サッカーの攻撃的ポジションであるFWだけを集めたFW育成寮
“青い監獄(ブルーロック)”で,少年たちが世界一のストライカーを目指し,激しく競い合う
「ブルーロック」。原作のコミックス,アニメ,ゲームも展開中の本作がついに2.5次元の舞台へ! 2023年5月4日〜7日に大阪・サンケイホールブリーゼで,5月11日〜14日に東京・サンシャイン劇場で上演されています。
今回の舞台では主人公の
潔 世一がブルーロックに入寮し,ブルーロックのなかでも最下位のメンバーが集まった“チームZ”の仲間と一緒に,総当たりのグループリーグマッチに挑む一次セレクションまでが描かれています。本稿では東京公演前に行われた10日のゲネプロ公演の模様をお伝えしましょう。
舞台は,全国高校サッカー選手権の県大会決勝でシュートではなく,味方へのパスを選び,敗退してしまった潔の後悔からスタート。そんな彼がブルーロックからの招待状を受け取り,現地へ向かうと,同じように招待状を持った少年たちが集まっていました。
潔 世一(演:竹中凌平)
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FWだけが集まっているこの状況を訝しんでいると,ブルーロックプロジェクトの中心人物である
絵心甚八が登場。自分自身のエゴを貫いて,このブルーロックのサバイバルに勝ち抜けば世界一のストライカーになれる,と断言する絵心の言葉に最初こそ反発していた少年たちですが,狂信的な熱量で日本サッカーの未来を語る絵心にだんだんと浮かされていく彼らは,潔が駆け出したことにより,全員がブルーロックへの入寮を決意します。
ここでゾクゾクするのが横井翔二郎さんが演じる絵心の怪人感! 潔たちに向けて語っているのに,その目はまったく彼らを見ておらず,ただただ日本サッカーの遠い未来だけを熱っぽい目で見ている絵心は,行動も言動も異質なのに,グッと心にくる説得力を感じます。怪しさ満点なのに,どうしても抗いがたい。その熱に当てられた潔たちの心情が手に取るように伝わってきました。
絵心甚八(演:横井翔二郎)
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絵心の決めゼリフ「ファック・オフ!」
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潔がいる
チームZには,ドリブルセンスが抜群の
蜂楽 廻,正々堂々とした真正面勝負を好む
國神錬介,過去のトラウマを抱えた
千切豹馬,チームを引っ張っていく
久遠 渉,プライベートでもゲームでも荒々しい
雷市陣吾,独特な話しかたが光る
我牙丸 吟,GKを引き受けてくれる男らしい
伊右衛門送人,コミカルに場を盛り上げる
五十嵐栗夢など,個性的なチームメイトが集結。この11人のメンバーで他チームとの試合が始まります。
蜂楽 廻(演:佐藤信長)
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五十嵐栗夢(演:書川勇輝)
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舞台中のボールでの足さばきは,基本的エアプレイでの表現になりますが,ときにはボールを使ったプレイも! 演技しながらもボールをさばく,キャスト陣のプレイも見ものです!
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最初の
チームXとの試合では,全員がFWということで「俺が俺が」と全員がボールに群がりお団子サッカーになってしまう選手たち。しかし,敵チームの俺様キングこと
馬狼照英のシュートでひとつにまとまっていく相手チームを見て,潔は圧倒的な個性を持つストライカーがチームを作っていくと気づきます。
馬狼照英(演:井澤勇貴)
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キングを自称するだけあって,馬狼の存在はインパクト大! ダイナミックに蹴り上げるシュート姿にグッときます。ラストの挨拶でも頑として頭を下げず,意固地な態度は原作ファンとしてもニヤニヤしてしまう一面でした♪
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自分以上のサッカーセンスや身体能力を持つ選手たちと戦いながら,ストライカーとしてのエゴや武器を作ろうと模索する潔。そんななかで,蜂楽や國神,千切との友情も深めていき,いつしかチームZは潔を中心としたチームに!
潔と最初に仲よくなる蜂楽。マイペースな面も多いですが,彼の天真爛漫なエネルギーが潔たちに伝播して,チーム全体が活気づくことも
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サッカー界のヒーローを目指す國神(演:松田昇大)は,いつでもキリっとした表情がすてき♪ ミーティング中に座っている姿も背筋がビシっと伸びていました!
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舞台後半からは,この11人全員で一次セレクションをクリアすると意気込みますが,
チームWとの試合で,これまでチームの話し合いなどをまとめてくれていた久遠が急変! 人の好さそうな笑顔が消えて,自分勝手なエゴを外に出し始めます。チームの全員が生き残れるように動くのではなく,自分だけが次に勝ち上がると決めた久遠は敵チームに情報を流し,「これからは12人対10人で戦う」と宣言するのでした。
チームWの中心選手,鰐間兄弟と手を組んだ久遠(演:佐織 迅)。3人ともわっるい顔ですが,そこがいい! とくに擬音でしかしゃべらず,弟に訳させてばかりいる鰐間淳壱役の船木政秀さんの表情芸はついつい見入ってしまいます
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鰐間淳壱(演:船木政秀)左,鰐間計助(演:川井雅弘)右
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困難のなか,なんとか引き分けでゲームを終えられたチームZ。最後の試合では難敵である
凪 誠士郎,
御影玲王,
剣城斬鉄がいる
チームVと戦います。チームを裏切る久遠を抱え,不利な状況で凪の天才プレイに翻弄される潔たち。しかし,絶体絶命的なピンチに追い込まれたからこそ,彼らは自分のなかにあるエゴを開花させ,最強ストライカーの片鱗を見せ始めるのでした。
おんぶシーンもかわいいチームVの相棒コンビ(御影玲王役:菊池修司,凪 誠士郎役:小坂涼太郎)。頭がよさそうなのに口を開くとおバカな剣城も加わり,ゲーム外ではほんわかしていますが,ひとたびプレイが始まると天才プレイが続出です!
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剣城斬鉄(演:益永拓弥)
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本能(エゴ)むき出しの雄たけびが熱い!
エゴイズムに溢れるストライカーを描く「ブルーロック」では,それぞれの選手が自分の持つエゴと向き合うことに。舞台版ではそのエゴと向き合い,そのエゴが放たれた瞬間に零れ落ちる絶叫がいたるところで聞こえてきます。
そのなかでとくに筆者の心に刺さったふたつのシーンを紹介しましょう。ひとつは2戦目のチームYとのゲームで,自分と似たプレイスタイルの
二子一揮に勝利した潔のワンシーンです。
原作でも潔が勝利という麻薬にハマった印象的な場面なのですが,舞台でもほかのシーンでは協調性もあり,比較的温厚な対応をしている彼が泣いている二子を見て,ドバドバと放出しているアドレナリンに酔いしれる姿はなかなかの鬼畜ぶり! 「気持ちいい!」と叫ばずにはいられなかった潔の激しさを感じました。でも,このキャラクターの豹変ぶりが「ブルーロック」のおもしろいところでもあります!
二子一揮(演:坪倉康晴)
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ふたつ目は過去に右膝を故障し,再び壊れるんじゃないかという恐怖から自分の武器であるスピードを生かせなくなった千切が自分にかけたロックをこじ開け,ストライカーに復帰するシーンです。
「自分の夢を諦めるためにここへ来た」と話す千切は,それまで攻撃に参加することはなく,後ろ向きに参加していただけでした。ですが,絶望的な状況でもしぶとく諦めず,さらには戦おうとしないヤツに興味がないと言わんばかりに千切を無視する潔に触発され,千切はトラウマを克服! それまで“お嬢”と呼ばれるほど澄ましていた千切が「壊れるなら壊れろ!」と叫びまくり,走りまくりの全力さを見せるこのシーンは,手を振って応援したくなるほど熱い瞬間でした。
千切豹馬(演:佐伯 亮)
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全員が「世界一のストライカーになる」という共通の夢を抱いている「ブルーロック」。相手を飲み込み,ひとつだけの席を奪い合いながらも,その全力さが自分だけでなく相手の輝きを磨くことにもなる不思議なステージは,激しいエネルギーのぶつかり合いの場でした。
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東京公演の千秋楽である5月14日17:30公演は,ライブ配信も決定し,現在チケット発売中です。熱い叫びを聞きたいかたは,ぜひチェックを!