インタビュー
[TGS 2023]「ソニックスーパースターズ」インタビュー。25年ぶりにタッグを組んだ盟友が徹底してこだわった,クラシックソニックへの思い
[プレイレポ]「ソニックスーパースターズ」TGSバージョンを先行試遊。原点の2Dハイスピードアクションが正統進化し,マルチプレイも可能に
本日開幕したTGS 2023のセガブースに,10月17日の発売が予定されている「ソニックスーパースターズ」が出展されている。会場では,シリーズの原点である2Dのハイスピードアクションを正統進化させた最新作を体験可能だ。
前作「ソニックフロンティア」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch / PS4 / Xbox One)から一転,ソニックが生まれたメガドライブの時代から脈々と受け継ぐ,サイドビューの2D高速スクロールアクションに特化した本作。その開発は,かつてセガに在籍しソニックのキャラクターデザインを手がけた大島直人氏率いるアーゼストが担当し,大島氏自身もデベロップメントプロデューサーとして開発に積極的に参加している。
ソニックシリーズプロデューサーの飯塚 隆氏と大島氏は,当時セガの「ソニックチーム」で同僚だった仲で,今回約25年ぶりにタッグを組んで,ソニックシリーズの最新作を作り上げている。
このTGSの開催に合わせ,飯塚氏がアメリカから来日し,大島氏とともにメディアへのインタビューに応じてくれた。メガドライブやドリームキャスト時代の懐かしい話も交えつつ,「ソニックスーパースターズ」の開発秘話を聞いた。
大島氏が飯塚氏を誘ったリモート飲み会での雑談が,25年ぶりに2人がソニックを手がけるきっかけとなった
本日はよろしくお願いします。4Gamerでの「ソニックスーパースターズ」のインタビューは,6月のSummer Game Fest以来(関連記事)となりますが,大島さんに参加いただくのは今回が初めてですね。
飯塚 隆氏(以下,飯塚氏):
今回はぜひ“大島さん推し”のインタビューでお願いします!(笑)
4Gamer:
分かりました(笑)。大島さんにもたくさんお話ししていただければと思います。まずはタイトルの企画経緯からうかがいたいのですが,3Dのソニックシリーズとして大きな進化を遂げた「ソニックフロンティア」の次のタイトルとして,あえて2Dのソニックをラインナップしたのはなぜなんでしょう。
飯塚氏:
本作の企画は,「ソニックフロンティア」の開発が始まっていたころに立ち上がりました。「ソニックフロンティア」は,3Dのモダンソニックタイトルとしてステップアップするためのプロジェクトでしたが,その一方で2Dのクラシックソニックも,2017年の「ソニックマニア」がヒットしたようにファンがたくさんいます。
彼らに対して,これまでのようなドット絵で続けていっても古さから脱却できないこともあり,これからまた10年20年と発展させていくためのステップアップとして企画したのが,この「ソニックスーパースターズ」です。
そこに対して,大島さん率いるアーゼストさんの参加に至った理由はあるのでしょうか。
飯塚氏:
クラシックソニックの進化形としてヒットした「ソニックマニア」は,ソニックファンの間では有名なクリスチャン・ホワイトヘッドを筆頭に,全員がソニック大好き開発者が集まったチームでした。
そこからさらに進化した新しいクラシックソニックを作るとなったときに,ファンの誰もが納得するような布陣で開発したかったんです。そこで真っ先に思いついたのが大島さん率いるアーゼストさんでした。
4Gamer:
大島さんにはどのように打診されたのでしょう。
飯塚氏:
私はアメリカにいて大島さんは日本で離れていたんですが,大島さんにリモート飲み会に誘ってもらたことがありました。そのときに「大島さん,クラシックソニックを一緒に作ってくれたらうれしいんだけど……」と雑談まじりで話したら,すんなりOKをいただけまして(笑)。
大島直人氏(以下,大島氏):
私はSNSをやっているんですが,フォロワーの方にもソニックファンは多くて,私にソニックを作ってほしいとか,あなたのソニックがずっと好きですとか,ファンアートを贈ってくれたりする方などもたくさんいました。そんな皆さんに対して私からも何か恩返しができないかとずっと思っていたんです。
実は「ソニックマニア」のときにも,飯塚さんにお願いして私もファンアートを描かせてもらったりして(笑)。そんな気持ちをずっと持っていたときに,「一緒に作りませんか?」と言われたので,これで恩返しができるかもと思い,ぜひやりたいと即答しました。
4Gamer:
相思相愛の関係で始まったんですね。大島さんは本作にはどのような肩書きで参加しているんですか?
大島氏:
肩書きは「デベロップメントプロデューサー」ですけど,今回はプロデューサーと言いつつも,キャラクターデザインやゲームデザインのところにも私の名前を入れてもらったりして,いろいろなことをやらせていただきました。
飯塚氏:
通常の新作を作るときは若いスタッフを中心に据えることが多いのですが,今回は「クラシックシリーズの新作を作る」というテーマがありました。私と大島さんはクラシックシリーズを作った経験があり,ノウハウも持っているので,現場にしっかり入って作らせていただいたんです。
4Gamer:
お二人も一スタッフとして関わっているんですね。
飯塚氏:
結構現場で作っていましたね(笑)。
4Gamer:
ちなみにお二人がソニックチーム時代に最初に関わられた作品は,具体的にどのタイトルでしょうか。
飯塚氏:
一緒に仕事をしたのは,セガサターンの「NiGHTS(ナイツ)」でした。メガドライブでソニックを作っていたころは,私がアメリカで「ソニック3」を作っていて,大島さんは「ソニックCD」を日本で作っていましたから,メガドライブのソニックは一緒に作ったことがないんです。
大島氏:
実は一緒に作った作品は意外に少ないです。「NiGHTS」の後,ドリームキャストの「ソニックアドベンチャー」は飯塚さんをディレクターに据えたプロジェクトで,そのとき私はサターンの「バーニングレンジャー」を作っていました。それが終わった段階で,飯塚さんが「大変だ,ソニックアドベンチャーが終わらない!」と焦っていて,そこに途中からヘルプで入ったんです。
飯塚氏:
しっかり一緒に作ったのはその2本だけなので,今回実に25年ぶりのことになります。
4Gamer:
もっとたくさんご一緒されていた印象がありますが,そうではなかったんですね。25年ぶりの現場仕事はいかがでした?
大島氏:
「NiGHTS」のころは,飯塚さん自身は苦労していたみたいですが,私から見ればこちらが1言ったことを10理解して,そこから100の結果を出してくれるので,本当に便利……ではなく(笑),優秀な存在だと思っていました。
だからこそ「ソニックアドベンチャー」というドリームキャストの売上げに直結する,大きなタイトルのディレクターに就任したのも当然の流れで,私も太鼓判を押して推薦しましたからね。
4Gamer:
飯塚さんは,25年ぶりの現場仕事はいかがでしたか。
飯塚氏:
いやこれが本当に25年ぶりとは思えない,ああしようこうしようとお互いにアイデアをぶつけ合って,昔のままの感覚で仕事ができたんですよね。
大島氏:
お互いに悩むこともなく,常に前向きだったもんね。
飯塚氏:
確かにそうでした。2人が前向きすぎて盛り上がっちゃうと,現場のスタッフが大変になることもあるので,私が大島さんの抑え役になっていたぐらいですから(笑)。
キャラの挙動からプレイフィールまで,徹底してこだわった,2D時代のクラシックソニックの再現
4Gamer:
そんな本作における開発のこだわりは,どんなところにあるのでしょう。
飯塚氏:
大島さんにこのプロジェクトの説明をしたときに強調したのは,「クラシックシリーズとまったく同じ挙動にしてください」という点です。3Dになったことで2D時代のソースはほぼ使えないので,完全にゼロからのスタートなんですが,2Dと変わらないプレイフィールを求めました。クラシックソニックのファンも違和感なく遊んでもらえるように,プレイヤーの挙動は全部“目コピ”で当時と同じにしてもらいました。これはアーゼストさんにとって大変なお仕事だったと思います。
4Gamer:
新キャラのエミー以外,ということですよね。
飯塚氏:
はい,ソニック,テイルス,ナックルズ3人に関しては,完全に昔の挙動を再現して,さらにそのうえで遊びやすいよう調整したものです。
大島氏:
「(挙動をちょっと)変えていい?」って聞くと「ダメ!」と即答されました(笑)。
4Gamer:
(笑)。大島さんは,変える前提のアイデアや提案もあったんですか。
大島氏:
作っている最中は,ちょっとありましたね。
飯塚氏:
いい提案があっても,クラシックの操作性が変わってしまうような場合はNGとしていました。クラシックシリーズの新作として,ファンが触ったときに違和感があることはどうしても避けたくて,まずはその違和感を払拭することに徹底しています。
ソニックたちのアニメーションパターンも,当時のドット絵のアニメーションパターンを大島さんに渡して「これと同じにしてください」と念を押したぐらいで。
4Gamer:
そんな作り方を!?
大島氏:
ソニックって,2D時代のドットを打っているスタッフが違うので,それぞれアニメーションも違うんです。そこは私の独断で,このパターンは「ソニック1」のものにしようとか,この動きは「ソニックCD」のものを使うとか,そういう作り方をしていました。
飯塚氏:
大島さんはソニックのデザイナーでもありますから,一番いいパターンを選定してもらいました。
4Gamer:
TGSに出展された試遊版を事前に触らせていただきましたが,確かにソニックが走り出すときの挙動やジャンプの感覚などは,当時のものと同じでしたね。
飯塚氏:
当時の操作感覚に慣れ親しんだ人には,まったく違和感なく遊べる操作性になったと自負しています。これまでSummer Game Festやgamescomに出展して,コアなソニックファンの方に触ってもらう機会がありましたが,挙動に関してはとても満足していただけた手応えでしたね。
4Gamer:
グラフィックスは完全な3Dで,内容や挙動は2Dという独特な開発スタイルは,大変ではなかったですか。
飯塚氏&大島氏:
(声を揃えて)大変でした(笑)。
大島氏:
グラフィックスは3Dですから,例えば少しでも奥に行って距離感が変わると感覚がズレてしまうんです。そのため,ゲームは2Dとして成立させつつも立体の地形を移動するので,本当だったら地形に隠れてしまうところをあえて優先順位を変えて表にします。キャラクターが重なったときに奥行きがあるように見せつつも,内部的には同じラインにいるようにするとか,そういう工夫をたくさん盛り込みました。
4Gamer:
作っている感覚としては2Dと3Dどちらなんでしょう。
大島氏:
ゲームとしては完全2Dですね。3Dの表現をプログラマーとデザイナーの力で,見せ方を変えて2Dのゲームとして成立させているんです。
例えばソニックではおなじみのループって,3Dで処理をすれば当然回ったあとに奥か手前に行くはずですよね。それをそのまま処理すると2Dのゲームではなくなってしまうので,ループをして回った後も2Dの1つのライン上に収まるような,そういう作り方をしていました。
飯塚氏:
かなり無理矢理な処理なんですけど,アーゼストさんには本当にがんばっていただいて,感謝しています。
メガドライブのソニックを作っていたころと,よく似たスタイルで開発が進行。そのカギは「アイデアノート」!?
4Gamer:
アーゼストさんとはどういうやりとりで開発したのでしょうか。
飯塚氏:
最初はどんなステージにするか,お互いにアイデア出しをしました。その内容が決まってからは,ステージ内部のギミックについてのアイデアをアーゼストさんから出していただいて,私がそれを選定して実装してもらうという,そんな流れですね。
大島氏:
実は開発中のやりとりも,ステージ全体のマップ数の制限を決めて2Dでマップを作ってみたいな手順は,昔の手書きと今のデジタルとの違いはあるものの,メガドライブでソニックを作っていたころとまったく同じでした(笑)。
私がセガに在籍していた時代に,スタッフ全員にギミックのアイデアを4〜5コマの絵コンテのようなメモに書かせてまとめておく「アイデアノート」というものがありまして,本作でもその作り方を導入してみたんです。
企画初期に飯塚さんとシステムを考えているころは,スタッフの多くは暇だったりするので,そのときにアイデアをたくさん出してもらって,開発が始まって何か困ったときにそのアイデアノートから採用するという作り方をしていました。
飯塚氏:
確かに大島さんが「ソニックCD」を開発していたころ,現場を見せてもらったときに,そのアイデアノートがありました(笑)。
4Gamer:
そこから採用されているギミックやネタはたくさん盛り込まれているんですね。
大島氏:
ありますね。そこはスタッフがたくさんアイデアを出してくれたたまものです。
4Gamer:
そんな本作では新たに「エメラルドパワー」という,カオスエメラルドを取ったときに新たな力が使えるという要素が追加されました。あれはどんな意図でいれたのでしょうか。
飯塚氏:
カオスエメラルドは7個集めるとスーパーソニックになれるアイテムなんですが,全部集めるのって結構大変じゃないですか。実は私自身も7個全部集めるのは結構大変で,いつも3〜4個集めたところで挫折してしまうんですけど(笑),そうすると何も得られるものがないんです。
ですので,本作では1個取ったら1つご褒美があるようなゲームデザインを提案しまして,それが今回のエメラルドパワーなんです。プレイヤーがカオスエメラルドを集めるモチベーションを上げるために用意しました。
4Gamer:
TGS版では4つのエメラルドパワーが使えましたが,感触としては使わなくてもゲームは進められる印象でした。カオスエメラルドの力ということで,従来と同じようにゲーム進行に必須ではないと考えてよろしいでしょうか。
飯塚氏:
はい,そうなります。今回このエメラルドパワーをどういう扱いでゲームに実装するか,結構悩んだところもありました。本来アクションゲームであれば,ここでこのパワーを使うと先に進めるようになるみたいな,力を有効に使うことが基本だと思うんですが,それをやってしまうと,クラシックソニックとしてのプレイフィールとは違うものになってしまいます。
先ほどもお話ししたように,従来のクラシックゲームとして遊べる内容じゃないと満足してもらえないと考え,任意に使うことで水中を自由に移動できたり,見えないアイテムが見えたりと,何かしらのプラスの要素を得られるアディショナルな要素としました。ですので,エメラルドパワーは使わなくてもクリアできます。
4Gamer:
パワー選択のリールが8つあったんですが,カオスエメラルドは8個あるんですか?
飯塚氏:
いえ,今回もカオスエメラルドは7個です。1個につき1つのエメラルドパワーがあって,あと1つは7個集めたときのアレですね(笑)。
4Gamer:
なるほど,アレがありますね!(笑)
まだ4つしか明らかになっていませんが,それぞれのアイデアもよく考えられていますね。
飯塚氏:
ありがとうございます。私個人的は,見えないものが見える「ビジョン」が好きなんですが,「アバター」のように無数の分身が敵を攻撃するという,ビギナー救済向けのパワーとか,クラシックソニックのゲームデザインにおいて,使ったときの見た目などにちょっとした変化があるようなものを考えました。
大島氏:
細かい話なんですけど,アバターを使ったときに大量に出てくるキャラクターにプレイヤーが触れると,その後ろにアバターがついてくるんです。普通は通り過ぎちゃうんですけど,ついてこさせるとちょっと長生きさせられるという。それだけなんですけど(笑)。
4Gamer:
そういう遊びも大事ですよね(笑)。そのカオスエメラルドを取るスペシャルステージも,新しいデザインになっていました。
飯塚氏:
スペシャルステージはクラシックソニックシリーズの象徴というぐらい,どのタイトルも凝った作りでして,とくに「ソニック2」や「ソニック3」ではメガドライブの限られた性能の中で,当時あこがれの3DCGをいかにして2Dで表現できるかいうことにこだわっていました。
本作のスペシャルステージもコンセプトは同じで,本編の2Dアクションとは逆の,3D空間を1ボタンで移動しながらエメラルドを集めるというアイデアから,あのステージが完成したんです。
4Gamer:
見た目もちょっと昔を感じさせる「2Dで作った3D空間」みたいな雰囲気がありました。
飯塚氏:
そこも意図したところです。ゲーム自体は3Dなので,派手にしようと思えばできるんですが,クラシックシリーズの冠からは外れない範囲で作ることが大前提でしたので,あえてあの形になりました。
4Gamer:
スペシャルステージとは別に,メダルを取るステージもありましたが,あれも懐かしい「ソニック1」のスペシャルステージのオマージュですよね。
飯塚氏:
はい,まさにその通りで,こちらは「ボーナスステージ」になります。TGSで遊んでいただいたものは,「ソニック1」のスペシャルステージそのものですが,後半になると当時はなかったような本作ならではのギミックが追加されて,より楽しくなるような仕掛けがあります。
4Gamer:
一方で,ゲーム本編のステージの見た目やレベルデザインのコンセプトみたいなものはあるんですか?
飯塚氏:
各ステージも完全新規でありながら「クラシックソニックらしさ」という部分からは逸れずに,画面を見ただけでソニックだと分かってもらえるようなテーマを持たせました。そうしつつも後半は「サイバースペース」のステージのように,斬新なアイデアを盛り込んだ構成になっています。
4Gamer:
「サイバースペース」の演出は斬新でしたね。ソニックたちがボクセルアートのようになって,シーンごとにそれが組み変わって別のキャラクターになるという。タコになったりネズミになったりして,操作感覚も変わりました。
飯塚氏:
あれはタコじゃなくてクラゲなんです(笑)。サイバースペースのアイデアはすべてアーゼストさんから出してもらったものです。ああいう発想は,恐らく私からは出てきませんから。驚くような仕掛けはゲーム後半にも出てきますので,楽しみにしていてください。
ファンから再登場を望まれつつも日の目を見なかった「ファング」,そして新キャラクター「トリップ」は,大島氏と飯塚氏のデザイン合作!
4Gamer:
今回ライバルキャラクターとしてファングが登場しますが,そのチョイスには驚きました。
飯塚氏:
私の中ではこの「ソニックスーパースターズ」の企画を立てたころから,「再登場させるのならファング」と決めていたんです。
「ソニックマニア」のときにマイティーとレイを出して,ファンの方から「ついに彼らが帰ってきた」って喜んでいただけたので,今回もこれまでのシリーズであまり日の目が当たっていないキャラクターを再登場させることを考えていました。そこで真っ先に浮かんだのがファングだったんです。
4Gamer:
ファングが最初に登場したのは確かゲームギアの「ソニック&テイルス2」だったかと思うのですが……。
飯塚氏:
はい,そして最後に出たのは確か「ソニック・ザ・ファイターズ」です。その後もゲームの背景の壁のポスターに描かれていたりとか,他のボスキャラが変身するとか,あとはアメリカで連載されているコミックに出ているとか,ちょこちょこ顔は出しているんです。
そういうこともあってか,ファンの認知度は高かったので,今回はファングにしようと最初から決めていました。
4Gamer:
さらに今回はトリップという新キャラクターもいますね。
飯塚氏:
大島さんと一緒にやるからには,新キャラも絶対出したいと思っていたので,ファングが引き連れている部下として,仮面をかぶったトリップというキャラクターを用意しました。
4Gamer:
どんなキャラクターなんですか?
飯塚氏:
エッグマン,ファング,そしてトリップの3人が敵チームとして現れるんですが,ちょっとドジなところもある,愛嬌のある女の子です。でも実は物語のカギを握っているという重要なキャラだったりもします。
4Gamer:
仮面を被っているのが意味深ですよね。
飯塚氏:
そこも発売まで楽しみにしていただきたいですね。
4Gamer:
彼女のデザインのポイントはどこですか?
大島氏:
当然の流れとして,飯塚さんからは私にデザインしてほしいとオファーがありました。ですが私としては飯塚さんにもデザイン面でも何かやってほしいと思っていて,共同で作ろうということにしたんです。
4Gamer:
飯塚さんのセンスも入っているんですね。
大島氏:
最初は私があえて落書きみたいな絵を送ったら,それがすごい丁寧に描いた絵が戻ってきて(笑)。そんなイラスト交換みたいなやりとりをしながら作っていきました。
飯塚氏:
なんだかんだいっても,ほとんど大島さんのデザインですから(笑)。発売前なのであまり詳しくは語れないんですが,彼女のストーリーへの関わり方を見ていただくと,きっと多くの方がファンになってくれると思うので,注目してほしいですね。
4Gamer:
大島さんにとって,ゲームにおけるデザインの仕事はどのようなものでしょうか。
大島氏:
クリエイターが歳をとると,現場に入ってないように思われるじゃないですか。でも私はずっと現役なんですよ(笑)。プロデューサーとして名前が入っているゲームでも,マップなどは必ず1個以上は作ってたりするんです。
そういう意味ですとこの「ソニックスーパースターズ」は,これまで以上にたくさん作ってますね。
飯塚氏:
ファンの皆さんに喜んでいただけるような大島さんの仕事もたくさん入っていますので,そこも期待していただけると思いますよ。
クラシックソニックのゲームデザインに合わせた,新しいスタイルのマルチプレイモードを構築。気軽に参加できて,知った仲ならより面白くなる
4Gamer:
本作はゲームにマルチプレイが入りまして,オフラインで4人まで同時に進められて,乱入も可能という仕様でした。そのコンセプトについてもお聞かせください。
飯塚氏:
皆さんがよく知っている4人同時プレイって,一つの画面を4人で協力しながら一緒に進んでいくタイプだと思います。でもそれってソニックらしくないじゃないですか。ハイスピードで走ってこそがソニックなので,本作のマルチプレイではあえて協力して進むことよりも,速く走ることに重きを置いたゲームデザインにしています。
ですので誰か1人が一気に先に進んでしまったとき,遅れた人はアイコン化されて先頭の人についていって,いつでも復活できるという独自の仕組みを設けて,進みたい人を妨害しないようにました。置いていかれたとしてもミスにはならないので,遊ぶ人には他のプレイヤーをあまり気にせず,どんどん走ってもらいたいです。
1人で遊ぶゲームって,その楽しさを共有することなく黙々と遊んで,友達や兄弟が来たら,そこで止めなければなりませんよね。でもそこでゲームを止めずに,隣の誰かと一緒にできるようなマルチプレイを用意したんですが,ゲームに挑むモチベーションって,全員が同じものとは限らないじゃないですか。本気でマルチプレイをやりに来た友達でも,たまたまテレビの前に来た家族でも,同様に一緒に遊ぶ楽しさを共有できる,そんな内容を目指しました。
4Gamer:
「ソニック2」のときの,テイルスを使ったマルチプレイがそういう感じでしたね。
大島氏:
あのときは「1.5人プレイ」みたいな言い方をしてましたけど,それが4人になった感覚です。実際に本作でも,テイルスが他のキャラを担いで飛んでいくという協力プレイもできます。あと当然ながらマルチプレイなら,ボスを倒すのも楽になりますからね。
お手軽にできる一方で,そこそこうまい人が集まると,スピード感がハンパじゃない,すごい熱いプレイになるのも面白いところだと思います(笑)。
飯塚氏:
「ソニックフロンティア」のときもそうでしたが,本作も発売前に何度もユーザーテストをしていて,その意見をゲームに反映させています。そのときの結果として,知らない人と遊ぶと今一つだけど,家族や友達など知っている人と遊ぶとソロプレイより面白いという結果が出たんです。遊ぶ人同士の関係性によって楽しさが全然変わるんですね。
4Gamer:
それは結果としてOKだったんですか?
飯塚氏:
はい,我々としてはお互いを知らないハイレベルなゲーマー同士がプレイして楽しいものより,家族や友達でもっとカジュアルに楽しんでもらうことを優先しましたからね。
4Gamer:
全体のバランス取りは大変そうですね。
大島氏:
確かに大変でした。単純に複数のプレイヤーが絡んだときにバグってしまうとか,そういうこともありましたけど,何よりこのデザインに行き着くまでの試行錯誤が大変で(笑)。
例えばキャラクターを追うカメラにしても,ソニックって原則としてゴールは画面の右方向にありますけど,ステージやプレイによって左に戻る場合もあるので,誰が先頭なのかという判定をゲームが常に認識して,カメラをその人に合わせなければなりませんから。
4Gamer:
マルチプレイ時はソロプレイのときよりもカメラが少し引いた視点になりますね。
飯塚氏:
あれ以上引いてしまうとキャラが見えなくなってしまうので,ちゃんと見えるギリギリの位置に設定しています。
4Gamer:
同様のマルチプレイができる2Dスタイルのタイトルとして,任天堂さんから「スーパーマリオブラザーズ・ワンダー」が先日発表されましたが,2Dマリオシリーズのマルチプレイなどは意識しましたか。
飯塚氏:
2Dマリオシリーズのマルチプレイも当然認識はしていますが,同じ2Dアクションでもそもそものゲームデザインが全然違いますからね。先ほどもお話ししたように,1画面の中で一緒に進むスタイルをソニックで再現するとゲームデザインが成立しなくなってしまいますから,似てしまうことはないと考えていました。
大島氏:
マリオの新作発表は本当にタイミングが絶妙でしたから,確かに「被ってるな」と思われてしまうかもしれませんね(笑)。実際に遊んでみると,似て非なるものなのので,もし余裕があるようでしたら,両方を遊んで比べてみて,マルチプレイの楽しさの方向性が違うことを確かめていただきたいです。
4Gamer:
Nintendo Switchなら同じプラットフォーム上でできますしね。
飯塚氏:
そうだ,Switchで思い出しましたが,今回この「ソニックスーパースターズ」はSwitch版も60フレームを出すことができたんです。「ソニックフロンティア」なども含め,近年のマルチプラットフォームタイトルでSwitchで60フレーム出すことをあきらめていたこともあったんですが,今回は60フレームにこだわって,他の機種と変わらずに遊べますので,そこも楽しみにしていただきたいです。
4Gamer:
そしてもう一つのマルチプレイ要素として「バトルモード」も入りました。
飯塚氏:
バトルモードは,本編とは完全に切り離した違うゲームとしてデザインしたものです。オンラインで最大8人,オフラインは画面分割の4人までプレイでき,ゲームを長く遊んでもらえる要素として採用しました。
1分で終了する4つのルールのうち,3つがランダムで選ばれて,通しでプレイして最もポイントが高い人が勝利するルールです。
4Gamer:
アバターのキャラクターが面白いですね。ソニックは「ソニックCD」のメタルソニックほぼそのもので。
大島氏:
彼らの正式名称は「メタルファイター」です。メタルソニックとメタルナックルズは過去のシリーズにも登場していましたが,メタルテイルスとメタルエミーは本作で新規にデザインしたものです。ゲーム内ではキャラクターというよりはアバターなので,性能は全員一緒なんですけど。
飯塚氏:
ゲーム本編のボーナスステージなどで手に入る「メダル」を集めることで,本体の各部位をカスタマイズできるようにしているので,オンラインプレイのときに,自分をアピールできる仕組みですね。
4Gamer:
カスタマイズは見た目だけで,性能は変わらないんですね?
飯塚氏:
はい,あくまで見た目だけのものです。
4Gamer:
このカスタマイズアイテムなども含め,今後DLCなどの構想はあるんですか?
飯塚氏:
現状は発表している通り,「デジタルデラックス」版に「レゴファンパック」と「エクストラコンテンツパック」のDLCが同梱されますので,まずはそちらを楽しんでいただきたいです。大島さんがデザインした「ラビットスキン」(ソニックの原点となったウサギのキャラクターのスキン)もありますのでぜひ。
4Gamer:
では最後に昔ながらの2人が集まって,一体どんなソニックの新作が完成したのかをアピールしていただけますか。
大島氏:
本当に久しぶりにソニックのゲームを作らせていただくことができて,ファンの皆さんには感謝してもしきれないほどの思いがあります。そんなソニックファンの方々はもちろん,ソニックシリーズを初めて遊ぶ人にも,2Dソニックとしては珍しくチュートリアルなども入れてゲームに入りやすくしていますので,我々が今の時代に手を取って作り上げたソニックのスピード感をぜひ味わってみてください。
飯塚氏:
昨年「ソニックフロンティア」で皆さんから高評価をいただいて,このTGSでは日本ゲーム大賞の優秀賞をいただくことができました。「ソニックフロンティア」は,20時間30時間と,ずっと1人でソニックの世界に浸りながらプレイするゲームでしたが,今回の「ソニックスーパースターズ」はもっとカジュアルに手に取って,友達や家族と一緒にワイワイ楽しく遊んで,いろいろな会話が生まれるようなゲームです。
本作において大島さんとの開発は,25年ぶりとは思えないぐらい楽しく現場仕事をさせていただきました。ここまでお話しした通り,クラシックシリーズならではの2Dソニックをこだわり抜いて作っていますので,ぜひ楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
製品版の発売を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
「ソニックスーパースターズ」公式サイト
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