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映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた
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印刷2021/07/29 12:00

インタビュー

映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた

画像集#001のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた
 台湾のデベロッパ,Red Candle Gamesが開発した「返校 Detention」PC / Nintendo Switch / iOS / Android 以下,返校)を原作とした実写映画「返校 言葉が消えた日」が,日本国内で2021年7月30日に公開される

 「返校」は,台湾のインディーズデベロッパであるRed Candle Gamesが2017年に発表したホラーアドベンチャーゲームだ。呪われた学校に閉じ込められた少年・ウェイと少女・レイが,徘徊する亡霊をかわしつつ,謎に迫っていく。
 物語の舞台は,1960年代の台湾。当時の台湾は,中国国民党による不当逮捕や厳しい言論統制が行われ,多くの人々が投獄,処刑された「白色テロ」と呼ばれる時代で,「返校」においても大きなテーマとして描かれている。

 1987年以降は少しずつ白色テロを題材とした小説や映画が作られるようになっているが,「返校」はこのテーマにゲームとして触れたことで話題となり,台湾では2019年には映画版,2020年にはドラマ版が公開されている。

「返校 Detention」PC / Nintendo Switch / iOS / Android
画像集#002のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた 画像集#003のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた

 今回4Gamerは,日本国内での公開を控えたタイミングで映画版の監督であるジョン・スー氏にオンラインインタビューを行う機会を得た。自身もゲームのファンであるというスー氏に,映画の制作秘話やゲームをプレイして印象的だったシーンなどを聞いているので,読み進めてほしい。


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。ジョンさんは本映画の監督になる以前にプライベートで「返校」をプレイされていたそうですね。

「返校 言葉が消えた日」監督 ジョン・スー氏
画像集#010のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた

ジョン・スー氏(以下,スー氏):
 はい。私は,小さいころからゲームで育ったような人間です。台湾発のゲームというのはこれまでにあまりありませんでしたから,「返校」には,ティザー映像が公開された時点から注目していて,発売初日には即購入してプレイしました。ストーリーがすごく良くて,夢中になってクリアしましたね。
 これほど完成度の高いゲームが台湾で生み出されたのが嬉しかったですし,台湾の暗い歴史である「白色テロ」を取り上げていることにも興味を惹かれました。

4Gamer:
 ゲームをプレイして最も心に残ったシーンはどこですか。

スー氏:
 やはりラストシーンです。「返校」を映画化するにあたっていろいろな困難がありましたが,そのたびにあのラストが心に浮かび上がり,力を与えてくれました。本当に映画の脚本にも負けない完成度だと思います。

4Gamer:
 映画には,ゲームで謎解きに使われていたアイテムが,映画ならではの役割を与えられて登場していました。映画化するにあたって原作再現とオリジナル要素のバランスをどう取ったのでしょうか。

スー氏:
 原作はアドベンチャーゲームなので,謎解きに重点が置かれており,登場するアイテムには,次のエリアを開く“鍵”としての性質が持たされています。また,アイテム一つ一つがストーリーで重要な意味を持っているのも優れた点で,それぞれの使われ方も,とてもカッコイイものでした。

 ただ,ゲームと映画では物語の語り方が異なります。ゲームでの使われ方を再現できないものもありましたので,原作のアイテムをどうするかについては議論を交わしました。
 例えば,原作には道教的なアイテムがたくさん登場しますが,映画のテーマとはあまり関係ないため,こうした要素はオミットしていますし,逆にアイテムや細かい要素に,原作より物語的な意味を持たせるということもしています。
 Red Candle Gamesにも「細かなアイテムまでしっかり拾い上げてくれてありがとうございます。映画では,私たちが考えてもいなかったような形でさまざまなアイテムが物語と密接に関わっていて驚きました」と喜んでくれていました。

画像集#004のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた

4Gamer:
 Red Candle Gamesから,映画化にあたって何か要望はありましたか。

スー氏:
 「現在の台湾が享受している自由は,過去に白色テロという時代を経て,やっと得られたものである」という部分は,ゲームをプレイした人の心を強く動かした点なので,映画でも表現してほしいと要望をもらっていました。私もまったく同感でしたし,映画を作るうえでの指針にもなっています。

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4Gamer:
 もしもご自身があの時代の高校に通っていたら,「秘密の読書会」に参加したと思いますか。

スー氏:
 私は,先生や大人のいうことを良く聞く模範的な学生でしたから,たぶん参加しなかったでしょう……だからこそゲームをプレイしたときに「返校」の物語が衝撃的に映りました。自らの意思を持って行動していく登場人物たちにうらやましさを感じていたところもあるのかもしれません。

4Gamer:
 映画は台湾で大きなヒットとなりましたが,観客層はどういった人でしたか。

スー氏:
 純粋にホラー映画として観た人,ゲームが原作であるという点がフックになった人,そして台湾の歴史を扱っていることから興味を持たれた人などさまざまな方に足を運んでもらえました。そして,作品に何を期待したかや観賞後の満足度もさまざまでした。

画像集#006のサムネイル/映画「返校 言葉が消えた日」監督インタビュー。1960年代の台湾を描くゲームをどのように映像化したのかを聞いた

4Gamer:
 予想以上にいろいろな層が見ていたと。

スー氏:
 もちろん,いろいろな観客層を想定して映画を作りましたが,そのすべてに応えられたかどうか,公開直後の私の状態ではなかなか判断できませんでした。公開から2年を経てやっと皆さんからの感想を冷静に見られるようになり,どこが足りなかったかも判断できるようになりましたね。
 私自身もゲーム「返校」のファンですので,これから日本の皆さんがどのように映画を受け止めてくださるのか,楽しみであると同時に,心配しながらビクビクしてもいます。原作のファンの方から,まったく「返校」を知らない方まで,とにかく映画館で観ていただければと思います。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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「返校 言葉が消えた日」公式サイト

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