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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第23回。スカウト!あそび部,スカウト!プリティ5,スカウト!ツツジ燃ゆる,Wander!ブラックバニー in UNDERLANDを語る

 Happy Elementsがサービス中のアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!BasicMusic」のストーリーを紹介する記事の第23回では,「スカウト!あそび部」「スカウト!プリティ5」「スカウト!ツツジ燃ゆる」「Wander!ブラックバニー in UNDERLAND」の4本を取りあげる。

 本記事では,“知っているとストーリーをより楽しめるポイント”の解説と,筆者の感想や考察をお届けする。記事では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。

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ストーリー紹介連載のバックナンバーはコチラ

「あんさんぶるスターズ!!Music」公式サイト


※「メインストーリー第二部『SS』編/1st Stageサテライト」および「『SS』編/2nd Stageサブマリン」はすでに解説済みのため,同時期に行われた「スカウト!あそび部」「スカウト!ツツジ燃ゆる」を今回の記事で取り上げます。
「スカウト!ハルサキRide→ON!」は,次回(第24回)掲載予定の「攻略!迷宮結ぶアリアドネの糸」と合わせて紹介します。


ストーリーピックアップ
「スカウト!あそび部」

開催期間:2021年4月14日〜2021年4月29日
同時期開催イベント:「メインストーリー第二部『SS』編/1st Stageサテライト」



――あらすじ――

 サークル「あそび部」に体験入会した漣ジュンとともに,鬼ごっこに興じる仙石 忍たち。すると忍のスマホに連絡があり,ボランティアで子どもたちに昔の遊びを教えてほしいと依頼される。天城燐音も加えた「あそび部」メンバーは,玩具を手作りすることを思いつく。<全8話/シナリオ:ゆーます>

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◆ストーリーのここをチェック!

サークル「あそび部」について
 「あそび部」のメンバーは,仙石 忍,天城燐音,漣ジュン,春川 宙,葵ゆうたの5人で,サークル自体は忍とゆうたと宙によって立ち上げたことが明らかとなった。彼らのこれまでの活動が描かれたストーリーは以下のとおり。

【スカウト!ジンロウ】
 「あそび部」フルメンバーが揃ったストーリーはこちらが初である。ここではあそび部のメンバーに加え,逆先夏目,巴 日和,天祥院英智も参加し,パーティーゲームの「人狼ゲーム」を遊ぶ様子が見られた。なお,HiMERUのアイドルストーリー「過去、現在、そして――」にて,燐音があそび部のみんなと「人狼」で遊んだときの様子を語っている。

礼瀬マヨイ「それは、やがて大輪に」
 純粋には「あそび部」の活動ではないが,忍,宙,燐音が参加しているため紹介する。こちらは忍と二人きりで休日を過ごす約束をしていた(と思っていた)マヨイが,燐音や宙とも一緒に遊ぶことになった……というストーリーだ。ここで彼らが遊んだのは,木の棒を投げ合って木の的を倒すアウトドアゲーム「クッブ」である。

 そのほか,いくつかのアイドルストーリーで「あそび部」について触れられている。高峯 翠アイドルストーリー第三話春川 宙アイドルストーリー第二話・第三話仙石 忍と漣ジュンのアイドルストーリー第三話もぜひチェックを。

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夢ノ咲学院のゲーム研究部
 夢ノ咲学院で宙が所属する「ゲー研」ことゲーム研究部は,ボードゲーム,VRゲーム,TVゲームなど,ゲームと名の付くものは何でもするという。ちなみに,今作【スカウト!あそび部】に名前だけ出てきたゲームの名手・Trickstarの遊木 真は,かつてゲー研に所属していた。だが一時期,ゲー研が不良のたまり場になってしまい,居場所が悪くなって退部したとのことだ(「!」の【追憶*春待ち桜と出会いの夜】より。逆先夏目の仮入部エピソードも読める)。

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「にんにく、にんにく」
 うせ物を探すときの「にんにく、にんにく」という呪文は,一般的にもそこそこ有名らしい。ヨーロッパでは,物を隠すのは魔女のいたずらと言われるため,魔女の嫌いな「にんにく」と唱えるといった話もあったりする。その由来は真偽不明ではあるが,筆者としてはこの呪文,効き目があるような気もしている。実は過去にも何度か試したことがあるのだが,「にんにくにんにく……」と言いながらなくしものを探していると,本当にひょっこりと見つかったことが多々あったのだ。信じるかどうかはあなた次第だが,紛失物が見つからないときに試してみるといいかもしれない。

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葵ゆうたによる七種 茨の敬礼の真似
 今年度から葵兄弟がするようになった,七種 茨の敬礼ポーズのものまね。これは2winkがコズプロに所属し,「真似されると『懐いてくれてる』みたいに思って嬉しいでしょ」という理由(葵ひなたアイドルストーリー第一話より)から,同事務所の権力者である茨の真似をするようになったと見られる。ちなみに茨本人は,2人が自分の真似をするようになったことは容認している様子である(七種 茨アイドルストーリー第一話より)。

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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 今作【スカウト!あそび部】を読んでしみじみと感じたのが,“あまりにも眩しすぎる,仙石 忍のまっすぐな成長”だった。彼の子どものころをよく知らない人は,ぜひ「!」の【暗躍!月影の風雲絵巻】をチェックしていただきたいのだが,忍は幼いころから「忍者」が好きな子で,引っ込み思案な性格もあって,何かと“ぼっち”になりがちだったのだという。そんな彼は夢ノ咲学院に入学し,流星隊をはじめとしたたくさんの仲間たちと出会い,「好き」を受け入れられ,認められて,より強い自分を手に入れていった。

「!」【暗躍!月影の風雲絵巻】より
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 とはいえ忍は,今のようになるまでずっと“弱い子”だったわけではない。誰にも同意してもらえなくても,自分の「好き」を諦めることはなかったし,夢ノ咲に入学してすぐに忍者同好会(人数が足りず部活にはならなかったが)を立ち上げるくらいの勇気はあったのだから。これまで筆者は忍のことを,何度も「大人でも感心してしまうほど,尊敬すべき生き方をしている」と書いてきたが,その彼が今,どこも折れずまっすぐに成長し,仲間と共に笑い合っている姿を見るのは,まるで自分のことのようにうれしいと感じてしまう。

 【スカウト!あそび部】では,子どものころにどんな遊びをしていたかの話題で,メンバー全員がやや特殊な,あるいは少し寂しい子ども時代を送っていたことが判明する。双子として生まれ,父親とうまく行かず,小さいころから兄と2人寄り添い合うように生きてきたゆうた。共感覚という特別な性質を持つために,「変わった子」と言われ,一人ぼっちだった宙。アイドルの息子として生まれ,父の挫折を目の当たりにし,自分もアイドルになることをただがむしゃらに目指してきたジュン。独自の価値観を持つ土地で次期君主として育ち,いろいろなものを犠牲にしてきた燐音。彼らの子ども時代にも,楽しかったことがまったくなかったわけではないだろうが,子どものころに戻りたいか? と聞かれたら「NO」と答えそうに見える。

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 お互いの育ってきた環境からくる“纏う空気”は,何となく伝わるものだ。あそび部はたまたま集まったメンバーかもしれないが,そういう意味では決して偶然ではなく,彼らがともにいるのは自然なことのようにも思える。相手の趣味や好きなものを否定せず,ワクワクするものを見つけて一緒に楽しく遊ぶ。彼らはもしかしたら,子ども時代にできなかったことを追体験しているのかもしれない。

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ストーリーピックアップ
「スカウト!プリティ5」

開催期間:2021年4月29日〜5月14日
同時期開催イベント:Wander!ブラックバニー in UNDERLAND



――あらすじ――

 妹がお見合いをすることになり,浮かない顔の姫宮桃李。お見合いは半ば無理やりな話だと桃李から聞き,止めるべきだと考えた鳴上 嵐は,プリティ5のメンバーに「良いアイデアを思いついた」と話す。<全9話/シナリオ:日日日>

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◆ストーリーのここをチェック!

意外と多い,チェックしてほしい話
 今作はこれだけでも大変面白いのだが,あらかじめチェックしておくと深みが増す(かもしれない)ストーリーも多いので,紹介しておこう。

「!」【スカウト!高貴なる遊戯】
 姫宮桃李の妹についてはこちらを。本人は直接登場するわけではない(セリフは発しない)が,彼女がどれだけ兄の桃李を好きであるかがよく分かる。また,夢ノ咲学院の上流階級の子息が勢揃い(桃李,英智,朱桜 司)したことにも注目。

「!」巴 日和ストーリー「おひいさんと一緒」
 日和と桃李が初めて会った日の話はこちら。時期は昨年度のTrickstarとEveの【サマーライブ】前,日和が夢ノ咲学園に現れたときのことである。日和は今よりさらに気位が高いようだが,桃李はfine時代の日和のファンだったため,複雑に感じつつうれしそうな様子が伺える。

「!」【スカウト!ポイズンアラモード】
 今作【スカウト!プリティ5】で,影片みかが話す「桃李のぬいぐるみを直してあげた」というエピソードはこちら。ここでは,桃李が妹から借りていたうさぎのぬいぐるみの「ミミちゃん」がカラスにいたずらされてしまい,ボロボロになったのをみかが修繕した話を読める。

「!」【夏空*駆けるシュヴァルライブ】
 みかと鳴上 嵐は昨年度からとても仲が良く,その様子が見られるストーリーは多い。ここでは乗馬スチルも美麗で思い出深いこちらをチョイス。

「!」【演舞 天の川にかける思い】
 今作【プリティ5】で,みかが英智のことをしみじみ(?)と「嫌いやわぁ、このひと……」と言う。この2人の最初の出会いは,あの【ミルキーウェイ】こと【演舞 天の川にかける思い】で,Valkyrieの存続について斎宮 宗に脅しをかけるようなことを言った英智に対し,普段は温厚なみかが掴みかかる意外なシーンがあった。

「!」【リメンバー 真夏の夜の夢】
 後ほど感想を述べるが,嵐の“想い人”についてはぜひこちらをチェックしてほしい。嵐とその相手のエピソードはほかでも見られるが,筆者が個人的に思い入れがあるのはこの話だ。

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退かず! 媚びず! 顧みず!
 「プリティ」が満載の今作で,なぜこのようなキーワードの解説をしているのか筆者もよく分からないのだが,影片みかが言ったこのセリフは,漫画「北*の拳」の名セリフ「退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」が元ネタだと思われる。ちなみにこれは,昨年度に斎宮 宗が言っていたことのある言葉(「!」斎宮 宗キャラクターストーリー「傀儡の帝王」で,「それがValkyrieなのだよ」と言っている)だった。この手のオマージュで言うともう一つ,今作【プリティ5】で嵐が言う「生まれたときは違えども死ぬときは同じ」は,三国志演義における劉備,関羽,張飛の,“桃園の誓い”の言葉である。

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五箇条では済まない,「プリティ」とは何かという話
 今作冒頭で「プリティ三箇条」(後に五箇条となる)なるものが登場するが,ほかにもプリティ名言(!)がいくつか飛び出したので,筆者の心に残ったものをまとめておきたい。

・退かず! 媚びず! 顧みず!
・プリティは正義
・かわいいはお得(ここまでが「プリティ5」鉄の掟であるプリティ五箇条)
・プリティの「プリ」はプラスのプリ
・人には人のプリティがある
・自由でこそプリティ
・(「プリティ」とは)子どものように、建前ではなく自分の気持ちを大事にすること
・かわいいからといって何をしてもいいわけではない(※戒め)


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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 プリティの大先輩たち(?)によるおかしなノリに,藍良だけでなく読者までも驚かされた今作。まさに「プリティのゲシュタルト崩壊」とばかりのプリティ波状攻撃に面食らった人も多いのではないだろうか(本当に楽しかったですね)。とはいえこの話を最後まで読み終わると,なかなか深いストーリーだったことに気付かされたりもする。

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 物語は,桃李の妹にお見合いの話がきたことから動き出す。桃李の妹といえばまだまだ幼い年のはずだが,桃李や日和の実家のような家柄ではよくある話らしい。そして,その話を聞いて立ち上がったのが嵐だ。“愛の人”嵐は,「愛のない結婚なんて認められない」と言って,お見合いの話をなかったことにするべく,皆に協力を仰ぐ。この一連の嵐の行動は,藍良やみかが言うようにとても「熱い」。本人としては意外だったようだけれども,嵐の愛がとても深いのは,皆さんもよくご存じのとおりだ。それは嵐が“痛みを知っている人だから”というほかに,愛そのもの(それは他人への愛だけでなく,自己愛を含む)に対して強い思い入れがあるように見えるところも,そう感じさせる理由かもしれない。

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 今作で(プリティ関連以外で)筆者の印象に残ったセリフは多々あるが,そのなかの一つが英智の言葉だった。

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 これを聞いて思い出したのが,「!」の【招福*鬼と兄弟の節分祭】における,春川 宙が葵ゆうたに言った「苦しいなら、居心地が悪いなら、ひなちゃん自身が変わらなくっちゃ!」という言葉だった。息をするのが苦しくなりそうなとき,何かにつまずきそうなときに,一番早い(だが簡単なわけではない)のは自分自身が変わることだ。
 けれど英智が言うように,世界を形成しているのが人間である以上,それを変えることだって不可能ではない。現にずっと昔と今では,世界は少しずつ変化をしてきているのだから。もしくは,「世界を変えるための力を手に入れる」の意味で,「自分自身が変わる」という捉え方もできるかもしれない。

 もう一つ書いておきたいのは,やはり終盤の嵐のモノローグについてだろう(“アタシたち”が誰を指すのかもいろいろと考えてみたいところ)。嵐は,桃李の妹が英智にした行動と表情を見て「自分は余計なお世話をしていたのかもしれない」と気づく。ここで嵐が言う「花泥棒に罪はない」の意味だが,古来より「花盗人は罪にならない」という言葉がある。これはおそらく狂言の「花盗人」が元になっていると言われ,そのあらすじは「花の美しさに惹かれてそれを手折った男が,歌を詠んでその罪を許された」というものである。

 けれど嵐が言うように,「その花を愛してたひとにとっては、そんなの許しがたい犯罪者」だ。ものごとはどこを主観とするかによって意味や感じ方が大きく変わるものだが,筆者には嵐自身が,どれか一つに傾くことなく,あくまでもフラットな視線を持ちたい人のように感じられる(それが以前よく口にしていた「なんでもほどほど」というスタンスでもあったような気もする)。

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 嵐の思考や胸の内は,これまでもいくつかのストーリーで描かれてきた。今までの話を読んでいた人なら,今作のラストで,嵐の“想い人”を思い出したかもしれない。筆者もその一人だが,それについてはぜひ【芳香*忍ばせたフレグランス】をチェックしておきたいところ。本連載での解説と感想は少し先になるが,ぜひ楽しみにお待ちいただきたい。


ストーリーピックアップ
「スカウト!ツツジ燃ゆる」

開催期間:2021年5月30日〜2021年6月14日
同時期開催イベント:「メインストーリー第二部『SS』編/2nd Stageサブマリン」



――あらすじ――

 ESを盛り上げる施策を兼ね,天祥院英智に一泡吹かせるため「ホッケーマスク」の再利用を思いついた朔間 零。青葉つむぎとともに作戦を考え,かつて「ホッケーマスク」として舞台に立った氷鷹北斗と日々樹 渉を巻き込むことに。やがて「ホッケーマスク」が子どもたちの間で流行りだし……。<全8話/シナリオ:ゆーます>

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◆ストーリーのここをチェック!

テニス部の交流試合
 今作で遊木 真が「他校と交流試合がある」と話しているが,以前のストーリーでも夢ノ咲学院テニス部の交流試合について触れられたことがある(遊木 真アイドルストーリー「昼下がりの足音」漣ジュンアイドルストーリー「寄り道エンカウンター」で言及。ただし今作と同じ試合を指すかは不明)。真は「部長らしいことがあまりできていない」と言うものの,以前にも解説したとおり,彼は今年度から夢ノ咲学院のテニス部部長のほか,放送委員会のリーダー,ES情報部の長を務めており,かなりの多忙であることが推測される。

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お祓いは蓮巳敬人におまかせ!?
 敬人の“お祓い”と言えば,記憶に新しいのが【スカウト!丑参り(前編)】で大活躍した“寺生まれのKさん”である(※過去記事参照)。彼は文字通り寺生まれで,実家の寺は「!」の【躍進!夜明けを告げる維新ライブ】【追憶*それぞれのクロスロード】,新章の【温故知新/継承の御前試合】などに登場している。本堂は長い石段を上がっていく山の上にあるらしいので,ツツジのほかにも季節の花が咲いているのかもしれない。

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「ホッケーマスク」について
 「ホッケーマスク」は,かつての夢ノ咲学院で,天祥院英智率いるfine(旧メンバー。いわゆる「旧fine」)と五奇人・日々樹 渉が“対決”したステージに登場した。これはユニットの最低構成人数(2名)を満たすため,渉が後輩の氷鷹北斗を“謎の怪人ホッケーマスク”としてステージに登場させたという流れだった(「!」 【追憶*集いし三人の魔法使い】より)。この「ホッケーマスク」は,その後のストーリーにも名前のみではあるが登場頻度が多く,「!」のメインストーリー第二部【Link♪ここから始まるシンフォニア】などに加え,新章でも【秘宝紐解く/骨董綺譚】に登場していた。

「!」 【追憶*集いし三人の魔法使い】より
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朔間 零と青葉つむぎ,2人の「お兄ちゃん」
 朔間 零・凛月の兄弟によるじゃれ合い(あえてこう言いたい)は,もはや本作品の名物の一つと言っていい気がするが,初めてやりとりを見た人は,めちゃくちゃ塩対応の凛月&デレデレの零という,普段と異なる姿に驚くかもしれない。彼らと青葉つむぎとの関係は「!」の【スカウト!悪魔の館】をご参照いただきたい。そこでは凛月が零に当てつけるように,つむぎを「青葉のお兄ちゃん」と呼んで懐くのである。それに対して零はつむぎを「変な眼鏡」「ばぁぁああああか!」「クソ忌々しい眼鏡」などと散々罵倒しており,見応え(?)がある。

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五奇人と英智(旧fine/生徒会派閥)との対決について
 これまでにも何度か解説しているがあらためて。今作【ツツジ燃ゆる】で零が「(自分は)『五奇人』とはいえ,あの壇上には立っていない」と語っているが,五奇人と英智側との“対決”は以下のような流れとなっている。

1.斎宮 宗
→旧Valkyrie(仁兎なずなが在籍していた3人組時代)のライブで,生徒会シンパと思われる者によりステージの邪魔をされてしまう(「!」の【追憶*マリオネットの糸の先】など)

2.深海奏汰
→守沢千秋とともに流星隊としてステージに立ち,紅月とドリフェス【海神戦】で対決する(「!」の【追憶*流星の篝火】など)

3.日々樹 渉
→ホッケーマスク(氷鷹北斗)とステージに立ち,旧fineと対決する(「!」の【追憶*集いし三人の魔法使い】など)

逆先夏目・朔間 零
→直接対決はなし。零は渉のステージ(五奇人の終焉)を見届けたあと,海外に渡った。

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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 今作を読み進めていた作者は,途中,まさにこのような心境だった。

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 まさかこのES時代に,あの「ホッケーマスク」が復活しようとは……。ここまでに解説したとおり「ホッケーマスク」は夢ノ咲学院の歴史において,なかなかセンシティブなキーワードなのである。「あんさんぶるスターズ」という作品にはこういった,エグめの体験が思い出されるキーワードが少なくない。だが興味深いのは,そういう体験をしたアイドルたちの多くが,意外と(見た目には)過去を引きずっていないように見えるところだ。

 たとえば今回,「ホッケーマスク」と聞いた際の反応は三者三様であった。当事者である北斗はこれを拒否する姿勢を見せ,英智は苦々しい表情となり,つむぎも零に対し「本当にこれで良かったのか?」と尋ねた。だが,“被害者側”だった五奇人の零は「あれは過去のものであり、いまになって掘り返したところで痛むものではない」と答えているし,同じく五奇人の渉は「あれは負けるための戦。誰かのために仕組まれた、望まれた犠牲でした」と言う。零も渉も傷ついたことは間違いないはずだが,彼らは“赦すことで前に進んでいる”ように見える。もちろん,何かを赦すのはとても難しいものだ。けれど逆に,人を傷つけてしまった側は,傷ついた側がそれを乗り越えない限り,本当の意味で“終わり”は訪れないのではないかという気がする。

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 今作は(メタな話だが)スカウトの高レアであるつむぎと零が中心となったストーリーではあるけれど,個人的にこの話の軸は,あの「ホッケーマスク」の舞台の当事者である2人――あの日の舞台の上の空気を知る北斗と渉が,“記憶を思い出として昇華した”ことにあるように感じる。渉だけが受け入れたのではなく,北斗が記憶の底にしまい込んだだけではなく,2人にとって今のこのタイミングだったからこそ,過去の「ホッケーマスク」を眠らせ,新たに生まれ変わらせることができたのかもしれない。

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 もう一つ印象的だったのが,「あんスタ!!」によく登場するキーワード「たった1人にでも求められれば応えるのがアイドル」だ。今回北斗が渉に「どうして笑えるのか、受けいれられるのか。俺にはまったくわからなかった」と言いながらも,「だけど。望んだことなら、これが願いだというのなら――叶えてやろう」と,仮面をつけて舞台に上がることを決意する。アイドルとして,エンターテイナーとして,先輩から後輩に想いが受け継がれたのだと感じ,胸が熱くなってしまった。

 なお,今作のサブタイトルである「時の花を挿頭に」は,ことわざとしても使われている。その意味は,その季節に咲く花を飾るのが良いことから,時流に乗って生きるのが世渡りのコツというもの。これがそのままの意味であれば,つむぎや零がやった「お金をかけずに流行を作る」という行動にピッタリではあるのだが,今作においては「過去にこだわらず,流れに乗って生きるのもまたいいものだ」の意味も込められているような気がした。アイドルたちは皆,一つの場所にとどまらず,常に成長して先へ進んでいる。


ストーリーピックアップ
「Wander!ブラックバニー in UNDERLAND」

開催期間:2021年4月30日〜2021年5月9日(Basic)
2021年4月30日〜2021年5月8日(Music)



――あらすじ――

 ボールが頭に当たり,記憶を失ってしまった天満 光。Ra*bitsが参加するライブを控えたメンバーは,光の記憶を取り戻すために奮闘する。そんななか,ライブの内容が考えていたものと異なり,ダークな世界観であることが判明する。<全15話/シナリオ:西岡麻衣子(Happy Elements株式会社)>

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◆ストーリーのここをチェック!

女性に間違われた仁兎なずなと○○ガード
 記憶を失った天満 光が,紫之 創と仁兎なずなを女性と見間違え,なずなに触って性別を確かめようとするシーン。「前にもやられた!」となずなが訴えるが,そのエピソードは「!」の【追憶*マリオネットの糸の先】で見られる。ちなみにこのときは光だけでなく,なずなに初めて会った創と真白友也も,なずなを女性と勘違いしていた。

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天満 光がアイドルになった理由とは
 今作【ブラックバニー】で,光がアイドルになった理由が「どんなに速く走れても車には追いつけないけど、歌なら一瞬で世界中に届けることができるから」だったと語られていたが,こちらのエピソードは「!」の【挑戦!願いの七夕祭】【エール*広がるハッピースプリング】で読める。なお,光自身のアイドル観やアイドルであることへの向き合い方は,「!」の【スカウト!BADBOYS】やその前日譚である真白友也キャラストーリー「良い子悪い子普通の子」もチェックしておくと良いかと思う。

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池に引きずり込む深海奏汰
 空中庭園にある池で,水浴びをしている河童……ではなく深海奏汰。今作で彼が光を羽交い締めにし,池に引きずり込むシーンがあるが,これを見て思い出されるのは【スカウト!サマースノー】である。【サマースノー】では,「ESには水の中に引きずり込んでお金を要求する妖怪が出る」という噂を聞いた朔間 零が噂の元を辿っていくと,その正体は奏汰であったことが分かるのである(奏汰が経営を任されている水族館がピンチだったからという理由)。

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観客のいないライブの話
 記憶を失った光が夢ノ咲学院の講堂を訪れ,悔しさや怖さの感情を思い起こすシーン。ここで創が話す「観客がプロデューサーと明星スバルだけのライブ」とは,言わずもがな「!」のメインストーリー第一部の【S2】を指す。このライブは紅月とRa*bitsの対戦だったものの,先攻の紅月のステージを見終わった観客のほぼ全員が帰ってしまったのである。なお,Ra*bitsはこれより前に【A1】(結成したばかりのユニットか,新入生のみが参加できるドリフェス)ステージには立っているため,このときの【S2】はデビュー戦ではない。

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◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感

 今作【Wander!ブラックバニー in UNDERLAND】は,新曲として発表されたRa*bitsの「FALLIN' LOVE=IT'S WONDERLAND」のMVに驚いた人も多いのではないだろうか。いや毎回どれも素晴らしいMVばかりなのだが,この曲は“黒ウサギ”になったRa*bitsが,かわいらしくもちょっと小悪魔的な,ダークな魅力が炸裂していたからだ(最高でしたね)。

 今回は光がフィーチャーされた話だったので光について語りたいと思うが,筆者も再三言っているように,彼にはとてつもないポテンシャルがある。今年度に入ってESに所属してから,光はドラマで“いけめん”を演じているという話をしているけれど,これを聞いて「キャスティングしたディレクター,分かってるじゃないですか……」とニヤリとしてしまったファンは少なくないはずだ。

 今作ではそんな光が,ふとしたアクシデントから一部の記憶を失ってしまう。これ自体,本人はあまりおおごとに思っていなかったようだが,【ワンダーランド】(実は【アンダーランド】であることが後に発覚)ライブを控えていたRa*bitsのメンバーたちは,どうにか彼をステージに上げるよう奮闘する。だが光は縛られるのが嫌いなタイプ(かつ,そのときにやりたいことをやりたいタイプ)だからなのか,すぐにレッスンを抜け出し,皆を戸惑わせてしまう。

 そうした騒動もありつつどうにかステージへの準備を進めていると,一つの問題が発覚する。Ra*bitsならではの「かわいさ」で勝負できるライブかと思いきや,ダークな面も表現する必要が出てきたのだ。リーダーとしてユニットのイメージを大事にしたい真白友也は,出演を見直すべきかと考える。どうしたらいいかと相談し合うメンバーのなかで,光は「何でふたつ(※「かわいい」と「ダーク」な面のこと)あっちゃ駄目なの?」と疑問を呈す。そして,きっぱりとこう言うのだ。

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 このシーンを見て思い出したのが,「!」の【十五夜*玉兎跳ねるムーンライト】だ(この話もぜひ今作の補足としてチェックしてほしい)。そこでは,あるきっかけで紅月とRa*bitsが【お月見ライブ】に出演することになり,一同は企画出しの打ち合わせをする。そのなかで光は,「月でライブをしたい」と元気よく手を挙げる。その物怖じしない姿が爽快であるとともに,「(アイドルとしては)常識からはみだすくらいでちょうどいい」(蓮巳敬人)と感じさせてくれたのだ。

 筆者がとりわけ好きな光のセリフに,こんなものがある。

「に〜ちゃんが進路を決めて、『よぉいドン』って言ってくれたらどこまでだって行ける
 創ちゃんと友ちゃんも、オレが道を外れそうになったら手ぇ引いてくれる」


「だから安心して、全速力でダッシュできるぜ! どこに行けばいい? それだけ決めて! オレ、みんなが転ばないように先に行って凸凹道を均してくるぜ!」

「!」 【スカウト!BADBOYS】より
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 天真爛漫にダッシュして,先へ先へと走る光がいて,皆を気遣う優しい創がいて,リーダーとして皆を守ろうとする友也がいて,そんな3人を見守るなずながいる。誰か1人欠けてもそれはRa*bitsではないし,この4人だからこそまっすぐゴールに向かっていけるのだと思う。筆者的に今作【ブラックバニー】は,“道から少しはみ出しそうになった光を皆が見つけた話”だと捉えているのだが,この先に誰かがつまずくことがあったとしても,彼らならきっと大丈夫なのだという安心感があることに気づいた。Ra*bitsは最初から“尊い”ユニットだったけれど,その愛おしさはますます深まるばかりだ。

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 第24回記事もお楽しみに!

■たまお(ライター)■

 エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」「ブラスタ」など。

Twitter(@tamao_writer)


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