プレイレポート
「Gears 5」がベールを脱ぐ! ゲームデザインに新機軸を盛り込んだキャンペーンをプレイしてきた
2019年9月10日のローンチに先立ち,Microsoft Game Studiosの傘下スタジオであるThe Coalitionにて,シリーズ最新作となる「Gears 5」(PC / Xbox One)のキャンペーンをプレイしてきたので,ファーストインプレッションをお伝えしたい。
「Gears 5」公式サイト
2006年にMicrosoftからリリースされた初代「Gears of War」は,Epic Gamesのリードデザイナーだったクリフ・ブレジンスキー(Cliff Bleszinski)氏のもとで生み出された三人称視点のアクションシューティングだ。当時,開発されたばかりのUnreal Engine 3.0のショーケース的作品として,他を圧倒するグラフィックスの美しさを誇っていた。Xbox 360ユーザーならば,鮮烈な印象が残っているのではないだろうか。
その後も続編が順調にリリースされたが,2014年1月にMicrosoftはEpic Gamesから「Gears of War」シリーズの知的財産権を獲得したことを発表(関連記事)。傘下スタジオのBlack Tusk Studios(The Coalitionの前身)に開発を委ねることになった。これと同時に,Epic Gamesにて初期3部作のプロデューサーとして活躍し,「Gears of War 3」のリリース後に退社していたロッド・ファーガソン(Rod Fergusson)氏をBlack Tusk Studiosに招き入れている。
さて,「Gears 5」の背景を説明するには,「Gears of War」シリーズのストーリーにも触れる必要があるだろう。
Gears of War(ギアーズ オブ ウォー)とは「戦争の歯車」を意味している。日本語にすると「一兵卒」といったところか。戦場においては歯車の一つとして機能することを,少しシニカルに表現した兵士達の自称である。
シリーズの舞台は地球とよく似た背景や文化,身体的な特徴を持つ人間が暮らす惑星セラ。初期3部作では,そんな歯車の一つとして戦場に駆り出されるマーカス・フェニックスと仲間達に焦点を当て,地底から現れた獰猛な生命体・ローカストや変異体・ランベントとの戦いが描かれていく。
これ以上の詳細なストーリーはネタバレになりそうなので,各自の判断のもと,下のボタンをクリックして読み進めてほしい。
「最もアクセシブルなゲームになるだろう」
これまで長きにわたって,フェニックス一族の顛末が描かれてきた「Gears of War」シリーズだが,最新作「Gears 5」の主人公はケイト・ディアスである。前作「Gears of War 4」の主人公・JD(マーカス・フェニックスの息子)の相棒を務めた女性戦士だ。
ケイトは「4」の終盤,ローカストの紋章が刻印されたペンダントを手にしており,この事実は新章となる「Gears 5」において非常に重要なストーリーの基点になっている。
ところで,「Gears 5」はローンチと同時に定額制ゲーム利用サービス「Xbox Game Pass」のラインアップ入りが発表されている。おそらく従来のシリーズファンではないプレイヤーも,「Gears 5」を遊ぶ機会が多くなるだろう。それは「Gears 5」の開発初期から念頭に置かれていたらしく,ファーガソン氏は「シリーズ作品のなかでも,最もアクセシブルなゲームになるだろう」と述べている。
今回のデモバージョンは第1章がロックされており,第2章と第3章が自由に遊べるという形だった。そのため,「Gears of War 4」のように,シリーズの流れを“プレイ可能な記憶”として体験できるのかは分からなかった。
ゲームシステムに関しては,「Beginner」「Casual」「Experience」,そして「Insane」という4段階の難度が用意されている。Experienceは従来の「Hard」に相当するもので,ファーガソン氏によると「Beginnerはアクションシューティングに触ったことがない人向けのモード。今回集まった皆さんにはお勧めしない」とのことだった。
さらに,トレーニングモードとなる「Boot Camp」が用意されており,ケイトの相棒として活動するデル・ウォーカーを操作して,カバーや射撃といったアクションのおさらいができる。久しくシリーズ作品をプレイしていなかった人にも,嬉しい要素と言えるだろう。
パーツを集めながらドローン「ジャック」を育てる
第2章「Recruitment Drive」(徴募)はCOG(統一連合政府,Coalition of Ordered Governments)のスーツを着たケイトとデルが,COGの強権的支配から逃れて僻地で暮らすアウトサイダーの集落を訪れるシーンから始まる。凍てついた北国に住む人々は巨大な魚を捕獲し,地下からの蒸気を利用してトマトやカボチャなどを育てている。ケイト達は何らかの理由により,集落のリーダーから協力を得ようとしているのだ。
ケイトには「ジャック」と呼ばれる浮遊型ドローンがお供についている。ドローン自体は初めての登場するわけではないが,「Gears 5」のドローンはさまざまなパーツやコンポーネントを集めることによって,その機能を高めることが可能だ。パーツはゲーム内通貨の役目を果たしており,集落を探索しているとカウンターの後ろや棚の上などで光を発した状態で見つけられる。コレクタブルアイテムの一種である。
ジャックの操作は,[Y]ボタンを押してからトリガーボタンを引くと「高いところにある武器を取ってこい」「あのボタンをハッキングしろ」といったコマンドを出せる。
さらに,電撃を加えて相手をスタンさせるFlash系の「アサルト」,レーダー機能を果たすPulse系の「サポート」,そしてプレイヤーキャラクターのアーマーブーストをしてくれるStim系の「パッシブ」という,3つのスキルセットが用意されている。これらにパーツのポイントを割り振ることで,数段階にわたって効果を強化できる仕組みだ。
例えば,Flash系を強化していくと,相手の脳に電磁波を送ってマインドコントロールしたり,特定のエリアに電気トラップを仕掛けたりできるようになる。
また,コレクタブルアイテムには手紙やポスターといったものも存在し,それらを集めることで,「Gears 5」の世界について詳しく知ることができる。アクションシューティングというジャンルでありながらも,比較的自由に探索できる点はRPG的なゲームデザインと言えるもので,従来のシリーズ作品とは大きく異なる部分だろう。
やがて,スワ―ムと思しきクリーチャーの一群が集落を襲ってくる。銃撃戦が始まると,従来の四角のレティクルではなく,それぞれの武器に合わせた形状のものに改良されていることに気づく。「Gears 5」ではリコイル(反動)の要素も加えられ,初代から続いてきた少々クラシカルなアクションが“現代的”なものに変更された印象を受ける。
また,ドアを開けると敵がすぐに気づいて襲い掛かってくるといった感じだった点も,今回はケイトの“スカウト”という職分が影響してか,プレイヤーの存在に気付くのが遅くなっているようだ。ほとんどの局面で先手を打てるようになっていて,ジャックの利用価値が高められている。
広大なマップを新しいビークルで移動できる
クリーチャーを撃退すると,湖畔のボート置き場へとシーンが変わり,ケイトは「スキッフ(Skiff)」を手に入れる。帆の代わりにパラシュートで移動するような乗り物で,雪や氷の上を滑走していくのが非常に心地良い。デルを前方に載せて,ケイトは後方のプラットフォームに立ってパラシュートを操作することになる。船体の両脇には武器の保管庫もあり,スキッフに戻るたびに弾薬の補充も行える。
スキッフで滑走しているとデルが「お,あそこに何かあるな」と発言するので,マップを確認してみると「?」マークがポップアップしていた。これは「ポイント・オブ・インタレスト」と呼ばれるもので,大型モンスターが潜むサイドミッションが発生したり,特殊兵器(レリックウェポン)やパーツなどのアイテムが散らばっていたり,さらにストーリーに関わる要素だったりと,多彩な仕掛けが用意されている。
ファーガソン氏によると,RPG的なゲームデザインやスキッフの採用などにより,「Gears 5」のマップ総面積は前作と比べて50倍にもなっているそうだ。
先の集落では「リーダーの考え方に合わないので集落を出ていく」という住人の置き手紙を見つけた。その後,ポイント・オブ・インタレストを探索していると,凍死した女性のアウトサイダーに遭遇した。メインストーリーに直接関係しないが,惑星セラに生きる人々の営みが垣間見える出来事だ。
もちろんアクションゲームに専念したければ,メインミッションを進めればいいだろう。パーツの入手量は減るだろうが,ゲームを進めていくうえであまり支障はないようだ。
第2章では雪と氷に覆われた大地において,ケイトとデルはCOGの秘密研究所を探し当てることに成功する。しかし,スワ―ムとの新たな戦禍が惑星全土を巻き込み始めたことも明らかになった。
こうして迎える第3章「Fighting Chance」(戦いの好機)では,砂漠地帯へと歩を進めていく。シリーズファンであれば驚くかもしれないが,なんとペンデュラム戦争時代にCOGと敵対していたUIR(独立共和連合,Union of Independent Republics)の本拠地であり,シリーズで初めてプレイアブルロケーションとして登場する土地だ。
ヴァスガー(Vasgar)地方は,一見すると荒涼とした砂漠だ。アラビア風のデコレーションが施された建物が存在するものの,赤い砂がところどころに溜まり,ウィンドフレアが形成したらしい奇岩もあちこちに見られる。
ここでもケイト達はCOGの指揮下で動いているようだが,マーカスと共に旅のコンパニオンとして「ファズ(Fahz)」という新しいキャラクターが加わる。ファズは少しおどけた調子のCOG兵士だが,どうやらUIR出身者の様子。ともあれ,この4人で再び衛星兵器「ドーンハンマー」を起動するべく,スキッフに乗り込んで砂漠を駆け回ることになる。
「Gears 5」開発者インタビュー
今回の取材では,The Coalitionのシニア・ナラティブデザイナーを務めるボニー・ジーン・マー(Bonnie Jean Mah)氏にインタビューする機会があった。「Gears 5」の脚本は作家のトム・ビッセル(Tom Bissell)氏が担当しており,ボニー・ジーン・マー氏はそのサポートとして世界観の構築やコレクタブル要素の作り込みなどを担当しているそうだ。
4Gamer:
どうぞよろしくお願いします。
さっそくですが,「Gears 5」につながる前作のストーリーをまとめていただけますか。
前作「Gears of War 4」のストーリーは,兵士の仲間達が森の中を駆け回り,そこに隠れているモノたちと戦うという内容でした。ネタバレをしないで短く説明すると,こうなってしまいますね(笑)。
「3」の結末から25年の時が流れ,シリーズ三部作の子供達という新しいキャラクターを描きあげていく役割が与えられていました。スワ―ムと呼ばれる新しい敵の存在とローカストとの関連を確認するという意味でも,25年のギャップをつなぐ位置づけのタイトルでした。
そして「Gears 5」の主人公であるケイト・ディアスが登場し,彼女がストーリーの重要な立ち位置にいることを確認できたと思います。
4Gamer:
これまではフェニックス一族を中心に展開するストーリーでしたが,スムーズにディアス家のストーリーへと転換しました。ナラティブというコンセプトで見れば,面白い手法ですね。
ボニー・ジーン・マー氏:
「Gears 5」の企画にあたって,我々脚本チームは「このサーガで何を語ろうとしているのか」ということを見直しました。そして,「Gears of War 4」もケイトのストーリーであり,JDの視点から彼女について語っていたことにあらためて気付いたのです。
あのペンダントに絡むストーリーが進行していくわけですから,ケイト自身を操作して,彼女自身が過去から現在までの秘密を解き明かしていくことが最良であると判断しました。
4Gamer:
今回のデモでは第1章がロックされていましたが,JDからケイトへの主人公の転換がどのように行われているのかが気になるところです。
ボニー・ジーン・マー氏:
よりオープンになった世界とゲームデザインのコンセプトの変化を見ていただくために,今回は第2章と第3章をプレイしていただきました。第1章では,ケイトが自身に関係が深い世界の秘密を暴きたいという欲求から,果敢に戦いを挑むことになります。
第3章の冒頭をプレイしているのでお分かりだと思いますが,「Gears 5」においてもJDは重要な役割を担っています。
4Gamer:
「Gears 5」は全何章でしょうか。
ボニー・ジーン・マー氏:
全4章です。第2章と第3章は大きなマップを探索してストーリーを掘り下げる内容で,第1章と第4章はよりアクションにフォーカスした内容になっています。
4Gamer:
従来のアクションシューティングとは異なるスタイルになったことで,アクションのテンポが大幅に変わるのではないでしょうか。
ボニー・ジーン・マー氏:
それはプレイヤーに委ねられていると,考えていただくとよろしいでしょう。スキッフを乗り回していくと,マップにサイドクエストが出現したと思いますが,それをプレイするかどうかはプレイヤー次第です。シリーズの詳しい世界観を知る,という1つのオプションになっています。
パーツやレリックウェポンの入手といったリワードがありますが,世界を探索することでゲームが散漫にならないように心がけました。
4Gamer:
惑星セラの環境が多様化しています。ナラティブデザインにおいて苦労はありましたか。
ボニー・ジーン・マー氏:
第3章には砂漠地帯のロケット発射場が出てくるのですが,いろいろなリサーチを行いながら,「この世界の100年前にはどんな宇宙技術があったのか」といった設定を作り出したことを覚えています。非常に早い段階からアートチームと連携する必要がありましたね。これまでに描かれていなかったロケーションも多かったため,新しく世界を作り出していくことは難しく,プレッシャーも大きいものでした。それだけに,やりがいのあることでもありました。
4Gamer:
新しいキャラクターであるファズはどんなキャラクターですか。
ボニー・ジーン・マー氏:
呑気で無作法,ジョークしか言わないコミックリリーフ的なキャラクターですが,ぜひ仲間に加えておきたい有能な戦士でもあります。あとは皆さんにプレイしていただいて,それぞれに彼に対する印象を持ってほしいですね。
4Gamer:
ナラティブデザインを担当するにあたり,特定のキャラクターに愛着を持つことはありませんか。
ボニー・ジーン・マー氏:
脚本だけではどこか無機質ですが,声優とボイスレコーディングのセッションをした途端,キャラクターに魂が宿るというか,我々の想像を超えたキャラクターに進化していくことはあります。自分の頭の中でイメージしていたものが,実際に完成すると言いますか……。ファズもそんな1人です。
以前から参加している声優も多いですし,大きな家族のように感じられますね(笑)。
4Gamer:
「Gears 5」は前作から始まる新・3部作の第2弾ということになるのでしょうか。
ボニー・ジーン・マー氏:
それは私にも分かりません(笑)。ファーガソンはシリーズの方向性や最終局面といったことに,いくつかのアイデアを持っていると思います。しかし,それは今後のお楽しみです。まずは「Gears 5」を楽しんでください。
4Gamer:
そういえば「Gears 5」は従来のタイトルと異なり,「of War」が付いていませんね。
ボニー・ジーン・マー氏:
ファンの皆さんは,親しみを込めて「Gears」と呼んでくれますからね。「Gears of War」というフランチャイズであることは変わりませんが,省略したほうが洗練されているように思えます。「Gears」のほうがソーシャルネットワーク上で判別されやすい,というマーケティング面の理由もあるようです。
4Gamer:
ナラティブデザイナーとして,ゲーマーが「Gears 5」をプレイする際に感じ取ってほしいことはありますか。
ボニー・ジーン・マー氏:
アクションシューティングというと,マルチプレイにフォーカスするあまり,キャンペーンが短かったり,キャンペーンそのものが存在しないというタイトルがあります。「Gears of War」は壮大な戦争を描いた作品であり,その独特の世界観をシングルプレイを通じて感じ取っていただきたいと思います。