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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第20回。スカウト!スプリングベッド,投影★心を映す幻灯機,スカウト!RELOADED,ショコラ♥甘風そよぐプリマヴェーラを語る
Happy Elementsがサービス中のアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」のストーリーを紹介する記事の第20回では,「スカウト!スプリングベッド」「投影★心を映す幻灯機」「スカウト!RELOADED」「ショコラ♥甘風そよぐプリマヴェーラ」の4本を取りあげる。本記事では,“知っているとストーリーをより楽しめるポイント”の解説と,筆者の感想や考察をお届けする。記事では詳細なネタバレは控えているが,できるだけ各ストーリーの読了後に読むのがおすすめだ。
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「あんさんぶるスターズ!!Music」公式サイト
ストーリーピックアップ
「スカウト!スプリングベッド」
開催期間:2021年3月14日〜3月30日
――あらすじ――
入院したプロデューサーのお見舞いに駆けつけたスバルは,病室に置いてある見舞いの品のなかから「あなたを許す」という花言葉を持つネモフィラのハーバリウムがあるのを見つける。誰からもらったのかと尋ねるが,プロデューサーは「秘密」と答えるだけ。「あなたを許す」とはどういう意味なのか,気になって仕方ないスバルは,同じく病室でハーバリウムを見た南雲鉄虎と,花に詳しい紫之 創とともに真相を探ることに。<全8話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)>
◆ストーリーのここをチェック!
“プロデューサー”の入院話と現在の環境
本作【スプリングベッド】は,Trickstarによる「BIGBANG」開催からしばらくあとの春のストーリーである。プロデューサーは【新星団★輝きのBIGBANG!】でもメンバーに体調を心配されていたが,結局入院することになってしまったようだ。これまでの記事で解説したとおり,プロデューサーは昨年度の秋にも過労で入院し,仙石 忍(流星隊)や三毛縞 斑(MaM)が中心となって,アイドルたちがお見舞いライブを行っている(「!」の【金色の風*励ましのウィッシングライブ】より)。
昨年度は,夢ノ咲学院内で「男子ばかりのアイドル科のなかで,たった一人のプロデューサーである女生徒」という立場だったが,アイドルたちが主な活動の場をESに移した今は,学院のプロデューサー科には多数の生徒が入り,プロデューサーはESで「P機関」(夢ノ咲学院教師の佐賀美 陣,椚 章臣,現役アイドルの氷鷹誠矢らが所属)にも籍を置いている。
夢ノ咲学院の制服について
夢ノ咲学院のアイドル科は,ネクタイとジャージの色が学年で異なっている。ただし同じ色を3年間着用するわけではなく,学年ごとに色が固定で,1年生は赤,2年生は青,3年生は緑と決まっているようだ。下記の画像を見ると分かるように,南雲鉄虎は昨年度まで赤いネクタイをしていたが,2年生に進級した今は青いネクタイに変わっている。となると,在校生が卒業していく先輩にネクタイやジャージをもらって身につける……なんてこともあるのかもしれない。エモい。
受け継がれた称号
今作で明星スバルは,天祥院英智から“称号”をもらったと語っているが,その話は「!」の【バトンタッチ!涙と絆の返礼祭】で読める。このストーリーでは,英智が「(姫宮)桃李が育ちきるまで預けたい」と,スバルに「トップアイドル」の称号を譲る。ここでのやりとりは,「!」のメインストーリー第一部でのスバルと英智の会話を思い出すと,この上なく美しくけじめがついたシーンだと感じられる。英智は最初の春の【DDD】でスバルたちに「君たちに会えて良かった」と言い,卒業となるこの話で「生まれてきて良かった」とほほ笑むのだ。あのときスバルは,英智から“称号”とともに,そうした想いも受け止めたのかもしれない。
南雲鉄虎の“漢”らしさ
後輩の相談に乗る鉄虎が,紅月に対する憧れがあったと話すシーン。彼は夢ノ咲学院入学当初,先輩の鬼龍紅郎に憧れ,紅月への加入試験を受けたことがある。残念ながら加入は叶わなかったのだが,過去の自分の苦しみを新人相手にも包み隠さず言えるところが,鉄虎の人間としての大きさや,男らしさの一面の表れのように思う。なお,「流星隊N」のその後は,過去記事で感想を述べているので参考にしてほしい。
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「あんスタ!!」ストーリー紹介連載第15回。SHUFFLE×白雪たちのMerryXmas,スカウト!丑参り(前編),変身!星々を繋ぐコメットショウを語る
Happy Elementsのアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」。そのストーリーを紹介する連載第15回では,「SHUFFLE×白雪たちのMerryXmas」「スカウト!丑参り(前編)」「変身!星々を繋ぐコメットショウ」の3本を取りあげる。
紫之 創の“お兄ちゃん”
天祥院英智を「英智お兄ちゃん」と呼ぶ創。これは昨年度,紅茶部での活動をとおして英智と親しくなるうち,英智からそう呼んでほしいと求められて以来のものである。ちなみに創は3人きょうだいの長男なので,彼自身が「お兄ちゃん」だったりする。彼には年上のきょうだいへの憧れがあるのか,昨年度はプロデューサーを「○○お姉ちゃん」と呼ぶことがあった。また,今回も仲の良さをみせるスバルとは,昨年度の夢ノ咲学院で,校内アルバイトを通じて知り合ったのが始まりらしい(「!」のメインストーリー第一部より)。
逆先夏目の“五奇人”としての活動とは?
夏目はプロデューサーのお見舞いで,「『五奇人』を伝えるための活動」について語っている。この活動は,【踏み出す行き先/ネクストドア】【白昼夢*微睡みのユーサネイジア】【投影★心を映す幻灯機】など,いくつかのストーリーで触れられている。そして,秋ごろのストーリー【一戦!矜持示す天下布武】で,五奇人でありSwitchの夏目とKnightsの朱桜 司らのニューディ勢力,それに反抗する者たちで,夢ノ咲学院は微妙に内戦状態にあったことが明らかとなっている(その後,内戦は終結した模様)。このあたりの流れは,いずれぜひ詳しく知りたいところだ。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
先ほども解説したとおり,夢ノ咲学院における昨年度のプロデューサーは「たった1人のプロデューサー科の生徒であり,女性」という極めて特殊な立場だった。だが,もともと才覚があったのか,もしくは本人の努力の賜物か,彼女はやがて,あちこちのアイドルたちから引っ張りだこの“名プロデューサー”となった。何十人といるアイドル一人一人に寄り添い,輝かせるプロデューサーの立場は,「そりゃ入院もしますよね……」な多忙さだったろう。
年度が変わり,夢ノ咲学院のプロデューサー科には多くの生徒たちが入った。そうしてプロデューサーは,前年度とはまた別の意味で“特別”な存在となる。多くの新人プロデューサーにとって,「学院の有名アイドルたちがこぞって頼りにする……」「あの【SS】で優勝を勝ち取った……」という,憧れと尊敬の的になったのだ。だが,そうした羨望はときとして“妬み”に転じる場合がある。
そういう意味で言えば,アイドルたちも同じなのかもしれない。今回の話で,プロデューサーがそうした気持ちを向けられていたと判明したわけだが,アイドルたちにしても,輝けば輝くほどネガティブな視線が生まれてしまうのは否定できない。それを思うと,どうか彼らがそうしたものに傷つくことがないようにと祈らざるを得ない。他人の感情によって生まれる傷は,受けた本人にしか分からない痛さがあるから。
【スプリングベッド】では,スバルがプロデューサーと「たわいない会話」を取り戻す。人と人との距離を縮めるのは,いつだって“ちゃんと向かい合って話をすること”だと筆者は考えている。文字でも電話でもなく,できればお互いの顔を見て,直接声を聞くことが。ハーバリウムの主とプロデューサーも,ここのところ少しだけ遠慮してしまっていたというスバルも,会話によってお互いの距離を縮められたのだと思う。余談だが,プロデューサーにハーバリウムを贈った人は,よく考えればスバルや鉄虎たちよりも先に彼女のもとを訪れていたのだ。もしかしたらその人は,少しでも早く今の気持ちを伝えたかったのかもしれない。
アイドルたちもプロデューサーも,我々の想像もつかないほど目まぐるしい毎日を送っているだろう。けれどそんな日々のなかでも,そばで咲く小さな花に気づくことができる。そういう彼らをとても,いとおしく思う。
ストーリーピックアップ
「投影★心を映す幻灯機」
開催期間:2021年3月15日〜2021年3月24日(Basic)2021年3月15日〜2021年3月23日(Music)
――あらすじ――
秋のある日,明星スバルの飼い犬の大吉が掘り当てた「幻灯機」をもらった春川 宙。そんな宙は,多忙そうな青葉つむぎや逆先夏目に,考えていることをなかなか言い出せないでいた。その様子に気づいた夏目は,幻灯機を修理しようと考える。<全15話/シナリオ:日日日>
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Switchが行った【盂蘭盆会】
逆先夏目のセリフに出てくる【盂蘭盆会】とは,新章のメインストーリー第一部に登場する,Switchが主催したドリフェスだ。【盂蘭盆会】はSwitchが新人たちの出演料などを負担し,リストラされかけているアイドルを救済するためのイベントだった。だが,その【盂蘭盆会】を区切りにしてアイドルをやめてしまった者たちも多く,夏目は彼らを救えなかったことを後悔している様子だ。なおメインストーリーでは,【盂蘭盆会】で引退したアイドルたちが,報酬をALKALOIDに寄付していた事実も明らかとなっている。
春川 宙が持つ“Switch人形”
今作で宙が持っている人形が最初に登場したのは,「!」の【迷い星*揺れる光、プレアデスの夜】である(【プレアデス】では逆先夏目の人形のみ登場)。これは,夏目の多忙によりSwitchとしての活動ができず寂しがる宙に,つむぎが一晩で(!)作ってあげたもの。というか今確認していて気づいたのだが,【プレアデス】で持っていたときの人形とは衣装が異なっているのが分かる(ちゃんと新しい衣装になっている)。素晴らしいですね……。
ニューディの「所長くん」とは?
Switchが所属するニューディことニューディメンションは,新興の芸能事務所だ。その設立の経緯は「!」の【駆け引き◆ワンダーゲーム】で語られている。ニューディは,つむぎたちと同年代の人物(おそらくそれが「所長くん」)により「熱意だけで創られた感じ」らしく,つむぎは就職活動の際にその人物に出会い,運営を手伝うことになったようだ。なお【ワンダーゲーム】をよく読むと,実はニューディには,業界に関わる者たちのいろいろな思惑や狙いがあったことも分かる。いつか「所長くん」が登場する日はくるのだろうか……?
「アイドルとは何か?」
今作で,宙に「いちばん『アイドル』という概念を体現している」と言われた明星スバルは,「よく言われるし自分でもわりとそう思うし努力してるけど,言葉で説明できるかどうかは別」と返す。そして,夏にALKALOIDの天城一彩に「アイドルとは何か?」と聞かれ,困ったと本音を明かしている。そのエピソードはメインストーリー第一部で読めるが,その際のスバルの答えは,自分も一彩も,そしてキラキラ輝くものは全部だ,というものだった。
宇宙生物「モジャ眼鏡」
夏目はよく,つむぎをその髪型から「モジャモジャ」「モジャ男」「毛玉」などと呼ぶ。今作ではついに「宇宙生物『モジャ眼鏡』」なるキャラクター(?)になっていたが,これはつむぎ本人も言うとおり,夏目なりの親しみが込められているように感じられる。つむぎが髪を伸ばしている理由は,「!」の【追憶*集いし三人の魔法使い】や【スカウト!ビブリオ】など,いくつかのストーリーで「願掛け」だと話されていたが,先ほども紹介した【駆け引き◆ワンダーゲーム】のラストの「夢、あるいは思い出」のシーンのなかで,何を願って髪を伸ばすようになったかが語られている。
ゴッドファーザーの遺産とゲートキーパー
つむぎが言う「最近は『ゴッドファーザーの遺産』や『ゲートキーパー』といったキナ臭い噂が増えている」という話。“ゴッドファーザーの遺産”は種類や数が多いらしく,いくつかのストーリーに登場している。たとえば,【バラエティとタッグ/ボギータイム】では,「ゴッドファーザーが抱えていた大量のテレビ番組」(これには【マーブルキャスト】や【ボギータイム】が含まれる)のことが,【秘宝紐解く/骨董綺譚】では,アイドル業界に由来する骨董品があったことなどが分かっている。なお,“ゴッドファーザー”たる人物そのものについては,過去記事で解説しているので参照してもらいたい。
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「あんさんぶるスターズ!!」アイドルたちの歩みと歴史を徹底解説。アイドル業界の始まりから新章までの流れをまとめてみた
Happy Elementsのアイドル育成ゲーム「あんさんぶるスターズ!!Basic/Music」の新章スタート後,初めての年末年始を迎えるにあたりアイドルたちの軌跡をひもとく解説記事をお届けする。新たにプレイを始める人はもちろん,すでにプレイしている人も,ストーリーを楽しむ際の参考としてほしい。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
Switchの単独箱イベ【幻灯機】は,彼らのお互いを想う心が,深い感動を呼ぶ一作だった。さっそく振り返ってみよう。今作では,何度か【ネクストドア】の話が出てくる。【ネクストドア】は作中における夏のストーリーで,共演したKnightsの月永レオによれば,Switchは「あいつら,何か『これから』って感じだなぁ。見てて冷や冷やするっていうか危なっかしいけど,ようやく準備が整ったっぽい」といった状態だった。新年度になって,夏目は「五奇人の末裔」として夢ノ咲学院を掌握し,つむぎは多忙を極めつつも事務所経営をどうにか軌道に乗せ,そんな2人に宙がついていく。ここからまた,新たなスタートを切ったイメージだ。
だがたしかに,それだけでは“準備”が足りなかったのだ。いま【ネクストドア】を読み返していても,夏目とつむぎの間には,(夏目が一方的な憎まれ口を叩いても)確固たる信頼関係が築き上がっていることは非常によく伝わってくる。そしてもちろん,宙と彼らの間にも強い絆はある。しかし,今のSwitchについてスバルが宙に言った言葉を聞いて,ハッとさせられたのも事実だった。
今作でつむぎが,宙を「他人の良い面を見つけ,肯定してくれる」と評価する。だが,「良い面だけ見るのもそれはそれで問題。汚い部分や醜い部分を抱えてこそ人間」とも語り,宙にもきっと“そういう部分”があるだろうと言っていた。宙は誰が見ても“良い子”だが,宙が他人の悪いところを見ようとしない,あるいは見ることができなかったのと同じように,宙自身の悪いところを他人に見せることもできていなかったのかもしれない。まるで,常に同じ面を見せて軌道を描いて回る惑星のように。
心に刺さったといえば,この夏目とつむぎのセリフも沁みた。今の彼らには,幼いころよりずっと強固になったつながりがあるが,それはあの混沌の時代を必死で生き延びて,お互いを知って少しずつ歩み寄りながら手に入れたものだ。大きな流れから“外れてしまった”2人だからこそ分かりあえることがあっただろうし,それを未来につなげていきかったのだろうと思う。
夏目が「幻灯機」の復活にこだわったのは,そうした夏目やつむぎの想いを形にし,宙への彼らの愛や信頼を,目に見える“証”にしたかったからだと思えた。その灯りで彩ることで,宙という星は自ら輝きはじめ,Switchはお互いを照らしあって光を放つ,三つの惑星になれたのだ。そして宙は,その光で目の前にいるみんなを照らす。彼のステージでの言葉を聞いて,文字通り心の中に光が当てられ,あたたかさに涙が出るような気持ちになった人も多いのではないだろうか。
かなり昔のとある記事で,筆者はSwitchを「つむぎが過去,夏目が現在,宙が未来の象徴のように見える」と書いたことがある(「!」のころの立ちポーズの指差しにもそのイメージがあった)。しかし今作では,宙の口から「『過去』を大切に拾い上げてくれるつむぎ」,「輝く『未来』を模索する夏目」,「自分(宙)が『現在』のSwitchを見せていく」という言葉があった。そして誰かが先頭に立つのではなく,彼らは等しく横に並び,手を取り合って進んでいくのだ。このとき,大好きな2人に両手をしっかり握られた宙は,生まれてから一番あたたかいぬくもりを感じたかもしれない。そうしてその光景を見た我々にも,その熱が伝わってきたような気がした。それは本当に,あまりにも優しくてすてきな誓いの光景だったから。
ストーリーピックアップ
「スカウト!RELOADED」
開催期間:2021年3月30日〜2021年4月14日
――あらすじ――
アイドルとしての「個性」を作るため,手品の練習をしていた真白友也。ところが,観客役になった瀬名 泉とつながれた手錠の鍵をなくしてしまう。その様子を目撃した仁兎なずなと深海奏汰は,あやしい動きの2人を救うため,ほかのアイドルを巻き込んだあるイベントを実行する。<全10話/シナリオ:日日日>
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いきものクラブ(アニマルズ/オーシャンズ)
今作【RELOADED】の冒頭,「いきものクラブ(アニマルズ)」代表の仁兎なずなと,「いきものクラブ(オーシャンズ)」代表の深海奏汰が,予算案をめぐって論争を繰り広げる。ペットがいるなど,動物になじみのあるメンバーが揃った「アニマルズ」には,なずな(うさぎ),日々樹 渉(鳩) ,明星スバル(犬),大神晃牙(犬),真白友也(動物に好かれる体質)が所属している。そして,夢ノ咲学院の海洋生物部が前身と思われる「オーシャンズ」は,奏汰,瀬名 泉,羽風 薫,神崎颯馬,仙石 忍がメンバーとなっている。奏汰,薫,颯馬の海洋生物部組は分かるとして,泉はもしやえび好きから……? そして忍は奏汰や颯馬との親睦からの入部なのだろうか……(※忍のペットはカエルである)。
「えび」をあいするひと,瀬名 泉&普通だけど普通じゃない真白友也
……と思ったら,泉に対する奏汰の認識もこれ(ひたすら「えび」をあいするひと)だったのが面白い。ちなみに泉の「えび好き」は,現在はTVアニメの公式プロフィールにて,好きな食べ物が「えび」であると確認できる。また,友也が寮の同室である礼瀬マヨイを「なぜか滅多に姿を見せない」と話しているが,2人の同室での様子や関係は,【スカウト!デッドエンドランド】や,風早 巽アイドルストーリー「週末の懺悔室」で読める。
L$と日本円の関係とは
今作で泉が「L$じゃなくて日本円で支払うと、損した気分になる」と話しているので,ここであらためてL$をおさらいしておこう。L$(読み:リッドル)が初めて登場したのはメインストーリー第一部で,白鳥藍良によって詳しく解説されている。それによると,L$はES内で流通している仮想通貨のようなもので,ES内の施設はだいたいL$を使って支払いができるらしい。円で払うよりは安いというL$は,日本円にすると1L$が100円くらいとのことだ。
「ほにゃららオブ・ザ・デッド」ってめちゃくちゃあるんですよ
ESビルの内部で,前代未聞のゾンビハザードが発生したという設定の,いきものクラブ・アニマルズとオーシャンズの運用予算をめぐる全面戦争【アイドル・オブ・ザ・デッド】。ゾンビと言えば「〜オブ・ザ・デッド」。「〜オブ・ザ・デッド」と言えば「ゾンビ」と言えるくらい,世の中には「〜オブ・ザ・デッド」と入ったタイトルの作品が多い(Wikipediaに専用ページがあるほど)。これは,ゾンビ映画の第一人者,ホラー映画の巨匠と謳われるジョージ・A・ロメロ監督の作品からくる,オマージュや伝統のようなものと言っていいだろう。ちなみに筆者の好きな「〜オブ・ザ・デッド」映画は,ゾンビコメディの「ショーン・オブ・ザ・デッド」です。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
真白友也と瀬名 泉が所属するRa*bitsとKnights。今作【RELOADED】では,泉が「世話した覚えは……なくもない」と言うとおり,昨年度の春の夢ノ咲学院の「学院祭」にて,バレエをモチーフとしたステージを披露した「!」の【跳躍*湖上のPrincipal】や,冬に行われた【ミステリーステージ】こと【対決!華麗なる怪盗VS探偵団】での共演経験がある。とはいえ,当時の友也と泉の間ではさほど印象的なやりとりはなかったので,今回は珍しい取り合わせと言えるだろう。というか,まったくの他人でもなく,知ってはいるけどさほど親しくはない間柄の人と手錠でつながれるのは,だいぶ気まずい出来事だったのは想像に難くない。
その想像のとおり,この2人,序盤の会話の噛み合わなさが面白……大変そうだった。会話のキャッチボールはおろか,そもそもの個性や考え方がかなりかけ離れているので,なかなかお互いに興味を持つところにまで至らないのだ。微妙な関係の人との会話あるある,である(余談だが,2人ともTrickstarに強い思い入れがある(?)人物がいるので,トリスタPネタが出れば盛り上がったのでは? という気はしなくもない)。
とはいえ,友也が「自分は『普通』で取り柄がない」と謙遜しつつも,周囲がどんどんおかしな状況になっていっても動じないところに,感心した泉が言葉をかける。
普段の泉はかなり“おっかないタイプの先輩”だが,自分とは違う才能を見抜き,そこを褒めてやる先輩らしさが光る。いろいろなストーリーで語られてきたとおり,この人はこう見えて,後輩を世話したり面倒を見たりするのが本当は好きなのだろう。
そして泉は,自分にも友也と似た悩みがあったと語る。周りの天才たちと自分を比べて落ち込んだが,たとえ自分に才能がなくたって成功はできるのだと(ここでの泉の「壊してしまった『武器』」とは,月永レオの存在を指すと思われる)。筆者からすれば,泉も友也も才能あふれるアイドルに変わりはないが,それは2人と同じ土俵に立っていないから言えることだ。彼らは常に,自分がどれだけの力があるのかと悩みもがきながら,高みを目指している。そうしてお互いについて話をしていた2人だったが,友也が起死回生の策を思いつく。
「あんスタ!!」のアイドルたちがなぜ輝いているかと言うと,「一人ではできないことも,誰かと手を取り合えば乗り越えられる」と知っていることが挙げられると思う。我々は,彼らのそういう“信頼”や“愛”といったつながりに心を動かされるのだ。そして,それはどんな関係であっても叶えられると,今作で友也と泉が証明してみせたと言えるかもしれない。
ところで今回は,実を言うと「印象に残った」という意味では,泉が放ったこのセリフに軍配を上げたい。きっと多くの人が(いい意味で)同じことを思っていたのではないだろうか……。
ストーリーピックアップ
「ショコラ♥甘風そよぐプリマヴェーラ」
開催期間:2021年3月31日〜2021年4月9日(Basic)2021年3月31日〜2021年4月8日(Music)
――あらすじ――
バレンタインの時期に実施される【ショコラフェス】が,ある事情で開催が保留になり,落胆する姫宮桃李。その事情に姫宮家が関係していることを知った天祥院英智は,伏見弓弦とともに策を練るのだが……。<全16話/シナリオ:木野誠太郎(Happy Elements株式会社)協力:日日日>
◆ストーリーのここをチェック!
新章でのfineの活動をおさらい
ここでは,ESに拠点を移してからのfineの活動をおさらいしていこう。
「!」 【Link♪ここから始まるシンフォニア】
→昨年度の返礼祭後,英智が入院する
→ESのこけら落とし(第2回【DDD】が行われる)
【Link♪ここから始まるシンフォニア】は新章の前のストーリーになるが,アイドルたちの拠点となるESビルや事務所の説明だけでなく,英智,渉の夢ノ咲学院卒業後の進路のほか,英智が本当はfineの解散を考えていたことなどが語られている。本作はfineの,そして夢ノ咲学院のすべてのアイドルたちにとってのグランドフィナーレであると同時に,これから始まる物語のオーバーチュア(序曲)でもある極めて重要なストーリーだ。
また,【プリマヴェーラ】で渉の「さんざん心配されていた私が『fine』に残っている」というセリフがあるが,その経緯は【Link♪ここから始まるシンフォニア】を読むと分かるはずだ。
【春雷*謳歌のテンペスト】
→ESに拠点を移す
→fineメンバーによる「英智デー」の制定
春ごろ,ESや周辺施設が発展していった影響で,近隣の商店などが潰れそうになった。そのうちの一つ,【プリマヴェーラ】に出てくる弓弦の知己である花屋については本作を参照。多忙な英智やプロデューサーの休息のためにメンバーが考えた「英智デー」もこちらで語られている。また【テンペスト】ステージは,昨年度の春の【フラワーフェス】で,英智が参加できなかったことを残念がっていた桃李による提案が元になっている。
【銀幕死闘の/桃源郷偶像拳】
→ESが専門の映画会社を興し,fineのメンバーが映画出演する
なお,そのほかのいくつかのストーリーで,英智が夏ごろに入院していたことが明らかとなっている(【降臨!紡ぎ始めるネヴァーランド】【スカウト!スパイTHEミッション】,衣更真緒アイドルストーリー「生徒会長の骨休め」など)。
「ショコラフェスの歩み」を解説!
作中における昨年度,夢ノ咲学院には【ショコラフェス】というイベントがあった。これはバレンタインの時期に行われ,一般の観客も入場できる「勝敗のない特別なドリフェス」で,学院のほとんどのユニットが参加したとされている。観客はすべてのユニットのライブに参加してスタンプを手に入れると,好きなユニットのアイドルたちが手作りした(一部,業者に依頼したユニットもあり)お菓子をもらえるというものだ。「!」では,以下の四つのストーリーを読むことができるが,これらはすべて,同じ1回の【ショコラフェス】の出来事である。
「!」 【感謝!ほろ苦ショコラフェス】
TrickstarとRa*bitsメイン。Knightsの鳴上 嵐が両ユニットにお菓子作りを指南。天満 光がある人にチョコレートを渡す計画を立てる。
「!」 【メルティ♥甘くほどけるショコラフェス】
KnightsとRa*bitsメイン。お菓子作りの話のほか,拾った猫“ショコラ”にまつわるエピソードも。朱桜 司と真白友也の衣装チェンジあり。
「!」 【デコレート♥深紅のショコラフェス】
UNDEADと紅月メイン。光の計画に協力したプロデューサーの行動が,乙狩アドニスや羽風 薫に誤解されてしまう。蓮巳敬人の「ばきゅ〜ん」(指ピストルver.)はこちら。
「!」 【マーブル♥心を込めたショコラフェス】
流星隊とValkyrieメイン。流星隊の5人もお菓子作りに挑戦するが,かなりのはちゃめちゃぶりで必見。また,お菓子作りにおいても完璧を目指す斎宮 宗はさすが。
fineの関係性について
学年やもともとのつながり的に,fineのなかでは「英智と渉」(同じ学年,かつて生徒会/五奇人として戦った関係),「桃李と弓弦」(主人とそれに仕える執事)というペアが印象的だが,異なる組み合わせも,いくつかのストーリーで描かれてきたので紹介しておこう。
英智と弓弦
筆者が彼らの組み合わせの面白さを最初に感じたのが,「!」の【爆誕☆五色に輝くスーパーノヴァ】だ。ここでは,流星隊のステージを見に遊園地を訪れた2人の会話がほほ笑ましい。また,彼らは「!」の【灼熱!南国景色とサマーバカンス】のやりとりもおすすめ。とある密命を与えた英智と,受けた弓弦の間の緊張感がたまらない。また,【スカウト!丑参り(後編)】では,弓弦が英智にホラー小説を貸すくだりが見られる。
渉と桃李
彼らは作中の昨年度の春,「!」の【誉れの旗*栄冠のフラワーフェス】で初めて出会った。ここでは桃李の名セリフが飛び出した特訓シーンが面白く,印象深い。桃李は,かつての英智の敵だった渉にはあまり懐こうとしなかったが,「!」の【決別!思い出と喧嘩祭】では桃李が肩車されるなど,少しずつ距離を縮めていった様子。何だかんだ言いつつも桃李が渉の才能を認めていることは,「!」の【羽ばたき!雛鳥と皇帝の凱旋】など多くのストーリーから伝わってくる。
◆筆者が選ぶ“心に残った言葉”とストーリー所感
今作【プリマヴェーラ】は筆者にとって,天祥院英智というアイドルの変化,そしてfineとはいかなるユニットなのかが,自分のなかでしっくりと腑に落ちたストーリーだった。まずは英智の話から。今さら理由を説明する必要はないかもしれないが,筆者は「あんスタ!!」の物語において,ある意味で英智こそが“確固たる主人公”の1人だと思っている。その意味とは「物語の本流をつくる」ものだ。我々の知る夢ノ咲学院の歴史は,まず英智が最初の革命を起こしたところから始まっている。昨年春にはTrickstarが革命を起こし,彼らが主人公となったストーリーが綴られるわけだが,アイドルたちは今や,英智が計画し作り上げた「ESというアイドルの理想郷」に籍を置き,活動している。“大きな流れ”はいつでも,この人の指揮下にあると言っていい。
ほんの2年ほど前,英智は真っ暗な闇の中にいた。誰もいない部屋の中で必死に「生きたい」ともがく彼の言葉は,今見ても心が締め付けられる。もちろん当時にも,彼の周りに人がいなかったわけではない。けれど彼自身が,差し伸べられる手を頑なに取らなかった(あるいは届かなかった)だけのようにも感じられる。
ほんのささいなシーンだが,今回の【プリマヴェーラ】で,英智が寮で同室の白鳥藍良に紅茶を振る舞い,本音を打ち明ける場面が好きだ。かつて孤独という寒さに震えていた彼が,今はこんなにあたたかい空間にいると感じられるからだ。fineという何ものにも代えがたい仲間でもなく,直接ぶつかり合うライバルなわけでもない,“同室の友人”にも,英智は心の中を見せられるようになったのだなと。
彼がそんなふうに変われたのは,言うまでもなく“本当は,1人ではなかった”からだと思う。彼を愛するたくさんの人がいて,運命を共にするユニットの仲間がそばにいたからこそだ。それはきっと,fineのほかのメンバーにとっても同じかもしれない。
【プリマヴェーラ】では,fineの個性や,イメージもまた新たに浮き彫りになったように感じられた。fineが「意外とお互いのことを知らない」事実だ。ただしそれは,「お互いに知らないことがあるのを知っている」意味でもある。作中で桃李の口から語られた,渉に対する「隠し事があるから相手のことを信用できないとか言ってたら日々樹センパイはどうだっていうの? もう頭から爪先まで謎たっぷりだよ!」のセリフには,思わず笑いがこみ上げてしまった。おっしゃるとおりである。だけど本当に,どんなに親しい家族,恋人,友人,仲間だって,100%知るなんて不可能なのだ。だからこそ,関係を続けていく上で大切なことがある。それこそが“信頼”で,fineは,お互いを「信じる」強い気持ちが4人を繋いでいるユニットではないか――そんなふうに感じた。
この記事を書くにあたり,ステージ名の由来となったボッティチェリの絵画「プリマヴェーラ」についてもあらためて調べてみた。もともと筆者も好きな絵ではあったけれど,よく見るとたくさんの新しい発見があった。愛と美の神がいれば,花の神あり,番人あり,天使あり。実は今の我々が知るこの絵は,経年劣化により,本来のものよりかなり退色してしまっているという。本当なら,どれだけ色鮮やかな景色が描かれていたのだろう。けれどその景色は,fineの4人によって再現されているといえるかもしれない。あの美しく愛しい,春の訪れを告げるステージで。
第21回記事もお楽しみに!
■たまお(ライター)■
エンタメ系フリーライター。音楽・ゲーム業界などでの社会人生活を経て,作品やキャラの素晴らしさを文章で伝えるためにライターへ転向。現在4Gamerにて「あんさんぶるスターズ!!」のストーリー解説記事を連載中。このほか追いかけ中のタイトルは「アルゴナビス」「スタマイ」「ツイステ」「ヒプマイ」「パラライ」「刀剣乱舞」「A3!」「まほやく」「ブラスタ」など。
◆Twitter(@tamao_writer)
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