状,Vision Pro向けに完全にオリジナルで作られたものは少なく,過去にスマートフォンなどでヒットしたタイトルや,他のXRデバイス向けに発売済みのものを移植したものが目立つ。
 たとえば,テーブルトークRPGライクにダンジョン攻略を楽しめる「DEMEO」は,そうしたゲームのひとつだ。あらゆるXRプラットフォームで発売されているだけでなく,PC版にMac版,iPad版もある。

 元々完成度が高く,XR向けゲームの中でもおすすめの1本なのだが,先日Vision Pro対応版が公開された。それまでは,iPad版を空中に投影して楽しむような形だったのだが,ほかのXRプラットフォーム版と同じように,卓上に立体の迷宮が出現し,フィギュアを動かしながら遊べるようになった。

Vision Pro版DEMEOのスクリーンショット
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 ほかのプラットフォーム版とのクロスプレイも可能なので,ゲーム内容は同じなのだが,Vision Pro版は,ほかのプラットフォームに比べて解像度が高くて見やすい。さらに,操作がより直感的になっている。
 ほかのプラットフォームでは,ゲームパッドやVRコントローラを使うが,Vision Pro版は,ユーザーの手をそのまま使う。フィギュアを指でつまんで動かして,魔法などのカードも手でつまんで,対象のフィギュアに落とす。迷宮の見る場所を変えるにも,両手でつまんで回し,ピンチイン&ピンチアウトで拡大縮小するといった具合だ。

 VRコントローラでの操作性の良さも,DEMEOの特徴だったのだが,それが手になることで,直感性や没入感が劇的に高まった印象がある。以下にVision Pro同士で行った実際のプレイ動画を掲載しておくので,イメージの一端を感じていただきたい。


 一方で,「手で操作する」ことには限界や課題もある。
 指の認識精度は100%ではないので,「フィギュアをつまんだはずなのに,つかめていない」とか,「うまく迷宮が動かせない」といったことも起きる。これは不具合だと思うが,現状,長時間プレイするほど起きやすい。
 快適さでは手での操作に劣るが,VRコントローラのボタン操作では,こうした問題はほぼ起きない。

 モーションやタッチによる操作は,VRコントローラに比べて「直感性と精度」という課題を抱えやすい。Vision Proのゲームで起きていることは,スマートフォンやタブレットで起きているものと,同じ性質のものなのだ。

 一方で,コントローラではなく手での操作であることを,活かしたゲームもある。
 「DapTap」というゲームは,言ってしまえば「Beat Saver」のフォロワーであり,楽曲に合わせてブロックを壊していくリズムゲームである。Beat Saverは,VRコントローラ操作での快適さと,広い空間を活かしたプレイが特徴だ。ただ,Vision Proはコントローラを使っていないし,重量やケーブルの問題もあるのでBeat Saverと同じプレイ感は再現しづらい。
 そこでDapTapは,テーブルと手を認識して,「テーブルを手で叩く」という操作を持ち込んだ。これは,Vision Proの特徴をうまく活かしたゲームと言えるだろう。

Vision Pro用のリズムゲーム「DapTap」。いわゆるBeat Saverフォロワーだが,テーブルと手を認識してゲーム内に持ち込んでいるところが,Vision Pro向けらしい
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イマーシブなコンテンツ体験「What If...?」


 Vision Proには,日々いろいろなアプリが登場している。ゲームではないが,ゲーム的な体験を活かした映像アプリケーションとして先日公開されたのが,ディズニー/マーベルによる「What If...?」(以下,What If)だ。

 マーベルファンなら知っている人も多いと思うが,What Ifは,マーベル世界で「もし世界がこの方向に進んだら」を描くアニメーションシリーズである。Disney+向けのオリジナル作品として作られたものだ。
 Vision Pro向けのWhat Ifは,その設定を引き継ぎつつ,インタラクティブな3Dムービーとして作られたもの。現在は無料で公開されており,Disney+の会員登録も不要だ。

 本作は,Vision Proでのリアルタイムレンダリングを活かしてストーリーが作られており,手をかざしてシールドにしたり,キーアイテムである「インフィニティ・ストーン」にアクセスしたりして,ストーリーに介入できる。ストーリーへの介入自体は,ミニゲームに過ぎず,そこまで面白いものではないのだが,ストーリーに入り込んでいく没入感はさすがだ。

Vision Pro専用アプリWhat Ifの画面
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 Vision Pro版What Ifを開発しているのは,Lucas Film傘下の企業Industrial Light & Magic(ILM)のXR部門である「ILM Immersive」だ。スター・ウォーズ・フランチャイズのXR向けタイトル「Vader Immortal: A Star Wars VR Series」や「Star Wars: Tales from the Galaxy's Edge」などを作ったデベロッパである。

 ディズニーとAppleは関係が深く,実質的にディスニー傘下であるILM Immersiveが,Vision Pro向けにアプリを作るのは不思議なことではない。逆にいうと,そういう関係性を使ってデモンストレーション的なアプリを作る必要性があるくらい,「Vision Proでなにができるのか」をアピールしたい時期である,ということなのだ。


今後XRで一般的になる体験を高価なハードで先取り


 アプリや使用感の話から理解してもらえると思うが,Vision Proは使用感が良い。画質も操作性の面でも,現在ある機器の中では最良だ。

 空間コンピューティング,とAppleは呼んでいるが,その目指すところはいわゆるXRに「近いがイコールではない」。3Dを活かした,イマーシブで「すべての空間を,ひとつの体験で書き換える」ようなアプリもあるが,それよりも「空間にアプリを配置して使う」体験が多い。仮想空間を産むことよりも,「現実空間の空きスペースを活用する」ことを念頭に置いた機器と言える。
 それを「画面の中の体験としては多くの人が良いと思える」ところを目標に作ったのがVision Pro,ということになる。冒頭に挙げた価格も重量も,「軽くして快適にする」「安くして買いやすくする」ことよりも,品質を重視したゆえの選択である。

 価格にしろ重量にしろ,技術が進化すれば一定の解決策には近づく。2010年に発売となった初代iPadは,9.7インチサイズで重さは約680gもあった。だが最新の「iPad Pro」2024年モデルになると,サイズが近い11インチモデルで約446gまで軽くなっている。Vision Proの後継,あるいはバリエーションとなる機器は,iPadよりも短期間で軽量化していくだろう。

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 価格が下がって軽量になれば,iPadの上位版として,もしくはMacのコンパニオンデバイスとして購入する選択肢も出てきそうだ。それまで購入を待ってもいいし,Metaなどのライバルが画質・品質を上げていくのを待ってもいいだろう。約60万円からという価格は,やはり大きなハードルだ。
 とはいえ,今買うと,「他にない品質」というインパクトのある体験ができる。ディスプレイ解像度などの部品単位でなら,他社が追いつくのも難しくないが,Vision ProのOSである「visionOS」が提供している体験に追いつくには,相応の時間が必要になるだろう。

 WWDC24でAppleは,Vision Pro用のOS「visionOS 2」も発表している。現状のOSは,「とりあえずできることを先に実装した」印象が強く,本気を出すのは,2024年中にリリースされるvisionOS 2からだろう。
 そこでの進化の面白さも含めてが,Vision Proの価値と考えるのが妥当であり,「進化の先取りにお金を払う人」に向けた製品,と筆者は考えている。

AppleのVision Pro製品情報ページ


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