スクウェア・エニックスは2021年10月23日,
「ドラゴンクエストX秋祭り2021」を東京都内で開催した。このイベントでは,オンラインRPG
「ドラゴンクエストX」(
PC/
PS4/
Switch/
Wii U/
BROWSER)の開発スタッフや声優陣が登壇した。
本稿では,このイベントの第一部で発表された,11月11日リリースのバージョン6.0「天星の英雄たち」および2022年2月26日発売予定の
「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン」(
PC/
PS5/
PS4/
Switch)の最新情報をお伝えする。
イベント第一部の登壇者。ドラゴンクエストの生みの親・堀井雄二氏(左),青山公士氏(右)
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 MCを務めた椿 彩奈さん(左)と,バッファロー吾郎・竹若元博さん(右) |
 安西 崇氏(左),小澤直美氏(中央),白石琢磨氏(右) |
「ドラゴンクエストX」バージョン6.0「天星の英雄たち」最新情報
本作のディレクターを務める安西 崇氏によると,バージョン6.0は「新たなる大冒険の始まり」になるという。プレイヤーが演じる主人公は,総勢10名の英雄の1人として新たな冒険の地「天星郷」で「四天の星巡り」をすることとなる。
天星郷は,“いかにも天界”というイメージで作られたとのこと。空の上にあることから,空気感や風の動きなどの表現にこだわったそうだ。
バージョン6を通してヒロインを務める天使ユーライザを筆頭に,天星郷で出会うキャラクターも紹介された。このうち天使長ミトラーとヘルヴェルは,安西氏いわく「非常に面白いキャラ」だという。
バージョン6用の移動アイテム「魂の燭台」も紹介された。バージョン4の「エテーネルキューブ」やバージョン5の「アビスジュエル」に相当し,天星郷の主要ポイントにある「転移の聖火台」間を移動するために使用する。もちろん天星郷以外の場所では使えない。
サブクエストも,もちろん用意されている。今回は,かなり数が多いそうだ
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バージョン6には,新職業として「海賊」が登場する。海賊は,簡単にまとめると「大砲」を設置して戦う遠距離アタッカーで,装備可能武器は短剣,弓,ブーメラン,オノ。盾は大盾以外なら装備可能で,防具は盗賊などと共通の服系を装備できる。
また最近の新職業同様,レベル50からスタートする。その代わり当面の間「エンゼルスライム帽」は装備できず,またコロシアムにも挑戦できない。
なお海賊の転職条件は,バージョン6.0の導入,クエスト「ダーマの試練」およびガートラントのストーリーのクリア,いずれかの職業がレベル50以上になっていることとなる。転職クエストのNPCレッパは,ギルザット地方の入り江の集落にいるそうだ。
海賊は固有のスキルライン「ほうげき」を持ち,これを伸ばしていくことで「銃」や「大砲」を使った特技を覚えていく。
特技「大砲置き」は,一定間隔で前方に砲撃を行う大砲を設置し,射程範囲内の敵にダメージを与えるというもの。大砲は1パーティ最大3台まで設置可能で,4台めを設置すると古いものから順番に消えていく。
また大砲は敵の範囲攻撃に巻き込まれるとダメージを受け,耐久力がゼロになると消えてしまう。
特技「恐怖弾ショット」は,敵1体を「恐怖」状態にして,一定時間移動速度を低下させる。
また特技「痺れ弾ショット」は,対象の敵周辺に雷属性ダメージを与え,「マヒ」状態にする。
そのほか大砲がオートで向きを変えて敵に狙いを付ける特技「砲撃ロックオン」や,チャージで大砲のダメージを向上させる「砲撃ブースト」などが紹介された。なお砲撃ブーストは,スライドの説明文に「大砲の行動を短縮」とあるが,この仕様は製品版ではオミットされたそうだ。
また大砲系特技の与ダメージ量は器用さに,銃撃系特技のそれは攻撃力に依存するとのこと。
ちなみに大砲置きや砲撃ロックオンは,ドラゴンクエストの生みの親・堀井雄二氏が命名したことも明かされた。
呪文は「ドラゴンクエストVII」登場時のものに加え,新たに追加されたものが使える。海賊の呪文と言えばバギ系が多い印象だが,今回のスキル調整では,バギ系呪文(バギ,バギマ,バギクロス,バギムーチョ)の射程が長くなったことも発表された。この調整は海賊だけでなく,バギ系呪文を使える職業すべてに反映され,コロシアムにも適用される。
海賊の職業クエストにも,アップデート直後からチャレンジできる。背景の海賊船内部にも注目してほしいそうだ
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また,新たなバトルコンテンツとして,「源世庫パニガルム」が登場する。このコンテンツは週課の1つとなるため,アップデート当日ではなく12月中旬より稼働するとのことで,詳細は11月10日配信の公式番組「超DQXTV」にて公開される予定だ。
改修されたコンテンツ「不思議の魔塔」も登場。内容は完全に刷新され,プレイヤーが専用職業「魔闘士」となりダンジョンに挑む1人用コンテンツとなった。詳細は,本記事後半の開発者座談会のレポートに記しているため,ここでは概要と注意点のスライドを掲載しておく。
アイテムのバランス調整も行われる。大きなところでは,「せかいじゅの葉」「せかいじゅのしずく」の効果発動までの時間が延長される
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 「どうぐかばん」「そうびぶくろ」も拡張 |
 魔剣士に新スキル「黒炎帝の斬撃」が追加。会心の一撃が出るので,「魔の波動」が溜まりやすいとのこと |
レベル115装備を錬金可能にする「虹の錬金石」も登場
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「達人のオーブ」のレベル上限が60まで開放される
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そのほか特訓やアクセサリー合成レベルなど,さまざまな要素の上限が開放される
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「輝晶効果」に新しい効果が登場
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「魔法の迷宮」に新コインボス「アンドレアル」が登場
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「第三世代アクセサリー」が登場し,同時に「第二伝承合成」ができるようになる
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「大地の竜玉」「大地の大竜玉」のアクセサリー合成が緩和される
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 「アストルティア防衛軍」に,悪魔系の「芳墨の華烈兵団」が登場 |
 「試練の門」に,新モンスター「ドミニオンズガード」が登場 |
「極致への道標」が改修され,新たに「職業の道標」「武器の道標」が追加に
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 「バトル・ルネッサンス」にバージョン4のボスを追加 |
 主人公などの名前に“ヴ”が使えるようになった |
「FINAL FANTASY XI」「XIV」とのコラボイベントの再演では,新たな報酬や特別印章がもらえる
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バージョン6.0のロードマップも公開された
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「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン」最新情報
「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン」のコーナーでは,プロデューサーの白石琢磨氏が,本作に寄せられている疑問について一問一答形式で回答した。
最初の質問は「『ドラゴンクエストX オンライン』との連動は?」。白石氏によると,オフライン版はクリア後に20文字程度の「ふっかつのじゅもん」が表示されるそうだ。この「ふっかつのじゅもん」を使うと,オフライン版でプレイできた職業がレベル70の状態でオンライン版に引き継がれるとのこと。
ただ,オフライン版はオンライン版とはほぼ別のゲームとなっているため,便宜上引き継ぎと表現しているが,実際は「強くてニューゲーム」のような感じに近いという。
2つめの質問は,「キャラメイクや5種族への転生はあるの?」。白石氏によると,人間の姿はもちろん,転生したときの各種族のキャラメイクもあり,性別も選べるとのこと。ただし,オンライン版に実装されている髪型やカラーは9年間のサービスを経て膨大になっており,残念ながらオフライン版ではすべてをカバーできていないそうだ。
3つめの質問は,「装備の見た目はオンライン版みたいにいろいろ変更できる?」。こちらはカラーリングやマイコーデ,見た目装備などを含めて変更可能だという。ただしこちらも,オンライン版に実装されているすべての装備やカラーをカバーしているわけではないとのこと。また装備の部位も,オンライン版とは異なっている。
4つめの質問は,「魔法の迷宮やアクセ合成はあるの?」。これは,どちらもオフライン版専用に仕様を変更しているとのことだ。簡潔に説明すると運に左右される要素がなくなっているのだが,これはオンライン版とオフライン版ではプレイヤーの遊び方や開発チームのどう遊んでほしいかという部分が異なっているからである。
最後の質問は,「職業は? オンライン版みたいに転職できるの?」。こちらは,プレイヤーが操作する主人公のみ転職可能で,仲間キャラは決まった職業になるそうだ。
またオンライン版はすべての職業が横並びになっているが,オフライン版では賢者やバトルマスターなどは上級職として扱われ,性能も高くなるとのこと。転職の条件については,今後改めて発表される。
開発者座談会「バトルプランナー編」
開発者座談会には,本作のバトルプランナーを務める松岡洋右氏と,エフェクトアーティストチーフの山本 篤氏が登壇した。
前半のバトルプランナー編では,松岡氏が上記の改修された不思議の魔塔について解説を行った。
そもそも不思議の魔塔は2015年に実装されたコンテンツだが,プレイヤーからはさまざまな不満点が上がっていたという。開発チームはそうしたプレイヤーの声に応えるべく改善を図っていたが,すべてを解決するには根本的な部分から見直す必要があると判断したそうだ。
そこで不思議の魔塔を根本から改修するにあたり,「塔の頂上を目指す1人プレイ専用コンテンツ」というコンセプトを掲げたとのこと。
1人プレイ専用にしたことにより,自分の力だけで攻略する遊びとなり,自分のキャラクターを育成していく側面がかなり強化されている。松岡氏によると,当初は魔塔にいるNPCを仲間として雇える仕様だったが,それでは自分のキャラクターの成長が感じづらくなってしまうとテストプレイで感じたため,1人プレイを採用したそうだ。
また改修前は毎月1日に進行がリセットされたが,改修後は1度クリアしたら終わりという遊び切り形式のコンテンツとなる。
不思議の魔塔は,どのプレイヤーも専用職業「魔闘士」でプレイする。その成長システムは,「何でも装備できる」「スキルラインがない」という本編とはまったく異なる特徴を持ち,レベルアップと装備の錬金効果によって自分のキャラクターを育成していく。
装備の錬金効果は,魔塔内で集めた素材を使って付与する。またより高ランクの装備に作り替える「進化」を行うことも可能だ。
魔塔の装備には,種類ごとに固有の錬金効果枠が複数用意されている。例えば戦士の剣なら,「スキル習得」「パラメータ上昇」「特技・呪文の威力アップ」の3枠となる。
さらにスキル習得の錬金効果には「型」があり,型に応じて複数のスキルを習得できる。
これら錬金効果や型を組み合わせることで,例えば同じ武器でも強い単体攻撃を繰り出せたり,特定属性の範囲攻撃を放てたりと,さまざまな個性を持たせることが可能となる。
また装備が進化したときは,進化前の錬金効果が引き継がれる。高ランクの装備は錬金効果枠や型の数が多いので,そのぶん強い性能となる。
ダンジョンは,進入した場所のみがマップに表示されるようになった。いわゆるマッピングができるようになり,探索感が強化されたという。
またダンジョンは,入るたびに部屋の形や配置物がランダムに変更される。各階層には階段がランダムに配置されており,その階段を調べると上のフロアに移動できる。
ダンジョンの各階層には,謎解きが追加された。各階層で謎を解くと,アイテムやアクセサリーが手に入るとのこと
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ダンジョン内は全体に暗くなり,先が見えないような雰囲気に。その代わり松明や窓から差し込んでくる光などをはっきりさせ,明暗のコントラストを強めに表現している
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報酬となる「不思議のカード」は,最大8段階まで強化可能に。手持ちの強化済みのカードも8段階まで強化できる。なお6段階めの強化からは,新たに登場する「虹のフェザーチップ」が必要になる。
フェザーチップ各種の入手方法が変更され,虹と金のフェザーチップは実績を達成して報告すると入手できる。また金,銀,銅のフェザーチップは,ダンジョンの宝箱から入手する。
すなわち,虹のフェザーチップは実績達成でしか入手できないので,手に入る数が限られてしまい,手持ちのカード全部を8段階まで強化することはできないことになる。ただし,今後のアップデートで実績が追加されていくとのことだ。
改修にあたり,プレイヤーのフェザーチップ所持数を調査したところ,予想以上に貯め込んでいる人が多かったことが判明したという。バージョン6.0以降は,フェザーチップをおまとめぶくろにまとめられるようにしたそうだ
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以上の改修を経て,魔塔はコンセプトに沿って「キャラクターを強化して最上階を目指す」というコンテンツとなった。
またボスバトルは全体的に難度が上がり,手応えがあるという。ボスバトルは5階ごとにチャレンジ要素として配置されているので,初戦で負けてしまっても装備や錬金効果を見直すことで勝てるようになるそうだ。どうしても倒せないプレイヤーのために,攻略のヒントをくれるNPCも用意している。
なお魔塔はバージョン6.0の段階では30階までだが,31階以降もアップデートで随時開放されていく。今のところ,バージョン6期間中に数回開放される予定だ。
松岡氏によると,当初はここまで大きく改修するつもりはなかったそうだが,「大きく変更して新しい遊びにしよう」ということになり,ほかの仕事と並行して作業を進めた結果,結局1〜2年もの期間がかかってしまったと話していた。
- 開発者座談会「エフェクトアーティスト編」
開発者座談会後半では,山本氏が「ドラゴンクエストX」のエフェクトを解説した。本作のエフェクトチームはバトルやエリアチェンジ,しぐさなどのエフェクトを作っている。
山本氏によると,本作ではスタッフロールもエフェクトで作成しているそうだ。スタッフロールの一部にエフェクトを施すことは珍しくないが,全編をエフェクトで作るのは極めて異例なことだという。
会場では,この座談会のために作られたスタッフロールが上映された
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なぜわざわざエフェクトで作っているのかというと,データ容量が原因だ。バージョン1では普通にスタッフロールのムービーを作っていたが,キャラクターに演技をさせるなどの演出で豪華にできる半面,データ容量が膨大になるというデメリットがある。
そこで当時のプロデューサーが,エフェクトチームに「エフェクトでスタッフロールを作れないか」と打診したそうだ。
検証の結果,エフェクトでも作れることは作れるが,短所として「表現の制約があり,ムービーのような豪華な演出はできない」ことが判明。一方,長所として「容量がムービーの約1割程度と非常に少なくて済む」「制作期間が短く,スケジュール上の優位性がある」の2つが挙げられたので,バージョン2以降はエフェクトでスタッフロールを作ることになったという。
エフェクトでスタッフロールを作るにあたり,必要なものは背景,タイトルロゴ,スタッフ名簿,イメージ画像,飾り付け,BGMの6つだ。会場では,作成の手順も紹介された。
背景は,本イベントのタイトル画面を加工して作成
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スタッフ名簿は,表計算ソフトのデータを画像化する。今回は16人が登壇するので,計16枚の画像を作成。BGMの再生時間からタイトルロゴ表示などの時間を差し引いた秒数を,16で割ると画像1枚あたりの表示時間を算出できる。今回は1枚あたり13秒とのこと
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イメージ画像の配置を決める
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飾り付けは,秋なのでモミジやイチョウの葉が上部から舞い落ちてくるものに
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山本氏によると,スタッフロールはプレイヤーがストーリーを振り返れるよう,毎回試行錯誤をしているとのこと。会場では,エフェクトの1つである色味の変更を使い,水彩画風の表現にチャレンジした事例が紹介された。
 初期状態の主人公 |
 筆で描いた感じの背景に変更し,主人公に筆で描いたようなザラザラした質感のエフェクトを施す |
 全体を明るくすることにより,グッと水彩画風になったがまだ物足りない |
 左上から太陽光を当てることで,一気に水彩画感が上がる |
ゲーム画面で同じエフェクトを試すと,こんな感じに
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さらに衣装や色味を変えることで,さまざまな雰囲気を出せる
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イベント第1部のエンディングで登壇者達は,バージョン6.0に期待してほしいと,来場者および配信の視聴者に呼びかけた。また堀井氏は,「ファミコン版『ドラゴンクエスト1』を作ったとき,カタカナは20種類しか使えなかった。それがなんと“ヴ”まで使えるようになった。すごい進化だと思いました」と感慨深そうに話していた。