
レビュー
期待のミドルハイ市場向けRTX 5070 Tiの実力はいかに?
Gainward Gainward GeForce RTX 5070 Ti Phoenix
そんなRTX 5070 Tiのレビューが解禁となったので,Gainward製グラフィックスカード「Gainward GeForce RTX 5070 Ti Phoenix」(以下,RTX 5070 Ti Phoenix)を使用して,RTX 5070 Tiの実力を確かめてみたい。
![]() |
RTX 5080と同じGB203コアを採用するが,SM数は14基少ない
まずは,RTX 5070 Tiのスペックを確認しておこう。
RTX 5070 Tiは,RTX 5080と同じ「GB203」コアを採用する。そのため,TSMCの4nm 4Nプロセスで製造される点や,ダイサイズ378mm2に約456億個のトランジスタを搭載している点は同じだ。
前世代の「GeForce RTX 4070 Ti」(以下,RTX 4070 Ti)の「AD104」コアと比較すると,ダイサイズは約28%ほど大きくなり,トランジスタ数も約27%ほど増えている計算になる。しかし,「GeForce RTX 4070 Ti SUPER」(以下,RTX 4070 Ti SUPER)の「AD103」コアと比べると,ダイサイズやトランジスタ数に大きな変化はない。
RTX 5070 TiとRTX 5080の違いは,ミニGPU(GPUクラスタ)「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)の数だ。Blackwellアーキテクチャでは,シェーダプロセッサである「CUDA Core」を128基と,L1キャッシュメモリやテクスチャユニット,レイトレーシングユニットである「RT Core」を1基,さらにAI処理向けアクセラレータの「Tensor Core」を4基まとめて,1基の「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)としている。
Blackwellでは,SMを12基束ねて1基のGPCとしており,RTX 5080は,GPCを7基有していた。一方で,RTX 5070 Tiは7基のGPCのうち1基を無効化した6基となっており,残る6基のうち1基では,SMが2基減らされているのだ。つまり,RTX 5070 TiのSM総数は,12×6−2で70基となり,CUDA Coreの総数も128×70で8960基となる。RTX 5070 TiのCUDA Core数は,RTX 5080(1万752基)の約83%程度の規模だ。
Blackwellベースなので,RTX 5070 TiのRT Coreも第4世代に進化している。その数は70基で,NVIDIAによるとその公称スループットは133.2 RT TFLOPSとのこと。RTX 5080が171 RT TFLOPSだったので,その約78%に留まっているが,「GeForce RTX 4080 SUPER」(以下,RTX 4080 SUPER)と比べても約10%ほど高くなっており,RTX 4070 Ti比では約44%も向上している計算になる。
一方,Tensor Coreも第5世代に進化しており,「DLSS 4」のマルチフレーム生成にも対応した。RTX 5070 TiのTensor Core数は280基で,公称スループットは1406 AI TOPSだ。これはRTX 5080の約78%で,RTX 4080 SUPERからは約68%,RTX 4070 Tiからは倍以上の向上をはたしている。
![]() |
![]() |
![]() |
なお,後述するテスト環境において,負荷をかけた状態のコアクロックを「GPU-Z」で追ってみたところ,2482MHzまで上昇しているのを確認した。同じテストでRTX 5080は2820MHzまでクロックが上昇していたので,RTX 5070 Tiはかなり動作クロックを抑えている印象だ。
RTX 5070 Tiでも,グラフィックスメモリにGDDR7が組み合わせている点は,RTX 5090やRTX 5080などと同じだ。メモリインタフェースは,RTX 5080と同じ256bit幅だが,メモリクロックは28GHz相当である。ここから計算すると,RTX 5070 Tiのメモリバス帯域幅は896GB/sとなり,これはRTX 5080の960GB/sと比べて約93%になる。一方,RTX 4080 SUPERの736GB/sからは約22%,RTX 4070 Tiの504GB/sからは約78%と,前世代からは明確に向上している。
なお,RTX 5070 TiのL2キャッシュ容量は48MBで,これはRTX 5080の約75%に留まっており,RTX 4070 Ti SUPERやRTX 4070 Tiと同じだ。
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの「Total Graphics Power」(TGP)は300Wで,RTX 5080より60W少ない。なお,RTX 4080比では,TGPが20W減少しているものの,RTX 4070 Ti SUPERやRTX 4070 Tiからは15W増えている。そんなわけで,NVIDIAは,RTX 5070 Ti搭載PCでは,定格出力750W以上の電源ユニットの使用を推奨している。
RTX 5070 Tiの主なスペックを,今回のテストで比較対象とするRTX 5080,RTX 4080 SUPER,RTX 4080,RTX 4070 Tiと,比較には含まないがRTX 4070 Ti SUPERとともにまとめたものが表1となる。上位モデルと同様に,PCI Express 5.0をサポートしている点も,RTX 5070 Tiのトピックのひとつと言えよう。
![]() |
カード長は約331mmとかなり大きめ。動作クロックはリファレンス仕様
それでは,RTX 5070 Ti Phoenixのカードについて見ていこう。
![]() |
![]() |
外観は黒い箱のような形状をしており,側面の中央部にあるガンメタリック色のパーツには,「PHOENIX」のロゴがある。
![]() |
![]() |
カード長は実測で約331mm(※突起部含まず)だが,基板自体は180mmほどしかないようで,GPUクーラーがカード後方に150mm以上もはみ出す。基板がない部分は,表面から裏面へとエアーが抜ける流行りの構造をしている。
![]() |
![]() |
マザーボードに装着すると,ブラケットからカード上方に約25mmはみ出すので,RTX 5080 Founders Editionに比べると,かなり大きな印象を受ける。
![]() |
重量は実測で約1600gで,RTX 5080 Founders Editionから約53g軽くなっている。
![]() |
GPUクーラーは,3.5スロット占有タイプでかなり厚みがある。100mm径相当の「Cycloneファン」と称するファンを3基備えており,ブレードのエッジが折れ曲がったウイングチップという独特な形状をしている。Gainwardによると,ウイングチップによってエアフローをまとめることで,冷却効果が高まるという。
「ゼロRPMファン」と呼ばれる機能により,GPUに負荷がかからない状態,いわゆるアイドル時にファンの回転を停止する機能もある。
![]() |
Gainward独自の設定ソフトである「EXPERTool 2」を用いると,ファンの回転数を30〜100%の範囲で固定できるほか,GPU温度とファンの回転数の関係を示したファンカーブから,任意の温度における回転数を自由に設定することも可能だ。なお,回転数設定はブラケット側(※つまり基板の真上)の1基と,それ以外の2基を,別々に設定できる。
![]() |
![]() |
RTX 5070 Ti Phoenixの動作クロック設定は,RTX 5070 Tiのリファレンス仕様どおりだ。EXPERTool 2を使用すれば,「OC MODE」「GAME MODE」「SILENT MODE」の3つの動作モードが利用できる。ただ,試用機ではどの動作モードに変えても,GPU-Zで確認した動作クロック設定は変わらなかった。このあたりは製品版で改善されると期待したい。
![]() |
![]() |
![]() |
映像出力インタフェースは,3系統のDisplayPort 2.1bと,1系統のHDMI 2.1bを装備。ブラケット面のほとんどをハニカム構造の排気孔が占めているあたりは,最近のグラフィックスカードでよく見る構成だ。
![]() |
モンハンワイルズ ベンチマークを追加。DLSS 4の性能もチェック
それではテスト環境について説明しよう。
先述したとおり,今回はRTX 5070 Tiの比較対象として,同世代の上位モデルであるRTX 5080と,前世代で性能的に近いであろうRTX 4080 SUPER,RTX 4080,RTX 4070 Tiを用意した。上位モデルとの性能差を見つつ,前世代のGPUと比べてどの程度の性能があるかを確認しようというわけだ。なお,残念ながらRTX 4070 Ti SUPERは,テスト期間中に用意できなかった。
使用したグラフィックスドライバは,「GeForce 572.43 Driver」で,これはRTX 5070 Tiのレビュー用としてNVIDIAから配布されたものだ。本稿執筆時点におけるNVIDIA公式ドライバは,「GeForce 572.42 Driver」なので,これはそのRTX 5070 Ti対応版と捉えるのが妥当だろう。それ以外のテスト環境は表2のとおり。
CPU | Core i9-14900K(P-core 定格クロック3.2GHz, |
---|---|
マザーボード | ASRock Z790 Steel Legend Wi-Fi |
メインメモリ | Corsair VENGEANCE RGB DDR5 |
グラフィックスカード | Gainward GeForce RTX 5070 Ti Phoenix |
GeForce RTX 5080 Founders Edition |
|
GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition |
|
GeForce RTX 4080 Founders Edition |
|
Palit Microsystems GeForce RTX 4070 Ti Gaming OC |
|
ストレージ | CFD CDDS-M2M1TEG1VNE (NVMe,1TB) |
電源ユニット | CoolerMaster V1200 Platinum(定格1200W) |
OS | Windows 11 Pro 24H2 |
チップセットドライバ | Intel チップセットINFユーティリティ |
グラフィックスドライバ | GeForce:GeForce |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション30に準拠。ただ,次期レギュレーションを先取りする形で,「バイオハザード RE:4」に代えて「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」(以下,モンハンワイルズ ベンチ)を用意。「Fortnite」も,使用するグラフィックスAPIをDirectX 11からDirectX 12に変更している。
モンハンワイルズ ベンチでは,「ウルトラプリセット」を指定。そのため,「アップスケーリング(超解像技術)」では「NVIDIA DLSS」を使用するが,フレーム生成は「OFF」のままとした。また,レイトレーシングの項目を「高」に変更している。
なお,同ベンチではスコアと平均フレームレートしか得られないため,別途「CapFrameX」(Version 1.7.4)を併用して,ベンチマーク実行中の1パーセンタイルフレームレートを計測している。
Fortniteは,グラフィックスAPIを変更しただけで,設定やテスト内容は従来と同じだ。
そのほかに,RTX 5070 TiのDLSS 4性能をチェックするため,「NVIDIA DLSS feature test」と「Cyberpunk 2077」のテストを追加している。
3DMarkは,NVIDIAが用意した特別版(Version 2.32.8360)を用いた。NVIDIA DLSS feature testでは,「Super Resolution」で「Quality」を選択したうえで,「DLSSバージョン」から「DLSS 4」および「DLSS 3」を指定。「Frame generation」の項目で「2x/3x/4x」に変更してテストを実施している。
Cyberpunk 2077は,RTX 5080のテストとは異なり,「パッチ2.21」を適用したものだ。描画負荷が最も大きい「Ray Tracing: Overdrive」プリセットを選択したうえで,「DLSS Super Resolution」を「Quality」に指定。DLSS Multi Frame Generationの設定を適宜変更しながら,ゲームに用意されたベンチマークモードを実行している。
なお,ゲームのテスト解像度は,いつもどおり3840×2160ドット,2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つを選んでいる。
RTX 5080の8割強の性能を発揮。RTX 4080と同等か少し下の性能
それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。Fire Strikeの総合スコアをまとめたものがグラフ1となる。
![]() |
RTX 5070 Tiのスコアは,RTX 5080の82〜95%程度で,テスト解像度が高くなるにつれて差が広がっている。RTX 4070 Tiには2〜21%程度の差を付けるものの,RTX 4080 SUPERに1〜5%程度離されて,RTX 4080にもわずかではあるが届いていない。
次に,DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果を見てみよう(グラフ2)。
![]() |
RTX 5070 Tiのスコアは,RTX 5080の84〜86%程度といったところ。RTX 4070 Tiには10〜12%程度の差を付けて優位に立つ。RTX 4080には迫ってはいるが,4〜6%程度の差をつけられたままだ。
新世代のDirectX 12テストである「Steel Nomad」の結果が,グラフ3だ。
![]() |
RTX 5070 TiとRTX 5080の差は約10%で,RTX 4070 Tiには約18%の差を付けた。しかし,RTX 4080には約9%の開きがある。RTX 4080より若干下という位置付けは,Fire StrikeやTime Spyと同じ傾向だ。
その一方で,少し異なる結果が出たのがグラフ4の「Speed Way」だ。
![]() |
RTX 5070 Tiのスコアが,RTX 5080の約82%というのは,Time Spyなどと同様の傾向だ。RTX 4070 Tiを約32%も引き離し,RTX 4080を約4%ほど上回った点は評価できよう。Speed Wayは,DirectX 12 Ultimateに対応しており,グローバルイルミネーションやレイトレーシングによる反射の描画なども行うため,RT Coreの性能強化がRTX 5070 Tiのスコアを底上げしたのではないだろうか。
それは,リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果(グラフ5)からも見て取れる。
![]() |
RTX 5070 TiがRTX 5080の約83%というのは,これまでの傾向と大差ないものの,RTX 4070 Tiには約22%の差を付け,RTX 4080をも約5%離している。RTX 5070 Tiの優位性のひとつに,レイトレーシング性能の向上を挙げてよさそうだ。
グラフ6,7はNVIDIA DLSS feature testの結果だが,RTX 5090やRTX 5080と同様に,RTX 5070 TiもMulti Frame Generationの効果は良好だ。なお,RTX 4080 SUPERとRTX 4080,それにRTX 4070 TiはDLSS 4に対応しないので,DLSS 4のスコアはない。
![]() |
![]() |
NVIDIA DLSS feature testの結果から,Multi Frame Generationでどれだけフレームレートが上昇したかを計算してみよう。RTX 5070 Tiは,補間フレームが1枚の「2x」で2.5〜3.1倍ほど。これはRTX 5080の結果とほとんど同じだ。補間フレーム2枚の「3x」では3.5〜4.4倍。補間フレーム3枚の「4x」では4.3〜5.8倍となり,RTX 5070 TiとRTX 5080では,Multi Frame Generationの効果は同程度と言っていい。
DLSS 3におけるフレームレートの上昇率も見てよう。RTX 5070 Tiの結果は,2.4〜3.0倍でRTX 5080と変わらず,RTX 4080 SUPERやRTX 4080,RTX 4070 Tiと同程度の伸びしか見られない。つまりRTX 5070 Tiは,Multi Frame Generationが利用できる以外では,Tensor Coreの進歩はあまり感じられない。
実際のゲームではどうなのだろうか。グラフ8〜10は,「Call of Duty: Modern Warfare III」(以下,CoD:MW3)の結果となる。
![]() |
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,RTX 5080の87〜89%程度。RTX 4070 Tiには,9〜10%程度の差を付けた。RTX 4080に対しては,2〜8%程度の差を付けられている。
1パーセンタイルフレームレートを見ても,RTX 5070 Tiは,RTX 5080の86〜90%程度のスコアで,RTX 4080との差も1〜11%程度ある。ただ,3840×2160ドットで,RTX 5070 Tiは常時60fps以上の性能を発揮している点は評価できよう。
グラフ11は,初お目見えとなるモンハンワイルズ ベンチのスコアをまとめたものだ。
![]() |
カプコンは,モンハンワイルズ ベンチのスコアに関して指標を公開していないものの,いくつかのGPUで実行してみたところ,スコア2万以上で「非常に快適にプレイできます」という最高評価となるようだ。
それを踏まえると,RTX 5070 Tiは3840×2160ドットでもそれを満たしている点はさすがである。RTX 5080との差は5〜15%程度で,高解像度になるにつれて離されていく印象だ。また,RTX 4080との差は最大で約3%と,上回ってはいないが,いい勝負を演じている点も見どころと言えよう。
グラフ12〜14は,そのモンハンワイルズ ベンチにおける平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートの結果となる。
![]() |
![]() |
![]() |
平均フレームレートは,スコアを踏襲した結果となっているが,1パーセンタイルフレームレートを見ても,RTX 5070 TiはRTX 4080と肩を並べている。「非常に快適にプレイできます」という評価どおり,RTX 5070 Tiは,3840×2160ドットでも,1パーセンタイルフレームレートが40fpsを超えている点は注目に値する。
Fortniteの結果をグラフ15〜17に示す。
![]() |
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,RTX 5080の84〜89%程度だが,RTX 4070 Tiは11〜21%程度引き離して,RTX 4080に迫る勢いを見せている。RTX 5070 Tiの1パーセンタイルフレームレートも,RTX 5080の84〜89%程度で,やはりRTX 4080に近いパフォーマンスを発揮している。
グラフ18〜20が「Starfield」の結果だ。
![]() |
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,RTX 5080に3〜11%程度差を付けられるが,RTX 4070 Tiには,逆に7〜17%程度の差を付けている。RTX 4080との差も1〜2%程度しかなく,フレームレートでも差は最大で1.5fpsだ。本作におけるRTX 5070 Tiの性能は,RTX 4080とほぼ同程度と言っていい。
グラフ21は,「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(以下,FFXIV黄金のレガシー ベンチ)の総合スコアをまとめたものだ。
![]() |
スクウェア・エニックスが示す指標では,スコア1万5000以上が最高評価であるが,RTX 5070 Tiは,3840×2160ドットでそれに若干届いていない。RTX 5070 Tiのスコアは,RTX 5080の83〜93%程度。RTX 4070 Tiに対しては,最大約25%もの差を付けている。一方,RTX 4080には3〜6%程度届いていない。
そんなFFXIV黄金のレガシー ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものが,グラフ22〜24だ。
![]() |
![]() |
![]() |
平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものとなっているが,RTX 5070 Tiは,3840×2160ドットでも100fpsに迫っている点は評価できよう。また最小フレームレートは,CPU性能の影響が色濃くなるのだが,RTX 5070 Tiは,3840×2160ドットでも60fpsを上回っており,総合スコアは指標の最高評価に達していないものの,4K解像度での快適なプレイに支障はなさそうだ。
グラフ25〜27には,「F1 24」の結果をまとめている。
![]() |
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,RTX 5080の81〜89%程度。RTX 4070 Tiには,11〜18%程度の差を付けるものの,RTX 4080との差は6〜8%程度開いてしまっている。
一方,RTX 5070 Tiの最小フレームレートは,RTX 5080の80〜88%程度だが,3840×2160ドットで60fpsを上回った点は評価できる。しかし,RTX 4080との差は5〜10%程度あり,離され気味だ。
「Cities: Skylines II」の結果が,グラフ28〜30となる。
![]() |
![]() |
![]() |
RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,RTX 5080の84〜89%程度。RTX 4070 Tiは7〜12%程度引き離しているが,RTX 4080には1〜4%程度の差を付けられた。
また,RTX 5070 Tiの1パーセンタイルフレームレートは,RTX 5080の86〜88%程度だが,RTX 4080との差は最大でも1.7fpsしかなく,RTX 5070 TiはRTX 4080に肉薄していると言っていい。
さて,今回のゲームで唯一,DLSS 4に対応するCyberpunk 2077で,RTX 5070 Tiにおけるマルチフレーム生成の効果を確かめてみよう。グラフ31〜33が,その結果だが,文中とグラフ中ともに,DLSS Multi Frame Generationのフレーム生成倍率を,「RTX 5070 Ti FG 4x」といった具合に,FGの後ろに数字で示している。
![]() |
![]() |
![]() |
この結果を見ると,RTX 5070 Tiの平均フレームレートは,フレーム生成オフと比べてFG 2xで約1.8倍,FG 3xで約2.6倍,FG 4xで約3.4倍と,マルチフレーム生成で大きく伸びているのが明らかだ。フレームレートの上昇率も,RTX 5080と大差ない結果となっており,マルチフレーム生成の恩恵は,RTX 5070 TiとRTX 5080とでほぼ同じと言っていい。
また,RTX 5070 Tiの最小フレームレートも,平均フレームレートと同程度の伸びを見せており,マルチフレーム生成の恩恵はかなり大きい。
消費電力は300Wほどで,RTX 4080 SUPERやRTX 4080と同程度
さて,先述したとおり,RTX 5070 TiのTGPは300Wと,RTX 4080 SUPERやRTX 4080よりも低い値となっている。では,RTX 5070 Tiの実際の消費電力はどの程度なのだろうか。
そこで,今回はNVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。今回の計測も,3DMarkのTime Spy Extremeにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2の実行中に行った。
その結果をグラフ34に示そう。
![]() |
この結果では,RTX 5080が突出して高く,RTX 5070 Tiは,RTX 4080 SUPERやRTX 4080と大差ないように見える。ただRTX 5070 Tiは,RTX 4070 Tiよりも消費電力が増加していることは,ハッキリしている。
そこで,グラフ34の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求め,最大値と合わせてまとめたものがグラフ35となる。
![]() |
RTX 5070 Tiの中央値は300Wで,これはRTX 5080から30W以上も低い値だ。また,RTX 4080 SUPERやRTX 4080と比べても大きな差はなく,RTX 5070 Tiの消費電力は適度に抑えられていると言っていい。しかも,RTX 5070 Tiの最大値は340Wであり,RTX 4080 SUPERやRTX 4080よりもかなり低いのも好感が持てる。
次に,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測した結果も見てみよう。
テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。
その結果がグラフ36だ。
![]() |
ピーク値を結果として採用するため,どうしても差が開く傾向が出てしまう。それを踏まえて結果を見ていくと,RTX 5070 Tiは,RTX 5080から17〜49W程度低いものの,RTX 4070 Tiからは15〜52W増加していた。RTX 4080 SUPERとRTX 4080とは,あまり大きな差がない。
GPU-Zを用いて計測したGPU温度も確認しておきたい。,温度約24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。
GPUによって,温度センサーの位置や取得方法が異なっていることは想像に難くなく,またそれぞれファンの制御方法が違うため,同列に並べての評価にあまり意味はない。
それを踏まえた結果はグラフ37のとおり。
![]() |
RTX 5070 Tiは,高負荷時では70℃を下回っており,RTX 5070 Ti PhoenixのGPUクーラーの冷却性能が優秀なことが分かる。アイドル時は,ファンの回転が停止するため温度は上がるのだが,それでも40℃台前半に収まっているあたりも,GPUクーラーの優秀さを評価すべきだろう。
最後に,騒音計を使って,それぞれの動作音を比較してみたい。今回は,室内の音が41.6dBAの環境で,グラフィックスカードに正対する形で50cm離したところに騒音計を置いて,動作音を計測した。ここでもバラック状態でテストを行っているので,実際にケースに組み込んだ状態よりも動作音は大きくなることを断っておく。なお,アイドル時と高負荷時は,GPU温度を測定した条件と同じだ。結果はグラフ38となる。
![]() |
RTX 5070 Tiは,高負荷時でも43.6dBAと低めだ。RTX 5080が50dBAに届こうとしているのと比べると,RTX 5070 Tiは静かなのが分かるだろう。RTX 5070 Ti PhoenixのGPUクーラーは,静音性に秀でていると言っていい。
NVIDIAが想定する価格は14万8800円から。純粋な性能のインパクトは小さめ
RTX 5070 Ti搭載カードの価格は,NVIDIAによると14万8800円からのこと。しかし,RTX 5090やRTX 5080がそうであったように,RTX 5070 Tiも販売開始時に登場する製品は強気の価格になりがちだ。本稿執筆時点で判明している範囲でも,税込の実勢価格は17〜20万円程度と,NVIDIAが示す目安より高価である。
RTX 5070 Tiの性能は,RTX 4080と同程度か若干劣る程度で,前世代のRTX 4070 Tiから伸びていることは間違いない。つまり,RTX 5070 Tiの動作クロックを引き上げたクロックアップモデルであれば,RTX 4080を超える性能も実現するのではないだろうか。そのため,RTX 5070 Tiのクロックアップモデルは少し面白い存在になりそうだ。
![]() |
しかし,RTX 5070 Ti搭載のリファレンス仕様カードについては,RTX 4070 Ti SUPERの存在がネックとなるのは間違いない。今回はRTX 4070 Ti SUPERを用意できなかったが,過去のテストでは,RTX 4070 Ti SUPERの性能は,RTX 4070より1割程度高かった。それを踏まえると,RTX 5070 Tiの優位性は薄れてしまう。そのため,RTX 5070 Tiが持つ利点は,3DMarkのSpeed WayやPort Royalで見られたような第4世代RT Coreの性能向上と,第5世代Tensor CoreによるDLSS 4対応と言ってよさそうだ。ただ,それらに決して安くない対価を払えるかどうかが,RTX 5070 Tiの評価が分かれるポイントになるのではないだろうか。
今からRTX 4080やRTX 4070 Ti SUPERを買う人はいないだろうが,実勢価格の高さを考えると,RTX 5070 Tiには,前世代における上位モデルを食うぐらいの性能,つまりRTX 4080を超えるパフォーマンスが欲しかったところだ。
GainwardのRTX 5070 Ti Phoenix製品情報ページ
NVIDIAのGeForce RTX 5070シリーズ製品情報ページ
- 関連タイトル:
GeForce RTX 50
- この記事のURL: