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「2022 VCT Challengers Japan Stage2 Playoff Finals」最終戦レポート。強豪ZETA DIVISIONを破り,NORTHEPTIONが日本最強の座へ
決戦の舞台として選ばれたのは,埼玉県さいたま市に建つ,さいたまスーパーアリーナ。国内の「VALORANT」シーンは過去に「RAGE VALORANT 2022 Spring」として有観客の“イベント”が行われているが,“公式戦”では国内初となる有観客オフライン形式での開催となり,会場に足を運んだファンの喜ぶ様子がうかがえた。
2日間の総来場者数は2万6000人を超え,国内eスポーツ史上最大の動員数を記録している。
NORTHEPTIONの猛攻は止まらなかった──。世界3位のZETA DIVISIONを破る
25日のUpper Final/勝者側最終戦(ZETA DIVISION vs NORTHEPTION)を2-0というスコアで勝利を収めたZETA DIVISION。その後のLower Final/敗者側最終戦(NORTHEPTION vs Crazy Raccoon)は,先ほどZETA DIVISIONに敗れたNORTHEPTIONが勢いに乗り,2-0でCrazy Raccoonから勝利を獲得。奇しくもグランドファイナルの対戦カードはNORTHEPTION vs ZETA DIVISIONというPlayoff Finals初戦の再来となった。
前回の世界大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 Masters Reykjavík」でアジア1位,世界3位という偉業を達成しているZETA DIVISIONを相手に,前日に敗北を喫しているNORTHEPTIONはどのような対応を繰り出すのか。一方,国内屈指の強豪チームとして名を馳せるZETA DIVISIONが圧倒的な力を見せつけるのか。ファンの注目が集まる中,試合開始を告げるカウントダウンは刻々と進み,会場のボルテージはジワジワと充填されていく。カウントがゼロになった瞬間,これまでの名シーンが熱く編集されたPVの上映によって“Grand Final”は幕を上げた。
両チームの選手が入場すると,使用マップが公開となった。「ブリーズ」をZETA DIVISION(以下,ZETA)がBAN,「バインド」をNORTHEPTION(以下,NTH)がBANし,「アイスボックス」(ZETA),「ヘイヴン」(NTH),「フラクチャー」(ZETA),「アセント」(NTH)をそれぞれのチームがピック。最終戦は2本先取のBO3ではなく,3本先取のBO5で行われるため,スコア2vs2に突入した場合の最終マップには「スプリット」が選択された。そして攻撃側がNTH,防衛側がZETAでスタートする「アイスボックス」で決戦の火蓋は切って落とされた。
ラウンド1,迅速なアクションでAサイトに進行するNTHと,対抗するZETAが互いに情報を取り合う中,ソーヴァを用いるDerialy選手がオウルドローンから放ったマーキングダーツがLaz選手のチェンバーにヒット。それに合わせる形で,ラウンド開始前の解説で「開幕のMeteorの動きにも注目」と言及されていたMeteor選手のジェットがファーストブラッドを獲得する。この流れが決定打となり,そのままラウンドを制した。続くラウンド2もNTHが勝利し,このまま勢いに乗るかと思われたが,そこは“かの”ZETAだ。流れをそのままにするわけはなく,互いにラウンドを取り合う“超”熾烈なシーソーゲームが始まり,22ラウンドを終えた段階で,ラウンドスコアは11-11という拮抗した戦いが繰り広げられた。
その後,NTHがマッチポイントを迎えたラウンド24。JoxJo選手が敵のヴァイパーズピット内という不利な条件ながら,設置後のスパイクを防衛していたcrow選手,SugarZ3ro選手を一瞬で葬るスーパープレイを披露し,スパイクの解除にそのまま成功。激しい戦いの末,ZETAのピックマップである「アイスボックス」はラウンドスコア13-11でNTHが獲得した。
どちらが勝利を収めてもおかしくなかった1stマップが終了し,迎えた2ndマップは「ヘイヴン」。ここはNTHのピックマップながら,ZETAの一方的な展開が顕著に見られる試合運びとなった。フェイドやネオンといった“最近の”エージェントを活用し,メリハリのある戦術とフィジカルの強さを存分に発揮したZETAが終始流れを掌握。終わってみればラウンドスコアは13-4となり,前回王者としての圧倒的な強さを見せつけたZETAの勢いに会場は大いに沸いた。
3rdマップはZETAのピックマップであり,得意とするマップとしても知られる「フラクチャー」。これでZETAの勢いは止まらない……と思われたが,蓋を開けるとNTHがZETAを圧倒する結果となった。
試合後の記者会見で「自信を持って前に進むことができた」と語った,Meteor選手のアグレッシブな動きがZETAをかき乱し,ラウンドスコア12-2としてZETAを追い詰める。ラウンド14終了後,タイムアウトを申請したZETAは続く2ラウンドを獲得して粘るものの,反撃もここまで。まるで「ヘイヴン」の逆襲と言わんばかりのラウンドスコア13-4として「フラクチャー」を獲得し,王者まであと1マップに迫った。
NTHはマップカウント2-1で迎えた4thマップ「アセント」。国内最強の座に王手を掛けたNTHと,絶対に阻止したいZETA。双方のプライドと最高の技術が正面からぶつかり合う一戦は,NTHの強気から生み出された勢いが止まらないものとなった。ZETAは必死に食らいついたものの,NTHに傾いた試合の流れをを止めることはできず。ラウンドスコア13-7で制したNTHが優勝を果たし,念願の日本最強の座と,世界大会への切符を手にした。
「NORTHEPTION」試合後インタビュー
試合後,勝者チームとなった「NORTHEPTION」に合同インタビューが行われた。なお,Meteor選手,JoxJO選手,bailコーチの3名は通訳を介した状態でインタビューを行っている。
──優勝おめでとうございます。まずは今のお気持ちをお聞かせください。
Blackwiz選手:
今日はリベンジを果たしたいと思っており,本当にそれが叶ったので,最高以外の言葉が出ないです。本当に最高です。
──試合直後のインタビューにて,今回「NORTHEPTION」メンバー全員のコンディションがよかったというお話をされていましたが,具体的にはどのような部分でしたか。
Blackwiz選手:
感覚的に言うと「体調もいいし,体も軽い」というような感じで,テンションも高く“ノッて”いました。そういう意味でコンディションはよかったです。
Derialy選手:
初戦の「アイスボックス」は1か月くらいスクリムをしておらず,正直不安で自信もなかったので,デスマッチのように撃ち合いに集中しようという話をして試合に挑みました。それが凄くいい結果となり,みんな自信も勢いもついたので,コンディションもよくなったのかなと思います。
Meteor選手:
試合前から「今日は必ず勝つよ!」という強い意気込みを持ち,お互いに励ましあいながら試合に臨みました。それがいいコンディションを生み出すことに繋がったのではないかなと感じます。
JoxJo選手:
オーダーに対する素早い反応や行動が,チーム全体のコンディションを上げる1つの要因になったのではないかと考えています。
xnfri選手:
テンションが高かったのも勿論ですが,冷静な判断ができたのがよかったです。プレイもしやすかったですし,先ほどDerialyくんからも話がありましたが,「アイスボックス」の結果も大いに関係していると思います。
bailコーチ:
昨日の試合が終わった後,すぐの試合となるので,選手の体力を回復させる時間を優先的に確保しました。それがチームのコンディションを上げた要因の1つではないかと考えています。
──前日に敗北している「フラクチャー」「アセント」で勝利しましたが,どのような対策をしましたか。
bailコーチ:
ZETA DIVISIONがとくに「フラクチャー」で使ってくる,“ゆっくり時間をかけるプレイ”が苦手でしたが,昨日に試合をして慣れた部分もありますし,自分たちが今まで見せていないプレイ,予想できないプレイを行えたのが勝因だと考えています。
──勢いがあるプレイでしたが,終盤はどのような気持ちでプレイをされていましたか。
Derialy選手:
「VALORANT」はメンタルが及ぼす影響が大きいゲームなので,とくに終盤は「メンタルで負けたら絶対だめだ」という強気な姿勢を維持しました。ラウンド後に喜ぶと落ち着くのが難しい部分もありますが,試合前にMeteor選手から「ラウンドが終わったら深呼吸をしようね」とみんなに話があり,それを聞いて,試合中にすぐ実行できたのがよかったです。
──3,4マップ目のMeteor選手の「前目に出る,積極的に1ピックを狙っていく」姿が印象的でしたが,1,2マップ目と比べて心境に変化などはありましたか。
Meteor選手:
bailコーチから「きみは十分強いから自信をもってプレイしよう。エイムも絶対に勝てる」というアドバイスをもらい,それを意識してプレイができたのではないかなと思います。
──ZETA DIVISIONを打ち破っての世界大会ということで,各チームからマークされる部分もあるかと思いますが,そのあたりはいかがでしょうか。
bailコーチ:
大会終了後,すぐにデンマークに向かわねばならないので,時間が十分にあるとは言えません。完璧な対策よりも,選手の好きなエージェントを選んだり,どのような対策をするかなど,選手たちの意見を聞きながら勝利を目指していきたいです。
──さいたまスーパーアリーナでのプレイの感想はいかがですか。
Blackwiz選手:
僕個人としてはゲームの大会でオフラインという形式が初めてだったのもあり,本当にワクワクドキドキの楽しい時間を過ごすことができました。
──プレイスタイルであったり,人間的な面であったり,NORTHEPTIONはどのようなチームでしょうか。
JoxJo選手:
チームメンバーを家族と思えるほどお互いの信頼関係が深く,仲がいいのがチームの特徴です。ゲームにおいてはスピード感をもって,臨機応変な対応をできるのが強みだと思います。
──bailコーチは世界大会に何度も出場されていますが,世界で勝つためにどのようなアドバイスを選手に行いますか?
bailコーチ:
自身の今までの経験から,世界で勝つための方法は2つあります。1つは運のような要素で,試合日や前日の選手たちのコンディションです。もう1つは個人の自由時間を諦めるくらいの練習をこなせば,世界大会での勝利に繋がってくると考えています。
──今日の優勝はプロを目指している若者にも大変いい刺激になったと思いますが,プロを目指している人にアドバイスをいただきたいです。
Meteor選手:
僕は23歳からプロとしてのキャリアを歩んでいますが,これは韓国基準だとかなり遅いスタートです。baliさんに見つけてもらったという運もありますが,そこから練習をしてここまで来れたので,状況や年齢に関係なく,懸命に努力すればプロを目指せると思います。頑張ってください!
──今回はBO5ということもあり,体力的な疲れはありましたか?
Meteor選手:
体力的には問題なかったのですが,今日はいつもと比べるとあまりキルが取れませんでした。そういう面で少し精神的に来た部分はありました。
──Meteor選手への質問です。世界で戦ってみたいチームがあれば教えてください。
Meteor選手:
DRXと戦ってみたいです。
──では最後に「VCT Masters Stage2」への意気込みをお願いします。
Blackwiz選手:
今,間違いなく注目を集めているチームだと思いますが,このプレッシャーが掛かっている中でも結果を残せるように,全力で頑張りたいと思います。
各地域の代表がプライドを背負って戦う「VCT Masters Stage2」は,現地時間7月10日から24日にかけて,デンマーク・コペンハーゲンの地で開催される。日本代表として挑むNORTHEPTIONが,遥か北欧の地で快進撃を見せる姿に期待したい。
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