2021年9月7日にbilibili Gameは
「フィスト 紅蓮城の闇」(
PS5 /
PS4)のダウンロード版を配信開始する。
PC版がSteamで配信予定だが,本稿執筆時点で開始日は未定。また,Game Source Entertainmentから9月23日に日本語パッケージ版の発売が予定されている。本作はクロスバイ製品で,PS5版かPS4版のどちらかを購入すると,両方のバージョンを入手できる。
本作は,
二足歩行で人語を話す動物たちが暮らす世界を舞台としたアクションゲームだ。文章で見ると可愛らしい印象を受けるかもしれないが,実際はその真逆。
ハードボイルドなキャラクターたちによる,シブくてシリアスな物語が展開される。今回,発売に先駆けてプレイする機会を得たので,プレイレポートをお送りしたい。
ディーゼルパンクな舞台で繰り広げられるメトロイドヴァニアスタイルのアクション
多くの動物たちが暮らしていた
“紅蓮城”は6年前に
機械軍団の侵攻を受け,動物たちはレジスタンスを結成して抵抗するも,敗北。以後,動物たちは機械軍団の支配下で不自由な生活を強いられていた。レジスタンスのエースである
レイトン(兎)も潜伏生活のような毎日を送っていたが,ある日,友人の
ウルス(熊)がレイトンの誕生日を祝い,ラーメン屋で会うことになる。
兎と熊がアライグマの店で一杯やる世界観……いいよね
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ウルスは機械軍団に屈しておらず,レイトンの「フィスト」はもう修理しておいたと,レジスタンスへの復帰を促す。それとは対照的に,「俺たちの時代は終わった」と,やる気のないレイトン。立ち去るレイトンを見て肩を落とすウルスに,ラーメン屋の店主である
フルス(アライグマ)が「あいつにはまだ時間が必要なんだ。もう少し,待ってやらないか?」と声をかける。
兎が,主人公のレイトン。6年前の戦いで心に傷を負い,気力を失ってしまっているようだ
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しかし,その翌日,ウルスが機械軍団に逮捕されてしまう。レイトンにとって,ウルスは唯一の友。ウルスが残した鋼鉄の巨大拳「フィスト」を背中に装備し,ウルス奪還のため,レイトンは再び立ち上がることを決意する。
男同士の友情を胸に,決意とともにカッと目を見開くレイトンがイケメンすぎる
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……と,そんな感じで,見た目の可愛らしさに反してハードボイルドな導入で物語は始まる。舞台となるのは,タイトルにもある「紅蓮城」。1940年代の上海をモチーフに,ディーゼルパンクの味付けを施した世界だ。
アジアの下町っぽさと近未来感が同居したようなアートワークは,本作の魅力のひとつ。「城? 町に見えるけど……」と思われるかもしれないが,中国では城壁で囲まれた都市のことを「城」と呼び,日本の「城」の意味とは異なる
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ゲームシステムは,いわゆるメトロイドヴァニアスタイルのアクションだ。
「壁跳び」や
「二段跳び」など,少しずつ拡張される能力によって行動範囲が拡がったり,壁を壊した隠し通路の先に体力の最大値をアップさせるアイテムがあったりと,このジャンルでおなじみの要素は網羅されている。
ウルスがハッキングして,何かをやったらしい,街中の増圧器。レイトンがこの機械に入ると光り出し,新たな能力を得る
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「壁跳び」は最初に入手する能力だが,壁さえあれば垂直方向に制限なしで跳べて,ズズズズ……と壁を滑りながらゆっくり降下もできるスグレモノ。ただし,炎が出たり引っ込んだりする,こんな感じのイジワルな縦穴も……
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マップも,かなり詳細。アイコンも豊富で,どこに何があるかが分かりやすい。メトロイドヴァニア好きなら,小数点以下まで表示されるマップ達成率表示がたまらないはず
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文書系の収集要素も。この特殊な世界の知識を増強するのにいい
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最初から「ダッシュ」も可能。移動に関するストレスは皆無だ
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タイトルにもなっている
「フィスト」は,レイトンのメイン攻撃手段だ。□ボタンで弱攻撃(左右への攻撃),△ボタンで強攻撃(叩きつけ攻撃),○ボタンで掴み攻撃となっている。
とりあえず□ボタンをポチポチと押しているだけでも,お手軽3コンボにはなる。難しいことは何もなく,誰でも楽しめるはずだ
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個人的に気に入っているのが,掴み攻撃。掴んだ敵をほかの敵に投げてぶつけることができるので,複数の敵を同時に相手しなければいけないときに便利な攻撃なのだが,この掴み攻撃は,ダウンした敵も掴むことができる。
通常,攻撃してダウンした敵にはそれ以上攻撃が当てられず,相手が起き上がるのを待つしかないのだが,掴み攻撃なら当たるので,掴む→投げる→ダウン→掴む→投げる→ダウン,というハメ技のような一方的な攻撃が可能。もちろん,周囲にほかの脅威がなく,1対1の状況でないと成立しないが……。
掴みからの投げは,投げた方向にいる敵にまとめて当たるので,敵の攻撃を中断させられるのが強みだ
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ダウン後に素早い前転でプレイヤーの背後に回り込んでくる敵もいるため,この掴みハメは,そうした敵への対処が苦手な人のために用意された救済策のようにも思う。ちなみに,特定の敵は掴みが無効なので,あくまで一部の敵にのみ通用する方法だ。
また,敵をある程度弱らせると,派手な演出でフィニッシュを決める
「ターミネイト」という要素がある。「トドメの一撃」のようなもので,演出時は無敵。複数の敵に囲まれているときにターミネイトできると,被ダメージを抑えつつ,ほかの敵も巻き込めることもあり,爽快感の高い要素だ。
敵が黄色く光り始めたときに近付くと,「○ ターミネイト」と表示される。ここで○ボタンを押すと,必殺演出とともに敵を蹴散らすことができる。演出は複数ある
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豊富なスキルがもたらす,拡がりのあるバトルと探索
レイトンのアクションは,さまざまなスキルを習得することでどんどん拡張されていく。スキルの習得には,
お金か
「データストレージ」,またはその両方が必要になる。データストレージは,マップの各所に隠されていたり,ショップで販売していたり,レイトンの武芸の師匠であるヴァロの修練をクリアするともらえたりする。
マップの各所にはこうした端末機が設置されていて,ここで「修理」と「スキル習得」が行える。「修理」は全回復だ。この機械に到達した時点で自動的にセーブもされるが,オートセーブ自体はここ以外でも定期的に行われる
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無数に枝分かれしていくスキルツリー。どれから習得するか目移りするはずだ
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最初は「フィスト」のみで,習得できるスキルもそれにまつわるものなのだが,ゲームが進むと
「ドリル」を入手し,いつでも「フィスト」と切り替えながらプレイすることができる。ドリル入手後は,ドリルを使った新たなスキル習得も開放されていく。
ドリルでないと開かない扉も登場。こういう扉,序盤のどこかでも見かけたかも……
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ドリルは変形して,傘のようにもなる。通常時のジャンプ後などに使えば滑空することができ,下から風が吹いている場所であれば,フワフワと飛びながら進むこともできる
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スキルはかなりの数が用意されているが,これらのスキルを習得しないとバトルで苦戦する……ということはない。ストーリー上,必ず習得することになる溜め攻撃の
「プレスブロウ」だけでも,意外となんとかなったりする。
何かとお世話になる「プレスブロウ」。若干の溜め時間が必要だが,ダメージが大きく,当たった敵は吹っ飛び,その敵がほかの敵に当たればまとめてダメージを与えられるという便利技。フィストによる通常攻撃を何発も連打するよりも,一撃で効率良くダメージが与えられることが多い
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データストレージの入手手段は,さまざまだ
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習得できるスキルはコンボ攻撃が多いのだが,ヴァロ師匠の修練メニューを見ると,通常攻撃だけでも結構なコンボ攻撃が作れることが分かる。なかには,コンボ中にフィストからドリルに素早く持ち替えることで可能になるコンボもあり,さながら格闘ゲームのような奥深さがある。
コンボの練習ができる,ヴァロ師匠の修練。「アッパーブロウ」を習得していれば,敵を打ち上げてから自分もジャンプして,地面に叩きつける……という「これぞ,空中コンボ!」な定番技も可能。なお,修練のクリアには特定のスキル習得が必須になることもある
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一方,ボス戦は,最初は通常の敵をちょっと強力にしたようなものだが,たまに毛色がまったく異なるボスも出てきて,飽きさせない。どのボスも,観察すれば必ず隙が生まれる瞬間があるので,自分なりの攻撃パターン構築は比較的ラクな印象だ。通常の敵にしろボスにしろ,バトルの難度がネックで行き詰まるということはないのではないかと思う。
押し寄せる回転レーザー! ド派手な絵面で大変そうに見えるが,よく観察すれば,さほど難しくはない
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世界設定とキャラクターとゲームシステムがしっかりと作り込まれた,良質のメトロイドヴァニア作品
最初は,見た目可愛らしい動物たちがシブいトークをするギャップを楽しむ感じでなんとなく進めていたのだが,気付けば結構な時間が経っていた。「次の目的地が分からない」「ボスが強くて先へ進めない」といった,行き詰まる要素がなく,プレイにブレーキがかかることがないのだ。まさに,やめ時が見つからない感じだ。
ゲームが進むと,「ジョフル通り」という場所を探索できるようになる。ここでは多くのNPCと会話する機会があり,見た限り,かなりの収集要素,寄り道要素があるようだ
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各地にあるポスターを集めると,フィストの塗装を変えられたりも
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ほどよく頭を使うパズル的なアクションとバトルが交互に来る感じで,適度なタイミングでボス戦が挿入される。ボス戦は,初見での突破がギリギリ難しいくらいの,カンタンすぎず,難しすぎずの絶妙な難度で,筆者の場合,だいたい,平均2〜3回以内のリトライで突破できた。オートセーブがあるので,やられてしまったとしても,だいたいボス戦の直前辺りから再開できるのもありがたい。本稿の執筆はPS5版でのプレイだったが,高速SSDの恩恵か,再開までの読み込みも非常に速かった。
敵に見つからないように行動するパートも。サーチライトをよく見ると,奥行きを生かした仕掛けになっていることが分かる
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逮捕されたウルスの奪還から始まるストーリーも,6年前の戦いや,「火種」と呼ばれる謎のアイテム,紅蓮城全体を巻き込む怪しげな計画の存在等,徐々にスケールが大きくなっていく。イベントシーンはどれもビジュアルに力が入っており,こういう作りはメトロイドヴァニア系作品では珍しいように思う。
オープニングでも登場する猫の女性。「火種」に関することで追われているようだが,追い詰める側にいるのは……? ゲーム中では“Lady Q”と名乗り,ある場所でレイトンたちと出会うことになる
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強いて難点を挙げるなら,送り仮名の間違いや,単純な誤字脱字は何か所か見られたことか。画像は「いいえ」の文字の間違いなのだが,「Yeahhh!」って言っているみたいで,ちょっとクスッとしてしまった
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メトロイドヴァニアに求められるポイントは的確に押さえつつ,アクションゲームとしてカンタンすぎず,難しすぎず,キャラクターや世界設定にも魅力があり,ストーリーに牽引力もある。総合的に見て,これといった欠点が見当たらない,非常に高いレベルの仕上がりとなっている。本稿を読んで,少しでも興味が出たら,ぜひ,プレイしてみてほしい。メトロイドヴァニア好きなら,必ず満足できるはずだ。
……いや,メトロイド
“バニー”アかな……?