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[TGS2022]ついに日本上陸した小型ゲーム機「Steam Deck」を先行体験。触ると欲しくなる立派なポータブルゲームマシンだ
Steam Deckの中身は,AMDプラットフォームベースの小型PCであり,この手のアイテムは,ガジェットオタクが大喜びして飛びつくのがお約束だが,今回のブースでは,それ以外の若い男女が目立っていた。「スマートフォンは持っているが,デスクトップPCは置きたくない。さりとてゲーマー向けノートPCは高い……」と感じている層に刺さっている可能性も高そうだ。
すでに発表済みではあるが,簡単におさらいしておくと,Steam Deckの国内ラインナップは,ストレージ容量と付属品の違いで3種類ある。ストレージ容量64GB版が税込5万9800円で,256GB版が7万9800円,512GB版は9万9800円だ。64GB版でも,ストレージ消費の少ないインディーズゲームだけならば対応できるだろうが,「AAAタイトルを遊びたい」となったら,インストールさえできない可能性がある。少なくとも,256GB版以上を検討するようにお勧めする。なお,microSDXCカードによるストレージの追加は可能だ。
小型ゲームPCとしては「大変良い」
それでは,Steam Deckのインプレッションに入ろう。
小見出しでも記しているように,筆者の印象は大変良い。ゴロゴロと寝転がってプレイできるので,カジュアルにPCゲームを楽しむのにいい。出先でのPCゲーム環境としてもぴったりだ。「iPhone 14 Pro Max」をポチってなかったら,迷わずSteam Deckを買っていたであろう。
公称本体サイズは298(W)×117(D)×49(H)mmで,公称本体重量は約669g。横幅はほぼA4コピー用紙の長辺(297mm)と同じだが,やや腕を開いた状態で保持する持ち方のおかげか,短時間なら重さは意外と感じにくかった。試遊中の女性を見ても,重そうにしている様子はなく,ほどよい重量と感じる人が多いのではなかろうか。
ディスプレイサイズは7インチで,解像度1280×800ドットのIPS方式液晶パネルを採用する。最大リフレッシュレート60Hzで,タッチ操作も可能だ。4コア8スレッドでZen 2世代のCPUコア(※動作クロックは2.4〜3.5GHz)と,リアルタイムレイトレーシングに対応する「RDNA 2」アーキテクチャのGPUコア(※動作クロックは1〜1.6GHz)からなるAMD製APUでありながら,「ELDEN RING」や「DEATH STRANDING DIRECTOR'S CUT」(以下,DEATH STRANDING)といった処理性能を要求するタイトルも,解像度が低いこともあってか,ややグラフィックス設定を落とせば十分プレイできた。
画面サイズが小さいおかげで,グラフィックス設定の低さが意外と気になりにくいのも功を奏しているのだろう。
入力インタフェースは,見てのとおりキーボードは備えておらず,十字キー(D-Pad)と2つのアナログスティック,左右に1つずつのタッチパッド,そして[A/B/X/Y]ボタンなどからなる。
まず十字キーだが,意外にしっかりした入力感があり,押し心地はなかなか良好だ。問題はレイアウトで,左アナログスティックのほぼ真横にあるため,とりわけ十字キーの右入力がやや窮屈だった。また,アナログスティックを使いつつ,十字キー操作を一瞬だけ押すといったときが辛い。
逆に,タッチパッドは左右にあるため,空いているほうの手で操作可能だ。
右側のボタン類はどうだろう。右アナログスティックの真横に[A/B/X/Y]ボタンが配置されているが,十字キーのような問題は感じないと思う。また[A/B/X/Y]ボタンは,意外に安っぽくはなく,ほどよい入力感もある。
本体上側面に目を向けると,[L/R]ショルダーボタンと[L/R]トリガー,「電源/スリープ」ボタン,そしてUSB Type-Cポート,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子,音量調整ボタンが並んでいた。USB Type-Cポートが上側面にあるため,充電しながらゲームをプレイすると,ケーブルが気になるかもしれない。
なお,上側面中央には排気孔があるのだが,これについては後述するとして,他の側面を見ていこう。
本体の底面側には,パドル式の追加ボタンが左右に2つずつ,計4つあり,任意の操作(キー入力)を割り振れる。左アナログスティックを操作しながら十字キーを入力するのはシビアなので,追加ボタンをうまく活用するとよさそうだ。
ただ,底面の追加ボタンは,グリップに近い位置にあるため,指の長さによっては,握り込むと誤入力となりやすいかもしれない。筆者の場合はとくに問題なしだったが,手指の大きさ次第では問題を感じることもあり得るだろう。
ELDEN RINGでSteam Deckの感触を確かめる
長くなったが,以上を踏まえたうえで,プレイフィールの確認をしてみよう。
タイトルはお馴染み「ELDEN RING」だ。これは,キレイな画面で遊ぼうとすると,かなり高いグラフィックス性能を要求するうえ,映像の雰囲気を知る人が多いので,イメージしてもらいやすいだろうということでのチョイスだ。筆者が最近,ELDEN RINGで裸メイスの旅をしていると言った事情もある。
まず,次の写真を見てほしい。遠景の軽いボケ感はないものの,7インチサイズの画面で遊ぶには十分な映像品質だ。
アナログスティックでの移動やダッシュ,カメラ操作は問題なく,[L/R]ショルダーボタンやトリガーでのアクションも問題なし。だが,やはり十字キーの位置に難があった。先述したように,背面の追加ボタンでフォローするしかないだろう。
また,プレイ時間は10分ほどだったが,TGS会場の騒音の中でも,かすかに排気ファンの風切音が聞こえた。処理負荷の高いゲームをプレイするときは,それなりの騒音が出ることを覚悟する必要はありそうだ。
最後に熱のことも触れておこう。小型ゲームPCの宿命であるが,どうしても排気孔周辺が熱を帯びる。プレイ中に手が触れる可能性はまずないので,過度に気にする必要はないのだが,熱による処理性能の低下や,不意のシャットダウンを不安視する人も出てくるだろう。
会場で,Steam Deckの本体に詳しい人物を捕まえることができたので,あれこれ質問してみた。
まず,AAA級のタイトルを4時間ほど遊んでも,熱によって突然シャットダウンしたり,明らかに性能が落ちたりといった現象は,確認していないとのこと(もちろん,周囲の気温は関係してくるが)。TGS会場にあるSteam Deckは,充電→試遊→また充電と無理をさせているが,ビジネスデイ1日目の午前中でも故障はしていないそうだ。試遊は15分サイクルなので,午前中だけでもタフな運用と言えよう。
一方で,複数のゲームを同時に起動できるため,たとえば,ELDEN RINGとDEATH STRANDINGをどちらも動作させるとシステムが固まる。そのあたりはユーザー側で加減してほしいとのことだった。
触ると欲しくなるガジェットがSteam Deckだ
Steam Deckは,プレイ中に用事ができたらスリープし,用事が済んだらスリープ解除ですぐに続きからといった具合に,PCというよりも,携帯ゲーム機的な運用が可能で,この点は魅力的だ。筆者の場合「今は,ほとんど家にいるし,これはスルーでいいだろう」と思っていたのだが,今回のハンズオンを体験したことで,Steam Deckが猛烈に欲しくなっている。平素からSteamでゲームを購入している人ほど,同じように感じやすいと思う。「PCゲームをやりたいけれど,円安もあって導入にかかる費用が……」と悩んでいるスマホゲーマーにも,Steam Deckはちょうどいい存在だ。ともあれ,TGS 2022に足を運ぶ機会があれば,まずは試してみてほしい。
KOMODOのSteam Deck販売ページ
ValveのSteam Deck製品情報ページ
4Gamerの東京ゲームショウ2022特設ページ
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