本日(2020年11月12日)発売となったPlayStation 5に合わせて,さまざまなタイトルもリリースされたが,その中の1つにフルリメイクされた「
Demon's Souls」がある。
Demon's Soulsといえば,2009年にPlayStation 3向けソフトとして発売され,その難度の高さと面白さが口コミで広がり,じわじわと売れていった印象が強い作品だ。当時のアクションゲームは難度を抑える傾向にあったが,Demon's Soulsは少しでも油断するとすぐに死んでしまうという,当時としてはかなり挑戦的な調整がされていた。
しかし,計算された敵の配置と練り込まれたマップ構成,そして初見では無理そうに感じられる難関であっても,努力すれば越えられるという,やり込みがいのある内容が,コアゲーマーの心を掴んだのだ。本作によって高難度ゲームの面白さが見直されたといってもいいだろう。
小国「ボーレタリア」は“古の獣”を目覚めさせてしまい,ソウルを食らうデーモンに蹂躙された。主人公はボーレタリアに赴き,戦いの旅を始める
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開発を手がけたフロム・ソフトウェアは,2011年に本作と同じ傾向を持つアクションRPG「DARK SOULS」シリーズをスタートさせ,こちらも高い評価を獲得した。そして,死にまくりながらも攻略法を確立する,いわゆる“死にゲー”のブームが始まり,「Demon's Souls」や「DARK SOULS」っぽいゲームということで“ソウルライク”なるサブジャンルが確立したのは記憶に新しいところである。
そんな伝説の作品ともいえるDemon's Soulsが,次世代機向けにフルリメイクされたというだけあって,ローンチタイトルの中でも本作の注目度がひときわ高いのは言うまでもないだろう。本稿では,PlayStation StudiosとBluepoint GamesによってフルリメイクされたDemon's Soulsを,画質優先の「シネマティック」モードでプレイしたインプレッションをお届けしていこう。
まずグラフィックスについてだが,スクリーンショットを見てもらえれば分かるとおり,テクスチャの解像度が大きくあがっている――とかいうレベルではなく,ほぼ作り直されている。金属や革で作られた武具の質感。荒れ果てた建物のわびしさと,そこに巣くう亡者のような人々の不気味さ。ドラゴンの炎や,拠点となる「楔の神殿」の灯りが見せる輝き……と,オリジナル版が持つダークファンタジーの雰囲気を残しつつも,臨場感がより高まった印象だ。
初心者に“死にゲー”の洗礼を施す「拡散の尖兵」。左がPS5版で,右がPS3版だ。不気味な三つ目とシルエットはそのままに,グラフィックスはより高精細になった
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城の近くに居座る2匹のドラゴン。左がPS5版で,右がPS3版。PS3版も,これはこれで味があっていい
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「ポーレタリア王城」の風景。左がPS5版で,右がPS3版。居並ぶ攻城兵器の向こうから,敵兵がクロスボウでこちらを狙ってくる。敵の配置自体はどちらの機種も同じであるようだ
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拠点となる「楔の神殿」。左がPS5版で,右がPS3版。こうして比べると,PS5版とPS3版にはそれぞれに良さがある
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ドラゴンの炎で焼けてしまった主人公。ちょっと「DARK SOULS」っぽい
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個人的に印象深かったのが,板金鎧(フリューテッドシリーズ)のディテールである。シルエットはオリジナルそのままだが,カメラを近くに寄せると装飾の浮き彫りや革ベルトの金具が見えたりと,次世代機らしく描写が細かくなっている。フェイスガードの奥からはキャラクターが目玉を覗かせており,正に甲冑という感じでテンションが上がってしまう。
「フリューテッド」シリーズの板金鎧は,PS5のグラフィックスでより細かく描写されている
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それでいて,マップ構造や敵の配置は(インプレッションでプレイできた範囲では)オリジナルのままだ。あちこちに潜む待ち伏せの兵士たち,「火炎壺」で自爆する亡者,何を煮込んでいるか分からない謎の大鍋,うかつに拾うとドラゴンに丸焼きにされるアイテム,突如階段の上から転がってくる大岩など,オリジナルをプレイした人であれば「ああ,これこれ!」という感じで懐かしさが蘇ってくるだろう。
敵の配置がオリジナルに準拠しているということは,あの絶望を再び味わえるということでもある。不用意に進むと複数の敵に囲まれてボコボコにされるし,慌てて後退すると階段から落ちる。高台からクロスボウでハチの巣にされるし,逃げた先にいる重装甲兵士が待ち構えていて……といった具合で,やはりデモンズは意地が悪い。
筆者はオリジナル版をプレイ済みだが,流石に10年も前となると良い感じにいろいろと忘れており,当時の自分はよくこれをクリアできたなと感心するばかり。死ぬたびに懐かしさがこみ上げてくるというのが,なんだか不思議な感覚である。
本作はプレイヤーが絶望から這い上がるゲームである。それを象徴するのが,最序盤でプレイヤーが無残に負けた後に突きつけられる「あなたは死に,ソウルのみ楔の神殿に囚われた この神殿から逃れることはできない」というメッセージだ。初めて本作をプレイしたとき,このメッセージを読んで「これからどうなっちゃうんだ……」と頭を殴られたような衝撃や絶望を感じたものだ。もちろん,本作でもこのメッセージは表示され,当時の情動を追体験できた。
それにしても,低難度のゲームが幅を利かせつつあった当時,新しいソフトを買ってウキウキしているユーザーに,“死”やら“逃れることはできない”なんて単語を叩きつけるというのは,なんという尖りっぷりだろうか。そして,本作が提示した“死にまくりながらも,腕を磨いて先へ進む”という面白さをちゃんと感じ取り,口コミで伝えていった当時のゲーマーたちも凄い。「Demon's Souls」の挑戦と,それに応えたゲーマーたちのことを思い出し,あらめて感動を覚えてしまった。
いきなり強敵に倒されたプレイヤーに,無慈悲な現実が突きつけられる
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もちろん,オリジナルを再現するだけではなく,新要素も追加されている。1つは
日本語ボイスだ。黒衣の火防女(CV:早見沙織さん),要人(CV:白石涼子さん),老王オーラント(CV:宝亀克寿さん),乙女アストラエア(CV:折笠富美子さん),ボーレタリアのオストラヴァ(CV:鈴木達央さん),心折れた戦士(CV:成田 剣さん)といったキャラクターは,実力派声優たちが演じている。もちろん,オリジナルのように英語ボイス+日本語字幕でプレイも可能なので,こだわりのある人も安心だ。
謎めいた「黒衣の火防女」。PS5版の日本語ボイスは早見沙織さんが担当。主人公が集めた「ソウル」を操り,レベルを上げてくれる
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もう1つの新要素が,「DualSense」コントローラーの
ハプティックフィードバックへの対応だ。これにより,武具や魔法の衝撃・質感といったものが振動で感じ取れる。中でも気持ちよかったのが,スタミナ切れで盾を弾かれた時だ。「ガイーン!」というリアルな音とともに金属っぽい質感が手に伝わってくるのが気持ち良く,わざとスタミナ切れを起こして繰り返し感触を楽しんでしまった。
「要石」に触れたり,白い霧に入ったときのロード時間の短さも特筆すべき点だろう。とくに後者は待ち時間がほとんどなく,プレイの快適さが増していると感じられた。ただ,ロード画面のイラスト表示がなくなっているのがちょっと残念でもある。
霧の中に入っても,ロード時間はほとんどない
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そのまま,スムーズにボス戦がスタートする
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ゲームには新しい武器も追加されているようだ。今回は早期購入特典「死神の大鎌」とデジタルデラックスエディションの「祭祀の刃」を体験できたのだが,祭祀の刃はDualSenseのアダプティブトリガーが強めに働き,振り回すときの重量感が指先に伝わってきた。
「死神の大鎌」は攻撃時に刃が光る
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「祭祀の刃」は絵になるが重量が大きい
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敵を倒して集めたソウルを火防女に持っていくとレベルを上げてくれる(左)。死ぬとその場にソウルを落とすが,拾い直すことができる(右)。この辺りのシステムは「DARK SOULS」と共通している
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主人公が死んでも,それは始まりに過ぎない。無数の死を越え,己の指に経験値を蓄積させて強くなることが本作の面白さ
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「DARK SOULS」シリーズと比べても,システムや雰囲気こそ共通点が多いものの,回復アイテムがこちらでは敵からのドロップ品だったりするなど,細かな点が異なっていたりもするので,“死にゲー”の原点を探るという意味でも興味深い作品といえる。
オリジナル版をプレイ済みの人は懐かしい気持ちで遊べるのはもちろんだが,“死にゲー”や“ソウルライク”の魅力に目覚めた人は,原点ともいえる本作をこの機会にプレイしてみてほしい。