room6のインディーゲームレーベル
「ヨカゼ」の世界観に浸れる展覧会
「『ヨカゼの公園』Indie Game Label “Yokaze” Exhibition」が,2024年8月23日から9月1日の10日間,都内の渋谷PARCOにて開催されている。メディア向け内覧会に参加してきたので,展覧会の見どころをお伝えしよう。
展覧会では,ヨカゼタイトルの資料や映像の展示物のほか,オリジナルグッズの販売や新作を含む14タイトルの試遊が楽しめる。会場では,ヨカゼ/room6のパブリッシング担当である
高市さんに,展覧会の見どころやこだわりをうかがったので紹介していこう。
ヨカゼのムードを感じられる展示物
取材は午前中だったが,会場はまるで月明かりに照らされた夜のようだった。最初に目に入る「こんばんは。私たちはヨカゼです」という壁に書かれた文字を見て「ああ,やっぱり夜なんだ」と妙に納得してしまう。その空間に入った瞬間からすでにヨカゼの世界観に入り込んだ感覚だ。あわせて聞こえてくるバーチャルシンガーの
ヰ世界情緒さん(
@isekaijoucho)のナレーションが耳に心地良い。
壁に映し出される
「アンリアルライフ」の映像にも注目しよう。この映像はゲーム内で見られるものとはまた異なり,この展覧会のために作られたものだそうだ。いろいろなキャラクターが登場しているので,ぜひチェックしてほしい。
また,会場奥の壁には各タイトルの設定資料などのパネルが展示されている。高市さんによると今回初出し情報が多いとのことで,とくに
「地下楼」の設定資料は高市さんも存在を知らなかったという。それぞれの開発陣たちがスケッチブックで残しているものも多く,思考や表現などは意外とアナログで残っているようだ。
さらに,会場の中央には
ブラウン管テレビが3台置かれている。筆者は最初なんとも思わずに試遊用のテレビだなと受け入れていたのだが,よくよく考えて「え,ブラウン管?」と三度見した。高市さんいわく,ヨカゼのゲームは映像表現の1つとしてテレビやビデオを表したものも多く,あえてブラウン管で表示してみたらどうなるんだろうと考えたそうだ。そして実際に用意してみたところ,ゲームのグラフィックスの質感とも非常にあっていたという。とくに
「ghostpia」との相性が抜群で,ゲームの開発陣らも
「推奨環境はブラウン管にしようかな」と話していたそうだ。
確かにゲームのグラフィックスや雰囲気ともマッチしていて,「これが正解ですけど何か?」とでも(ブラウン管が)言っているかのように堂々とした存在感であった。ちなみに,今回のようにブラウン管を使用した形での試遊や展示は今後いつできるか分からないそうなので,ぜひこの機会に体験してほしいとのことだ。
ゲームの画面比率である16:9(ワイド)が表示できるブラウン管が必要だったので,2000年代のブラウン管が使用されている。そのせいかここだけ2000年代初頭の空気を感じられる
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ブラウン管には,今はほとんど見なくなった赤白黄のアナログビデオ入力端子のケーブル(RCA端子)がつながれていて,なんだか懐かしくなった
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ちなみにブラウン管テレビの画面を普通に撮影すると走査線が映り込んでしまうので,撮影には少しコツがいるようだ
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新作「ピギーワン SUPER SPARK」を含む14タイトルが試遊できる
内覧会では,会場最速試遊の
「ピギーワン SUPER SPARK」と会場限定試遊の
「VOLTA AC」を含む全14タイトルの試遊ができる。ただし,「ピギーワン SUPER SPARK」についてはゲーム画面の撮影は禁止だった。
「ピギーワン SUPER SPARK」は横スクロールのアクションアドベンチャーゲームで,アニメーターの
はなぶし氏と個人ゲーム開発者の
hako 生活氏による新作ゲームだ。物語は,主人公のシャミィとユエズが不思議な力を持つ赤ちゃんと出会うところから始まる。2人は赤ちゃんを狙う謎の黒い怪物に追われながら,その道中に会う個性豊かなキャラクターたちと助け合い,赤ちゃんを無事に返す旅に出るのだ。
試遊版ではストーリー部分は省略されており,アクションを中心にプレイできた。道中には多数の仕掛けがあり,ときには大きいブロックなどを動かすことも必要になる。そこで活躍するのが,赤ちゃんが放つ電撃だ。物を動かす以外にも,赤ちゃんの力を駆使して大きくジャンプ移動できたり,スライムなどの敵を攻撃したりもできた。試遊版は巨大なボスから逃げ切ればクリアとなり,最後はとってもかわいいエンドカードが見られる。ちなみにエンドカードは撮影OKだ。
エンドカード。ちなみに高市さんによると,「ピギーワン SUPER SPARK」の試遊版は内覧会開催日の当日に完成したのだとか
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次に「VOLTA AC」をプレイしてみた。これは「アンリアルライフ」のゲーム内ミニゲーム「VOLTA」を踏襲した,hako 生活氏による
“超短編ゲーム”だ。「アンリアルライフ」の主人公たちの会話を聞きながら,“激ムズ弾幕シューティング”が楽しめる。非常にシンプルなゲームなので,遊びやすいのだが,攻撃をよけるのはなかなかに難しい。ただやり始めると,今度こそノーダメージでクリアしたいと何度もプレイしたくなる中毒性があるなと感じた。
このほかにも多数のタイトルが試遊できるので,体験してみよう。ちなみに試遊はブラウン管テレビの3台のほかに,携帯型PCゲーム機「Steam Deck」が数台,タブレットが1台用意されている。
◆試遊タイトル
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地下楼 / From_. / 果てのマキナ / World for Two
描き下ろしイラストを使用したオリジナルグッズや,入場特典をチェック
各ゲームタイトルのキャラクターをイメージした
展覧会オリジナルグッズも販売されている。ちなみにヨカゼでグッズを出すのは実は初めてだという。
とくに注目は「アンリアルライフ」と
「狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼」の
トレーディングキャラクターアクリルキーホルダー(全7種),「アンリアルライフ」
“エビのビン”キャンドルだ。これらのグッズは描き下ろしイラストを使用している。ちなみに“エビのビン”キャンドルは,“海の香り”らしいのでぜひ手にしてみてほしい。
個人的に感動したグッズは,
CD型ミュージックキーホルダー(全3種)だ。これはグッズをスマホにかざすことで,音楽が聴けるというもの。この説明を聞いたときに「何を言っているんだ?」と思ってしまったが,実際にやってみたところ本当にスマホから音楽が流れた! テクノロジーに感動した瞬間だった。
このほかにも,トレーディングレンチキュラー(全6種),「アンリアルライフ」ブックカバー(全1種),「Recolit」線香花火(全1種),「ghostpia」小夜子のブランケット(全1種),ヨカゼナイトMVポストカード(4種セット),ヨカゼ画面クリーナー(全1種)が発売されている。
また
入場特典として,ヨカゼの各ゲーム内でカギとなるアイテムをかたどった「ステッカー」と,ヨカゼタイトルを紹介する「ヨカゼブック」が配布されている。これらは数量に限りがあるそうなので,欲しい人は早めに来場しよう。
なお,展覧会の感想などを短冊に書いて,結びつけるコーナーも設置されていた。神社のおみくじを結ぶような形でこの幻想的な空間にもぴったりだ。最後に高市さんは,ゲームだけでも映像と音楽でヨカゼタイトルの世界観を楽しめるが,現実に出力することでまた違った解像度で世界観に浸れるところが,展覧会の見どころだと教えてくれた。
展覧会の開催期間中,渋谷PARCO B1F・QUATTRO LABOにてコラボメニューが提供される。「アンリアルライフ」に登場する「マリーさんのベーコンエッグトースト」を再現したメニューだ
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