連載
そうだ アニメ,見よう:第226回はENGI制作のスケートアニメ「メダリスト」。原作は米津玄師さんも愛読する“スポ根”漫画
漫画家のつるまいかだ氏が「月刊アフタヌーン」で連載中のスポーツ漫画「メダリスト」(アフタヌーンKC/既刊12巻)。本作は,「次にくるマンガ大賞 2022」のコミックス部門1位,2023年の第68回「小学館漫画賞」で一般向け部門,2024年に「第48回講談社漫画賞」を受賞するなど,数々の賞を獲得してきた注目作だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第226回のタイトルは,そのアニメ化作品「メダリスト」(毎週土曜25:30〜テレビ朝日系全国24局ネット)。制作はENGI,シリーズ構成は「ラブライブ!」シリーズや「艦隊これくしょん -艦これ-」の花田十輝氏が担当。監督は「戦場のヴァルキュリア」や「侵略!?イカ娘」の山本靖貴氏が務めている。
「メダリスト」
フィギュアスケートにあこがれる彼女に,司は正式なクラブへ入ることを勧めるが,彼女の母親・のぞみ(CV:小清水亜美)は不器用な娘にスケートを諦めさせることを望んでいた。そんな母親にいのりは自分の本心を打ち明ける。「ダメじゃない部分がある人間になりたい」。リンクへの執念を秘めたいのりに突き動かされた司は,自らコーチを引き受けるのだった。
レッスンをスタートして間もなく,司と瞳はいのりにフィギュアスケートの検定試験「バッジテスト」を受けるよう勧める。それは大会の出場資格である“級位”を得るための大事なテストだった。
そしてテスト当日,いのりは会場でお姫様のような姿の美少女・狼嵜 光(CV:市ノ瀬加那)と出会う。「名港ウィンドFSC」に所属する光は,ノービスの女子選手では世界で数名しか飛べない3A(トリプルアクセル)も成功させている天才少女だ。
光のスケーティングを見たいのりは,彼女のように滑りたいと熱望し,司に「世界一になりたいと言ったら,手伝ってくれますか?」と助力を求める。金メダルを獲れる人になりたいと言ういのりに,司は彼女を一流の選手にすると誓った。
バッジテストで1級に合格したいのりに,司は2か月後の大会「名港杯」への出場を勧める。この大会の初級枠優勝を目指して,2人の戦いが始まるのだった。
フィギュアスケートの頂点を目指す2人の物語
日本は,世界でも有数の“フィギュアスケート強豪国”だ。オリンピック2連覇の羽生結弦選手や,世界フィギュアスケート選手権で3度の優勝を果たした浅田真央選手らスター選手を数多く輩出し,2024年の世界選手権では坂本花織選手が見事優勝を果たしている。
そんなレベルの高い日本フィギュアスケート界は当然ライバルも多く,国内のフィギュアスケート現役選手は約3700人にのぼり,しのぎを削りあっている。本作は,その頂点を目指す少女と,それを支える青年コーチの奮闘を描いたスポーツとなる。
主人公のいのりは,九九を憶えられず運動も苦手な小学5年生。クラスの輪に入れず孤立していた彼女は,フィギュアスケートの選手だった姉に憧れて自身もやりたいと願うが,母親に「何もできない娘」と思われ,許してもらえなかった。
いっぽう司は,中学からスケートを始めた遅咲きの選手。かつて全日本選手権に出場してはいるが,それはパートナーの瞳の実力とキャリアのおかげだと思い込み,劣等感を抱いている。
選手層の厚い日本でフィギュアスケートを始めるには,5歳くらいからが適齢期と言われる世界で,遅過ぎるスタートを切っている2人。そんな2人が偶然出会い,お互いを認め,その才能を開花させていく。泥臭く何度も失敗しながら,新しいステージへ登っていく姿を描いた本作は,今時珍しいほどの“スポ根”アニメなのだ。
専門用語や独特のルールを解説
原作を手がけたつるま氏は,本作がデビュー作となる。ルールの難しいフィギュアスケートを描くにあたって,取材はもちろん,実際にフィギュアスケートを習い始めたという。作中では,いのりのような初心者がぶつかるスケート業界の常識や専門用語などが分かりやすく解説されていて興味深い。
「ユーリ!!! on ICE」や「銀盤カレイドスコープ」など,これまで多数のフィギュアスケート作品が世に送り出されているが,まったくの素人からのスタートとなる作品は珍しいと言える。
ちなみに,つるま氏はフィギュアスケートのレッスン中に足を複雑骨折し,連載決定の連絡はベッドの上で受けたとのこと。その骨折については「もしかしたら,この(骨折)おかげで連載が決まったのか?」とポジティブに捉えているようだ。
OP主題歌は米津玄師さんの「BOW AND ARROW」
本作のオープニング主題歌は米津玄師さんの「BOW AND ARROW(ボウ・アンド・アロー)」,エンディング主題歌はねぐせ。の「アタシのドレス」となっている。米津さんは原作の大ファンで,アニメ化が決まった時,自分から主題歌の打診をしたという。
しかもジャケットのイラストも自身が描き下ろし,その完成度の高さにSNSでは「歌も歌えて,絵もうまいなんてズルイ」と称賛の声が上がっていた。
なお,「BOW AND ARROW」の配信は1月27日に開始され,各配信サイトで軒並み1位を獲得し,デイリー17冠を記録している。
米津玄師さんが手がけた「BOW AND ARROW」ジャケット |
“小さな勇者たち”の激闘
「名港杯」が終了し,いのりと司は光を教えている元オリンピック金メダリスト・夜鷹 純(CV:内田雄馬)と邂逅する。純は司がフィギュア選手を始めるきっかけとなった人物。この出会いが,いのりたちに新たな目標を与えることになる。
大会では,ぐんぐん成長していくいのりと,それをしっかりとサポートする司の姿に,思わずぐっときてしまった。2人の成長と,彼女のライバルたちである“小さな勇者たち”の戦いを今後も見守りたい。
TVアニメ「メダリスト」公式サイト
TVアニメ「メダリスト」公式X
放映データ |
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2025年1月〜毎週土曜25:30〜テレビ朝日系全国24局ネット |
キャスト | |
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結束いのり:春瀬なつみ | |
明浦路 司:大塚剛央 | |
狼嵜 光:市ノ瀬加那 | |
夜鷹 純:内田雄馬 | |
鴗鳥理凰:小市眞琴 | |
鴗鳥慎一郎:坂 泰斗 | |
三家田涼佳:木野日菜 | |
那智鞠緒:戸田めぐみ | |
大和絵馬:小岩井ことり | |
蛇崩遊大:三宅貴大 | |
鹿本すず:伊藤彩沙 | |
高峰 瞳:加藤英美里 | |
結束のぞみ:小清水亜美 | |
瀬古間 衛:村治 学 |
スタッフ |
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原作:つるまいかだ(講談社「アフタヌーン」連載) |
監督:山本靖貴 |
シリーズ構成・脚本:花田十輝 |
キャラクターデザイン:亀山千夏 |
総作画監督:亀山千夏、伊藤陽祐 |
フィギュアスケート振付:鈴木明子 |
フィギュアスケート監督・3DCGディレクター:こうじ |
3DCGビジュアルディレクター:戸田貴之 |
3DCGアニメーションスーパーバイザー:堀 正太郎 |
3DCGプロデューサー:飯島 哲 |
色彩設計:山上愛子 |
美術監督:中尾陽子 |
美術設定:比留間 崇、小野寺里恵 |
撮影監督:米屋真一 |
編集:長坂智樹 |
音楽:林ゆうき |
音響監督:今泉雄一 |
音響効果:小山健二 |
オープニング主題歌:米津玄師「 BOW AND ARROW 」 |
エンディング主題歌:ねぐせ。「アタシのドレス」 |
アニメーションプロデューサー:神戸幸輝 |
アニメーション制作:ENGI |
(C)つるまいかだ・講談社/メダリスト製作委員会 |
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