「ユニコーンオーバーロード」のオーケストラコンサートをレポート。ゲーム本編に沿って，解放軍の軌跡を追体験する選曲に

　2025年3月2日，アトラスが協力・監修した「ユニコーンオーバーロード オーケストラコンサート」が，東京・すみだトリフォニーホール 大ホールにて開催された。
　本公演は，シミュレーションRPG「ユニコーンオーバーロード」（PlayStation 5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch / PlayStation 4）が発売1周年を迎えること，そして全世界累計販売本数が100万本を突破したことを記念して企画されたもの。本稿では，当日2公演行われたうち，2nd公演の模様をレポートする。

「ユニコーンオーバーロード オーケストラコンサート」特設サイト

「ユニコーンオーバーロード」公式サイト

「ユニコーンオーバーロード オーケストラコンサート」 2nd公演概要

■セットリスト
・前半
　メインテーマ
　プロローグ 〜 暗雲 〜 幕開け メドレー
　コルニアフィールド
　コルニアステージ
　コルニアバトル
　敵将との戦い
　ステージクリア
　平穏 〜 追憶 メドレー
　ドラケンガルドステージ 〜 竜の国を継ぐ者 メドレー
　エルヘイムフィールド（昼） 〜 エルヘイムステージ メドレー
　ガレリウスのテーマ 〜 バルトロのテーマ メドレー
　エルヘイムステージ 〜 魔女の言の葉 メドレー

・後半
　食卓の賑わい
　バウムラッテ闘技場
　バストリアスフィールド（昼）
　バストリアスバトル 〜 一炊の夢 メドレー
　アルビオンフィールド（昼） 〜 大聖堂への道 メドレー
　アルビオンバトル
　アレインのテーマ
　契約の儀式
　一角獣の覇王 メドレー
　Farde mal diavolo, 〜悪を滅し，来たれり〜
　Haades, 〜戴冠式〜
　So We Sing 〜 Fin メドレー

・アンコール
　パレヴィア島
　メインテーマ

■日程
　2025年3月2日

■会場
　すみだトリフォニーホール 大ホール

■出演（敬称略）
・演奏
　橘 直貴（指揮）
　TOKYO Chamber Orchestra（オーケストラ）
　ユリカリパブリック（ヴォーカル＆コーラス）
　國土佳音（コーラス）
　Voces Tokyo（コーラス）
　野口明生（ホイッスル）
　中村大史（ギターほか）
　壷井彰久（フィドル）
　常石さやか（チター）
　瀬戸一王（ピアノ）

・トークゲスト
　金田充弘，武田十季，Richter，Denys Fontanarosa（ベイシスケイプ）
　野間崇史（ヴァニラウェア）

・MC
　磯村知美

主催：ANY（J:COMグループ）
協力・監修：アトラス
譜面製作：ベイシスケイプ

　公演は，「ユニコーンオーバーロード」本編のストーリーに沿って，新生ゼノイラ帝国に支配された5つの国家をコルニア解放軍が巡る流れで進行した。
　メインテーマおよびプロローグで使われた楽曲のメドレーのあとには，豊かな地であるコルニア王国を彩った3曲が次々に披露され，スクリーンに映し出されたゲームの映像と共に来場者を惹き込んでいく。


　続くボスバトル曲，ステージクリア曲で一段落ついたあとには，最初のトークコーナーが設けられ，ゲストとして「ユニコーンオーバーロード」の開発を担当したヴァニラウェアの野間崇史氏と，楽曲を手がけたベイシスケイプの金田充弘氏が登壇。
　野間氏は，自身が開発したゲームの楽曲がオーケストラで演奏されるとは夢にも思っていなかったとし，感動しているとしつつも「大変だったなと作っていた当時を思い出し，情緒がおかしくなる」と感想を述べていた。

野間崇史氏

　金田氏は，オーケストラコンサートの話を聞いたときにかなりビックリしたうえに，公演スケジュールを見て「早いな，どうやって準備するの？」と焦ったことを明かし，そのあとジワジワうれしさがこみ上げてきたと語った。

　また金田氏によると，楽曲制作の最初の打ち合わせで，すでに絵的な資料がそろっており，それらと世界観を踏まえて野間氏らと相談しつつ，メインテーマを作っていったとのこと。
　その制作期間は1か月半にも及んだため，野間氏にとって思い入れのある楽曲となっているそうだ。

　本作は10年をかけて開発されたことが知られているが，金田氏によると楽曲制作にも4〜5年の年月がかかっているという。ただ，期間中ずっと本作の楽曲ばかりに携わっていたわけではなく，節目ごとに集中して作っていたとのこと。

金田充弘氏

　野間氏は本作にてディレクション，キャラクターデザイン，ストーリー，プログラム監修とさまざまな部分を担当しているが，「結果的にいろいろやることになった」と語る。
　一方，金田氏も楽曲制作だけでなく，イベントに楽曲を付けるためのスクリプトを書いていたことを明かした。野間氏によると自身やプランナー陣が手一杯で，金田氏に依頼することになったそうだ。

　また野間氏は，リリース後のほうが本作のイラストを描く機会が増えたとのこと。今回の公演に使われたキービジュアルも手がけており，本作のキャラクターがそれぞれ楽器を持っている点について，金田氏が「手までしっかり描かれていて感動した」と感想を述べると，野間氏は「ユニコーンオーバーロード Acoustic Arrange Album」のジャケットイラストを描いたときに「リュートの角度がおかしい」と指摘され，きちんと調べて直したというエピソードを明かした。

本公演のキービジュアル

　続いてアコースティックギターなどをフィーチャーした「平穏」と「追憶」のメドレー，竜の国・ドラケンガルドの力強い楽曲，エルフの国・エルハイムのミステリアスで神秘的な雰囲気を漂わせる楽曲が次々に演奏された。
　そして主人公・アレインの宿敵である皇帝ガレリウスとバルトロのテーマで不穏さや手強さを表現したあとに，再びミステリアスで，激しさを感じさせるエルヘイムのステージ曲メドレーが披露され，公演の前半が締めくくられた。


　公演の後半は，「食卓の賑わい」でスタート。スクリーンには，「ユニコーンオーバーロード」の宿屋で提供される料理が次々に映し出されていく。なお2nd公演は19：00開演で，この楽曲が演奏されたのは20：00過ぎ。まだ夕食前だった筆者は演奏そっちのけでスクリーンに釘付けだった……。


　勇壮な「バウムラッテ闘技場」に続いては，パーカッションのキラキラした音色が雪や氷を思わせる獣人の国・バストリアスの楽曲，コーラスが荘厳な雰囲気を高める宗教国家・アルビオン教国の楽曲が披露された。


　2度めのトークコーナーには金田氏，武田十季氏，リヒター氏，ドゥニ・フォンタナローザ氏らベイシスケイプの作曲家陣が登壇。金田氏によると「ユニコーンオーバーロード」は各国家に大きな特徴があるため，国家ごとに担当者を決めて楽曲制作に臨んだという。
　そのうえで，イベントの楽曲はロマンチックなシーンや悲しいシーンなどといったシチュエーションに合わせ，それぞれが得意な人に依頼したそうだ。

　また武田氏によると，バストリアスの楽曲は渡邊里佳子氏が作ったフィールド曲のメロディーをモチーフに，金田氏がステージ曲を，武田氏自身がバトル曲とステージバトル曲を，フォンタナローザ氏がイベント曲を，工藤吉三氏が最終ステージ曲をそれぞれ制作したとのこと。
　そのためバストリアスの解釈やイメージを共有したり，各自の雪国に対するアプローチの違いを感じたりすることで，新たな発想が生まれたと語っていた。

武田十季氏

　リヒター氏は，思い入れのある楽曲として「バルトロのテーマ」を挙げた。バルトロは暗躍する悪役なので，そうしたキャラクターの楽曲を制作できたのが嬉しかったという。またフォンタナローザ氏は，“重要な島”の“重要な森”にある“ツノのある馬の像”の前でアレインが……というシーンの楽曲に思い入れがあるとのこと。

リヒター氏

ドゥニ・フォンタナローザ氏

　また今回，本公演の模様を収録した「ユニコーンオーバーロードオーケストラアルバム 〜アトラス×ヴァニラウェア作品集〜」が，2025年6月6日にベイシスケイプレコーズより発売されることもアナウンスされた。本アルバムはCD版のリリースに加え，デジタル版が各種DL配信プラットフォームから提供される予定。詳細はベイシスケイプの公式Xなどで確認してほしい。
　加えて，ヴァニラウェアが開発した「十三機兵防衛圏」の楽曲「渚のバカンス」が，5月頃にカラオケで配信される予定であることも明かされた。

「ユニコーンオーバーロードオーケストラアルバム 〜アトラス×ヴァニラウェア作品集〜」ジャケットイラスト

　続いて公演は，いよいよ「ユニコーンオーバーロード」本編終盤の楽曲に。「アレインのテーマ」から，フォンタナローザ氏の手がけたロマンチックな「契約の儀式」，最終決戦を飾った勇猛なステージ曲とバトル曲のメドレー，そしてプロローグのバトルで，かつルートによっては終盤でも流れる，コーラスが印象的な「Farde mal diavolo, 〜悪を滅し，来たれり〜」が立て続けに演奏され，ストーリーのクライマックスを表現していた。


　本編を締めくくったのは，5つの国家を解放したアレインを称える美しい「Haades, 〜戴冠式〜」，解放された民衆が歌っているかのようなイメージのスタッフロール曲とエンド曲のメドレーだ。いずれもユリカリパブリックさんのボーカルが，来場者を魅了した。


　大きな拍手の中，アンコールで披露されたのは，哀愁を帯びたヴァイオリンソロがフィーチャーされた「パレヴィア島」。そして力強い演奏で再度本作のメインテーマが演奏されると，会場は再び大きな拍手で包まれ，本公演は幕を閉じた。

「ユニコーンオーバーロード オーケストラコンサート」特設サイト

「ユニコーンオーバーロード」公式サイト