そうだ アニメ，見よう：第186回は「無職転生II 〜異世界行ったら本気だす〜」。青年ルーデウスの葛藤を描いた第2シーズン「泥沼編」開始

　理不尽な孫の手氏原作のファンタジー小説をアニメ化した「無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜」の第2シーズンが，2023年7月にスタートしている。本作は，小説投稿Webサイト「小説家になろう」にて，数年間累計ランキング1位を維持していた“なろう”系小説の最終兵器とも言える作品で，2021年1月から3月まで第1シーズンが放送されていた（関連記事）。
　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第186回のタイトルは，「無職転生II 〜異世界行ったら本気だす〜」（毎週日曜日25：00〜TOKYO MX/サンテレビほか）。制作はスタジオバインド，シリーズ構成は「86-エイティシックス-」の大野敏哉氏，監督は「ソードアート・オンライン -アリシゼーション-」などの演出を手掛けた平野宏樹氏が務めている。

「無職転生II 〜異世界行ったら本気だす〜」

　34歳の引きこもりニートの主人公（CV：杉田智和）は，トラックに轢かれて命を落とし，剣と魔法の異世界に生まれ変わった。ルーデウス（CV：内山夕実）と名づけられた主人公は，前世での後悔を振り返り，早速魔術の独学を始める。


　ルーデウスに，魔術師としての才能を見出した母ゼニス（CV：金元寿子）は，魔族の魔術師ロキシー（CV：小原好美）を家庭教師として雇い入れる。彼女の教えで才能が開花したルーデウスは，やがて幼馴染みの少女・シルフィエット（CV：茅野愛衣）と共にラノア魔法大学に行くための学費を稼ごうと，貴族ボレアス家の令嬢エリス（CV：加隈亜衣）の家庭教師を務めることになる。
　我がままなエリスに振り回されながらも，彼女の信頼を勝ち取ったルーデウスだったが，10歳の誕生日の翌日に，ロアの町の上空で魔力が暴走し「フィットア領転移事件」が発生してしまう。


　エリスと共に魔大陸に転移されたルーデウスは，人々から怖れられている魔族の戦士ルイジェルド・スペルディア（CV：浪川大輔）に助けられ，3人で冒険者パーティ「デッドエンド」を結成し，アスラ王国フィットア領への帰還を目指す旅を始めた。数々の艱難辛苦を乗り越え，旅を続けて3年。フィットア領に到着する直前，ルーデウスは七大列強第二位の龍神オルステッド（CV：津田健次郎）と出会い，殺されかける。


　その場に居合わせながらも，何もできなかった自分に絶望したエリスは，今のままでは足手まといにしかならないと，ルーデウスを残して修行の旅に出る。エリスが去った理由が分からないルーデウスは，失意のまま行方不明の家族を探し始めるのだった。

　ここまでが，第1シーズンのあらすじで，エリスとの別れから2年後が今回の舞台となる。母ゼニスを探して中央大陸北部を旅していたルーデウスは，北方大地に向かう馬車の中で冒険者パーティ「カウンターアロー」のメンバーと出会い，冒険者ギルドの依頼のために彼らと同行することになる。
　しかし，ルーデウスはエリスが姿を消した失意の底から抜け出せないまま。第2シーズンではルーデウスがいかに立ち直るかが描かれていくようだ。

第2シーズン「泥沼編」開始

　待望の第2シーズンが始まり，ルーデウスの成長に驚いた人も多いはず。第1シーズンでは少年だった彼も15歳となり，子供っぽさは抜けないものの，そこそこ青年と言える年齢になってきた。この第2シーズンは「泥沼編」と呼ばれ，青年期のルーデウスの活躍が描かれる。彼の二つ名“泥沼のルーデウス”に掛けた章タイトルなのだろうが，エリスのショックから抜け出せないルーデウスの心の動きを表したタイトルとも言える。


　もちろん，ルーデウスだけではなく，ロキシーやその仲間のエリナリーゼらも登場するようだが，なにより第零話で姿を見せた“フィッツ”ことシルフィエットの再登場が最大のトピックと言える。フィットア領転移事件で行方不明となった彼女の無事が知れて，ホッと胸をなで下ろした人も多いに違いない。

　ただ，シルフィエット本人の意思とは関係なしに，アスラ王族の後継者争いに巻き込まれているようで，何やら不穏な空気だ。しかし，ルーデウスとの再会できるのは，どうやらそう遠くない模様。果たして感動の再会となるかどうか，今後の展開のキーになりそう。

ラノア魔法大学での学園生活

　今シーズンの見どころとなりそうなのは，ルーデウスを取り巻く新たな登場人物たちだろう。“シルフィエット”サイドはアリエル・アネモイ・アスラ（CV：上田麗奈）やルーク・ノトス・グレイラット（CV：興津和幸）ら一癖も二癖もありそうなアスラ王族が登場し，彼らとルーデウスの道もやがて交わるようになるようだ。


　そして，原作通りにストーリーが進行するならば，ラノア魔法大学での学園生活がメインとなるはず。学生となったルーデウスと新たなクラスメイト達の絡みも楽しみだが，どうやら意外な人物との再会もありそう。ともあれ，冒険続きだったルーデウスに，学生としての生活はどんな変化を与えるのかに期待したい。

新たな体制での映像制作

　第2シーズンでは，制作はスタジオバインドで変わらず，シリーズ構成はベテランの大野氏，監督は第1シーズンの助監督を務めていた平野氏に変更されている。体制に多少の変更があったが，前シーズンで評判だったハイクオリティな映像美はさらに磨きがかかっているようだ。


　第零話でのフィッツと暗殺者の少女の戦いや，「カウンターアロー」のメンバーのバトルシーンなどはもちろん，些細な背景にも気を配っているのが素晴らしい。ルーデウスの泊まる宿屋の窓を，ガラス作りの初期に使われた「クラウン法」のものを使用しているのもこだわりの現われなのだろう。
　中世と異世界の風景が融合した「無職転生」ワールドの世界観を，今シーズンもたっぷりと堪能できそうだ。

ルーデウスの心を癒すのは？

　物語は第3話（＋第零話）まで進み，まだ始まったばかり。「カウンターアロー」のメンバーとの邂逅や，母ゼニスの行方など，ルーデウスの心はエリス消失の痛みから，わずかずつだが回復していく。大河ドラマのように，ルーデウスの成長と彼を取り巻くキャラクターたちの群像劇が描かれる本作としては，まだまだプロローグとも言えるが，この後の物語を引っ張る重要なエピソードとなるので，しっかりと話を追いたいところ。エリスを失ったルーデウスの心を癒すのは果たしてだれか。見逃さないように。


　なお，ルーデウスと別れたあとのエリスの動向を描いたスピンオフコミック漫画「無職転生 〜エリスは本気で牙を砥ぐ〜」（作画・日崖タケ/構成・丘野 優，ガンガンコミックス）も発売されているので，気になる人はチェックしてみよう。

「無職転生II 〜異世界行ったら本気だす〜」公式サイト

「無職転生II 〜異世界行ったら本気だす〜」公式Twitter

放映データ
2023年7月〜
毎週日曜日25：00〜TOKYO MX/サンテレビほか

キャスト
ルーデウス・グレイラット：内山夕実
前世の男：杉田智和
サラ：白石晴香
スザンヌ：小林ゆう
ティモシー：羽多野渉
ミミル：沢城千春
パトリス：山本格
ゾルダート・ヘッケラー：鳥海浩輔
アリエル・アネモイ・アスラ：上田麗奈
ルーク・ノトス・グレイラット：興津和幸
フィッツ：茅野愛衣

スタッフ
原作：理不尽な孫の手（MFブックス／KADOKAWA刊）
キャラクター原案：シロタカ
原作企画：フロンティアワークス
監督：平野宏樹
シリーズ構成：大野敏哉
キャラクターデザイン：嶋田真恵・齊藤佳子
美術監督：三宅昌和
色彩設計：土居真紀子
撮影監督：頓所信二　編集：三嶋章紀
音響監督：明田川 仁
音響効果：上野 励　音楽：藤澤慶昌
プロデュース：EGG FIRM
制作：スタジオバインド
オープニングテーマ：「spiral」LONGMAN
エンディングテーマ：「ムスビメ」大原ゆい子

（C）理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生II」製作委員会