スクウェア・エニックスがサービス中のオンラインRPG
「ドラゴンクエストX」 (
PC /
PS4 /
Switch /
Wii U 。以下,DQX)は,今年でサービス開始8年目を迎える長寿タイトルだ。2012年8月2日にWii版が発売されたことでその歴史がスタート。シリーズ初のオンラインRPGということで,ファンの話題を集めた。2020年5月14日にはこれまでに発売されたパッケージをセットにした
「ドラゴンクエストX オールインワンパッケージ version 1-5」 (
PC /
PS4 /
Switch )も発売されている。
DQXで始めてオンラインゲームに触れたという人は多いと思うし,逆にオンラインゲームだからという理由で,これまでDQXは未プレイだというシリーズファンもいるだろう。実は筆者もその一人で,
ナンバリングタイトルの中でDQXだけは未プレイ だった。
そこで今回,DQXをほかのナンバリングのように
「ソロでストーリーを楽しむ」 スタイルで遊んでみることにした。プレイではバージョン2の終盤まで遊べるPCの無料体験版(
※ )を使用している。本稿では未経験者に向けてDQXがどのようなゲームかを,本作以外のドラゴンクエストシリーズを踏まえながら紹介していきたい。
※一部の機能が制限されるが,バージョン1〜2までのほぼすべてを無料でプレイできる。無料体験版についての詳細は以下の記事を確認してみてほしい
関連記事
2020/04/25 00:00
「オンラインゲームだけど,どれくらい“ドラゴンクエストらしい”の?」「ソロプレイでもいけるの?」「ストーリーはどういう雰囲気なの?」 といった疑問を踏まえつつ,記事の後半では,シリーズファンがDQXをプレイするうえで押さえておきたいポイントも紹介するので,二の足を踏んでいるシリーズファンやこれから初めてみようと思っているプレイヤーはぜひ参考にしてほしい。
ゲームクライアントをインストールすると再生されるオープニング。序曲を聞くとワクワクするのは,いつになっても変わらない
DQXのUIやバトルシステムを確認。手触りは驚くほどドラゴンクエストらしいものだった
DQXの物語はアストルティアという世界を舞台に展開していくことになるのだが,プレイヤーが最初に進めることになるのは,序章となる
「エテーネの村のおはなし」 だ。
オンラインゲームではお約束のキャラクターメイキングでは,プレイヤーの「人間の姿」と,プレイヤーの“きょうだい”を作る。設定できるのは,性別や顔,髪型など7項目で,きょうだいは,兄・弟・姉・妹と続柄まで決められる。
キャラクターメイキングの画面。設定項目は「ドラゴンクエストIX」のそれに近い
序章をクリアしたあとでもう1度キャラメイクを行い,以降の物語に使用するキャラクターを作っていくことになる。ここでは
「オーガ」「ウェディ」「エルフ」「プクリポ」「ドワーフ」 という5つの種族からプレイヤーの容姿を決め,その後に職業を選ぶ。
序章後は「目覚めし五つの種族」という,バージョン1のサブタイトルにもなっている5つの種族から容姿を決める。筆者は「ドラゴンクエストIII」「ドラゴンクエストIV」などにも登場した種族エルフを選択
ゲームを始めてまず驚いたのが,
違和感がまったくなかった ことだ。オンラインゲームという先入観があるためか,きっと“あんな感じの”画面なんだろうなと思っていたのに,メニュー画面は黒ウィンドウからアクセスしていくシリーズでおなじみのスタイルだ。PC版でもゲームパッドを使用すれば,ほかのシリーズタイトルとほぼ変わりなくプレイできた。
さらに,フィールドに配置された
オブジェクトもちゃんと調べられる ようになっており,壺をのぞき込んだり,他人の家に入ってタンスを物色すればちゃんとアイテムが見つかる。ほかのプレイヤーも存在するオンラインゲームなので,この辺りには変更が加えられているものだと勝手に思い込んでいたが,あまりにもドラゴンクエストな仕様に正直びっくりした。
UIの基本はほかのシリーズとほぼ同じ。壺やタンスがちゃんと調べられるのもシリーズファンとしてはうれしい
DQX独自のモーションとしてジャンプが搭載されている。画面上でほかのプレイヤーがジャンプすると,無駄に自分も跳ねたくなるのはナゼなのか……
バトルはシンボルエンカウント形式で,敵と接触するとリアルタイムでのバトルが展開される。バトルフィールド内は自由に移動でき,一定時間が経つと開くコマンド画面から行動を選んでいく。ほかのナンバリングで言うと,PS4版「ドラゴンクエストXI」と「ドラゴンクエストXI S」のフリー移動バトルに近い(DQXIの戦闘システムがDQXを元にしているのだろうが)。
ただ,本作のみの特徴として
「移動干渉」 というシステムがある。これは押し相撲の要領で敵とプレイヤーが接触すると,「おもさ」が勝っている方が相手を押していけるというものだ。これを活用すると,魔法使いや僧侶などの後衛キャラを狙う敵に対して攻撃を遅らせたりできる。マルチプレイの高難度バトルでは非常に重要な要素らしいが,ソロプレイでも敵の攻撃を妨害し味方の回復を間に合わせるなど活躍の機会は多かった。
「移動干渉」は本作独自のバトルシステム。押し相撲のようにモンスターを押すと,動きに干渉できる
以上のように細かい違いはあるものの,効果音やダメージ表示といったものはもちろん,一部の職業には仲間モンスターやテンションといったお馴染みのシステムも採用されている。
ゲームの手触りやバトルシステムはシリーズの基本を踏襲しており,オンラインゲームにも“ドラゴンクエストらしさ”が健在だと感じた。ナンバリングタイトルをプレイしたことのある人ならすんなりと入っていけるはずだ。
王道展開からズシリと重いものまで。ストーリーはメイン,サブともに魅力的
バージョン1のメインストーリーは,前述した
「序章」 ,その後に選択した
「5つの種族の物語」 ,そして大陸をまたにかけた「キーエンブレム集め」で構成される。メインとなる
「キーエンブレム集め」 では,冒険の舞台となる5つの大陸に各2つずつ,計10個のストーリーが用意されており,プレイヤーは好きな順番でストーリーを進めてキーエンブレムを集めていくことになる。
各メインストーリーは非常に丁寧に作られており,ドラゴンクエストファンも満足できる内容と言える。キーエンブレム集めは,10個のストーリーのうち6つをクリアすると先に進めるようになるのだが,筆者は「全部プレイしないで進めるのはもったいない!」と思い,すべてのストーリーをクリアしたくらいにはハマっていた(おかげで原稿の締め切りがギリギリになったのは内緒)。
展開もバリエーションに富んでおり,胸がすくようなものはもちろんだが,中にはズシリと重いものも存在する。筆者はドラゴンクエストといえば,王道なストーリーをメインにおきつつ,時折グサッと胸に刺さるようなエピソードも存在するところが魅力だと思っている。なので,こういった重いストーリーがしっかりと盛り込まれていたところにも“ドラゴンクエストらしさ”を感じた。
また,すぎやまこういち氏が手掛ける新旧さまざまなシリーズの楽曲も物語を彩る。特に「ドラゴンクエストVII」の名曲「愛する人へ」は,象徴的な場面で繰り返し使用されており,DQVIIのときとはまた違った印象を受けた。
バージョン1のメインストーリーはどれも魅力的だが,筆者はプクランド大陸で展開される一連のストーリーが特にグッときた。ほかのナンバリングで言うと,DQVIIのようなちょっと重めながら胸を打つようなストーリーが好きな人にオススメ
さらにメインストーリーだけでなく,世界各地で受けられるクエストにもサブストーリーが用意されていることがある。サブとは言うものの,1つのストーリーを完結させるだけでもかなりのボリュームがあり,読みごたえは十分。内容もメインストーリーに負けず劣らずで,筆者は「転職できる職業を増やそうと職業のクエストを始めたら,いつの間にかシナリオの方が気になって全部クリアしていた」クチである。
サブストーリーの中には章立ての構成になっているものもあり,間に次回予告がはさまる演出も
メイン,サブ共に登場するNPCも魅力あふれるキャラばかり。魔法戦士中心でプレイしていた筆者は「ユナティをパーティに入れたい」と何度思ったことか……!
ソロプレイを強力に支援してくれる「サポート仲間」
さて,オンラインゲームというと当然のことながら,プレイヤー同士でパーティを組んで冒険に挑むというのが基本だ。それをソロでプレイするのだから,「1人旅でしょ? 戦闘の難度高いんじゃないの?」と思っている人もいるだろう。しかし,その不安は
「サポート仲間」 というシステムが払しょくしてくれる。
これは,ほかのプレイヤーが遊んでいるキャラクターを貸してもらえるシステムで,ソロプレイの時は最大3人のサポート仲間をパーティに入れて冒険が可能だ。しかもこのサポート仲間はAIがとても優秀で,味方のHPが減ってきたら即座に回復してくれたり,格下の敵相手にはMPを温存して戦ってくれたりする。死んだと思った次の瞬間にはもう復活呪文を打ってくれたこともままあり,
「自分なんかよりサポート仲間の方が数倍動けてないか?」 と思うこともあった。
AIが優秀なサポート仲間。サブクエストで機能を開放すると,以後は町の酒場から自由にパーティを組める
バージョン1のストーリーを追っていく際も,このサポート仲間のおかげで特に行き詰まることもなかった。酒場で仲間を募るというところも,DQIIIやDQIXの「ルイーダの酒場」を思い出す。ソロプレイでこそ最大限に活用していきたいシステムだ。
サポート仲間はおなじみの「さくせん」コマンドによって行動を制御できる。このあたりの仕様もほかのシリーズと同じだ
広大なアストルティアの冒険。便利な機能を活用して快適に進めよう
前半でお伝えした通り,本作はドラゴンクエストの基本を踏襲しているのだが,何点かはオンラインゲーム特有の部分があり,注意しておきたいところがあった。ここでは筆者がプレイして感じた,特に押さえておきたいポイントを挙げていこう。
・レベル上げはメタルーキー軍団で行い,装備品は敵から調達
ドラゴンクエストシリーズといえば,町の周辺でモンスターを倒してレベル上げとゴールド稼ぎを行い,稼いだゴールドを使って町で装備を調達していく――というのが基本的な進め方だ。しかし,DQXはオンラインゲームということもあって,このサイクルが当てはまらない。
まず
レベル上げ については,手厚くサポートされているので,かなり快適に行える。序章を終えると,その後の村でレベル89までモンスターからの経験値を3倍にしてくれる「エンゼルスライム帽」がもらえるのに加え,ゲーム開始から90日以内限定で入れるサーバーでは,経験値をたくさん得られるメタルーキー軍団が出現する時限クエストが毎日開催されている。
常時エンゼルスライム帽を被りながら冒険し,メタルーキー軍団が出現したら積極的にモンスターを倒してレベル上げをすれば,かなりの速度でキャラクターを成長させられるはずだ。
エンゼルスライム帽は最初の村でもらえるので,必ず手に入れておこう。新人・復帰者向けのサーバーには,この帽子を被った冒険者がたくさんいる。元気玉と併用すれば,さらに多くの経験値がもらえる
毎日5回時限式で登場する大人気イベント「メタルーキー軍団 大行進」。開始10分前になると町の外には数多くのプレイヤーが集う。開催スケジュールはプレイヤーサイト「目覚めし冒険者の広場」から確認できる
逆にレベル上げと違い少々手間だったのが,
装備品の調達 だ。本作は,店売りの装備品にあまり良いものがなく,レベル35くらいまではそれで事足りるが,それ以降は明らかに力不足を感じるようになる。レベル35というのは,上記のメタルーキー軍団を活用してレベル上げをすると,あっという間に到達してしまうくらいなので,この「レベルに比べて装備が弱い問題」は結構早くにぶち当たることになった。
DQXはレベルが上がると装備できるものが増えていく。しかし店では最大でも適正レベル35程度の装備しか売っていない
ではどうやって装備を調達していたかというと,基本的には
モンスターからのドロップ を狙っていた。
ほかにも「職人になって自分で作る」「旅人のバザーを使ってほかのプレイヤーから買う(製品版のみ)」という手段もあるが,前者は「刀がほしいから今から刀鍛冶を始めてみる」というようなもので時間がかかるし,今回は体験版でプレイしていたので後者を選ぶことができなかった。ちなみに,バザーに出品されている初心者向けの装備は,価格が高すぎて初心者が買える値段ではない場合がほとんどらしい。モンスターからのドロップ確率はそこまで低くないので,お目当ての装備をドロップするモンスターを調べて倒し続けた方が効率は良かった。
装備品はモンスターが落とす白い宝箱から出現する。ここで手に入れたものはお店やバザーで売れないので,金策には使えない。あくまで自分が使う用として調達することになる
正直なところ,サポート仲間にしっかり装備を整えた人を選べば,自分が強くなくともメインストーリーはサクサク進めてしまう。ただ,これだと自分がパーティでまったく活躍できず,サポート仲間に頼りっきりで冒険している感が強くなってしまう。しっかり戦力として活躍して冒険を楽しみたいなら,ある程度の頻度で装備を更新していく必要があるだろう。
・DQXのフィールドは広大! 押さえておきたい便利な移動手段
もう1つ,ほかのナンバリングと明確に異なるのが,
フィールドの広さ である。DQXのフィールドはとにかく広大で,町の行き来やダンジョン内の探索に時間がかかる(これでもオンラインゲームの中ではマップは小さめな方というから驚きだ)。
慣れてしまえば普通に感じるのだが,オンラインゲームのプレイ経験があまりない人は,最初のうち移動を煩わしく感じることもあると思う。実際筆者がそうだった。ただ,これに関しては冒険やクエストをこなしていくと手に入る便利な機能で快適になる。実際に筆者が「もう1回最初からプレイするなら,真っ先に開放しておきたい」と思えた移動に便利な機能を紹介しよう。
まず押さえておきたいのは,
ルーラストーン だ。このアイテムは町にある教会や,フィールド上に存在するポイントを登録しておけるというもの。登録した場所にはルーラストーンを使うことで瞬時に飛べるようになる。シリーズでいうところのルーラに該当する移動手段だ。
ルーラストーン1個につき,登録しておける場所は1つなので,ストーリーを進めている町など,頻繁に訪れる場所を登録しておくとグッと便利になるはずだ。
ルーラストーンは序盤で確実に2つ入手できる。クエストの報酬やカジノの景品などでも手に入るので探してみよう
ルーラストーンと併せて活用したいのが,港町レンドアやメギストリスの都に存在する
「バシっ娘」 というNPCたち。彼女たちは本来,ルーラストーンで登録しなければ飛べない場所に有料で飛ばしてくれるという非常に有能なキャラクターだ。
飛ばしてくれる回数は1日3回までと制限がかけられているのだが,バージョン1で冒険するエリアに限っては無制限で利用できる。バシっ娘がいる町をルーラストーンに登録しておけば,港町レンドアに移動→バシっ子に行きたい場所へ飛ばしてもらう,という具合に乗り継ぎ感覚で5つの大陸を自由に移動できる。
1日3回まで好きな場所に飛ばしてくれるバシっ娘。バージョン1の舞台では回数制限がないので,非常に便利だ
そして,純粋な移動速度の上昇手段として役立つのが,岳都ガタラで入手できる
「ドルボード」 という乗り物だ。燃料となる「ドルセリン」を30分ごとに補給しなければいけないが,移動速度が徒歩の1.7倍にまで上昇する。フィールドやダンジョンを探索するときはドルボードの有無で快適さが段違いなので,岳都ガタラに行けるようになったら真っ先に入手したいところだ。
空飛ぶセグウェイのような乗り物ドルボード。関連クエストを進めていけば,さらに機能が拡張されていく
このほかにもレベルが上がると,道具所持数上限の拡張やシリーズおなじみの転職システムなどさまざまな機能が開放されるクエストが受けられる。マップに表示されるアイコンが
「!!」「!!!」 となっているクエストがそれに該当するので,見つけたら積極的にやってみよう。
DQXは紛れもなくドラゴンクエストのナンバリングだ
シリーズ経験者に違和感を与えない基本的なUIや,しっかりしたストーリーをメインに据えている点など,多くのファンが“ドラゴンクエストらしさ“と感じるであろうところは文句なくドラゴンクエストだ。
また,道行くプレイヤーとすれ違うだけでも世界の住人,ほかのプレイヤーが身に着けていたものから新しいアイテムの存在を知ることがあるなど,直接的な繋がりはなくとも影響を与え合っているのを感じる。前述のサポート仲間やカジノでのレイドコンテンツなど,人とゆるい繋がりを持てる要素も多く用意されており,それらを通じてオンラインゲームらしさをソロでも少なからず体験できた。
なんとなく人が集まっているところに行くだけでも世界の一員になった感じがする
カジノではほかのプレイヤーと協力して遊ぶ「カジノレイド」が発生することがある。参加も任意で,特別にコミュニケーションが必要というわけでもない
正直言うと筆者はWii版が発売された当時,「オンラインゲームでどうやってドラゴンクエストらしさを出すのか。DQXはドラゴンクエストっぽい何かなのだろう」と思っていたのだが,その考えは誤りだった。DQXは紛れもなく
ドラゴンクエストのナンバリングタイトルだ と,今回のプレイで感じた。
冒頭でも記載した通り,DQXにはバージョン2終盤までのシナリオを無料で楽しめる体験版が用意されている。筆者のように,今までDQXは気になっていたけど,なかなか1歩が踏み出せなかったという人は,まずここからソロプレイで始めて,ストーリーを楽しんでみてほしい。
とりあえず,筆者は「オールインワンパッケージ version 1-5」を注文したので,これからまだプレイしていない職業クエストのシナリオを楽しむか,バージョン2のメインストーリーを始めてアンルシアに会いにいくか悩み中である。