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第2世代のゲーマー向け超小型PC「GPD WIN 2」レビュー。3D性能に過度の期待は禁物だが,「それ以外」は従来比で圧倒的によくなった
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印刷2018/03/12 00:00

レビュー

3D性能に過度の期待は禁物。ただしそれ以外の完成度は大きく向上した

GPD WIN 2


 クラウドファンディングサービスIndiegogoにおける出資受け付けの締め切りが今週中に迫る,ゲーマー向け超小型PC第2弾「GPD WIN 2」。4Gamerでは先に,Shenzhen GPD Technologyから入手した評価機の外観レポートをお届け済みだが,あれから1か月の間,ゲームでじっくり試してきた。筆者(BRZRK)による各種ゲームでのテストに加え,格闘ゲームの評価部分はハメコ。氏の協力をもらいつつ,そのインプレッションをお届けしたいと思う。

GPD WIN 2の評価機
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 なお,今回テストしたGPD WIN 2の主なスペックは以下のとおりとなる。

●GPD WIN 2の主なスペック
  • CPU:Core m3-7Y30(2C4T,定格1GHz,最大2.6GHz,L3キャッシュ容量4MB)
  • メインメモリ:PC3-15000 LPDDR3 SDRAM 8GB
  • グラフィックス:HD Graphics 615(実行ユニット数24基,定格300MHz,最大900MHz)
  • ストレージ:SSD(Serial ATA 6Gbps接続,容量128GB)+microSD(最大容量未公開)
  • パネル:6インチ,解像度1280×720ドット,10点タッチ対応
  • 無線LAN:IEEE 802.11ac,Bluetooth 4.2
  • 有線LAN:なし
  • 外部インタフェース:USB 3.0 Type-C×1,USB 3.0 Type-A×1,Micro HDMI出力×1,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子×1
  • スピーカー:内蔵2chステレオ
  • マイク:内蔵
  • カメラ:非搭載
  • バッテリー容量:4900mAh×2
  • ACアダプター仕様:5V==3A,9V==2.67A,12V==2A
  • 公称サイズ:162(W)×99(D)×25(H)mm
  • 重量:約460g
  • OS:64bit版Windows 10 Home
  • 価格:899ドル(※税別,予定)
  • 保証期間:1年間

ゲーマー向け超小型PCの第2弾「GPD WIN 2」が4Gamerにやってきた! まずは従来モデルと外観を比較してみる



さっそくゲームを動かしてみる


GPD WIN 2でデバイスマネージャーを開いたところ
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 2月13日の記事でお伝え済みなので,それこそサイズ感やSSDの仕様といった,「GPD WIN」に対してGPD WIN 2のスペックがどう優れているかという話は基本的に繰り返さないが,それでも,初代GPD WINでは「Atom x7-Z8700」だったプロセッサが,GPD WIN 2では「Core m3-7Y30」に変わっている点は触れておく必要があるだろう。それに合わせて,統合型グラフィックス機能も,

  • 初代GPD WIN:HD Graphics(実行ユニット数16基,定格200MHz,最大600MHz)
  • GPD WIN 2:HD Graphics 615(実行ユニット数24基,定格300MHz,最大900MHz)

へと,大きく向上している。「元が低すぎただけ」と言うのは簡単だが,それでもすべてのスペックが1.5倍に向上したというのはインパクトがあるところで,それだけ3Dゲームを満足にプレイできる可能性が上がっているとは言えるはずだ。

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 というわけで今回は,GPD WIN 2で実際にゲームをプレイしつつ,本体側のHDMI端子からミラー(=クローン)出力して,それをAVerMedia Technologies製キャプチャデバイス「GC550」から録画することで,「ゲームをどの程度快適にプレイできるのか」を確認することにした。
 今回テストに用いたゲームタイトルは以下のとおりで,テストに用いた解像度やグラフィックス設定はゲームごとにお伝えする。


テスト中のBRZRK氏。USB 3.1 Gen.1 Type-AポートにUSB―LANアダプターを接続して,ワイヤードでインターネットに接続した
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 なお,取得予定とされている日本の技術基準適合証明マークは評価機にないため,データのダウンロードやオンラインでのゲームプレイにあたっては,USB 3.1 Gen.1 Type-A接続型1000BASE-T LANアダプターでネットワークにつないでいる。この点はあらかじめお断りしておきたい。

 また,これは初代GPD WINから変わっていない「残念なポイント」としてあらかじめお伝えしておく必要があるのだが,6インチワイド液晶パネルの解像度は1280×720ドットとなるため,2D系タイトルでゲーム側の解像度が1024×768ドットを要求するもののうち,縮小表示に非対応のものはフルスクリーンで実行することができない。
 その場合は割り切ってウインドウ表示させるほかないわけで,この点は仕様上の制限事項として押さえておく必要があるだろう。

こちらはSteam版「イース・オリジン」の起動を試みたところ。要求スペックを満たしていないとして実行できなかった
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 もう1つ,「そもそもIntelの統合型グラフィックス」なので,単体GPUと比べて高い3D性能は期待できないうえ,Intelのグラフィックスドライバ固有の「最新タイトルに対する互換性の低さ」からも逃れられない。「起動しない原因は常にIntelの統合型グラフィックス機能とグラフィックスドライバにある」とまでは言わないが,一般的なゲーマー向けPCと比べて,Direct3Dなどのエラーでゲームが起動しない可能性がどうしても高くなる点は,初代GPD WINから変わらずだ。

 一方,初代GPD WINから変わった要素としてお伝えしておく必要があるのは,本体ゲームパッド部の中央にあるスライドスイッチで指定できる動作モードが,

  • 初代GPD WIN:DirectInputモード,XInputモード,マウスモード
  • GPD WIN 2:ゲームパッドモード,マウスモード

GPD WIN 2のスライドスイッチは,ゲームパッドモードとマウスモードを切り換えるためのものになった。ゲームパッドを使う前提のゲームをプレイするときは,マウスモードで起動させてからゲームパッドモードに切り換えるイメージだ。切り換えには2〜3秒ほど要する
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と,GPD WIN 2では2つに集約されたことだ。GPD WIN 2のゲームパッドモードは事実上のXInputモードで,ボタンの割り当て変更は行えないため,ゲーム側が対応していない限りD-Padはハットスイッチになる(=2Dゲームで自キャラの移動には使えない)ことに注意しておきたい。
 なお,[L1/R1]トリガーは,XInputのZ Axisに割り当てられてはいるものの,デジタルボタンであって,強度の調整はできなかった。

 といったところを踏まえ,以下,順にプレイムービーとインプレッションをお届けしたい。


Overwatch



Overwatchのテストに用いたグラフィックス設定
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 ゲーム側ではまず解像度を1280×720ドット,グラフィックスプリセット「低」に指定。「レンダー・スケール」は100%でもプレイ自体はできるのだが,処理落ちがかなり目立つため,下限となる50%まで引き下げた。こうすると,「エフェクトやオブジェクトが増えたりすると,まれに10fps台まで落ちることはあるものの,基本的には30〜50fpsを維持できるので,プレイ自体はできるレベル」になる。
 筆者は以前,AMD製APU「Ryzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphics」のテストレポートで,「FPSやTPSをプレイするにあたって,遠くのオブジェクトが敵であり,かつどちらの方向を向いているかを確認するために必要なゲーム解像度は1920×1080ドットで,その場合,描画解像度を示すレンダースケールは100%を維持しなければならない」という私見を述べているが,GPD WIN 2はハードウェアの仕様上,どちらも満たせないわけだ。なので,Overwatchを「戦い抜ける」とまでは言えない。あくまで「プレイできるレベル」なので,その点は誤解しないでもらえればと思う。

 もう1つ,ゲームパッドモードでプレイするにあたって,据え置き型ゲーム機版OverwatchにはあるエイムアシストがPC版にはないため,アナログスティックでプレイするのはかなりしんどかったことを付記しておきたい。

見事に本末転倒だが,汎用のUSB 3.1 Gen.1(=USB 3.0)接続型ドック的なものを利用すれば,キーボードとマウスを使ってOverwatchをプレイすることもできなくはない
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WoWs



WoWsのテストに用いたグラフィックス設定
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 解像度は1280×720ドットで,グラフィックス設定プリセットは「低」とした。見た目に妥協さえすれば,とくにストレスなく快適にプレイできるというのが,ムービーを見ると分かると思う。
 操作にはマウスモードを使っているが,艦船のコントロールはD-Pad(=十字キー)で,視点は左アナログスティック,照準は右アナログスティックに割り当てて,さらに兵装の切り換えはキーパッド部分の数字を押すという配置にすることで,慣れれば違和感なくプレイできるようになった。


PUBG



PUBGのテストに用いたグラフィックス設定
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 まず,ゲーム側の解像度は1280×720ドット,ゲーム側のグラフィックス設定プリセット「Very Low」,レンダースケールを設定する項目「Screen Scale」100を選択したところ,まったくゲームにならなかった。
 そこで,Screen Scale「スクリーンスケール」を最小値の70まで落とし,さらにほかの詳細設定項目もすべて最小に設定したが,上に示したムービーを見てもらうと分かるように,それでも,処理落ちが酷く,まともにプレイできる水準に達していない。GPD WIN 2でPUBGをプレイするのは無理と断言してしまっていいだろう。
 なお,そういう理由なのであまり参考にならない情報になってしまうが,念のためお伝えしておくと,プレイにあたってはゲームパッドモードを選択している。


ストV AE



ストVAEのテストに用いたグラフィックス設定
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 Steamからの起動時に「Low spec mode」を選択し,ゲーム側の解像度は1280×720ドット,グラフィックス設定プリセットである「Picture Quality」は「Low」を選択したが,ムービーを見てもらえれば分かる通り,ゲーム全体のスピードが3分の2程度まで低下した状態になってしまった。これは「内部的に60fpsを死守しようとしているものの,処理が間に合っていない」がゆえの現象であると考えられるが,結果として,キャラクターのアクションこそコマ落ちせずに済んでいるものの,(オンライン対戦はもとより,練習環境として使うにあたっても)まともにプレイできるレベルではないと言える。

 詳細は後段で触れるが,ゲームパッドモードでD-Padから236236コマンドを素早く入力したとき,結果は2323になってしまいがちだった。


鉄拳7



鉄拳7のテストに用いたグラフィックス設定
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 解像度は1280×720ドット,グラフィックス設定プリセット「描画品質プリセット」を「低」にしたところで,ざっくり30fps前後のフレームレートが得られる,といったところだ。まったくプレイできないというほどではないが,なら練習環境として使えるかと聞かれたら,少々厳しいと回答せざるを得ない。

 なお,これはストV AEで「クリティカルアーツ」を繰り出したときもそうなのだが,演出の派手な超必殺技「レイジアーツ」を繰り出すと,とくに初回はゲームがなかなか動かない状態になってしまい,また,GPD WIN 2内蔵の冷却ファンが一気に高速回転となる。


Getting Over It



Getting Over Itのテストに用いたグラフィックス設定
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 GPD WIN 2上で実行すると,ゲームアプリケーション側で自動的にゲームを1280×720ドットのフルスクリーン表示で起動してくれるため,ユーザー側でこれといった設定を行うことなくプレイを始められる。
 ゲームのプレイにあたってはマウスモードを選択することになるが,ゲーム内のマウス感度を高めに設定しておくと,ハンマー操作の速度が速くなってより遊びやすくなるのでお勧めだ。


怒首領蜂大復活



 ウインドウ表示で遊ぶことになる。今回,描画設定はデフォルトからとくに弄らず,ゲームパッドモードでプレイ。D-Pad操作に注意を払いながらであれば問題なく遊べるが,GPD WIN 2の小さな画面でとなると,弾避けが割りときつい。

怒首領蜂大復活のテストに用いたグラフィックス設定。何も変更していないとも言える。今回,Windowsのタスクバーはあえて工場出荷時のままにしているが,ご覧のとおりけっこう邪魔なので,タスクバーを左右に移動させるなり,自動的に隠す設定なりを行ったほうがいいだろう
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夜廻



夜廻のテストに用いたグラフィックス設定
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 ゲームはウインドウ表示の解像度1280×720ドットで起動するのだが,この状態だと,Windowsのタスクトレイがゲーム画面に被さってしまい,字幕や一部のゲーム内情報が読みにくくなる。対策としてはタスクバーを自動的に隠す設定が有効だが,そうでない場合は,ゲームを実行するごとに解像度設定を手動で1280×720ドットに指定するという対策も有効だ。
 ムービーではそのあたりを含んでいるが,ゲームの起動後に解像度を手動設定すると,Windowsのタスクバーが存在する前提でゲーム画面を縮小表示してくれるのが分かるだろう。

 もともとマウス入力に対応しているタイトルなので,マウスモードを選ぶと,けっこう快適に遊べる点も触れておきたい。

Windowsのタスクトレイを隠す設定にしていればおおむね問題ないが,そうでない場合でも,ゲーム側から解像度設定を1280×720ドットに指定し直すことで,タスクバーの影響を受けないレベルまで縮小表示させることができた
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METAL SLUG



METAL SLUGのテストに用いたグラフィックス設定
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 グラフィックス設定「VIDEO OPTIONS」の選択に関わらず,フルスクリーン表示にすることはできなかった。「なら少しでも大きな画面に」ということで,ゲーム側の解像度設定は1280×720ドット,アスペクト比の設定項目である「DISPLAY」は「4:3」としている。
 ゲームパッドモードで自キャラの移動はD-Padで問題なく行えるが,このとき「下入力するとしゃがみ移動になりやすい」点には注意が必要だった。詳細は後段でお伝えしたい。


ギャラガ



ギャラガのテストに用いたグラフィックス設定
画像集 No.022のサムネイル画像 / 第2世代のゲーマー向け超小型PC「GPD WIN 2」レビュー。3D性能に過度の期待は禁物だが,「それ以外」は従来比で圧倒的によくなった
 フルスクリーン表示に対応しており,「画面設定」は何も変更せず,起動していきなりゲームを始められる。
 さすがにギャラガなので描画負荷は低く,性能面に何の違和感もない。ゲームパッドモードの選択により,D-Padで快適にプレイ可能だ。


Downwell



Downwellのテストに用いたグラフィックス設定
画像集 No.023のサムネイル画像 / 第2世代のゲーマー向け超小型PC「GPD WIN 2」レビュー。3D性能に過度の期待は禁物だが,「それ以外」は従来比で圧倒的によくなった
 ウインドウ表示のみに対応する。画面表示は拡大させることができ,2倍にするとちょうど見やすかったため,今回はグラフィックス設定「DISPLAY」から「SCALE」を「x2」としている。
 テスト中はゲームパッドモードを選択しているが,操作上の違和感はない。見た目どおり描画負荷も低いため,動作は極めて快適だ。テストではゲームパッドモードを選択しているが,とくにこれといった問題もなくプレイできた。


Nidhogg



Nidhoggのテストに用いたグラフィックス設定
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 ウインドウ表示でのみプレイ可能。解像度関連の設定項目は存在しないためデフォルトの状態でプレイした。Vsyncはデフォルトで無効だ。
 キーパッドを使ってもプレイ自体は行えるが,ゲームパッドモードなら両手の親指だけでキャラクターの操作ができるので快適にプレイできる。処理落ちもとくに感じていない。


D-Padのデキはとても残念。[L3/R3]ボタンの配置にもやや無理がある。一方,キーボードはとてもよくなった


 前段でいくつか後述するとしたが,GPD WIN 2の操作系で真っ先に触れなければならないのは,D-Padのお粗末さだろう。率直に述べて「ダメすぎる」からだ。

 前段におけるいくつかの指摘でピンときた人もいると思うが,GPD WIN 2のD-Padは,たとえば下方向に入力しようとした操作が,そのとき少しでも横に傾いていると斜め方向の入力に化けてしまう。初代GPD WINで外周部にあったD-Padが,左アナログスティックと位置を交換して筐体中央寄りに移動した結果,親指が横からアクセスすることになり,初代GPD WINと比べて相対的に操作性が低下しているにもかかわらず,である。

Windowsからゲームコントローラのプロパティを開いて,D-Padの下方向入力を行ったところ。結果はご覧のとおりで,GPD WIN 2のD-Padは,斜め方向の入力が異常なほど入ってしまいやすい
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 これは当然のことながら,たとえば格闘ゲームにおいてはコマンド入力のミス,弾幕シューティングゲームにおいてはドットの隙間を縫うときの移動ミスに直結する。ギャラガやDownwell,Nidhoggのような,自キャラの操作がシンプルなものであればいいのだが,そうでない場合は,意図せぬ操作ミスの多発によって,プレイヤーのSAN値はゴリゴリと削られることになる。

 もう1つ,実際にゲームで使ってみて気になったのは,GPD WIN 2で新しくなったショルダーボタン群だ。GPD WIN 2を持ったとき,肩の上側が[L1/R1]ボタン,下側が[L2/R2]ボタンになったのは歓迎できる変更で,どちらも押し分けやすい。
 問題は人差し指から見てより奥まったところにある新設の[L3/R3]ボタンで,かなり強く意識して人差し指を伸ばさない限り届かないのである。

左はGPD WIN 2を「普通に」握ったところ。この状態だと[L3/R3]ボタンには指が届かない。そのためそれこそ[R3]ボタンを押そうという場合,右のように右手を奥側へずらすようにしなければならない
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 もちろん使い続けていくと徐々に慣れてくるのだが,そこに至るまでの道程がなかなか長い印象で,幾度となく繰り返される“誤爆”にストレスを覚える。日本人としては手の大きな筆者ですらこうなので,手の小さな人だと,どう頑張っても本体を持ち直さない限り[L3/R3]ボタンには手が届かないというケースも出てくるのではなかろうか。
 なお,ショルダーボタン自体の押し心地は可もなく不可もなくといったところ。あえて言えば,とくに[L2/R2]がデジタルボタンであるにもかかわらずやや長めのストロークがあるため,少しぶかぶかした感じがあるのは気になったが,その程度である。

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 初代GPD WINと異なり,外周部へ移動した2本のアナログスティックだが,この操作性は明らかに向上している。初代GPD WINだと親指を常に筐体中央寄りへ伸ばしている感覚があるのに対し,GPD WIN 2では置く感じなので,楽に操作できるのだ。D-Padの残念さも踏まえるに,Shenzhen GPD TechnologyはGPD WIN 2で,アナログスティックの操作性をD-Padのそれよりも重視しているというのではなかろうか。

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 また,初代GPD WINだと,アナログスティックの頭頂部が丸みを帯び,かつ滑り止め加工がなされていなかったため,操作している最中に親指が滑ってずれることがけっこうあったのだが,GPD WIN 2のアナログスティックでは頭頂部がフラットに近い形状となり,ざらざらした滑り止め加工も追加となっているため,親指が滑るような問題が解消しているのもポイントは高い。
 付け加えると,ファーストインプレッションでも触れているように,GPD WIN 2では周囲の凹みが深くなって,相対的にアナログスティックの背が高くなったのだが,これは,入力時にスティックを傾ける角度の微調整しやすさに,明らかなプラスの影響をもたらしている。初代GPD WINでアナログスティックの操作をピーキーに感じていた人にとって吉報と言えるだろう。

 [A/B/X/Y]ボタンは,よくも悪くも印象が薄い。初代GPD WINと比べると若干かちっとしているが,その程度だとも言える。

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 最後にキーボードだが,より破綻のないキー配列になったキーボードは,初代GPD WINと比べても明らかに使いやすくなった。
 硬いキーはあまり変わっていないため,文字を打つときには1つずつ意識して力を入れて押下する必要があり,その点は変わらない。もっとはっきり言うと,「“誤爆”を防ぐための硬さだというのは理解できるが,相変わらず打鍵に煩わしさが残る」ので,過度の期待は禁物だ。ただ,キーボードのレイアウトが変わった……というか横に広がったことで,各キーのサイズに多少なりともゆとりが生まれたことは,打鍵のしやすさにとって間違いなくプラスになる。主要なキーが正方形に近い形をしていた初代GPD WINと比べても,キーは押し分けやすい。

ファーストインプレッションから再掲。キーボードは明らかに使いやすくなった
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 なお,初代GPD WINでは基本的にすべてのキーでキートップが前後に緩やかな弧を描いて膨らんだ形状になっていたのに対し,GPD WIN 2ではその向きが左右方向へと90度回転しているというのもファーストインプレッションでお伝えしているが,これによる操作感への影響はあまり感じなかった。それよりも,キーのサイズが大きくなったことと,物理的にキーの数が増えたことのほうが大きい。


スピーカーの品質は多少向上したが,「それなり」。ファンの動作音が気になるかは人(とゲーム)による


 音周りの話もしておこう。
 GPD WIN 2で,2chステレオスピーカーは,アナログスティックとキーボード部の間に埋め込まれている。そのため,ゲームパッド……というか,アナログスティック操作をしていると,親指がスピーカーを遮ってしまい,音が籠もって聞こえるケースが多発した。スピーカーの位置はもう少し考えてほしかったというのが正直なところだ。

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 その音質は,「初代GPD WINよりはマシ」といったところで,とくに褒めるようなものではない。高域がキンキンするのも気になる。音量を絞ると,ファミコン時代のゲームサウンド的な,音数の少ないものを聞くなら悪くないものになるが,イマドキのちゃんとしたBGMを鳴らすと,それでも安っぽさが先に立つ印象だ。
 本体背面の3.5mmミニピンヘッドセット&ヘッドフォン端子を活用して,ヘッドセットやヘッドフォンを組み合わせたほうが,こと音に関しては楽しめると思う。

 初代GPD WINの3段階切り替えから自動切り替えに変わった内蔵ファンの動作音だが,結論から先に述べると,スピーカーからゲームのBGMを流していたり,ヘッドセットやヘッドフォンを装着していたりする限りにおいては気にならない。下に示したムービーは,Overwatchのメインメニューを開いた状態だが,再生すると,オープニング音楽が流れている間はそれほど気にならないファンの動作音が,音楽が止まると気になるようになるというのが分かってもらえるはずだ。



ベンチマークスコアは初代比でざっくり2倍以上。3D性能だけでなく,ストレージ性能も上がる


 筆者はゴリゴリのテック系ライターではないので,ここまで体感メインで語ってきたわけだが,それでも「数字」が欲しいという4Gamer読者は少なくないと思うので,定番の3Dベンチマークソフト「3DMark」(Version 2.4.4264)と,体感性能を反映したベンチマークスコアが得られるPC総合ベンチマーク「PCMark 10」(Version 1.0.1457)のスコアを簡単に示しておきたい。

 今回,GPD WIN 2では「15.65」(Version 15.65.4.4944),初代GPD WINでは「15.33」(Version 15.33.46.4885)と,いずれも最新版のグラフィックスドライバを適用のうえ,電源プランを「バランス」にしている。OSのビルドは16299.248だ。

 というわけで3DMarkだが,今回は「Fire Strike」と「Sky Diver」を実施した。テスト方法のみ,4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0準拠――2回実行し,高いほうのスコアを採用――となる。
 結果はグラフ1,2のとおりで,GPD WIN 2の総合スコアは初代GPD WINに対して2.5〜2.6倍程度高い。GPU性能を見る「Graphics score」では2.6〜2.7倍程度のスコア差だ。一方,CPU性能を見る「Physics score」だと1.7〜1.8倍程度で,スコアはやや縮まった。

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 次にPCMarkだが,今回はGPUアクセラレーションを有効化すると(決して高速ではない)統合型グラフィックス機能によるスコアの頭打ちが生じ,結果が分かりにくくなるという理由から,OpenCLのGPUアクセラレーションを無効化したカスタム設定で「PCMark 10 Extended」を実行する。そのためスコアは,

  • Essensials:PCの基本性能を計測するテスト群
  • Productivity:ビジネスアプリケーション性能を計測するテスト群
  • Digital Content Creation(以下,DCC):コンテンツ制作における性能を計測するテスト群
  • Gaming:ゲーム性能を測るテスト。ウインドウモード実行のFire Strikeに等しい

の4項目で個別に得ることとなる。

 結果はグラフ3〜6のとおり。一見してGPD WIN 2が初代GPD WINを圧倒していると分かるが,ゲームPCたるGPD WIN 2の基本性能を知るうえでとくに押さえておきたいのは,アプリケーションの起動速度テストである「Apps Start-up」と,Webブラウジング性能テストの「Web Browsing」だろう。
 ファーストインプレッション記事でお伝えしているとおり,スペック面における重要なアップデートの1つが,GPD WIN 2におけるSerial ATA 6Gbps接続型SSDの採用だが,その効能としてのアプリケーション起動テスト結果は初代GPD WINに対してダブルスコアだ。体感レベルでもストレージの反応速度がよくなっているのはそこかしこで感じるが,おおむね2倍速いという理解でいいのではなかろうか。Webブラウジング時の反応速度も,個人的には,体感を反映したスコア差になっているように思う。

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画像集 No.034のサムネイル画像 / 第2世代のゲーマー向け超小型PC「GPD WIN 2」レビュー。3D性能に過度の期待は禁物だが,「それ以外」は従来比で圧倒的によくなった
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3D性能には依然として期待できないが,「持ち運べるゲームPC」としての完成度は大きく向上したGPD WIN 2


 PCゲームを外へ持ち出せる「携帯ゲームPC」という立ち位置のGPD WINシリーズ。初代機は,コンセプトこそ大いに歓迎できるものの,性能面,機能面,そして信頼性の面でもツメが甘く,Shenzhen GPD Technologyの思想に共感できる人や,冒険心溢れるガジェットを好む人にしか勧められない製品だった。

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 それを踏まえてGPD WIN 2だが,その3D性能は,3Dゲームを満足にプレイする前提に立った場合,依然としてまったく不足している。初代GPD WINと比べて高速化したこと,それ自体に疑いの余地はないが,それでも5段階評価すれば1のまま変わっていないと言わざるを得ない。解像度も据え置きなので,縦768ドット以上が必要なゲームを前にするとユーザー側でいろいろ対策が必要な点も変わっていないので,広くPCゲーマーに勧められるかというと,今回もNOということになるはずだ。

 しかし,D-Padの入力化けや,[L3/R3]ボタンの使いづらさといった,明らかな弱点は抱えつつも,全体として機能面やGPU周りを除く性能面は,初代GPD WINと比べて明らかに向上している。ストレージが大容量化したことは,Windows Updateなどにおける不安を一定レベルで払拭しており,また,ここまであえて触れなかったが,筆者が少なくとも10〜20回は試行した限り,スリープからの復帰にも不安はない。そしてキーボードも,目に見えて使いやすくなった。「ゲーマー向け超小型PC」としての総合点は,間違いなく,そして大幅に上がっている。

 繰り返すが,第2世代モデルでも「足りない部分」は少なくない。しかし,描画負荷の極めて低い3Dゲームや2Dゲームなら「普通に」プレイできるだけでなく,超小型モバイルPCとしても「普通に」使えるようになってきたこと,その点は歓迎したいと思う。
 PCとしての信頼性の低さから,初代GPD WINを個人的にはほとんど評価していない立場から言わせてもらうと,GPD WIN 2は,「いろいろ割り切れば負荷の低いゲーム用として使えるようになった」点で,とても価値のあるハードだ。

GPD WIN 2のIndiegogoキャンペーンページ

GPDによるGPD WIN 2日本語特設ページ

ゲーマー向け超小型PCの第2弾「GPD WIN 2」が4Gamerにやってきた! まずは従来モデルと外観を比較してみる


(本文:BRZRK,格闘ゲーム2タイトル評価:ハメコ。)
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