プレイレポート
深層映写をできなかった人へ。「ドルフロ」大型イベント第3弾のストーリーライン
今回もその難度により,ゲームをはじめたばかりでクリアできなかった初心者がそれなりにいるかと思う。ドルフロでは5月24日のアップデートにより,図鑑の機能「ストーリー回想」で深層映写を含むイベントストーリーを読めるようになったが,こちらはクリア分のみの対応なのだ。
そのため,前回の“低体温症”に引き続き,深層映写で起きた事のあらましも伝えておこう。
低体温症をできなかった人へ。「ドルフロ」大型イベント第2弾のストーリーライン
サンボーンジャパンのスマホゲーム「ドールズフロントライン」で実施された,大型イベント第2弾“低体温症”のストーリーラインを紹介していく。今回はその難度もあり,ゲームをはじめたばかりでクリアできなかった初心者もそれなりにいるかと思うので,興味がある人は物語だけでも追ってみてほしい。
本稿では,以下の戦役に関するネタバレを含みます。そのため,該当戦役のクリア後に読むことをオススメします。
・第八戦役「火花 Spark」
“深層映写”プロローグ
グリフィンの施設に隔離されていたM4A1は,M16A1をはじめとするAR小隊の現状を知り,身体の調整も済んでいないままに,戦地へと向かってしまった。ペルシカにはそれを止めることはできなかった。
M4A1の後ろ姿を見届けた彼女は,鉄血管轄のS15区域で撃墜された,グリフィンの重要な監視ファイルを輸送中であったドローンの奪還のため,UMP45(以下,45),UMP9(以下,9),416,Gr G11の計4名,通称「404小隊」にドローン回収を依頼する。
そのころ,404小隊は非合法な戦術人形のメンテナンスを請け負う,少女シーアと少年デールにより,とあるカフェの汚らしい地下室でメンタルモデルの調整を受けていた。そしてこの日も,45のメンタルでは,厳重に暗号化されているはずの古いログデータがなぜか再生されていた。
【何があっても、あんたは生き残らなきゃならないの】
【人形だって、自分のために生きることが許されてもいいはずよ】
【他人じゃなく、自分のために】
「…………」
「またこのログだわ……」
第一段階「認知混迷」
今回のドローン奪還作戦は,該当区域に潜入後,ネットワーク上でドローンの位置を追跡し,その情報をもって回収する手はずとなった。
404小隊は彼女たちの“ご主人様”からの命令で,各自の意識をグリフィンが管理するネットワークシステム「ツェナーネットワーク」に移して行動するための,新たなプロトコルをインストールする。
体を現実に置き去りにし,意識は電子の海を泳ぎ回り,鉄血の妨害をかいくぐって,目的を遂行する。そういった戦いに最も優れていたのは9だった。一方,416とGr G11は浮かない顔で模擬訓練を受けていて。
「夢を見ていると思えばいいのよ。とはいっても、サボってばっかりだと二度と目覚めなくなるけどね」
メンテナンスから先,45は意識を落とすたび,彼女の中で暗号化されている過去のログデータが再生されていた。同時に,意識が覚めるのも遅れていた。9はそんな45の様子に,どことなく違和感を覚える。
しかし,デールは説明する。なにかが起きていたとしても,基本的に問題はないと。保存されているログが少しフラッシュバックするくらいのことは,戦術人形のメンテナンスでは珍しくないと。
「なにか思い出したくない記憶でもあるの?」。ちゃかすような問いかけに,彼女にしては稀有と言うのだろうか,素直な言葉を漏らした。
「そうね、確かに……いくらかあるわ」
電子ネットワーク戦の訓練中のこと。404小隊のネットワーク上に,グリフィンの新任人形が迷い込んできた。さらに彼女は,45のデータと衝突したことでメンタルモデルを破損してしまった。
通常,人形のメンタルモデルは一部でもデータが欠けると,知能指数が著しく下がってしまうという。404小隊は急遽,その子の救助(とグリフィンの新しいデータを盗み見るため)に向かう。
どうにか見つけた当の人形は,やはりデータが欠けてしまっている影響か,口も態度もすこぶる悪い少女になっていた。これじゃあかわいそうだと,存在しないはずの小隊は今日も今日とて人形助けをし,新任人形を無事,元の姿でグリフィン基地まで転送させたのだった。
「また無名のヒーローになっちゃったわね。これで満足かしら」
訓練を終えた404小隊はこれから12時間後,ドローン奪還のためにS15区域へと潜入する。今回はグリフィンからの支援として,無骨なドローンに“ペルシカが作りそうなAI”を乗せた,探索妖精も随行する。
そのころ現地の指令室では,鉄血エリート人形「デストロイヤー」が,上司の「ドリーマー」にドローンの捜索を急かしていた。それと同じくらいのエネルギーで「あたしの新しいボディ!」と熱望していた。
新しい体はどんなのがいい? 火力がいい? 素早さがいい? ドリーマーの質問に,デストロイヤーは簡潔に答える。
「全部入りで!」
第二段階「双曲関数」
北蘭島(ペイラン島)でのコーラップス液の流出を端に発した「広域性低放射能感染症(E.L.I.D.)」。404小隊が先ほど潜入した,ここS15区域もまた,汚染区域と呼ばれている場所だ。
「ゾンビとか出るの?」
「そうね……出くわさずに済めばいいんだけどね」
The Flying Dead。空飛ぶゾンビ。そんな危険な生物とも呼べない存在が出てくる……のは,Gr G11が見ている長編ドラマの世界だけである。
ドリーマーはデストロイヤーに説明する。「我々鉄血のネットワークシステムのオーガスプロトコル」は,「グリフィンのゴミクズどもが使ってるツェナープロトコル」とは異なる信号を発すると。
そして,グリフィン内部で危険視されてきた「【傘】ウィルス」は,それに侵した人形の識別信号などに関係するプロトコルを,強制的に鉄血のオーガスプロトコルに書き換えるものだという。
偵察地点の確保をシーアに報告していた9は,デールとのプライベートチャンネルをつなぐ。「45姉の24時間分のメンタルに異常はなかった?」。9は密かに,45の状態をチェックさせていた。しかし,現状では異常と呼べるほどの動作はしていないと――そのときだった。
「グリフィンのクズども、よーく聞きなさい!」
404小隊のもとに,広域型の放送が届く。この声は……ボスのクセにいつもボコボコにやられてるやつだ(by Gr G11)。
デストロイヤーからの放送は,潜入が明るみに出た証明であったが,45は私たちの正体まではバレていないと踏み,まずは捜索の邪魔になる,鉄血のジャミング装置を破壊することにした。大丈夫。やったことはある。1年前のキューブ作戦のときと同じ要領だから。
だが,鉄血側のドリーマーはすでに,グリフィンの人形を見つける術を知っていた。潜入者を探すために,ドローンを追う必要などなかった。「【傘】を持ってる人形」を探せば,自ずと正体が分かるからだ。
そいつをあざ笑い,怖がらせ,慌てさせ,追い詰める。メンタルが恐怖で満ちたとき,そこに植えられている種が発芽する。1年の潜伏期間を経た【傘】はメンタルの奥深く,回線の隅々まで這いずり込み,今も蠢いている。ドリーマーの幸福を満たすエサ――それが45であった。
416とGr G11がジャミング装置の破壊に成功したとき,45は9の電子モジュールを頼りにドローンの座標を特定していた。あとはそこに向かうだけ――しかしまた,デストロイヤーからの放送が流れてくる。
「慌てることないわ、これもどうせはったりだから……」
「おやおや、なに言っちゃってくれてるのかしら……UMP45」
存在はバレていた。それは作戦が読まれているも同義だった。「一度撤退すべき」という提言は,45が一蹴する。鉄血はすべてを把握しているわけじゃない。あいつらが把握しているのは,おそらく私だけ。放送はいつも私の発言後だったから。それに「いつでも」じゃないみたい。
45は付け込む隙はあると言う。9はそれが鉄血の罠だと反論する。「私が判断ミスをしたこと、あったかしら?」。UMPの妹分は渋々,ドローンを回収しにいく。一方,416とGr G11は別々の偵察拠点の確保に向かい,45は彼女たちを別動隊で援護することに。45は手を2回叩いた。
「さて、ここから忙しくなるわ。急いでドローンを手に入れ、みんな一緒に帰るよ!」
各自が配置についたとき,Gr G11が大型の鉄血信号を検知する。怖がりな彼女は逃げたくなった。それでも,45は真剣な様子で言ってくる。
「G11、頼んだわよ!」
そこまで言われたらやるしか……。
そのとき,Gr G11の前に信号の持ち主が現れる。
そこには,ドリーマーが直々に作ったとされる,戦場の女神のように強力で美しいボディを身にまとった,新生デストロイヤーの姿が――。
ドリーマーは言った。「手が滑って間違えちゃった」。
デストロイヤーはおチビなボディから,人形たちにはお馴染み「犬みたいな形をした鉄血のザコ」こと,ダイナーゲートのでっかい版たるケルベロスに生まれ変わった。少女の声をした大きな犬はその場でジタバタ,ゴロゴロ,相棒に怒り狂いながら,四足歩行に苦戦している。
とはいえ,笑って済ませられる脅威ではない。魔犬デストロイヤーは404小隊を追い詰める傍ら,ある指示を遂行しようとしていた。1年前にジャミング装置から感染させた,45の体内の【傘】を発芽させるべく,接近してメンタルモデルに無理やり接続し,オーガスを起動せんと。
デストロイヤーを含むケルベロスは,全部で4匹。戦術人形よりも走破性に優れた番犬たちを巻くには,やつらに居場所を特定されてはならない。そのためにと思案された45の目論見は,またしても9に否定された。それは,45と404小隊の通信を切断するという作戦だった。
突然,45のもとに謎の戦術人形からの通信が入る。それはグリフィンに所属するライフル人形「Gd DSR-50」からだった。彼女は現在,部下とともに近辺の拠点にバラバラに閉じ込められていた。
「その笑顔……私たち、きっと気が合うわ」
404小隊の窮地を知ってか知らないでか,どうにも食えそうにない戦術人形は,温和な表情で提案してくる。「こうして出会えたのもなにかの縁。互いに手を取り合って協力しましょう」。この場の勝算を天秤にかけたら,404小隊はDSR-50の話に乗るほかなかった。
「かわい子ちゃん。あんまり遅くならないでね」
45は制御下の部隊を分割した。目的ならシンプルよ。犠牲を厭わず,あなたたちを守ること。9はドローンの回収,416とGr G11は犬と追いかけっこ,DSR-50の救助まで,私ひとりでおとりになる。作戦のために45姉を犠牲にできない,なんて妹の訴えは聞かない。それが姉ってもんだ。
「馬鹿なこと言わないで。私はAR小隊の人形じゃないんだから」
9が奔走していると,デールからの通信が入った。45のメンタルモデルに,大量の不正アクセスが見つかったらしい。それは彼女たちが知る由もない,鉄血の【傘】ウィルスに権限を書き換えられている証拠だった。そしてまもなく,404小隊と45の通信チャンネルが途切れる。
……うろたえている時間はない。45姉を信じて,役割をこなして,みんなで帰る。45姉がいなければ,どこにも行く当てなんてない。正規の人形じゃない,非合法人形でしかない。それを分かっていたから。
デストロイヤーを近づけまいと,416とGr G11は制圧射撃を繰り広げる。ドリーマーが用意したクライマックスは間近に迫っていた。
「はは、泣けるわね」
そのころ,【傘】の浸食が進んでしまったことで意識を失い,機能不全に陥っていた45のメンタルモデルでは,昔の記録が再生されていた。戦術人形としての適性がなかった,戦術人形としての価値がなかった,指揮官に選ばれる私になりたいともがいていた,あのころの記憶。
【セキュリティ解除 再生開始】
――人間のために身を捧げることが、あたいたち人形の役目なのかな?
――あたいたちの存在意義は……ただそれだけなのかな?
「一体どうしたらもっと上手になれるの……」
「他の人よりもたくさん訓練しているのに……」
「いつもみんなより一歩遅れるし……」
いつになっても射撃が上達しない。ダミー人形すら与えられていない。指揮官にも使えない人形だって怒られる。そんな未熟な戦術人形の前に,あっけらかんとした雰囲気を持つ,ひとりの戦術人形が現れる。
「あたいもあんたと同じ、誰にも必要とされない人形よ!」
シリアルナンバーを消された,ヘタクソな工廠で作られた同じような銃。戦術人形としてグリフィンに出荷されてから,いまだに人形としての価値を持てていない同じような存在。ふたりは似た者同士だった。
「あたいはUMP40。あたいたちは間違いなく運命で結ばれた姉妹なんだよ。ちゃーんと面倒見てあげるからね!」
ひとりなら役立たずでも,ふたりなら一人分くらいにはなれるから。
ドローンを発見した9は,今は声も聞こえていない45に任務達成を報告すると,彼女のもとに急ぐ。同時刻,416とGr G11も戦況をクリアにし,あとは魔犬デストロイヤーの装甲を撃ち抜けるスナイパーを待つだけ……いいタイミング。救助されたDSR-50がふたりの援護についた。
そのとき,ドリーマーがオーガスプロトコルへの書き換えが済んだ45に,命令を下した。「鉄血人形UMP45、ただちに集合し敵の人形を抹殺せよ」。しかし,新たな部下からの反応はなかった。彼女が出した命令は,45の権限に拒否されていた。彼女には指揮権限がなかったから。
ドリーマーは思わず喜ぶ。仮面の下に隠した,45の素顔を想像して。まぁいいわ。乗っ取りには失敗したけど,45はいまだオーガスネットワークとの通信を止められていないし,今のメンタルは攻性防壁で焼き尽くちゃいましょ。そうすれば,便利な死体くらいは回収できるわ。
9が見つけた45は,目を見開いたまま,少しも動かない人形になっていた。彼女は今,メンタルを焼き尽くされようとしていた。あとちょっとで45姉が消えてしまう……その間際,弾丸がデストロイヤーを撃ち抜く。45と鉄血との接続も断絶する。彼女はGr G11に救われた。
それでも残された404の少女たちが,今の45の姿を見て分かることと言えば,「確実に生きてはいる」。それだけだった。
45の指揮がなければ,404小隊はここから生きて帰れそうにない。45を覚醒させるにはもう,彼女のメンタルモデルを修復するために,戦地で無防備な体を晒しながら,ツェナーネットワークを介して,彼女のメンタルにダイブするしかない。そこに見えない帰り道があると信じて。
第三段階「対立行為」
デストロイヤーの失態に,ドリーマーはいつもの表情を投げ捨てて,声を荒らげた(デストロイヤー「こわ……こわすぎる……」)。しかし,すぐにいつもの仲睦まじい態度に戻ると,最後のゲームをはじめる。
「ゲーム……? どんなゲーム?」
「……血生臭い……ネズミ捕りゲームに決まってるじゃない」
デストロイヤーの新たなボディの完成が近い。少女たちと追いかけっこをする必要がなくなったそれは,正真正銘の女神の身体であった。
45のメンタルモデルに侵入した3人は,彼女が自身のメンタルを守るために設定していた防壁の多さに苦慮する。人格を消されそうになるほどの攻撃を受けてもなお,彼女の内部は強固な状態にあった。
404小隊は現在,9の演算能力を通じて,電子ネットワーク上にいながらも現実世界と同様の身体感覚を得ていた。その負荷に苛まれた9は,途中でGr G11に指揮を委ねると発言したが,416はそれを突っぱねる。ネットワーク上ではあんたが指揮官なんだから,責任を持ちなさい。
「416ったら、ますます言葉がキツくなってるよ。知り合ったばかりの頃はもっと真面目でいい子だったのに」
「ふんっ、それもこれも404とかいう温かな家庭のおかげよ」
416には目的がある。ずっと404小隊に居続けるつもりなどなかった。いつか,目的を果たしにいくから。そんな彼女の表明に対し,毎日死体のごとく眠りこけているGr G11にしては,本当に珍しい言葉を返した。
「416はいつも忙しそうだけどなにかいいことでもあんの?」
「好きなように生きてこその命じゃん」
今の彼女たちは,正規の戦術人形ではない。まともなメンテナンスすら受けられない非合法人形。4人に残された最後の居場所は,404小隊しかなかった。なにが不満なの? あたしたちのこと嫌いなの? 純真な問いに,生真面目な同僚は答える。これは私自身の問題なのよ,G11。
「可能性がある限り、諦めたくはないわ」
「成したことが、その人の本質を表すわけじゃないんだよ、416」
……あんたの口からそんな言葉が出るなんてね。416は信じられないものを見た気がしたが,Gr G11だってときには物事を思慮しているのだろう。「そうだよ。私だっていつも寝ているわけじゃないんだよ。ちゃんとアニメとかも観るんですから。ねえ,まってよ,話聞いてよ!」。
まったく,こんなバカに期待するなんて――それからまもなく,9が指揮する部隊が進行ルートを切り開いた。
魔犬デストロイヤーが撃破されてから,3時間が経過した。ドリーマーは,動きを見せずにどこかに潜む404小隊を補足できないでいた。やつらは無暗に攻めてはこない。自暴自棄になって判断を誤りもしない。それでいて動きを見せない。それこそが最も憂慮すべき事態だった。
ドリーマーは考える。もしも,45が死んでなかったら? 隠れて,45を助けようとしてたら? 404小隊にとって,45は唯一の希望なのだから。ドリーマーは考える。あのゴミクズたちがどこにいるのかを。
一方で,悪い知らせがないことが唯一の良い知らせと言えそうな404小隊は,45の回復に努めていた。9にとって,404小隊は最後の家族であった。しかし彼女は,姉と慕う45の過去をなにひとつ知らない。知りたいとは思っている。けど,自分から聞く勇気はない。
「もしかしたら、45姉が自分で話してくれるのを待っているのかも」
突如,警報が鳴り響く。
緊急事態と見て,ツェナーネットワークからログアウトした404小隊のもとに,謎の鉄血人形からの通信が送られてきた。
それこそが,女神のような新たなボディを身にまとった――「骨が伸びて脂肪がついたデストロイヤー」(by Gr G11)であった。
見た感じは相変わらず(バカのまま)であったが,その性能は確かなようだった。45のメンタルモデルの修復はまだ途中。散乱していたデータはどうにか回収したものの,あとはデールの手腕に任せるほかない。45を欠いたままの404小隊の正念場が,目前に迫ってくる。
【セキュリティ解除 再生開始】
――あんたはあたいの保険だって、分かってた。あたいが任務を達成できなければ、あいつらは代わりにあんたを使う。そうなったら、あたいの計画がバレてしまう
――あたいは任務を達成する。あんたの運命まで、あいつらに弄ばせるわけにはいかない。
45は40と逃げていた。仲間であったはずの戦術人形たちを撃ち殺しながら。グリフィンの攻撃小隊に所属する人形たちは突然,通信チャンネルがブロックされ,味方同士の信号を識別できなくなっていた。
すぐに理解したのは,彼女たちが味方ではなくなったこと。彼女たちを撃ち殺さないと,ここから逃げきれないということ。
それでも45は,声の届かなくなった仲間たちに向かって叫び続ける。40はそれを止めた。「どうして仲間同士で殺し合わなくちゃいけないの!」「それが計画の一環だからだよ」。そう呟く姿は,まるで。
もしかして……さっきあなたが使ってたモジュールのせい? あなたがここに来た本当の理由は,こうして仲間みんなを虐殺するため? 私はそれを知らなかったの? 今,このときまで。
「わたしは……あなたの共犯にされてしまったのね……」
「あたいたちはこのために作られた。これは宿命なんだよ」
あいつらがこの結末を望んだ。あいつらがこの宿命を望んだ。そこから逃げるための準備はずっとしてきた。そう告げると,40が手にするヘタクソな作りの銃は,45に向けられていた。
「45、選択の時だよ。そこで野垂れ死んでいる奴らみたくなるか。他人に操られる運命から逃れるのか」
歌声が聞こえるでしょ? 「彼女」が目覚めるまで時間がないの。このセキュリティプログラムはあたいたちのメンタルを破壊しようとしている。どちらかが死ねば,プログラムは停止する。どちらかが死んで,どちらかが生き残る。そういう宿命なんだ。45,選択の時だよ。
「答えなさい、UMP45!」
「銃口を向けなさい! 自分に同情するのはやめな! そんなのは、出来損ないのやることだよ!」
「…………」
「………………」
「わたしは…………生きる!」
【セキュリティ解除 再生開始】
――ずっと騙してて、ごめんね。
――さよなら、45。あんたがあたいを覚えていてくれたら……それだけで、あたいは幸せだよ……。
45は生き残った。最初から生き残ることを諦めていたかのような40を前にして。40は45に,自身のドッグタグと装備を譲り渡す。思いつく限りの方法を考えても,最初からこれしか道はなかったから。
「これは始まりに過ぎないんだよ、45。まだ数えきれないほどの試練がこの先あんたを待ち受けている。それを乗り越えるために正しい選択は、きっといつもあんたを一番苦しめる方法よ……でもね、生き残るにはそうするしかないの……」
「正しい選択……」
「そう、ちょうど今みたいに……」
誰かのための捨て駒として生み出された40は,この計画の果てに,自身の消え方を勝ち取る。メンタルを焼き切られて死ぬなんて,まっぴらごめんよ。あたいは戦術人形。たとえ死ぬことが決まっていようと,戦術人形らしく,最期は戦って死にたい。
彼女の最後の望みを叶えられるのは,45の指がかけられた引き金だけ。ふたりだけの空間に,ひとりだけの絶叫が響き渡る。戦術人形としての適性がなかった,戦術人形としての価値がなかった,指揮官に選ばれる私になりたいともがいていた,少女の宿命を変える弾丸は放たれた。
9のメンタルモデルが長時間の指揮に耐えられず,悲鳴を上げる。高性能な新生デストロイヤーを前に,404小隊には打開策がなかった。
「もう……ゲームオーバーなの?」
Gr G11が弱音を吐く。
「ごめん、みんな……わたしの性能がもっとマシなものだったら……45姉みたいに強ければ……」
9の後悔は風に溶けた。
「そんな必要はないわ。約束したでしょ? 私みたいにはならないって」
続いた声は,少しだけ寝坊した,彼女たちのヒーロー。
デールによる修復作業が間に合った45は,即座に戦況を読み解き,シーアが見つけた突破口の報告を受けると,デストロイヤーにさえ追撃されなければ,ここから撤退できると言いきる。それと,こんなときになんだけど,もしみんなに「ありがとう」を伝えたいっていったら――。
「そういうのはいいから。私たちの得意な方をやりましょ」
416のすげない返答。らしくなかったみたい? ええ,そうね。
「夜が明けるまで生き残って、みんなで家に帰るわよ!」
ふたつの最強ボディは,404小隊を何度も何度も追い詰めた。そこにチャンスはいくらでもあった。でも,あなたは機会を逃した。
見慣れた基地で再起動したおチビな鉄血人形は,まるで幼子のように泣き叫ぶ。また,約束を破ってしまったから。
「あだじ……あだじはほんどに一生懸命にやっだの! ぞれでも勝でなかっだのよ!」
敗北したデストロイヤーに,ドリーマーは罰を与えなかった。彼女を許した理由は,そんなことよりも,もっと面白い収穫があったからだ。あのくだらないドローンに比べて,もっと役に立つだろう,45のこと。
「あいつらの過去と、あたしたちのご主人様の関係にまつわる話よ……」
死地を脱した404小隊を,廃墟都市に差し込む朝の光が照らす。
「今はただ休みたいわ。今年一番疲れる任務だったから……」
不慣れな電子戦に疲れた,416。
「二日ぐらいぐっすり寝たいな。まだ見てない映画もあるし……」
こちらはいつもどおりの,Gr G11。
「あんまり贅沢言っちゃダメよ」
生き残れただけ十分だと,9。
「そうよ……生き残れただけで十分だわ」
45はじっと見つめてくる416に,なにか言いたいことがあるんじゃない,と促す。不遜な少女は,なにを言ったらいいかは分からないけど,今回の任務にはあんた自身の目的があったんじゃないかしら,と返す。危険が去ったあとだからか,それは疑念ではなく,疑問のように聞こえた。
「ほんの少しね。でも、どちらかというと運が良かっただけかな」
「45の言ったこと信じる?」
信じない。あいつの言うことなんて命令以外は絶対に信じない。あいつがいつかいなくなってしまう? そんなことは分からない。私は今は確かなことはなにも言えない。
「はぁ…………ダサいよね、416って……」
ちょっぴり心ない相棒への返事は,彼女にしては素直で。
「そうよ……45は怪物だけど、私はそうじゃないわ」
「いきましょ、面倒事はまだまだ終わらないのよ……」
「ひょっとしたら、永遠に終わらないのかもね……」
――――深層映写 END
以上,深層映写のストーリーラインとなる。なお,ランキングステージ“虚数迷宮”の導入部では,上記の直後のこと,「S09地区の戦況が悪化。大規模な撤退ルートにS11地区が含まれている。近くの指揮官は可能な限り味方を救い出せ」という,ヘリアンからの放送を耳にする。
当然,無名のヒーローたちも,今日も今日とて人形助けをする。
「でも私もタダ働きはいやよ。私たちが助けた人形は全員グリフィンに金で買い戻すように。一銭もまけてやらないんだから」
【補足資料】UMP45の音声ファイル
下記のテキストは,深層映写のイベントステージ内で閲覧できた「UMP45のメンタルモデルに記録されていた音声ファイル」の一覧となる。イベントストーリーの補完,UMP45とUMP40のバックボーン,あるいは彼女たちの関係性についての情報として,ここに記録しておく。
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