プレイレポート
対戦型推理ゲーム「CRIMESIGHT」を先行プレイ。論理パズルの“一番美味しい部分”を30分で味わえる挑戦的なシステムが魅力
CRIMESIGHTは,未来に発生するとされる“未然凶悪犯罪”を予測するシミュレーション空間で,犯罪を実行する側とそれを阻止する側に分かれて頭脳バトルを繰り広げる“対戦ミステリーシミュレーションゲーム”だ。1対1や3人以上のマルチプレイなど,プレイ人数によって異なるルールと展開が楽しめる。
そんな本作をリリース前にプレイできたので,プレイレポートをとおしてゲームシステムや世界観を紹介したい。アナログゲームの精神が感じられる,非常に挑戦的なシステムとなっていた。
「CRIMESIGHT」公式サイト
「CRIMESIGHT」はミステリーゲームの新たな形になるか。イシイジロウ氏と長田毅志氏に,開発の経緯や今後の展望を聞いた
未来の犯罪シミュレート空間で頭脳バトルを繰り広げるKONAMIの新作「CRIMESIGHT」は,果たしてどういった経緯で誕生したのか。プロデューサーの長田毅志氏と,世界観の監修を担当したゲームデザイナー / 脚本家のイシイジロウ氏に,“新たなミステリーの形”を打ち出す本作について話を聞いた。
複雑な読み合いをシンプルな操作で楽しめる
最後の瞬間まで気が抜けない推理バトル
ゲームの舞台となるのは,AI技術が大幅に発達した2075年のロンドン。オンライン上に溢れるさまざまな情報を収集し,未来の犯罪を予測するForesight AIシステムが実用化され,多くの犯罪が未然に防がれるようになった世界だ。
Foresight AIによって凶悪犯罪の発生率は90%減少し,世界は平和の道を歩み始めるかと思われた。しかし,Foresight AIですら発生を防げない“残り10%”の事件が起因となり,世界が破滅に迫る未来が“Foresight AI自身”によって予測されてしまう。
この状況を打破するため,破滅の原因となる“未然凶悪犯罪”を解決するためのAIが開発される。その名はSherlock(シャーロック)。旧世紀の小説に登場する名探偵の名を持つAISherlockは,数々の事件を追ううちに一つの事実にたどり着く。破滅へ向かう事件の中心にはMoriarty(モリアーティ)という,Sherlockと同じ旧世代の小説に登場する著名な犯罪者の名を持つAIが存在したのだ。
プレイヤーは,犯罪を防ぐSherlock,または犯罪を起こさんとするMoriartyのサポートを受けながら,シミュレーションの世界で頭脳バトルを繰り広げることになる。
AISherlock |
AIMoriarty |
ゲームが始まると,隔離された空間に取り残されたPawn(ポーン)と呼ばれる6人のキャラクターが出現する。この6人の中に,Moriartyが殺害を目論む「ターゲット」と,殺害の実行犯となる「キラー」が含まれているが,外見でそれらを判別することはできない。
キラーは“凶器”を持った状態でターゲットと同じエリアに入り,そのエリアを含む部屋にほかのPawnが存在しなかった場合,自動的に事件が発生してしまう。プレイヤーたちはほかのPawnの行動に注意しながら,Sherlock側は事件発生の阻止とキラーの特定,Moriarty側は事件の発生条件を揃えてターゲットの殺害を目指すことになる。
プレイヤー人数が2人の場合はそれぞれSherlockとMoriartyに分かれることになり,3人以上の場合はルールが変化する。まずは基本となる1対1のルールを紹介していこう。
パッと見だと難しそうな雰囲気があるかもしれないが,プレイヤーができる行動は「マップに表示されたPawnを選択して,探索場所を指定する」だけという,とてもシンプルなものである。ゲームはターン性となっており,各プレイヤーが行き先の入力を終えたら,Pawnたちは指定した通りに行動してくれる。
3ターンごとに1日が経過し,最終ターンとなる4日目の朝(10ターン目)を迎えるまでに,両陣営は目標を達成しなければならない。
そこで大事になってくるのが,Pawnに与えられる指示の数と,指示が重複した場合の処理だ。Sherlock側は1度に最大3人,Moriarty側は最大2人のPawnに指示を飛ばせるため,絶対数ではSherlock側が有利だが,同じPawnに指示を送った場合はMoriarty側の指示が必ず優先される。
ただし,Moriarty側は,ターゲットには指示を与えることができない。つまり,Sherlock側の指示を無視して動いたPawnはターゲットではないことが確定することになる。指示の上書きによってSherlock側の計画が崩れる可能性がある一方で,その行動内容や選んだキャラクターはキラーを特定する重要な情報源になるというわけだ。
Sherlock,Moriartyの両陣営から指示を与えられていないPawnはランダムに行動するため,指示の重複が発生しないかぎりどちらの陣営がどのPawnに指示を与えたかは分からない。Moriarty側はSherlockがどのPawnに指示を出すか推測しながら,いかにターゲットが絞られないようPawnを動かすかが重要となる。
基本ルールを理解した段階で,筆者の中に「常に大人数で固まっていれば負けないのでは?」という悪い発想がよぎった。こういった推理ゲームをプレイする人なら,同じ発想に至ると思う。
キラーによるターゲットの殺害が発生するには,前述のとおり「キラーとターゲットが同じ部屋にいる」「キラーが凶器を所持している」「キラーとターゲット以外の目撃者が存在してはならない」という条件を満たす必要がある。逆に言えば,常に3人以上で固まって動けば事件は発生しない。
指示が重複した場合はMoriarty側が優先されるとはいえ,肝心のターゲットは動かせないため,単に人数を固めるだけなら制御可能な人数で勝るSherlockの方が有利。これならほぼSherlock側が完封できてしまうのでは?
といった具合に,意気揚々と思いついた作戦を実行してみたが,現実は甘くはない……ではなく,そんな“抜け道”はしっかりと対策されていた。閉鎖空間にとらわれたPawnたちは,何も食べないと空腹状態となってしまい,生き残るためにはマップ内で食料を探す必要があるのだ。固まって行動し続けていては,食料集めはままならない。否応にも別々で行動しなければならない。
1日(3ターン)が経過した時点で食料を所持していなかったPawnは空腹状態となり,一度に移動可能な距離が減少する。さらに,空腹状態で食事ができない状態が続くと,飢餓状態となって視界を失ってしまう。
もちろん,視界を失ったPawnは“目撃者”としての機能を果たせない。食料はマップ上のあちこちに隠されているため,効率よく集めたい場合はPawnを分散して探索する必要があるが,分散すればターゲットとキラーが二人きりになる確率が高まるため,Sherlock側は慎重な行動が求められる。
とは言え,Sherlock側が一方的に不利になるわけではない。1日の最後にSherlockによるデータ分析が行われ,その時点で“ターゲットの3エリア以内にキラーが存在するか否か”が明らかにされるのだ。
例えば,Sherlockの分析の結果が「ターゲットの3エリア以内にキラー存在する」のとき,仮にキラーが「Pawn A」でターゲットが「Pawn B」だったとしよう。このとき,「Pawn A」の3エリア以内に「Pawn B」と「Pawn C」しか存在しなければ,キラーとターゲットはこの3人の中にいる,というところまで絞り込まれることになる。
それ以前に収集していた細かな情報を含めれば,それが決め手になることもあるだろう。リスクはあれど,それだけリターンとなる情報が手に入るということだ。
データ分析が進むと容疑者が狭まり,ゲームが終盤に近付くほどMoriarty側が不利になっていくが,Sherlock側にとっても最後まで油断できないシステムがある。それが,Moriarty側プレイヤーがキラーを用いて1回だけ使用できるコマンド「襲撃」だ。
襲撃を指示されたPawnは,キラー以外のすべてのPawnの行動が終了した後,ターゲットに向かって最短距離で移動を開始する。移動先は「ターゲットの最終位置」を参照するため,ターゲットの移動先を予測する必要がない。
極めて強力なコマンドではあるが,襲撃が失敗した時点でキラーが確定し,Sherlock側の勝利になる。襲撃はあくまで最終手段。残りターンの関係で勝負に出るときに使用するもので,基本的には通常のコマンドを繰り返し,自分自身の推理によって勝利条件の達成を目指すことになるだろう。
Pawnへの行動指示による情報のあぶり出し,各Pawnによる食料の収集,事件発生条件のチェックなど,処理するべき情報量は多く,ゲーム中に展開される読み合いはかなり複雑だ。しかし,プレイヤーができることは基本的に「Pawnを選んで行動を決定する」だけで,煩雑な操作などは一切要求されない。キラーおよびターゲットの可能性が排除されたPawnはすべて通達されるので,プレイヤーは推理や互いの行動の読み合いに全力で集中できる。
Sherlock側はジリジリと容疑者を炙り出しながら追い詰め,Moriarty側は捜査の目をくぐり抜けて条件の成立を目指す。たった30分前後で,推理小説の登場人物になったような感覚を味わえるのが,本作の最大の魅力だ。
多人数戦ではさらに複雑な“騙し合い”が?
基本ルールはそのままに,プレイ感が大きく変化
3人以上のプレイヤーが参加した場合,1人がMoriarty側を担当し,それ以外のプレイヤーがSherlock側を担当するという“1対多”となる。
プレイヤーのうち誰がMoriartyであるかは,Sherlock側のプレイヤーには通知されない。つまり,1対1で行われる「Pawnの中の容疑者」を絞り込むときと同じような形で,「プレイヤーの中の“Moriarty側の1人は誰か”」を推理する必要が出てくるのだ。これが1対1の対戦とはまったく異なるプレイ感覚を生み,ルール自体は一緒なのに別のゲームを遊んでいるような面白さがある。
多人数プレイでキーとなる要素が,アイコンでの意思表示だ。
本作にはボイスチャットなどが存在せず,意思疎通は表情アイコンで行うことになる。アイコンの内容はMoriarty側にも見えているので,重要な情報をSherlock側に伝えながらも,ときにブラフ(嘘)を織り交ぜるといった形でMoriarty側のプレイヤーを惑わす必要がある。
このように,“誰がどんな意思表示を行い,それをどこまで,どのように行動したのか”の確認が重要となる多人数プレイは,1対1に比べてより“騙し合い”の部分が強調される印象だ。
一見,ほかのプレイヤーとの連携が必要となるSherlock側は複雑なようにも感じるかもしれないが,一人当たりが操作する必要があるPawnの数が減るため,盤面の推理に時間的リソースを多く割けるという利点もある。
例えば“食料の情報共有”。Sherlock側は,ゲーム開始時に1プレイヤーごとに食料がある位置を2か所把握できるため,多人数でプレイしている場合は最大3プレイヤー分の位置が判明していることになる。つまり,アイコンをうまく活用できれば,Sherlock側のプレイヤーで食料の位置を共有できるわけだ。
情報が重複している場合もあるが,それでも1人でプレイするときよりは食料探しの苦労は減り,そのぶん推理や他のプレイヤーの行動確認に力を入れられる。ときに協力し,ときに騙しながら真実を目指す。このあたりの楽しさは,1対1とは異なる多人数プレイの大きな魅力だろう。
ただ,1対1に比べて,Sherlock側でロジックの構築を行う際のノイズが多いところは少し気になった。個人的にはもう少しSherlockに有利に働く要素があると,より快適に楽しめるのではないかと思う。
とはいえ,これについてはプレイする人の嗜好によるところは大きいだろう。ノイズのない環境で黙々と論理パズルを組み立てていくのが好きな人は1対1,パーティゲーム感覚で複数人での騙し合いを楽しみたい人は多人数戦と,それぞれの求めるプレイスタイルで楽しめる推理ゲームとなっているところには唸らされた。
論理パズルを組み立てて情報を絞り込んでいく推理要素や,能力に差が存在しないPawnなど,CRIMESIGHTのプレイ感覚はかなりアナログのボードゲームに近い。そのうえで,ボード上で再現するには難しい部分をAIのSherlockとMoriartyに任せることで,推理や論理パズルのもっとも美味しい部分に集中して味わえるというところは,アナログとデジタルのいいとこどりといったところ。
プレイ時間は多人数戦でも30分程度で済むため,何度も繰り返し楽しめるところも嬉しいポイントだ。ターン性も実によくハマっていて,人狼やAmong Usといった推理や“騙し合い”の要素が好きで,かつ1手1手をじっくり考えたいというプレイヤーにはたまらないものがあるだろう。友人や仲間とこういったゲームをプレイする人にとっても,長く遊べる対戦ツールとなってくれそうだ。
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