「Dome-King Cabbage」「34EVERLAST」「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」を試遊展示。BitSummit，HYPER REALブースレポート

　インディーゲームイベント「BitSummit Let's Go!!」が，2023年7月14日から7月16日に京都府みやこみっせにて開催された。産経デジタルのゲームレーベル「HYPER REAL」ブースでは，謎のゲーム「Dome-King Cabbage」，アクションを10分で楽しめる「34EVERLAST」），怪異を解剖するホラーノベル「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」といった個性的な作品が出展されていた。本稿では，ブースの様子をお伝えしていこう。

「BitSummit Let's Go!!」，HYPER REALブースの様子

「HYPER REAL」は，ゲームを音楽や映画のようなアート，カルチャーとして再解釈する

　「HYPER REAL」は，2023年7月3日に設立されたばかりの産経デジタルのゲームレーベル。「日本・アジア産の個性的なインディー作品を中心に，ゲームを通して現実を盛り上げる作品を世界へ」をテーマとし，ゲームを「音楽や映画のようなアート，カルチャーとして再解釈」するブランドだ。「BitSummit Let's Go!!」のブースに出展されていた，「Dome-King Cabbage」「34EVERLAST」「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」は，そのブランドの方向性を示す作品だった。

●「Dome-King Cabbage」

　クレイアニメを思わせるサイケデリックな映像とともに，謎めいたストーリーが展開する作品。公式サイトのジャンルとしては「Adventure, RPG」が謳われているが，見ているこちらを翻弄するような内容となっている。


　まず展開するのは，シュールで意味深な映像だ。般若を思わせる赤い面の男と，鉄仮面の男の争いを描いているようで，鉄仮面の男が住む空間に，突如として赤い面の男が宇宙船で来襲。しかし鉄仮面の男は一瞬にして宇宙船を破壊し，乗っていた赤い面の男も串刺しにして葬り去る。鉄仮面の男は巨大な剣と，幼児の部屋にあるような木馬や電話機といった玩具を従えており，どういった存在なのかはまったく不明。赤い面の男が乗っているのも，子供がブロックで作るような玩具の宇宙船だ。2人が超能力を駆使する激しい争いと，玩具のギャップが奇妙で，映像の美しさもあり，ただただ目を奪われる。


　この死闘に続くのは，主人公らしい謎の人物の独白。どうやら彼（？）は死にかけているようで，周囲が液体のように溶け崩れる幻覚めいた景色の中，思い出を振り返っている。主人公の目の前に現れたのは，木で作られた人形のような存在で，まるで玩具のようだが，自分が高次の存在であることをほのめかし，主人公に「2つの銀河のうちのどちらを消し去るか」という奇怪な選択を求めてくる。これらの銀河に住む生物たちは，人形たちが望むような体験を提供できなかったため，滅ぼしてリセットすることになったのだという。


　プレイヤーが選んだ銀河が人形によって消し去られると，突如として「DWAYNE BOY COLOR」なる謎のゲーム機が起動。ホーム画面には何やらたくさんのソフトが並んでおり，「Dome-King Cabbage」というゲームだけが立ち上がる。


　「Dome-King Cabbage」は，ゲームボーイアドバンスを思わせるドット絵のRPG。主人公であるヴァイオレットは謎の“ドームキング”なる存在を目指す少女で，お供とするモンスターとともに旅立つのだ。村の老人から，3体のお供候補から1体を選ばされるあたりは，まるで某モンスター育成系RPGのようだ。ヴァイオレットは，お供とともにコマンド選択式バトルで敵と戦い，冒険していく。

　画面は2Dのようだが平面ではなく，カメラを回すと立体的な世界であることが分かる。一方，そこに住む人々は平面であるようで，フィールドにたたずむ鉄巨人も，視点を変えればペラペラだったりする。サイケデリックな映像は果たして何を表しているのか？　木の人形は何者なのか？　幻覚のような世界で死に瀕した主人公と，ヴァイオレットの関係は？　謎が謎を呼び，ただただ翻弄されるばかりの「Dome-King Cabbage」。対応機種はPCのみで，Steamストアページに記載されている発売予定は後日発表（TBA）とされている。

巨人が佇んでいるようだが，カメラの角度を変えるとペラペラだ

「Dome-King Cabbage」公式サイト

●「34EVERLAST」

　美しい映像による激しいアクションが展開。“最短10分で1周をクリア可能な，超濃縮ループ型のアクションアドベンチャー”を謳う作品だ。終わりが間近な世界において，主人公の少女は“死にぞこないの世界たち”を倒すことで生き残りを目指すのである。

　ゲーム開始直後から，映画のクライマックスのようなシーンが展開する。崩れゆくビルの上を高速で疾走し，高空から落下しつつ，高速で回転するタービンや瓦礫が迫るのを避け，敵と対決する。カットシーンのような美しいグラフィックスが特徴となっている。



　少女は強力なパワーを持っている。障害物があれば剣で破壊でき，ジャンプで届かない間隙は，短距離ワープ「チャージアタック」で飛びわたることができるなど，爽快感は抜群。崩壊していく世界の迫力と相まって，ゲームの中に引き込まれるかのようだ。

　ステージの展開によっては，敵と対決しなければならないこともある。敵の攻撃は激しいが，予兆を見れば回避できる。攻撃も連続で当てれば，剣がパワーアップして攻撃力も上昇するため，敵の攻撃を華麗に避けて，一気に連続攻撃を当てることが重要だ。本作の対応機種はPCで，Steamストアページにある発売予定欄には「発表予定」と記されている。

「34EVERLAST」公式サイト

●「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」

　1999年の日本を舞台としたノベルゲーム。“ジャパニーズホラーノベルアドベンチャー”を謳い，都市伝説や民俗学を取り扱った物語が展開する。都市伝説が具現化した「怪異」が引き起こす奇怪な事件に対抗すべく，「青十字病院」の面々が奮闘するのだ。

　青十字病院に所属するのは，個性的な人物ばかり。見た目は弱々しいが怪異の解剖を担当する研修医である，主人公の千織。ほかには，千織を「先輩」と敬愛する杖術の達人・國木田，優秀な人物のようだが麻雀狂いが玉にきずの鬼焼，レントゲンを使って怪異を探る技師・貞子といったキャラクターが登場する。彼らの掛け合いがコミカルで，日常シーンを読み進める楽しさが，実にノベルゲームらしい。

写真左から，「青十字病院」に所属する鬼焼，國木田，千織，貞子。都市伝説が具現化した「怪異」に立ち向かう

　普段はヒマな青十字病院のメンバーだが，ひとたび怪異が事件を起こしたら，それぞれの得意分野で活躍する。特にユニークなのが，怪異の解剖だ。青十字病院では怪異を解剖することにより，彼らの弱点や事件の謎を解き明かしていく。出展バージョンでは，スカイフィッシュの解剖を体験できた。スカイフィッシュといえば，空中を漂う謎の存在。その生態は謎に包まれているが，本作ではマウスでカーソルを動かすことによって，“メスを入れる”ことができた。

　しかし，メスを入れられる回数は限られており，あまり大胆に切り裂いてもスカイフィッシュの身体が壊れてしまう。出展バージョンでは解剖に失敗したらゲームオーバーになっていたので，慎重に解剖を進めなければならなかった。中身がどうなっているか分からない怪異にメスを入れることは，不気味に感じつつ好奇心をそそられる不思議な体験だった。モンスターや怪異を取り扱ったゲームも多いが，解剖という手段でアプローチできるところが面白い。

捕らえられたスカイフィッシュを解剖する

メスを入れると，感覚器のような内臓が出てきた

　スカイフィッシュが引き起こした事件は思ってもみなかった展開となったが，これは発売されてからのお楽しみとしておこう。本作はPC，Nintendo Switch向けに2024年の発売が予定されている。

「青十字病院 東京都支部 怪異解剖部署」公式サイト

「HYPER REAL」公式サイト

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