大型台風にまつわるエモーショナルな物語を描くアドベンチャー「Last Time I Saw You」はほぼ完成。ミニゲームも楽しめる新チャプターを特別にプレイ

　現在，京都府のみやこめっせで開催されているインディーゲームのイベントBitSummit Driftに，Chorus Worldwideがパブリッシングを担当するMaboroshi Artworksの新作ナラティブアドベンチャー「Last Time I Saw You」が出展されている。

「Last Time I Saw You」公式サイト

　「Last Time I Saw You」は，大きな台風に襲われた1980年代の日本の田舎町を舞台に，主人公の少年あゆみが故郷に降りかかる恐ろしい呪いに立ち向かい，大人への階段を登っていくという，愛と寛容をテーマにした感傷的なストーリーが描かれる。
　少年野球チームに入団しようと熱心に練習を続ける親友のマナブや，あゆみがほのかな恋心を抱く書店の娘のナオ，働きっぱなしの父親と家族思いの母親，魚屋の主人や熱血漢の警官，コーヒーショップの店員など，さまざまなキャラクターが登場し，「昭和の古き良き時代」への郷愁も感じられる世界観を魅力的に思うゲーマーは多いはずだ。


　Steamのストアページでは，本作のデモ版も公開されている。プロローグが描かれたデモ版では，大型台風が迫る中，あゆみの生活風景や人間関係を描きつつ，彼の身に起きる不思議な出来事が描かれることは，プレイした経験のある人ならご存じだろう。暴風雨の中で遭遇した怪奇現象によって気を失ったあゆみを，ゲーム開始時の夢に出てきた，黒いワンピースの少女が守ってくれるのだ。


　「Last Time I Saw You」は，Maboroshi Artworksという名称で大阪で活動する個人ゲーム開発者，フアン・ファンディーノ・マルティン（Juan Fandiño Martín）氏のパーソナルな体験にインスパイアされたもので，スペインから来日して間もないマルティン氏が遭遇した，台風21号の経験が下地になっているという。2018年9月4日に日本に上陸した台風21号は，近畿地方を中心に甚大な被害をもたらした。
　ゲームで描かれる時代は異なるが，会場で特別にプレイさせてもらった，デモ版の次のチャプターでは，屋根にブルーシートがかけられ，電柱が倒れているといった，我々もニュースで目にしたような具体的な描写もあった。現実にある大自然の恐怖に，幽霊や妖怪など，日本的な超自然の恐怖が重ねられ，ファンタジーとしてまとめられている雰囲気だ。


　マルティン氏によれば，「Last Time I Saw You」の実質的な開発はすでに終了しており，現在は最適化などの作業を行いながら，パブリッシャと共に発売のタイミングを考えているという。
　ゲームとしての作り込みはかなりのもので，あゆみの家のブラウン管テレビでは，ミニゲーム「5龍伝説」をプレイでき，しかも「ストーリーモード」と「アーケードモード」が用意されていたのには驚いた。


　まとわりついてくる霊をバットで振り払うような描写はあるが，「Last Time I Saw You」の基本は会話をしたり，特定の場所に行ってアイテムを入手したりなど，誰でもプレイできストーリーに集中できるようなゲームを目指している。BitSummit Driftに参加している人はもちろん，Steamで公開されているデモ版をダウンロードして，昭和ノスタルジーあふれる本作の一端を体験してみよう。

「Last Time I Saw You」を開発するフアン・ファンディーノ・マルティン氏。同じく大阪で活動する同郷のセルヒオ・マタ氏とは親しい間柄らしく，上に紹介したミニゲームには，協力者としてSonzai Gamesのロゴがあった

BitSummit Drift公式サイト

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