プレイレポート
[プレイレポ]ディストピアな国を守る少女達を描くディフェンス系STG「溶鉄のマルフーシャ」。報酬は税金で消え,補給は自費で行う劣悪な環境で戦い抜け
今回紹介する「溶鉄のマルフーシャ」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One / Nintendo Switch)は,そんな市民,特に下層民の扱いが著しく悪い戦争中のディストピア社会で,国を守るための戦いに駆り出された少女達が奮闘するシューティングゲームだ。プレイヤーは,政府から招集を受けた少女「マルフーシャ」を操り,国境にある門を守るべく,次々に襲いかかってくる戦闘兵器たちに自腹を切りながら生身で立ち向かっていくことになる。
物量で襲いかかるタフな兵器達だけでなく,理不尽にのし掛かる多額の税金や,使用する武器の確保にまで苦労する赤貧生活が“大きな敵”として襲いかかる,そんな個性的な本作の魅力をお伝えしよう。なお今回プレイに使用したのはPS5版で,ボタン操作などの表記もそれに準じている。
妹と暮らす少女マルフーシャに,国家防衛のための命がけの任務が言い渡される
本作の舞台は,カゾルミアと呼ばれる架空のディストピア国家だ。カゾルミアは現在,周辺国すべてと戦争状態にあり,多くの人々が戦場に駆り出されていた。その対象は年端もいかない者ですら例外ではなく,妹と暮らす中流家庭の少女マルフーシャの元にも,ついに召集令状が届く。
マルフーシャに与えられた任務は前線から抜けてきた少数の敵を排除し,国境の門を守り抜くこと。だが最初は緩やかだった敵の襲撃も,日々激しさを増していき,まるで最前線のような様相を呈してくる。放送では毎日のように勝利が伝えられているのに,なぜ戦闘は厳しくなる一方なのか。マルフーシャは不信感を覚えつつも,妹たちが待つ家に無事帰るべく,戦いの日々を送っていくことになる。
本作のジャンルは,サイドビュータイプのシューティングゲームだ。プレイヤーは主人公の少女マルフーシャを操り,画面左端に位置する門を守るべく,武器を手に画面右から敵に次々襲いかかってくる敵を倒し続ける。ゲームは1日単位で区切られていて,その日の襲撃から門を守り抜くと報酬を得た上で次の日に進み,また同じように防衛の任に当たる。
操作方法は左のスティックでキャラを移動させ,右のスティックで攻撃方向の調節を行う形で,画面内の360度,つまり全方位が攻撃可能になっている。攻撃はR2トリガーの押しっぱなしで自動的に行われ,ジャンプなどの動作も存在せず,さらにプレイヤー自身は基本的に攻撃されないため,敵の殲滅に集中できるのが特徴だ。
なお,門の耐久力がゼロになるとゲームオーバーだが,その場ですぐにリトライできる。
さて,本作の基本ルールはタワーディフェンス系のゲームにかなり近いのだが,その世界観と演出によって,実際のプレイ感は独特だ。具体的には,プレイヤーには1日(1ウェーブ)ごとに給与という形でお金が支払われるが,この給与から各種税金や保険料などの名目でほぼすべてが天引きされ,手元に残るのは雀の涙。ほとんどタダ働きに近い形で,日々酷使されるのだ。
おまけに,一定の期間は一日しのぐごとに基本給が上昇するが,増えたところで税の搾取はさらにひどくなり,天引きされる金額が一気に増えるありさま。戦えど戦えど我が暮らし楽にならざり……などと言いながら,じっと手を見たくなってしまうほど。
1日の終了後に可能な,攻撃力アップやリロード速度の向上といったマルフーシャの強化も,基本的にはこの給料から捻出して実行する必要がある。というかハンドガン以外は消耗品である武器の購入,仲間の雇用費,破損した門の修理代ですら実費としてプレイヤーにのし掛かってくるので,プレイヤーはほぼ常に金策に頭を悩まされ続けることになるだろう。
創作などに限らず「食うために軍に入った」といった話を聞くこともあるが,本作においては「軍に入って戦うほど貧乏になる」という逆の仕組みなっており,“命の値段”についていろいろと考えさせられてしまう。
おまけに強化は3つのカードから選ぶ形で,何が出るかはランダムであり,望んだどおりの強化ができるとは限らない。新しい武器が欲しいのに延々と並ばず,少ない手持ちをやりくりして有料でカードを引き直しても結局出ない……なんてことも珍しくないため,場合によってはなかなかの絶望感を味わえる。
そういった点では,本作のプレイには運が絡む要素もかなり強い印象だ。オプションに難度設定も存在しないため,あまりにも上手くいかないときは,思い切って最初からやり直すのも手だと思う。
ガジェットや仲間を駆使し,厳しい戦いをくぐり抜けよう。“撃ちまくり”だけで強敵に勝つのは難しい
前述のように本作はマルフーシャ自身の強化が可能だが,場合によってはそれ以上に“他のパワーアップの選択肢”も重要だ。例えば武器は貧弱なハンドガンに比べ,サブマシンガンなら圧倒的な発射速度を備えているし,軽機関銃なら余裕のあるマガジン容量で敵に弾丸の雨を降らすことができる。それぞれ特色がある上に,初期装備とは段違いの性能を持っているのだ。
消耗品なので一定の日数しか使えず,定期的に買い換える必要があるが,先に進むほどハンドガンでは話にならないほどの敵が出てくるシチュエーションが増えてくるので,購入する優先順位はかなり高い。さらに各種武器には純粋な上級装備もあるが,これらはコストも性能に相応しいものになっているので,無理してでも買うか,あるいは恒常的に能力が上がるアップグレードを優先するか,悩むことになるはずだ。
いわゆる“ボム”に相当する使い捨てのガジェットもあり,どれをどこで使うかで状況も変わるだろう。ガジェットは大きく「設置型」と「発射型」に分かれ,前者には敵の侵入と攻撃を防ぐバリケードや自動で攻撃を続けるタレット,後者には画面の広範囲に回転ノコギリのような攻撃を加えられるバズソーショットなどがあり,使い勝手も良い。
この装備は普段こそ温存しておきたいが,一定の間隔で現れる強力かつ巨大なボス相手には,文字通りの切り札になることも珍しくない。とにかくボスは耐久度が高く,場合によっては非常に強力な攻撃を仕掛けてくるので,モタモタしているとあっという間に門が壊されてしまうことがあるからだ。
ただそういった中でも最序盤から優先で選択したいのが,仲間の雇用だ。彼らは一回雇えば翌日から門の前に待機し,それぞれが持つ武器で可能な限りの攻撃をしてくれる。単純に攻撃力が倍近くなるだけでなく,同じキャラのカードを選べばレベルアップもするため,運が良ければ前半でも強力な仲間を引き連れることができるのだ。
さらに仲間が門の近くで攻撃をしてくれる関係上,自分も同じように門の前で迎え撃って共同で攻撃するか,あるいはもっと前方で先んじて敵の数を減らすかといった戦略性が生まれるため,こういった部分でも仲間を連れるメリットは大きい。また,ときおり仲間にしたキャラのイベントが起こることもあるので,これを見るのも一つの楽しみになるだろう。本編内では世界観や物語の説明があまりされないのだが,一定の間隔で挟まる宿舎内の描写はシンプルながらそれらを補完するものになっているのだ。
低価格ながら,シンプルでテンポ良く楽しめるシューティング部分と,独自の世界観が魅力の一作
本作は1回の戦闘時間がかなり短めで,ゲーム自体がテンポ良くサクサク進むのが好印象だ。前述のとおり強化は思い通りに進まないことが多いが,だからこそ「次こそ良いカードが出てくれ!」と思ってプレイを続けてしまい,気がつけば結構な時間が過ぎていることもしばしば。あまりにカードの引きが悪くどうにも調子が乗らないようなときもサクッとやり直すことができるので,繰り返しのプレイも苦にならない。
敵に関しても真っ正面から突っ込んでくるだけのタイプや,空中を蛇行して狙いを付けづらいタイプ,耐久力は低いが速度は速く門に自爆を試みるタイプ……などバラエティに富んでおり,きっちりと傾向を掴んだり,優先順位を付けて叩く必要がある。マルフーシャの強化具合や装備する武器,仲間の種類など考慮するべき要素も少なくないため,臨機応変に戦い方を変更するとスムーズにクリアできるだろう。戦術性はなかなか高めだ。
トリガーハッピーで撃ちまくっているだけだと,リトライを繰り返すことになりかねないはずだ。
世界観としてはまず自国(カゾルミア)の酷さが強烈な印象を与えるが,だからといって敵国が正義の味方なんてこともなく,全体的に陰鬱とした“ままならない”感じが漂っているのが強く印象に残る。グラフィックスは2Dベースで全体的にレトロチックだが,統一感がありクオリティは高い。特に背中を任せることになる仲間たちは一癖ある連中だが,戦闘中に発するかけ声や宿舎での一言などを聞いていると結構愛着がわいてくるもので,筆者の場合は初プレイでは最初に選んだキャラと最後まで戦うことになった。
ちなみに本作はマルチエンディングを採用しているが,この判定条件にも誰を仲間に選んだかが,深く関わってくるようだ。
ゲームは上述のメインモード以外に,仲間も含めた任意のキャラを選び,ひたすら防衛を繰り返すチャレンジモードが用意されており「あのキャラを使ってみたい!」と思ったら実際にプレイできるのも嬉しいところ。また,使用した武器やキャラクターの設定を読むことができる収集要素や,前述のマルチエンディングの回収などもあるので,やり込みプレイも可能となっている。
難度に関しては前述のとおり運に左右される場面が多いので,展開によっては理不尽さを感じることもままあるのだが,ある意味これも本作の世界観に沿っていると言えるだろう。難度設定がないのでシューティング自体が苦手な人には少し勧めづらいが,筆者がプレイした限りは,極端に難しいという印象はなかった。低価格という点もあるので,気軽に手を出してみてもいいだろう。
理不尽な抑圧された世界で,それに対抗するようにマルフーシャ達が懸命に銃を撃ちまくる姿に興味がわいたら,プレイしてみて欲しい一作だ。
「溶鉄のマルフーシャ」公式サイト
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