元旦や 冥土の旅への 一里塚
めでたくもあり めでたくもなし
室町時代の僧侶・一休宗純,いわゆる“一休さん”が詠んだとされる狂歌です。過去にSNKの正規代理店だったり,現在はトレカショップを展開していたりする(株式会社)一休さんとか,
「SIMPLEキャラクター2000シリーズ Vol.07 一休さん THE クイズ」 とかでゲーマー的にはおなじみの一休さんです。それ以外で知ることはまず無いやつです。
この狂歌の出典は未詳らしく,後年の創作という可能性もあるそうですが,何にせよ新年あけまして,生きとし生ける者すべて命日に近付きまして,というか新年でなくとも誰もが一瞬ごとに死に近付きまして,そんなこんなでおめでとうございます。「明日死ぬかのように生きろ」って誰かも言ってましたし(アラン・ド・リール,デジデリウス・エラスムス,セビリャのイシドールスなど諸説あり),むしろ身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれです。捨てていけ,身!
そんなわけで
2023年 になりました。2023年なので,今年の11月には
PS4が発売10周年 という世の無常ぶりです。10周年ということは,PS2が発売された頃のスーパーファミコン,ニンテンドー3DSが発売された頃のゲームボーイアドバンス,Xbox 360が発売された頃のバーチャルボーイ,PS3が発売された頃のピピンアットマークみたいなもんです。「比較対象として適切でなくね?」みたいな話はさておき。
あと
ファミリーコンピュータが発売40周年 ですし,セガ・エンタープライゼス(当時)の
「ポントロン」 やタイトーの
「エレポン」 が50周年なので
国産ビデオゲーム市場が50周年 だったりもしますから,メディア的にも何かやりたいですね。ついでに
Atari Jaguarが北米発売30周年 だったりもしますので,Atariを讃えよ(命令形)。
セガは一昨年が設立60周年のアニバーサリーイヤーだったのでいろいろやっていましたが,タイトーは2023年が
創立70周年 のアニバーサリーイヤー。何かしらいろいろやるのだとは思いますが,それに少し先駆けて,昨年末にタイトーからレトロゲーマー垂涎の製品がリリースされました。そんなわけで今回は,12月22日に発売された「
EGRET II mini 」専用SDカード
「アーケードメモリーズVOL.1」 でやっていきましょう。
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妄想コンプレックス
「アーケードメモリーズVOL.1」の収録タイトルは
「グレートソードマン」「黄金の城」「スラップファイト」「大旋風」「プリルラ」「グリッドシーカー」「ライディングファイト」「ライトブリンガー」「逆鱗弾」「クレオパトラフォーチュン」 の10タイトル。筆者は「プリルラ」が収録されると知って,脊髄反射でポチりました。
「プリルラ」……基板もセガサターン移植版も市場で超プレミア価格ですし,実機をプレイしたのは今はなき秋葉原・トライアミューズメントタワーで数える程度ですが,そんな希少性以上に,ある種の“最高なゲーム”のひとつです。他社タイトルと並べれば,ナムコの
「ピストル大名の冒険」 やセガの
「ずんずん教の野望」 くらい最高です。プレイしていると脳がうんにょりしてきます。
いろいろと様子がおかしい,3面の「誇大妄想家の町」。まあ誇大妄想とは無関係に,2面ボスから基本的に様子がおかしいのですが
というか,ボムにあたるマジックは最初から様子がおかしい……
「TAITO ARCADE SELECTION」公式Twitterでは「
プリルラ!社員出過ぎなんですぅ 」と収録を断念した理由が述べられており,現行機移植は絶望的かと思っていたですが,何とかなるものなんですね。こういうタイプの吐いた唾飲み込み案件は大歓迎です。「EGRET II mini」(定価1万8678円/税込)と「アーケードメモリーズVOL.1」(定価8778円/税込)をあわせて2万7000円ほどですが,これを「プリルラを遊ぶため」と思って買っても安いくらいです(※個人の感想です)。
それにしても,改めて収録ラインナップを眺めてみると,花形タイトルは本体プリインストール,特殊コンパネ系は
「パドル&トラックボールゲーム拡張セット」 同梱でリリースされたことから,「プリルラ」以外にも個性派カルトゲームが集まっている雰囲気です。ちょっとそれぞれ見ていきましょう。
本稿ではとくにフィーチャーしませんが,もちろん買ってる「パドル&トラックボールゲーム拡張セット」。「サイバリオン」をコロコロ遊べたり,「プチカラット」をクルクル遊べたりします
シューターと東亜と速い敵弾(たま)
「スラップファイト」「大旋風」 は東亜プランが開発したシューティングゲーム。それに加えて,東亜プラン倒産後に元在籍者の一部が開発に関わったという
「逆鱗弾」 も,東亜系の一種だと言ってもいいでしょう。東亜プランのゲームは,スウェーデンのBitwave GamesがPC向けに
4タイトルを発売予定 だったり,スペインのRAWRLAB Gamesが
「フーピー!!」の移植版 を開発中だったり,exA-Arcadiaで
「BATSUGUN」がリリース予定 だったりと,スーパーマリオやファイナルファンタジーに匹敵する(※個人の感想です)タイトルばかりなので,細かい説明は不要ですね。硬派かつ派手でバリバリのやつです。
スラップファイト
大旋風
一緒くたにするのも何ですが,「グリッドシーカー」はタイトー内製ながら8方向レバー&ショット/ボムの縦スクロール型シューティングゲームで,東亜シューの影響がうかがえますね。自機はF-14,AH-64,B-2といった米軍機がモチーフで,それぞれ現実では運用組織が異なる(海軍/陸軍/空軍)うえ,爆撃機の自機というのは珍しかったりして,噛めば噛むほど味が滲み出てくるタイプです。なかやまらいでん氏の手掛けた楽曲も超カッコいいですし。
爆撃機 vs.爆撃機!
ただ「グリッドシーカー」がリリースされた1992年には,弾消しビット&アイテム非依存型ボムというシステムが被ったカプコンの
「バース」 や,実在機縦シューのうえF-14系が出てくるナムコの
「F/A」 やビデオシステムの
「ソニックウイングス」 といったタイトルがリリースされていたので,注目はそれらに流れてしまった印象があります。生まれた時代が少しだけ早かったら,もうちょっと目立てていたかもしれません。
コントルタンが刺さらない
「グレートソードマン」と「黄金の城」は,
「スーパーリアル麻雀」 シリーズで知られるセタが開発したタイトルです。攻防を上中下で繰り出して戦うシステムは,モダンにリファインしたらワンチャンありそうな感触もあり,このスタイルがジャンルを確立できず歴史に埋もれてしまったのは惜しいと思うところです。
サクッと突く
「黄金の城」は脱衣要素のあるゲーム(男も女も)として有名なので,「プリルラ」に並んで非改変での移植は困難だろうと巷で言われていたタイトルですが,“SDカード”として販売される都合なのか,CEROレーティングを取得していない「アーケードメモリーズVOL.1」では
国内版初期バージョン での収録を実現しています。
画像は逆にプレイヤーキャラがひん剥かれているところ
こういう方法ならリリースできるのだとは驚きです。これがイケるのなら,やろうと思えば
「麻雀クエスト」 もイケるのでしょうか。もしかしたら
「パズニック」 もイケるのかもしれませんが,「パズニック」の場合はPCエンジン版のほうがいいです。ただグラフィックス差し替え前バージョンの「パズニック」が「アーケードメモリーズVOL.2」に収録されたりしたら,定価が3万円くらいでも買います。あと,これもセタ開発・タイトー発売の
「ツインイーグル」 がいっしょに収録されて
ウォーウォーウォーアイゴナブレイクユーダーゥン (※ボーナス面で流れるBGMの歌詞)できるなら脊椎反射で買います。
これはツインイーグルのボーナス面BGMがフルコーラスで収録されているアレンジサントラ(筆者私物)。正統派ロックな感じで超カッコいい
金字塔になれたら
「クレオパトラフォーチュン」は,筆者が落ち物パズルゲームの中で一番おもしろいと思っているやつです。まあ入ってるなら買うよねってもんです。
ちなみに今回のタイトルの中で,筆者が「ある程度うまい」のは正味なところ本作だけです
「棺やミイラなどのブロックを石ブロックで囲んで消す」と「同種のブロックを横一列に並べて消す」という2種類の消し方があるため,最初はセオリーが分かりにくかったりしますが,慣れると画面いっぱいに積み上げたブロックを一気に消していく爽快感を簡単に得られるのでヤミツキになります。全消しでいろんな姿のパトラ子を拝むのもオツなものです。なお初心者向けガイドとしては,まず
「2マスサイズの石ブロックをできるだけ縦で置く」 ということから始めましょう。本作における死因は大抵が2マス石の横置きから来るものです。
ついでのように言うのもアレながら「ライトブリンガー」も“覚えれば楽しいけど知らないとしんどい”タイトルですね。タイトーゲーはそういうとこある。
「レイストーム」 のアラリックもしんどい。めっちゃしんどい。
何気にクレパトとは“バニーが出る”つながりのライトブリンガー
「クレオパトラフォーチュン」は,セガサターン版の現行機移植版がシティコネクションから
「クレオパトラフォーチュン Sトリビュート」 としてリリースされたりもしています。筆者はNintendo Switch版とSteam版を購入しましたが,せっかくならNAOMIの
「クレオパトラフォーチュンプラス 〜またまた神秘ですぅ〜」 も移植されないものでしょうか。
EGRET II miniでクレパト,Nintendo Switchでクレパト,Steam Deckでクレパト。さあ君もクレパトをやるのだ
ただ「EGRET II mini」収録タイトルの規格はF3システムまでなので,NAOMIのゲームを追加するのは難しいかもしれません。なので,いっそ
DC移植版 ってワンチャン無いでしょうか。近年ではPixelHeartによる「
アンドロデュノスII 」や
「Xenocider」 ,Bitmap Bureauによる
「Xeno Crisis」 がDC向けに発売されていますし,タイトーにはコロンバスサークル販売でMD版
「ダライアス」 をリリースするという前例もありますし(※プラットフォーマーからライセンスを得た製品ではないため,具体的なハードウェアを示さない表記をしています)。
そう,メガドライブには「メガドライブミニ」シリーズ,セガサターンには「Sトリビュート」シリーズがあるのだから,次はドリームキャストのターンに違いないと宇宙意思が囁いている――(※個人の証言です)。
ライディングファイター
「ライディングファイト」は,正直なところ筆者は本製品で初めて知ったタイトルです。この珍奇なゲームは一体なんでしょう。ジャンル的にはベルトスクロールアクションの一種ですが,「基本的にレールシューターじみた奥スクロール」といった
奇抜さ からか,
「ルナーク」 や
「アラビアンマジック」 の名前が挙がるような場面でも並んでいるのを見た覚えがありません。
1面ボスは両手にチェーンソーを携えた男性。つまりチェーンソーのマン
主人公はバーン(1P)&キース(2P)という後年のサイキッカー風な名前ですが,ムキムキボディにレザーだかデニムだかのシャツ&ボトムスとプロテクターおよびサングラスをまとうなど,
「サイキックフォース」 のイケメン達とは似ても似つかない世紀末救世主チックな出で立ちです。
そんな兄貴達がホバーボードに乗ってハイウェイや海上を疾走し,悪漢どもを徒手空拳でなぎ倒していきます。“FOOD TIME”というボーナスステージで,ハイウェイの障害物を殴り壊すとラーメンやハンバーガーが大量に出てくるに至っては脳がとろけてきます。エンディングで
“原作 ディビッド・ウィリアム 「コロ遊び」より” とのたまわれるに至っては思考回路がショート寸前です。
これがデータイーストのゲームでないことが不思議なくらいなんですが,タイトーのイベント用ロボット「ゆめ丸」がキャラクターとして登場していたりするので,やっぱりタイトーのゲームなんですよね。本作と「プリルラ」,あと
「まじかるで〜と ドキドキ告白大作戦」 を立て続けにプレイしたら,何かの神秘に目覚められるような気がします。
神ゲー です。
転がるカニ,タコにイカが降る
そんなわけで,ゲームセンターでは「脇を固める」的な活躍をしたタイトルが結集している「アーケードメモリーズVOL.1」。
コアなゲームが好きな人にはぶっ刺さる ラインナップと言えるでしょう。
これに続く「アーケードメモリーズVOL.2」が出るとしたら,どのようなラインナップになるでしょうか。ネタに走らず言えば
「ランドメーカー」 が収録されると素直に嬉しいところです。「クレオパトラフォーチュン」と,「パドル&トラックボールゲーム拡張セット」に収録の
「プチカラット」 に加え,「ランドメーカー」まで来たならパズルゲーマー的には三暗刻という感じです。
逆にネタに走れば,先述の「ツインイーグル」や,その続編
「ツインイーグルII」 ,
「スペースインベーダー インヴィンシブルコレクション」 に収録されなかった
「あっかんべぇだぁ〜」 ,あと
「サイレントドラゴン」「デッドコネクション」「メガブラスト」 と,“ある意味レジェンド”枠で
「ギャラクティックストーム」 ,“逆レジェンド”枠で
「飛鳥&飛鳥」 とか言いますが。楽曲権利周りが大変なことは明白なものの,
「きらめきスターロード♪イントロ倶楽部♪」 を今プレイしたら当時と違う味がしてくる気もします。
2022年はいろいろありました。筆者としては,COSIO氏に
サウンドバーガー や「
Super Midi Pak 」をブン投げてみたり,「
メガセレブの宴 」で企画原案とか進行台本制作とかBGM用ループ編集とか会場内でSE&BGM担当とかやってたり,「
M2STG生放送2 #1 」の視聴者コメントで「またハンバーグ男か!?」と言われてみたり……いや,うん? ああ,これ昨年ってか,ここ2か月くらいの記憶だ。他に何かあったかな。別段何も無かったかもしれません。まあ,昨日のことは覚えていない,今夜のことは分からない,バナナはおやつに入らない,おでんで白飯は食べられない(カサブランカ)。
うん,「また」なんだ。すまない……
ついでにマジで無関係ですが,
「鉄拳7」 の
ファンアート投稿キャンペーン で入賞されたすずき鮭さん,おめでとうございます!