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Max-Q版「GeForce RTX 2080」のゲーム性能にはどれだけ期待できるのか。GIGABYTE製ノートPC「AERO 15-Y9」を試す
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印刷2019/03/06 00:00

レビュー

Max-Q版「GeForce RTX 2080」のゲーム性能にはどれだけ期待できるのか

GIGABYTE AERO 15-Y9


 2019年1月下旬,GeForce RTX 20シリーズGPUを搭載するノートPCの販売が全世界で解禁となった。GPUのラインナップには“無印”とは別に薄型ノートPC向けの「Max-Q Design」版があり,NVIDIAは,ノートPCの筐体がより薄く,見栄えもよくなるMax-Q Design版GPUのほうを強くプッシュしているようだ。

 GeForce GTX 10世代のMax-Q Design版GPUは,同じ型番を採用するデスクトップPC向けGPUに性能面ではまったく歯が立たないという大きな問題を抱えていたが,果たしてそれは解決を見たのだろうか。4Gamerでは「GeForce RTX 2080 with Max-Q Design」(以下,RTX 2080 Max-Q)搭載のGIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)製15.6型ノートPC「AERO 15-Y9」を同社より貸し出してもらうことができたので,GPU性能検証を中心としつつも,GIGABYTEによる国内ゲーマー向けノートPC市場本格参入第1弾となるモデルの実力を総合的に見ていくこととしたい。

AERO 15-Y9
メーカー:GIGA-BYTE TECHNOLOGY
問い合わせ先:@mhx5944o(LINE ID)
実勢価格:34万9000円(税込,解像度1920×1080ドット,垂直リフレッシュレート144Hzパネル採用モデル,2019年3月6日現在),46万9000円(税込,解像度3840×2160ドット,垂直リフレッシュレート60Hzパネル採用モデル,2019年3月6日現在)
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※本稿ではベンチマークパートをライターの宮崎真一氏,ゲームを使った体感的なインプレッションパートをライターのBRZRK氏,それ以外を4Gamerの佐々山薫郁が担当します。


動作クロックが最小に抑えられたRTX 2080 Max-Qを採用するAERO 15-Y9


 今回はノートPCの細部チェックや使い勝手の確認よりもGPUの性能検証を優先するが,それに先だって,AERO 15-Y9が搭載するRTX 2080 Max-Qの仕様を簡単に確認しておきたい。

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 そもそもの話をしておくと,デスクトップPC向け「GeForce RTX 2080」(以下,RTX 2080)の場合,リファレンスのGPU動作クロックはベース1515MHz,ブースト1710MHzで,GDDR6グラフィックスメモリクロックは14GHz相当。これに対してノートPC向けGeForce RTX 20――“無印”とMax-Q Design版含む――は順に735〜1380MHz,1095〜1590MHz,最大14GHz相当となっている。
 ならAERO 15-Y9の場合はというと,ベース735MHz,ブースト1095MHz,12GHz相当。少なくともGPUクロックはNVIDIAの想定する最低ラインということになるわけだ。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を見たところ。搭載するCUDA Core数は2944基と同じだけに,デスクトップPC向けRTX 2080比でベースクロックが約49%,ブーストクロックが約64%というのはインパクトがある
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Afterburnerから最大クロックを追った結果
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 ちなみに,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.5.0)を用いて,テスト中におけるGPUのコアクロックを追ってみたところ,ブーストクロックは1815MHzまで上がることを確認した。動作クロック設定自体は最小レベルながら,必要に応じてかなりアグレッシブにクロックを引き上げる設定になっているようである。

 そして,そんなRTX 2080 Max-Q搭載ノートPCとしてのAERO 15-Y9を特徴付けているのが,Microsoftの「Azure AI」サービスを活用したシステムだ。

AERO 15-Y9では標準でAzure AIの有効/無効切り替えガジェットがデスクトップに表示される。ここが緑色だと有効で,クリックすると赤くなって無効になる。なお,赤い状態からもう一度クリックすると緑に戻る……かと思いきや,ガジェットが終了してしまうので,再度有効化するにはWindowsのスタートメニューからAI Widget.exeを実行するかシステムの再起動を行うかする必要がある
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 AERO 15-Y9では標準かつ最短では5秒に1回の間隔でGIGABYTEのAzure AIクラウドサーバーへデータを送るようになっており,またサーバー側では世界中のAERO 15シリーズノートPCから集まったデータを分析し,アプリケーションごとに最適なCPU側あるいはGPU側の消費電力上限設定やキーボードのLEDイルミネーション設定,ファン回転数設定,サウンド動作モード設定をまとめてプロファイルとして規定するとのことだ。
 最終的に,ユーザーが手元のAERO 15シリーズノートPCでアプリケーションを起動すると,そのアプリケーションに適切なプロファイルを読み出してくれるという。

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GIGABYTEが公開した「Azure AIが設定するプロファイルのテーブル」例。これは「Counter-Strike: Global Offensive」の例だが,CPU側の消費電力制限を若干かけてGPU側がより高いクロックで動作するようにし,それ以外もゲーム特化型の動作モードを選ぶようになっている
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こちらは「Azure AI導入のメリット」。ゲームのフレームレートが上がり,温度や消費電力を下げたりでき,キーボードのLEDイルミネーションを自動的に最適化でき,手動だと面倒な音周りの設定も自動で行ってくれるという

 なお,AERO 15-Y9の搭載する15.6型液晶パネルには,解像度3840×2160ドットで垂直最大リフレッシュレート60Hz,色域Adobe RGB比100%のAU Optronics製IPSと,解像度1920×1080ドットで垂直最大リフレッシュレート144HzのLG Electronics製IPSの2種類があり,ユーザーは用途に合わせて選択できる。ゲーム用途であれば後者「一択」となるが,今回は高解像度環境におけるベンチマークテストを重視する目的から前者を選択しているので,その点はあらかじめお断りしておきたい。


3DMarkのPort RoyalやFFXVベンチのテストも実施


 というわけで,さっそくベンチマークテストである。今回,比較対象としては,デスクトップPC向けRTX 2080搭載のデスクトップPCと,「動作クロックからして,デスクトップPC向けRTX 2080に遠く及ばないのはテストする前から見えている」ため,そこからGPUだけデスクトップPC向け「GeForce RTX 2060」(以下,RTX 2060)に変えた状態とも比較することにした。デスクトップPC向けRTX 2080との性能差はどれくらいか,デスクトップPC向けRTX 2060には勝てるのかといったあたりが見どころになるわけだ。
 具体的なスペックはのとおりとなる。

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 主役のAERO 15-Y9側では,Azure AIの有効時と無効時の両方でテストを実施する。
 ドライバはWindowsの新しいドライバモデルに対応するDCHだったのだが,NVIDIAのWebサイトから入手できるDCHドライバは導入できなかったため,今回はプリインストールの「GeForce 417.49 Driver」を用いることにした。比較対象のデスクトップ機は「GeForce 417.71 Driver」を導入したため,Release 415世代という意味では共通ながら,若干異なる点は注意してほしい。
 そのほか入手したAERO 15-Y9の主なスペックは以下のとおりである。

●入手したAERO 15-Y9の主なスペック
  • CPU:Core i9-8950HK(6C12T,定格2.9GHz,最大4.8GHz,共有L3キャッシュ容量12MB,TDP 45W)
  • チップセット:Intel HM370
  • メインメモリ:PC4-21300 DDR4 SDRAM 16GB×2(※Samsung Electronics製モジュール採用)
  • グラフィックス:UHD Graphics+GeForce RTX 2080 with Max-Q Design(グラフィックスメモリ容量8GB)
  • ストレージ:SSD(容量2TB,M.2/PCI Express接続,Intel「SSD 760p」)×1
  • パネル:15.6インチIPS液晶,解像度3840×2160ドット,垂直最大リフレッシュレート60Hz,ノングレア(非光沢),Adobe RGB色域比100%
  • 無線LAN:IEEE 802.11ac+Bluetooth 4.1(Rivet Networks「Killer Wireless-AC 1550」,2x2)
  • 有線LAN:1000BASE-T(RJ45×1,Rivet Networks「Killer E2500」)
  • 外部インタフェース:Mini DisplayPort 1.3×1,HDMI 2.0 Type A×1,Thunderbolt 3(Type-C)×1,Alienware Graphics Amplifier×1,RJ-45×1,USB 3.1 Gen.1 Type-A×3,4極3.5mmミニピン(※ヘッドセット用)×1
  • キーボード:英語フルキー配列(Nキーロールオーバー対応)
  • スピーカー:内蔵4chステレオ
  • マイク:内蔵2chステレオ(※アレイマイク)
  • インカメラ:解像度1080p
  • バッテリー容量:7500mAh/90Wh,11.4V
  • ACアダプター:定格出力180W(19.5V 9.23A)
  • 実測サイズ:約356(W)×249(D)×22(H)mm(※突起部含む)
  • 実測重量:約2.12kg
  • OS:64bit版Windows 10 Home

 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1に準拠。AERO 15-Y9が2560×1440ドット解像度をサポートしていないため,今回は基本的に,3840×1440ドットと2560×1600ドット,1920×1080ドットという変則的な3パターンでのテストとなる。ただし,

  • 「Fortnite」は2560×1600ドット非対応なので,当該解像度をテストから外す
  • 「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)はゲーム側で解像度2560×1440ドットに対応するため,レギュレーションどおりのテストを行う

ので,その点はご了承を。

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 また今回は追加テストとして,GPUが対象となるものを2つ,CPUが対象となるものを2つ用意している。
 順に説明すると,まずGPUが対象となるほうでは,RTX 2080 Max-Qのリアルタイムレイトレーシング機能を確認すべく,「3DMark」(Version 2.8.6446)において「Port Royal」のテストを実施することとした。テスト方法は,レギュレーションにおける「Fire Strike」や「Time Spy」と同様に,2回実行して高いのほうスコアを採用するというものになる。

 もう1つは,Tensor Coreを用いた「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)性能の検証用として用意した,「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」(以下,PC版FFXV)の公式ベンチマークソフト「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(Version 1.2,以下 FFXVベンチ)だ。
 FFXVベンチのテストにあたっては,「カスタム設定」からNVIDIA製GPU固有機能以外の項目をすべて描画負荷が最も大きくなるよう設定したうえで,DLSSの有効/無効を切り換えることになる。GeForce RTX 20シリーズでDLSSを無効にした場合,Pascal世代のGPUと同じTAA(Temporal Anti-Aliasing,テンポラルアンチエイリアシング)が使われることは押さえておいてほしい。FFXVベンチの仕様上,テスト解像度は3840×2160ドットのみだ。

 続いてCPUが対象のほうだが,今回は3Dレンダリングベンチマークテスト「CINEBENCH R15」(Release 15.038)と,「FFmpeg」(Version 4.1)を用いた動画のトランスコードテストも実施する。両者のテスト方法については後述したい。

 なお,AERO 15-Y9と比較対象ともに,とくに断りのない限り,電源オプションから「高パフォーマンス」に設定し,最高性能が発揮できるようにしているので,その点はご注意を。


デスクトップPC向けRTX 2060とあと一歩のAERO 15-Y9。AIにはメリットがない


 以下,グラフ中に限り,AERO 15-Y9のAzure AI有効時を「GBT 2080 Max-Q AI有効」,無効時を「GBT 2080 Max-Q AI無効」と表記し,比較対象のデスクトップ機は文中,グラフ中とも「i7-8700T+RTX 2080」「i7-8700T+RTX 2060」と表記することを断りつつ,「3DMark」(Version 2.8.6446)から順にテスト結果を見ていこう。

 グラフ1はDirectX 11世代のテストであるFire Strikeにおける総合スコアをまとめたものだ。Azure AIを無効化したAERO 15-Y9のスコアはi7-8700T+RTX 2080の71〜78%程度に留まる。i7-8700T+RTX 2060に対しては,最も描画負荷の高い「Fire Strike Ultra」で約7%高いスコアを示す一方,「Fire Strike Extreme」でギャップは約2%に留まり,“無印”ではほんのわずかながら低いスコアを示すという状況だ。
 Azure AIを有効化するとスコアが1〜3%程度低下しているが,この考察は後段で行う。

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 Fire Strikeの総合スコアからGPUテスト結果を抜き出したものがグラフ2だ。
 ここでAERO 15-Y9のAzure AI無効時におけるスコアはi7-8700T+RTX 2080比で69〜71%程度。Fire Strike“無印”の総合スコアは相対的にCPU性能がスコアを左右しやすくなるのだが,ここではGPUテストということでCPUの影響を排除してあるため,“無印”のスコアもFire Strike UltraおよびFire Strike Extremeと同じようになった。
 i7-8700T+RTX 2060,そしてAzure AI有効時とのスコア差は総合スコアをほぼ踏襲している。

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 続いてグラフ3は同じくFire StrikeからCPUテスト結果を抜き出したものになる。なのでAERO 15-Y9と比較対象のデスクトップPCの間にあるスコア差はCPU性能差ということになるが,同じ6コア12スレッド対応CPUで,かつ動作クロックもそれほど大きくは変わらないにもかかわらず「Core i9-8950HK」(定格2.8GHz,最大4.8GHz)搭載のAERO 15-Y9が「Core i7-8700T」(定格2.4GHz,最大4.0GHz)搭載のデスクトップPC機より目に見えて低いのは,それだけ実際の動作クロックが低く抑えられていることの証左と言えそうだ。
 注目したいのはAzure AI有効時のスコアがFire Strike“無印”だけ無効時よりも高く出ているところ。ここだけ何らかのメリットが出ている可能性はある。

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 GPUとCPU両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果を抜き出したものがグラフ4だが,ここではCPUの相対的なボトルネックが近いためか,Fire Strike“無印”でスコアが丸まりつつある。そこで,Fire Strike Extreme以上を見ていくと,AERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の68〜70%程度,i7-8700T+RTX 2060の103〜104%程度。Azure AI有効時はきっちりと(?)スコアを落とした。

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 3DMarkのDirectX 12テストであるTime Spyの総合スコアをまとめたものがグラフ5だ。ここでもAERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の70〜73%程度と,遠く及ばない。また,i7-8700T+RTX 2060に対しても96〜98%程度と若干置いていかれている。
 Azure AI有効時のスコアは無効時の95〜98%程度と,ここでも低くなった。

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 グラフ6はTime Spyの総合スコアからGPUテスト結果を抜き出したものだが,端的に伸びてスコア傾向は総合スコアを踏襲している。
 AERO 15-Y9のAzure AI無効時は,i7-8700T+RTX 2080の66〜69%程度,i7-8700+RTX 2060の97〜99%程度だ。Azure AI有効時は無効時比95〜98%だった。

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 CPUテストのい結果を抜き出した結果がグラフ7で,AERO 15-Y9のAzure AI無効時は比較対象のデスクトップ機に対して90〜94%程度というスコアに留まっている。

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 リアルタイムレイトレーシング機能を見る機能テスト「Port Royal」の結果がグラフ8だが,ここでAERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の約67%,i7-8700+RTX 2060の約107%だ。対i7-8700+RTX 2060では,AERO 15-Y9の搭載するRTX 2080 Max-Qが上位モデル(でRT Core数が多いこと)の意地を見せたといったところである。

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 グラフ9〜11は「Far Cry 5」の結果だ。

 平均フレームレートで比較して,AERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の67〜76%程度,i7-8700+RTX 2060の約85〜95%程度というスコアになった。また,Azure AI有効時と無効時を比較すると,1920×1080ドットではほぼ同じレベルながら,2560×1600ドット以上では約87%とかなり落ち込んでおり,3DMark以上に「Azure AIの有効性を見出せない」結果となっている。

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 Far Cry 5と似たような結果になったのが,グラフ12〜14にスコアをまとめた「Overwatch」だ。
 平均フレームレートでAERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の65〜76%程度,i7-8700+RTX 2060の約90〜100%程度という結果である。Azure AI有効時の3840×2160ドットで平均フレームレートが無効時の約82%まで落ち込んでいる点も押さえておきたい。

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 AERO 15-Y9のAzure AI無効時がi7-8700T+RTX 2060の後塵を拝するという無惨な結果になったのがグラフ15〜17の「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)である。平均フレームレートで82〜92%程度なので,かなり厳しいと言っていいだろう。当然,i7-8700T+RTX 2080に対しては60〜77%程度までスコア差が開いている。
 Azure AIを有効化するとそのギャップがさらに広がるのはこれまでどおりだ。

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 Fortniteのテスト結果がグラフ18,19で,ここだと平均フレームレートでAERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の約69%,i7-8700+RTX 2060の101〜109%程度というスコアになった。
 ただそれ以上に,Azure AIを有効化してもフレームレートがほとんど低下していない点にこそ注目したい。少なくとも,AIが常にマイナス作用をもたらすわけではないということである。

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 グラフ20〜22がShadow of Warの結果となるが,ここでの結果はFar Cry 5やOverwatchと近いものになった。AERO 15-Y9のAzure AI無効時は,i7-8700T+RTX 2080の68〜74%程度,i7-8700+RTX 2060の95〜96%程度という平均フレームレートを示している。
 Azure AI有効時のスコアは無効時に対して82〜83%程度まで“安定して”落ちているので,その点ではOverwatch以上と言えるかもしれない。

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 「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものがグラフ23だ。
 AERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700T+RTX 2080の71〜77%程度,i7-8700+RTX 2060の85〜99%程度というスコアになった。1920×1080ドット条件においてi7-8700+RTX 2060の約85%というのはかなりインパクトがあるが,ここはAERO 15-Y9のシステム側が「負荷が低い」と判断してクロックを下げた可能性が考えられる。

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 FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの平均および最小フレームレート計測結果がグラフ24〜26だ。全体として,総合スコアを踏襲したものになっていると言っていいだろう。

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 「Project CARS 2」の結果がグラフ27〜29だが,ここでAERO 15-Y9のAzure AI無効時におけるスコアはi7-8700T+RTX 2060と同程度か,若干下回る程度になる。Azure AIを有効化したときのスコア落ち込みは10%未満だ。

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 グラフ30はFFXVベンチにおける総合スコアをまとめたものだが,AERO 15-Y9のAzure AI無効時とi7-8700T+RTX 2060,i7-8700T+RTX 2080のいずれも,TAAに対してDLSSで3割強のスコア向上を示した。
 AERO 15-Y9のAzure AI無効時がi7-8700T+RTX 2060に対してあと一歩という点も含め,力関係に大きな違いは生じていない。

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 FFXVベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ31だ。平均フレームレートは総合スコアを踏襲したものと言えるが,「DLSSを有効化した,AERO 15-Y9のAzure AI無効時」が「TAAを有効化したi7-8700T+RTX 2080」に平均,最小いずれのフレームレートでも届いていない点には,少し衝撃を受けた。

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 CPU性能をチェックしておこう。CINEBENCH R15では,CPUコアとスレッドを使い切る「CPU」(以下,総合スコア)と,1コア1スレッドの性能を見る「CPU(Single Core)」といった2つのテストを行った。
 テスト結果はグラフ32のとおりだが,AERO 15-Y9のAzure AI無効時はi7-8700+RTX 2060およびi7-8700+RTX 2080と比べて総合スコアで約93%,1コア1スレッドテストで96〜97%程度という結果になった。Azure AIの有効化を行ってもスコアに大幅な低下は生じていない。

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 FFmpegを用いた動画トランスコードのテストでは,計6分42秒の長さを持つ,FFXIV紅蓮のリベレーターをプレイ動画を用意した。動画フォーマットはMotion JPEG形式,ビットレートは149Mbps,解像度は1920×1080ドットという仕様だが,これをFFmpegから「libx264」を用いたH.264/AVC形式へ,あるいは「libx265」を用いたH.265/HEVC形式へそれぞれトランスコードした際の所要時間を測定することになる。
 結果はグラフ33のとおりで,ここに至り,AERO 15-Y9のAzure AI無効時と比較対象となるデスクトップPCの違いは明らかだ。「一定レベルの負荷が長時間かかり続けたとき,熱が原因でシステムがおかしくなったり故障したりするのを避けるべく,CPUの動作クロックを下げる」機構が,AERO 15-Y9では正常に機能しているとも言えるだろう。

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Azure AI有効時は軒並み消費電力が落ちる結果に


AERO 15-Y9付属のACアダプター。定格230W(19.5V 11.8A)という仕様だ
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 冒頭で紹介したとおり,RTX 2080 Max-Qは,薄型ノートPCのために消費電力の低減を図ったGPUだ。では,実際の消費電力はどの程度なのか。
 今回は,消費電録ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を計測し,比較することにした。なお,AERO 15-Y9はバッテリー内蔵式のため,フル充電した状態でテストを行い,充電がテスト結果へ影響を及ぼさないよう配慮している。

 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,電源プラン設定を「バランス」に戻し,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果がグラフ34で,ゲームアプリケーション実行時におけるAERO 15-Y9のスコアはAzure AI無効時に189〜217W。液晶パネルというハンディキャップ込みでも比較対象に対して低いレベルを維持できている。
 さて,そんなAERO 15-Y9で興味深いのは,Azure AIを有効化することで消費電力が下がることだ。もちろん,それで性能を維持できていたり,より高い性能を実現できているのであれば「最適化」効果なのだろうが,ゲームアプリケーション実行時に8〜34W程度の消費電力低減があり,フレームレートがざっくり10〜20%程度下がる以上,これは「Azure AIが有効になると,ゲームの性能を落とす方向のプリセットが適用になる」と言わざるを得ないだろう。ベンチマークテスト結果からは「Azure AIは無効化すべき」としか言いようがない。

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 GPUの温度も確認しておきたい。ここでは,3DMarkのTime Spyを30分間連続実行した時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,GPUは「GPU-Z」(Version 2.17.0)から温度を取得することした。なお,比較対象のデスクトップPCはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で机上に置いている。また,テスト中を通じて,室温は24℃前後を保った。

 結果はグラフ35のとおりだが,AERO 15-Y9はAzure AIの無効/有効にかかわらず,高負荷時のGPU温度が80℃に達した。というか,80℃を超えないように制御されている可能性が高い。

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