インタビュー
異なる戦闘スタイルを持つ,2人の少女を切り替えながら戦うアドベンチャーゲーム「夢灯華 Noctuary」,開発陣へのメールインタビューをお届け
メインストーリーでは,天から降りてきた不思議な少女にまつわる真相を探る物語が展開されるほか,キャラクターが登場する20以上のサイドルートやクエストも用意されている。さらに本作には「祝福」というシステムがあり,旅のなかで少女たちと友情を深めると獲得できる「祝福」を組み合わせることで,戦闘スタイルを細かくカスタマイズ可能だ。
4Gamerは,そんな本作の開発元であるGratesca Studioにメールインタビューする機会を得たので,本稿にてお届けしよう。
とくに好きなのは脚本設定
「Noctuary」には勇気と勇敢さを感じます
4Gamer:
簡単な自己紹介と「夢灯華 Noctuary」における役割を教えてください。
こんにちは,Haoyu Chen(スティーブン)と申します。私は「Noctuary」の共同設立者兼エグゼクティブプロデューサーです。以前はUbisoft Shanghaiや,ほかの中国のスタジオで働いていました。
私はこの業界では多才なほうだと自負しています。大学では金融を専攻していましたが,独学でプログラミングのスキルを身につけました(絵にも挑戦してみたんですが,私には向いていないようです……)。QA,パブリッシング,プログラミング,戦闘デザインなどに至るまでゲーム制作のすべてを愛しています。
4Gamer:
どのような形で立ち上がったスタジオなのでしょうか。
Haoyu Chen氏:
2020年,Gratescaの創設者であるMisakiがコロナ禍の退屈しのぎのため,友人のアフリカ体験にインスパイアされたインディーゲーム(我々の最初のゲーム「FarAway」)を企画していました。
そこで,アニメ業界のベテランである彼は,ギャンブルゲームを作っていたプログラマー,マンガを描いていたアーティスト,まだ数学の学生だったデザイナーなどの友人たちをネットを使って集めたのです。
集まった仲間たちの息はぴったりで,コロナ禍が落ち着きつつあった2021年に,本格的なスタジオを立ち上げることにしました。
4Gamer:
もともと何人ぐらいでゲーム開発をはじめ,最終的にはどれくらいのチームになりましたか。
Haoyu Chen氏:
当初のメンバーは,上記で触れた以外の熱心なゲーム制作者も含めての6〜8人ほどで,そのメンバーで「FarAway」を制作しました。私たちのチームは,プレイ時間や市場への影響力の両方において,より大きなゲームを作れると確信していたため,「FarAway」のリリースと同時に,より3D戦闘要素を追加した「Noctuary」を企画し,3Dアートコンテンツや戦闘システムを担当するメンバーを増員しました。
最終的に「Noctuary」を完成させたときには私たちのチームは約40名ほどになっていました。
4Gamer:
「夢灯華 Noctuary」の構想自体はいつごろからあったのかを教えてください。
クリエイティブ・ディレクターのキャリーは,成都の街をぶらぶらしながら,次のゲームの売り込み方を模索しているとき,街角のランプを見て,もしすべての灯りが人だったらどうなるのだろうと考えました。そこで彼は,太陽はないけれど,生き物が自分で光を放つことができる世界を思いつき,その社会構造などの構想を思いつきました。
4Gamer:
「夢灯華 Noctuary」でこだわったポイントは何でしょうか。
Haoyu Chen氏:
多すぎると言っていいほど,たくさんあります。会話イベント,BGM,キャラクターデザインも推しますが,個人的に好きなのは脚本設定です。2023年の私の生活は決して楽ではありませんが,光使たちが光も未来もない世界に立ち向かわなければならない「Noctuary」には,勇気と勇敢さを感じます。
4Gamer:
「夢灯華 Noctuary」を世界中のプレイヤーに楽しんでもらうために,「ローカライゼーション」や「カルチャライゼーション」で工夫したことをお聞かせください。
Haoyu Chen氏:
中国語を他言語へ翻訳するのが難しいというのは承知の上ですが,原文のエッセンスを100%反映できるよう努めています。 私たちは例えプレイヤーが言葉の意味を理解できなくても十分な没入感を得られるよう,会話イベントを常に改良しています。
また,ゲーム中に登場するアイテムの記号的なデザインにも力を入れました。その記号がどこで登場しても,世界中で共通したイメージが連想されるように制作しています。さらに,光使のための言語も作り,ゲーム内の標識などあらゆるものにちりばめました。
4Gamer:
開発で苦労した点を教えてください。
Haoyu Chen氏:
ビジュアルノベルとペースの速い戦闘を組み合わせたゲームはあまりありません。私たちはこの2つの要素をうまく融合できるよう全力を注ぎました。完璧な仕上がりとは言いませんが,戦闘と物語の相性は良く,ゲーム全体をとおして一貫した雰囲気作りができたと確信しています。
4Gamer:
中国と世界中のプレイヤーとの文化の相違のバランスをどのようにして調整したのでしょうか。
Haoyu Chen氏:
おそらく中国のプレイヤーにしか伝わらないミームもあるとは思いますが,本作の物語で一番大事なのはその悲哀に満ちたメッセージ,とでも言いますか……。
プレイヤーがどの国の人であっても,キャラクターたちの持つそれぞれの信念に心打たれ,それらのいずれもが善と悪で分けられないと感じると思います。なので私たちはこのゲームには,文化に関わらず伝わるものがあると思っています。
4Gamer:
中国のプレイヤーと,海外のプレイヤーとで反響の違いはありましたか。
Haoyu Chen氏:
はい,反響の違いはすごく感じますね。私たちが最初に制作したゲーム「FarAway」(ほかの国ではまだリリースされていません)が中国のプレイヤーの間で大好評なので,続編を常に期待されています。
彼らを今の時点で落胆させるつもりではないのですが,ゲームクリエイターとして,私たちは常に新しい物語や設定を作りたいと思っています。なので「FarAway2」は将来,私たちが十分な心構えができたときに作るかもしれないとだけ言っておきます。
4Gamer:
現在ボイスは中国語のみですが,今後,日本声優の起用などボイスを実装する可能性はございますか。
Haoyu Chen氏:
はい,ぜひとも実装したいです。四川語(私たちのスタジオがある成都の言葉:パンダが住んでいるところ)ボイスの実装も夢見ています。私にとって,声をつけることは作品を新たに作り直すようなものだと思っています。私たちのゲームの世界に生き生きと入り込んでくださる才能のある声優さんには,いつもわくわくさせられます。
4Gamer:
世界市場で勝負するうえで課題と感じていることがあれば教えてください。
Haoyu Chen氏:
私たちはプロモーションはあまり得意ではありませんが,母国では友人や家族がいますから,評判はすぐ広まってくれます。ファンの皆さんも,私たちの個性や熱意を,ちょっとしたメディアの動きからでも感じてくださります。しかし,グローバル市場においては私たちのイメージを一から作り上げていかなければなりません。また英語やほかの言語でありのままの私たちを伝えることが出来ないのではないかと心配しています。
4Gamer:
Gratesca Studio全体として今後の目標をお聞かせください。
Haoyu Chen氏:
あらゆる面で素晴らしい経験ができるAAAタイトルのような,大きなゲームを作りたいです。ビジュアルノベルに戦闘を加えたかったのもそのためです。影響力のあるタイトルを作ることができるようになったら,もっと中国の文化や万国共通の価値観に言及していければと考えています。
4Gamer:
日本のゲームファンへのメッセージをお願いします。
Haoyu Chen氏:
日本のファンの皆さん,こんにちは! 「Noctuary」をご購入いただき,また遊んでいただきありがとうございます。私たちはいつも東アジア文化には共通した価値観があると信じているので,皆さんの「Noctuary」の解釈をとても楽しみにしています。最近日本語を勉強しているので,皆さんからのメッセージをすべて自分で読んで理解できるようになりたいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
- 関連タイトル:
夢灯華 Noctuary
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