「アサシン クリード オリジンズ」(
PC/
PlayStation 4/
Xbox One。以下,オリジンズ)のちょっと風変わりなモード,
「ディスカバリーツアー」が2018年2月20日に無料配信された(
関連記事)。3月7日,このモードを紹介するイベントが東京・西麻布のエジプト料理店,ネフェルティティ東京で開催されたので,その模様をお伝えしたい。
何度も紹介しているので,とっくにご存じの人も多いと思うが,原稿の流れ的にここで説明しておくと,ディスカバリーツアーとは,オリジンズのために緻密に再現された古代エジプトというゲーム世界を自由に探索して,記念碑的な建造物を見学したり,庶民の生活を知ったりできる,教育的な用途にも使える,かなりユニークなモードだ。上記のように,対応する各プラットフォームで無料アップデートされるほか,PC版では本編を持っていなくても,ディスカバリーツアーだけを購入できる。
行ったことがないので保証はできないが,店内はエジプト風
![画像集 No.002のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/002.jpg) |
![画像集 No.003のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/003.jpg) |
スティーブ・ミラー氏。お伝えしたように,現在,ディスカバリーツアーを体験できるイベントが池袋・古代オリエント博物館で開催中だ。ミラー氏によれば,ほかの博物館からの依頼もあるという
![画像集 No.004のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/004.jpg) |
ユービーアイソフト日本法人の代表取締役社長,
スティーブ・ミラー氏の挨拶のあと,ゲストとして招かれたのは,女優の
酒井美紀さんと,「古代エジプト美術館」の創設者である
菊川 匡(きくがわ ただし)さん。酒井さんはテレビ番組でアレクサンドリアの西にあるタップオシリスマグナ遺跡で発掘を取材したというご縁で,また菊川さんは,日本最大級のコレクションを誇る常設美術館を東京・渋谷にオープンした古代エジプト遺物コレクターだ。
さっそく,PlayStation 4版のオリジンズを使ったディスカバリーツアーが始まった。「メンフィスの街」「スフィンクスの謎」など,
75種類のツアーが用意されているが,最初に訪れたのは,
「アレクサンドリア大図書館」だ。紀元前300年頃にプトレマイオス1世によって建てられたこの図書館は,最盛期には70万巻のパピルス書が集められたという,まさに古代世界の知の中心地であり,エウクレイデス(ユークリッド)やアルキメデスなどがここで活躍した。
![画像集 No.005のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/005.jpg) 酒井美紀さん |
![画像集 No.006のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/006.jpg) 菊川 匡さん |
ちなみにこのディスカバリーツアーは,主人公バエクのほか,ユリウス・カエサルやプトレマイオス13世など,ゲーム登場するキャラクターから好きな人物を選び,そのキャラクターを操作して進めていくのだが,司会を務めたユービーアイソフトの福井蘭子氏が選んだのは,
クレオパトラ7世フィロパトル。キャラクターの動きはバエクと同じなので,全力疾走するクレオパトラとか,パルクールで高い塔に登っていくクレオパトラなど,想像の斜め上を行く場面が見られた。
アレクサンドリアの街並み。実際に訪れた酒井さんによれば,現在はもっとヨーロッパ風の都市になっているとのこと
![画像集 No.007のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/007.jpg) |
大図書館の知識欲は常軌を逸するほど旺盛で,書物を持ってアレクサンドリアを訪れた人々は必ず大図書館にそれを提出しなくてはならなかった。大図書館はその写本を作り,それを旅行者に返すという。そうした写本を制作する人々が並んで仕事をしていたり,史上初めて地球の大きさを測ったエラトステネスが講義を行っていたり,彼が作ったという巨大な天球儀が置いてあったりと,情報満載で,それがまるで現実のように見られるのは知的興奮を誘う。筆者もなんだか少し,利口になったような気がしてくるほどだ。
4世紀末から5世紀にかけてキリスト教徒による攻撃を繰り返し受け,ついに破壊されたアレキサンドリア大図書館。その威容がしのべるのは,このディスカバリーツアーならではだ。
「(大図書館に)女性は入れなかったですか」という酒井さんの質問に菊川さんは,女性も活躍していたと答えた。画面のヒュパティアという女性はギリシャ生まれの数学者,哲学者,天文学者,そして発明家。大図書館の崩壊と同時期に殺されたという
![画像集 No.009のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/009.jpg) |
庶民の暮らしを紹介するツアー「古代エジプトのファッション」では,菊川さんのコレクションが披露された。階級を問わず宝飾品は人気で,男女ともにイヤリングや指輪,ブレスレットなどを身につけていたそうだ
![画像集 No.010のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/010.jpg) |
![画像集 No.011のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/011.jpg) |
続いてのツアーは,ゲーム本編でも重要なイベントが発生する
「ジョセルの階段ピラミッド内部」。ジョセルはエジプト古王国時代の王で,この階段ピラミッドはギザの三大ピラミッドより以前に作られた,おそらく最古のピラミッドだという(紀元前2600年頃)。とりわけ,
青いタイルで装飾された王の間が有名とのことで,ツアーでもそこを訪れることができる。
ここで菊川さんは,実際にジョセル王の階段ピラミッドのものだという青いタイルを披露した。4000年以上の時を経てなお,それは鮮やかな青い色を保っており,月並みな表現で恐縮だが,すごいなあ。菊川さんによれば,ディスカバリーツアーに出てくる王の間は本物と見間違えるほどで,とくにタイルの質感の再現がすばらしいとのことだった。
酒井さんは,古代エジプトの装飾品,宝飾品の繊細さに感動したとのことで,古代エジプトと聞くと巨大建築物を思い浮かべがちだが,細かい意匠にも見るべきものがあると菊川さんは述べた。
最後のツアーは,
「古代エジプトのミイラ」だ。やっぱりね,古代エジプトといえばミイラでしょ。菊川さんによれば,古代エジプトの人々は死後,次の世界での甦りを信じており,また人はバーと呼ばれる魂と,カーと呼ばれる生命力,そして肉体そのものからできていると信じていた。次の世界で甦るためには肉体の保存が必要で,そのためにミイラを作ったのだそうだ。
菊川さんが披露した金貨。発掘されたもので,当時,金貨のほかに銀貨と銅貨が使われていたとのこと
![画像集 No.023のサムネイル画像 / アレキサンドリアの大図書館からミイラ制作の方法まで。「アサシン クリード オリジンズ」のディスカバリーツアーを紹介するイベントが開催](/games/384/G038410/20180307131/TN/023.jpg) |
というわけで,クレオパトラはミイラ製造所を訪れた。ここでは,「ミイラのできるまで」が順を追って紹介されており,洗浄に始まり,油や香辛料による浄化,そして内臓の取り出しなど,ミイラ制作過程を学ぶことができる。
専用のナイフを鼻に突っ込んで脳みそを取り出すという,聞くだけで痛そうな工程もあるのだが,菊川さんもミイラを持っており,それをCTスキャンにかけたときに鼻骨のあたりに傷があるのを確認したという。ああ,ますます鼻の奥が痛くなってきた。菊川さんはほかに,ネコのミイラやハヤブサのミイラを所蔵しており,これらは神として神殿に祭られるものだという。古代エジプトの女神バステトはネコの,またホルスはハヤブサの姿をしている。
また,ミイラ制作には値段によって各種コースがご用意されていたそうで,我々がよく目にする保存状態の良いものは,やはり
デラックスコースで作られているとのことだった。
以上でツアーは終了し,福井氏は「
ここで学んだミイラ制作の方法,機会があればぜひお役に立ててほしい」と述べた。たぶん,一生使わない気がする。
最後に酒井さんは,「このツアーを通じて古代の人の知恵や生活が実感できた。小学生の息子がこれを遊んで興味を持ち,さらに深く学んでくれるのではないか」と述べた。また,菊川さんは,「当時の再現が細部にわたって忠実であり,大事な部分をしっかり作っていると感じた。まるで実際の発掘作業のようなワクワク感もあり,このディスカバリーツアーを通じて,古代エジプトを学ぶ人が増えると嬉しい」と述べ,イベントを締めくくった。