Daedalic Entertainmentは,Yaza Gamesが開発したストラテジーゲーム
「インクリナティ」のアーリーアクセスをSteamで今冬に開始する。正式リリース後は,(
PC /
Xbox Series X /
Switch /
Xbox One)での展開が予定されている。
「インクリナティ」は,
紙の上にインクで描かれた動物の兵士を動かして戦う,一風変わったストラテジーゲームで,そのデザインはかなり個性的な内容となっている。今回,発売前のバージョンをプレイする機会を得たので,そのプレイレポートをお届けしよう。
紙の上に動物の兵士を描き出そう
本作は,絵に命を吹き込む
「Living Ink」(生きたインク)で絵を描くマスター2人が戦うストラテジーゲームだ。ターンごとにインクを消費して兵となる絵を描き,その兵同士を戦わせていくものとなっている。「絵を描いて兵を」と聞くと分かりづらいかもしれないが,それはゲーム上の演出であって,ゲーム性としては,対戦系のカードゲームでカードを場に出すようなイメージだ。基本的には,相手マスターのライフを削りきれば勝利となる。
中世の写本の余白に描かれた絵で決闘するという設定。オープニングでは実写を使ったムービーで紹介される
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基本的なバトル画面。これは最大までアップにした画面だが,スクロールやズームイン・ズームアウトが可能だ。イラストは,実際に中世の写本に描かれていた絵をモチーフにしているらしい
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兵を描くときは「描いている人の手」が画面上に出てくる。あくまでこれは“本の上”で行われている戦いなのだ
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兵は人ではなくウサギや犬,キツネなどといった動物で,可愛らしい。剣を持ったウサギ,槍を持ったウサギ,弓を持ったウサギなどさまざまな兵がおり,兵種によってそれぞれ攻撃方法は異なる。槍ウサギや弓ウサギは射程が長いので,離れた位置から攻撃できるが,剣ウサギは隣接している相手でないと攻撃できない。ただ長射程を持つ弓ウサギは体力がかなり低く設定されているなど,各兵種に長所と短所がある。ターン制で,描いた兵が出現したターンは「昼寝」の状態で行動不可となる。
攻撃時は,上下に高速移動するカーソルを目押しで止めることでダメージが確定する。ドクロマークは,倒せることが確定するだけのダメージを与えられるマスで,右の画像の場合,敵兵の残り体力が2と少ないので,どこに止まってもトドメを刺せることになる
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兵によって,描くためにかかるインクのコストが異なる。画像の中央下,兵のアイコンの右上に書かれている数字がコストで,使い勝手のいい兵ほどコストが高い
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画像を見ると分かるように,フィールドは横一直線。兵を置ける場所もだいぶ限られているので,意外とシンプルなゲームなのではと感じるかもしれない。しかし,新たな兵は空いている場所にしか描けないこと,絵を描く材料であるインクの供給量に制限があること,「障害物」によるマス目の占拠といったシステムなどで,高い戦略性が生まれている。
インクはターンごとに少し増えるが,時折,フィールド上に「インクの染み」があることがある(画像の,地面の黒い部分)。そのマスに兵を待機させておくと,ターン開始時に少量のインクを得られる
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「障害物」はフィールド上に最初から配置されていることもあるが,自分で描くこともできる。手押し車や岩など,種類もさまざま。空いているマスは兵が描けるマスではあるが,油断していると敵兵が侵攻してくる可能性があるマスでもある。障害物をどう利用するかも戦略のひとつだ。
また,ある程度ターンが経過すると,「終焉の大炎」という炎が両マスターの背後に出現する。この炎に飲まれると,兵だろうがマスターだろうが即死。炎は1ターンごとに中央へ向かって迫っていくため,モタモタしていると,両マスターが炎に焼かれて決着してしまうというわけだ。
出現後,1ターンごとに迫ってくる「終焉の大炎」。色の付いていない炎は,1ターン後にそこが焼かれるということ
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「押し出し」という要素にもふれておこう。これは兵もしくはマスターが,敵兵を強制的に移動させる。しっかり考えたうえで配置されているであろう敵兵の位置を崩せるので,非常に重要だ。押し出しによって,「終焉の大炎」に押し込むという強引な攻撃手段もある。
ステージによっては,端に押し込まれると「落ちた」という扱いになり,終焉の大炎を待たずに即死することもある。注意が必要だ
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本作では,マスター自身も絵として参戦するが,「SWAT攻撃」や「癒し(兵の体力回復)」など,マスターにしかできない行動もある。「SWAT攻撃」は,マスター自らが相手の兵にダイレクト攻撃するというもので,相手に隣接していなくても可能なのが強み。距離が無制限というわけではないが,そこそこ遠くからでもダメージを与えられる。
絵を描くときに出てくる,実写風のデカい手でダイレクトアタック! 弓兵でチクチクと攻撃するよりは遥かに高いダメージが出るので,届くときは積極的にSWAT攻撃を使っていくといいだろう
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面白いのが,兵を描くごとに
マスター自身がだんだんに飽きてくるという点だ。本作には
「退屈レベル」というものがあり,これが上がると,次回以降のステージでの兵コストが上がってしまうのだ。退屈レベルは,次のステージで別種の兵を描いたりすることで下げることもできるので,異なる種類の兵を交互に使っていきながら勝ったほうがいいということになる。絵を描いて対戦しているという設定を生かしたユニークな要素と言える。
便利なので,ついつい遠隔攻撃が可能な兵ばかり描いてしまいがちだが,そうすると退屈レベルが上がり,コストがどんどん増加していく
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1人用モードとなる「アカデミーモード」にはストーリーが用意されており,さまざまな地形の戦闘フィールドを次々に攻略していくことになる。そのため,「その1戦に勝てばいい」という戦い方を続けていると,退屈ステータスによって兵コストがだんだんキツくなってくるというわけだ。目先の勝利だけでなく,先まで見据えた戦い方も必要になってくる。
アカデミーモードは,NPCとの会話やイベントを交えながら,次々とステージを進んでいくスタイルの1人用モード。時折,選択肢もあるようだ
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マップ上にはショップがあることもあり,戦いで得た「金貨」を使って買い物もできる。金貨次第では,上がってしまった兵コストを下げることもできるようだ
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進化するステージ。加わる“高さ”の概念と,さらなる兵種
アカデミーモードは,ステージを進めると兵の種類が増え,その都度,戦い方を変えていく必要がある。隣接した相手を一撃で丸呑みしてしまう最強の生物「ナメクジ」相手では,チュートリアルですら,なかなか正解が見えない。
「ナメクジ」との戦い方のチュートリアル。ナメクジの移動可能範囲からマスターを遠ざけつつ,兵を描いてナメクジを倒さなければいけない。フィールドも狭く,一見,そこまで難しくはないように見えるが,筆者はここで,ちょっと人には言えないレベルの時間を費やして詰まってしまった。難しい!
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横一直線だと思っていたフィールドも,ステージが進むと2階,3階のものが登場し,高さの概念が追加される。高さのあるステージで危険なのが,「押し出し」だ。兵を「終焉の大炎」に突っ込ませることができるという点で元々危険ではあったが,高さのある場所から押し出しで突き落とされると,その兵は即死するのだ。
2階もあるが,先へ進むと3階も出現。兵が上へ行くには,ハシゴを使って上がっていかなければならない
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最初のエリアのラストステージでは,チュートリアルでお世話になったマスターと対戦することになるのだが,このマスターが3階に位置している。マスターによる敵兵の押し出し移動は,隣接していなくても一定範囲内であれば可能なため,近接攻撃兵で近付くと,マスターの元に辿り着くまでに「押し出し」で落とされて即死という,どうしようもない事態になる。筆者はやられること前提で複数の弓兵を描き,弓が届く距離まで移動できた奴は片っ端から攻撃という戦法でゴリ押したが,果たしてこれが正解なのかは分からない。
なんとか3階に辿り着いた兵が敵マスターを攻撃! しかし,その直後,ヌッと出てきた手が兵をスライドさせ……あっ
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アカデミーモードではさまざまなシチュエーションが出てくるが,なかには,マスターが不在というステージも。「兵がすべてやられると負け」というルールになるが,マスターがいないということは,新たに兵を描けないということだ。すでにある兵だけでいかに戦うかという,別ゲーとも言えるステージ
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未完成な部分も感じられるものの,ベースはしっかりしている。今後に注目したいタイトルだ
本作は,プレイヤーとCPUが交互に兵を動かすターン制ではなく,兵ごとに行動するタイプのターン制なのだが,各兵の行動の早さが何によって決定されているのか少し分かりづらい印象はある。
ただ,ベースとなるゲームシステムはすでに高い完成度を誇っており,プレイヤーが1ターン内にできる行動は決して多くなく,そうなると必然的に正着手までの手順は限られてくるはず……なのだが,詰め将棋のようなシビアさがある。1手のミスが後々致命的になってくるので,慣れるまでは操作ミスを含め,なかなか勝てない状況が続くことも珍しくない。味のある世界観ながら,戦略ストラテジーとしてはかなり高難度の部類に入ると思われる。
また,「尊敬」というポイントを使用することで取得できる「アクションハンド」「才能」という要素も重要だ。1人プレイ用のアカデミーモードでは,プレイヤーがどの兵を取得していくのかに加えて,どの「アクションハンド」「才能」を獲得していくかでその後の戦い方も変化していくため,結果は毎回同じではないといった,ローグライク的な一面もある。
マスターの「SWAT攻撃」などは「アクションハンド」に分類される能力。どれを獲得していくかも重要な選択だ
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一方のローカライズは,現段階ではやや微妙だ。海外作品の翻訳にありがちな,「言いたいことはなんとなく分かる」系のものが多く,ものによっては何を言っているのか分からないこともある。さらにウインドウ内の文字が大幅に溢れていることも多く,まだまだこのあたりは要調整といった感じだ。
1人用モードとなる「アカデミーモード」では,NPCとの会話を交えつつ,次のステージへと進んでいく。この画像は,上の文がNPCの発言で,下の3つが選択肢。「全然意味が分からない!」はこっちのセリフだよ!
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これはおそらく,ガイコツのキャラが「death」という名前なのだと思うが,「死」という直球な翻訳をされているため,分かりづらくなっている
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熟練者同士の対人戦が盛り上がりそうな予感はある。どんな兵の部隊編成にするのか,「アクションハンド」と「才能」の選択をどうするのかといった部分は,カードゲームのデッキ構築にも似た楽しさがある。
対人戦となる「決闘」モードでは,「終焉の大炎」が出現するターン数など,いろいろと設定できる
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現状は未完成という点もあるが,今冬からアーリーアクセスが始まる段階というのだから当然と言えば当然である。開発が進むにつれ,改良されていくだろうし,アーリーアクセスを経てどのような進化を遂げていくのかが楽しみである。体験版も用意されているので,本稿を読んで少しでも興味が出た人はプレイしてみてほしい。