大航海時代を舞台に,世界の謎を解き明かすべく探検する,アートディンクのSLG「
Neo ATLAS 1469」が,PlayStation Vitaに向けて本日(2016年10月27日)発売となる。シリーズとしては15年ぶりの新作,そして初の携帯ゲーム機用となる本作。ゲームシステムは従来作を踏襲しているため,今作も高い中毒性を有している。
未知の世界を“信じる”or“信じない”? 大航海時代の夢とロマン
プレイヤーは,大航海時代におけるポルトガルのリスボンに居を構える貿易商となり,
未踏破地域に提督達を派遣。探検の報告を受け,世界地図を作成していく。未踏破地域とは,文字通りに
「(西洋の)人が足を踏み入れたことのない場所」のこと。この時代,世界の全貌は未だ明らかになっておらず,「世界はお盆のような形をしており,その端は巨大な滝になっている」というような迷信がまかり通っていたのだ。
大航海時代,人々は海を通して世界の有り様を探っていく
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それだけに,世界地図作りには大きな困難が伴っていたのだが,探検先で見つけた特産品を貿易することにより,巨万の富を生み出すこともできた。Neo ATLASでは,探検のロマンと巨万の富を求めてのプレイが始まるのだ。
プレイヤーは,「未踏破地域に提督を派遣」→「帰還した提督から探検の報告を受ける」→「提督が発見した特産品で貿易し,利益を上げる」といった感じで,シンプルなプレイサイクルを繰り返していくことになる。
未踏破地域は雲に包まれており,そこに提督を探検に派遣すると,その範囲の雲が晴れ,隠された地形が明らかになるといった寸法だ。
世界の未踏破地域は雲に包まれており,その中に何が隠されているかは分からない
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潜水術で沈没船を探索できるマリア,歴戦の船乗りのゴメス,世界の謎を探るペレス,戦闘自慢のルイスなど,提督達はいずれも個性的な面々揃い
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探検を進めていけば,おなじみの世界地図が見えてくるように思えるかも知れないが,本作はあくまで
「未知の世界を探検するゲーム」である。スタート地点であるポルトガルの周辺こそ我々がよく知る地形なのだが,探検を進めていくと,見たことのないような海岸線や島が出てくる。というのも,このゲームの地形はランダムで生成されており,どんな形をしているかは探検してみるまで分からないのだ。
未踏破領域は白い雲に包まれている
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地形はランダムで生成されるので,探検の結果で大きく変化する
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筆者が探検したアフリカ大陸。現実のそれとは異なった地形になっている
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航続距離の範囲内で船団を派遣。タッチパネル対応のおかげで操作しやすくなっている
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提督達は探検から帰還すると,起こった出来事を報告してくれる
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世界の全容が明らかになっていなかった時代だけに,知らない場所がどうなっているかは伝聞に頼るしかない。そして,ゲームを面白くしているのが,提督の報告を“
信じる or 信じない”という選択肢である。
報告を信じれば,地形は確定される。しかし,信じないと,探検した地域も再び雲に閉ざされ,未踏破領域に戻ってしまう。そして,同じ地域に提督を派遣すると,先ほどとは異なった地形が出てくる。つまり,探検する度に地形がランダムで生成されているというわけだ。
探検の報告を信じるも信じないもプレイヤー次第
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例えば,“何も発見できなかった”という報告を“信じる”と,その地域には海が広がるだけになってしまう。しかし,ここで“信じない”として,再び探検してみると,今度は島が見つかったりもする。さらに報告を“信じない”とすれば,また異なった地形が現れる……といった具合だ。
極端な話,あらゆる報告を信じてもいいし,自分がイメージする地形が出るまで探検を繰り返してもいい。プレイヤーが信じたことこそが事実なのだ。ゲームを進めると,地形だけでなく“世界は丸いのか,それともお盆のような形をしているのか”という点もプレイヤーが決められるのだから徹底している。
探検した場所に島があったという報告を“信じない”で,再び同じ場所を探索。すると,そこには何もなかった
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こちらも同じ場所を探索した結果。南の岬の形がまったく異なっている
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未踏破地域の雲が晴れると,そこには探検の拠点となる新たな街や特産品,そして宝箱が発見を待っている。言うまでもなく探検船の航続距離には限りがあるため,街はできるだけ未踏破地域に近い位置にあるのが望ましい。
マップ上の宝箱をタップすると,中から財宝や名所が発見できるうえ,報奨金も手に入る
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特産品は貿易に使用する。最初は
「ブドウ」や
「塩」など薄利のものしかないが,探検を繰り返せば
「ダイヤモンド」や
「コショウ」など,巨万の富を生み出す品が発見できることもある。また,単体では利益が低くても,ブドウと
「オーク樽」を貿易すれば
「ワイン」ができるし,
「硫黄」と
「硝石」で
「火薬」ができる。このように,特産品を組みわせて新しいものを生み出せることもあるので,できるだけ多くの種類を見つけていきたい。
コショウをはじめとするスパイスは,貿易すると巨万の富をもたらしてくれる
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探検で見つかる特産品は,食べ物から貴金属までさまざま
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特定の組み合わせで貿易すると,加工品が手に入り,こちらも高額で取引できる
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貿易の利益は,取引する特産品の価格と,2つの港の距離で決まる。高いものを遠くへ運ぶのが基本だ
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貿易路に海賊船が出現すると,利益が得られなくなる
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提督を派遣して海賊を退治させることもできるが,提督や船の「戦闘力」が低いと負けることも
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探検で見つけたさまざまな大砲を積み,戦闘力を上げられる
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探検で見つけた宝箱をタップすれば,財宝や名所などが発見でき,高額の報奨金が手に入る。奇怪な仮面や火を吹く洞窟,不気味な森や謎の館,果ては
「うそつきしか住んでいない村」など,そのバリエーションは多彩。マップを拡大してなめるようにこれらを探し,画面をタップするというプロセスは,PS Vitaの特性を活かしていて楽しい。
このように,探検すると雲が晴れ,未知の世界がジワジワと明らかになっていくのが面白く,今度はどんな特産品や名所が見つかるのか,と止め時を見失うこともしばしば。“次に報告を受けたら止めよう”“もう一度だけ探検に出してみよう”“今度こそ次に報告を受けたら止めよう”“もう一回だけ探検してみよう”……と,ついつい遊び続けてしまった。
本作は,1991年から続く
シリーズの正統進化形と言えるだろう。初代作の時点で,ランダム生成で変化していく世界,“信じる”“信じない”のシステムなど,ゲームの骨格はほぼ完成を見ているのだが,そうした面白さを受け継ぎつつ,プラットフォームをPS Vitaとしたことで,より遊びやすくなっている。色あせることのないオンリーワンのゲームデザインにタッチ操作と携帯性が加わり,ちょっとした空き時間に遊べるようになったというわけだ。
どう見ても日本語で書かれている文書を発見。「ウチデノコヅチ」を盗んだカメを指名手配する,まるで「浦島太郎」の昔話を思わせる内容。果たしてどんな物語が展開するのか
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ただし,タッチの反応が良くないところがあったり,船を選択する画面でロードが入ったりと,レスポンスという点では少し引っかかる点もあった。全編通してキビキビと動いてくれればゲームへの没入度はさらに増すと思われるので,この辺りは本当に惜しい。発売後のアップデートに期待したいところだ。
オトナの雰囲気が漂うアートディンクらしいシリーズだけに,17年ぶりの新作が発売されたのは意義深いといえるだろう。もちろん,このプレイレポートの内容を“信じる”も“信じない”も読者次第。本作は,帆船に乗って未踏破領域に赴かなくても最寄りのゲーム屋さんで手に入るし,PlayStation Storeでは体験版も配信されているため,気になる人は自らの目で確かめてみるのも1つの手だろう。