2018年12月13日にセガゲームスからPS4用ソフト「
JUDGE EYES:死神の遺言」(以下,ジャッジアイズ)が発売される。
本作は「リーガルサスペンス」と題した探偵を主人公とするゲームで,龍が如くスタジオの完全新作だ。主人公・八神隆之役の
木村拓哉さんをはじめ,
中尾 彬さん,
谷原章介さん,
ピエール瀧さん,
滝藤賢一さんといった実力派の俳優たちがキャストとして出演することでも注目を集めている。
探偵を題材にしたゲームということで「尾行」や「変装」といったさまざまな要素が出てくるジャッジアイズだが,実際のところ「探偵」というのはどのような職業なのだろうか。
映画やドラマ,小説などではメジャーな存在だが,その実態は知っているようで,よく知らない。何となく想像はできるものの,「これだ!」というはっきりとした回答は思い浮かばないという人が大多数ではないだろうか。
そこで,今回4Gamerは
「実際の探偵ってどんな仕事なの?」といった疑問を晴らすべく,実在する探偵事務所にコンタクトを取ってみた。
今回お邪魔したのは,埼玉県川越市に本社を置く
「原一探偵事務所」だ。原一探偵事務所は今年で創業44年をむかえる老舗の探偵社で,関東圏を中心として全国に18の拠点を持つ。また,TBS「徳光和夫の感動再会!"逢いたい"」,TBS「悪者は絶対許さない!! 実録!犯罪列島」など多数のテレビ番組で取材協力を行っており,調査力に関しても折り紙付きだ。
原一探偵事務所 埼玉本社の外観。閑静な街並みにひと際目立っている
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探偵事務所と聞くとちょっとダークなイメージが浮かんでしまうが,開放的で明るいエントランスだ
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調査車両はなんと100台以上。変装もするし,ときにはドローンも飛ばす
今回の取材では,現場に出て調査を行っている調査部次長 特別起動追跡班の
若梅秀孝氏と,依頼者から相談を受けるチーフプランナーとして活躍する
高野俊之氏に対応してもらえた。
ジャッジアイズでは,尾行や,変装,証拠写真の撮影,といった調査アクションが出てくるが,実際の探偵は「浮気調査」「行方不明者の捜索」「故人のお墓探し」「会社関係の行動調査」といったさまざまな調査を行っているという。
まずは
「特殊車両」と呼ばれる尾行や張りこみに使う車両を見せてもらえたので紹介していこう。
案内された先に止まっていたのは一台の宅配バイク。一見すると何の変哲もないただのバイクだが,リアボックスを開けると,変装用の衣装などの張りこみ用アイテムが収納されている。
変装衣装を着ると本物のピザ屋にしか見えない
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しかも,この車両の秘密はこれだけではない。リアボックスをよーく見ると,
隠しカメラが仕掛けられているのだ。張りこみでは,こういったカメラ付きの車両を屋外に止めておき,離れたところから様子を確認するのだという。
トッピングのブラックオリーブに紛れる形で巧妙に隠されたカメラ。至近距離で目を凝らさなければ見分けがつかない
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宅配バイクのほかにも,電気工事の車に偽装した車両も見せてもらった。外見だけでなく,中に積んである物品も“本職そのまま”といった感じで,これが探偵の張りこみ用車両だと言われてもまず分からない。
作業着というのは,持っていくアイテムを変えるだけで,電気工事の作業員だったり,土木作業員だったりとさまざまな職業に早変わりできる非常に優秀な衣装だそう。張りこむ場所や状況に応じて巧みに使い分けることで,違和感なく周囲に溶け込めるのだという。
道具の汚れ方もまるで本当に作業で使われているかのよう。積載されている三角コーンをよく見ると,カメラをセッティングするための穴が開けられていた
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こちらはモニター用の車両。仕掛けたカメラを通して張りこみを行う。折り畳み自転車も用意されており,いざというときの機動力も確保
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原一探偵事務所は,あらゆる状況に対応するために尾行や張りこみに使用する
車両を100台以上も所有しており,本社周辺に4つの駐車場を保有し,さらに整備工場も併設されている。都内ではなく,川越に本社を構えているのは,これらの車両を管理するためなのだ。
駐車場に置かれている車両の数々。住宅街からホテル街まで,どんな場所にもなじめるようさまざまな種類の車が用意されている
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追跡用の車両は車だけでなくバイクも用意。車の渋滞などが頻発する繁華街では,主にバイクを使った尾行が行われる
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本社に隣接する整備工場には板金加工の設備もあり,調査向けの車両改造をここで行っている。また,自社の車両整備のほかに,一般の人からの整備依頼も受け付けているという
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探偵といえば,
「調査用の秘密道具を持っている」というイメージを持っている人も多いのではないだろうか。ジャッジアイズでは,主人公の八神が無線機を使ってやり取りする様子や,ドローンで写真を撮影する様子などが見られるが,実際の探偵はどんな道具を使って調査を行っているのか。いろいろと見せてもらったので,紹介していこう。
調査に使用する小型カメラ。フィルムカメラの時代は,大きな一眼レフカメラを抱え,明るさに合わせて適切な写真が撮れるようにレンズをいくつも持っていたという。そのため,高性能な小型デジタルカメラが出たときの衝撃はすさまじく,以後の探偵の調査を大きく変えたのだそう
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写真にあるアイテムはすべてカモフラージュカメラ。一見すると分からないが,いろいろな箇所にレンズが仕掛けられている。これらは市販されているものだが,使いこなすにはそれなりの訓練が必要で,素人が使ってもまず気づかれるとのこと
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タバコ箱型カメラ。箱の横にレンズ穴が開けられている。喫茶店などで尾行対象者が撮影できる場所に席を取ったら,さりげなく置いて録画ボタンを押す
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 こちらの腕時計は,文字板の12時の部分にカメラが! |
 ドラマなどでもよく見るピンホールカメラが着いたペン |
調査では,無線での連携が特に重要で,原一探偵事務所では警備会社や警察が使っているものと同等レベルの業務用無線を使用しているという
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スマホ用サーモカメラは,実際の尾行現場のほかにも,盗聴器や隠しカメラを探すときに使われる
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実は取材時に案内された会議室の一角にもカメラが仕掛けられていた。この写真のどこかにあるのだが,読者の皆さんはお分かりだろうか
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正解はティッシュ箱のシール部分。DESIGNとプリントされた文字の「SIG」部分の上に注目(画像をクリックするとマーカーが表示されます)
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ジャッジアイズには,調査追跡用の道具としてドローンが登場するが,原一探偵事務所でも機材として所有しているという。もともとはゲームのように追跡や調査での使用が検討されていたらしいが,ドローン絡みの事件によって規制が強まり,街の中で飛ばすという用途では使えなくなってしまったそうだ。現在は,行方不明者の調査で,人が立ち入れないような場所を探すのに使われているとのこと。
こういった調査道具は日常生活ではあまりお目にかかる機会のないものだし,どこか頭の片隅で「フィクションだけの出来事」のように思っている人は多いのではないだろうか。筆者もその1人なのだが,実際に道具や偽装車両を見せられると「本当にそんな世界があるのか……」と衝撃を受けてしまった。
ジャッジアイズの冒頭では八神が変装して張りこみを行っている場面があり,作業着を着て変装するシーンもある。脚色はかかっているものの,現実でもこれに近いことは行われているのだ
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次のページでは,現役探偵として活躍する若梅氏と高野氏へのインタビューをお届けする。