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アナログゲームの祭典「ゲームマーケット2015秋」レポート。第1回ゲームマーケット大賞はオインクゲームズの「海底探険」が受賞
秋のゲームマーケットの見どころといえば,ドイツのエッセンで10月に行われた世界最大のアナログゲームの祭典「Internationale Spieltage SPIEL’15」の新作が,日本でお披露目される場でもあることだ。日本語のルールが添えられた海外版がいち早く購入できることもあり,ファンにとっては見逃さないチャンスと言える。また近年では海外からも多くの来場者が訪れるようになり,国際化もより一層進んでいるようだった。
若干掲載が遅くなってしまったが,本稿ではこのイベントの熱気を,写真と共にお伝えしていく。巨大なイベントになったので,出展されていたタイトルをすべて紹介することはできないが,気になったタイトルをピックアップして掲載しているので,会場を訪れた人もそうでない人も,その雰囲気を感じてもらえたら幸いだ。
ゲームマーケット公式サイト
第1回ゲームマーケット大賞はオインクゲームズの「海底探険」。特別賞に「枯山水」
ゲームマーケット大賞は,アナログゲームシーンをさらに盛り上げることを目的として,ゲームマーケット事務局が設立したもの。審査対象となるのは,前年のゲームマーケット秋から,対象年のゲームマーケット(大阪開催を含む)に出展されたボードゲームが対象となる。一般投票を経たのち,ゲームマーケット事務局と審査員(僭越ながら,筆者もその一人である)による選考が行われ,優秀作品および大賞が決定される。
大賞,特別賞を含め,今回優秀作品として選ばれたのは以下の5作品だ(並びは50音順)。
- 「海底探険」(オインクゲームズ / 大賞受賞作)
- 「枯山水」(New Game Order / 特別賞受賞作)
- 「ひとひら」(桜遊庵)
- 「PRINCESS ESCORT」(てぃ〜くらぶ)
- 「ミネルウァ」(OKAZU brand)
会場では,新聞などで取り上げられたことが切っ掛けとなり,異例の大ヒットとなった「枯山水」と,本格派国家経営ゲームの「ミネルウァ」という,二つの重量級タイトルを押さえ,ファミリー向けのカードゲーム「海底探険」が受賞したことで,ゲームマーケット大賞の方向性が見えてきたとする声が多かった。とくに,ゲームデザイナー側から,この受賞結果を肯定する意見が多数聞かれたのが,印象的だった。
ゲームマーケット大賞選定を終えて
トリックテイキングに2人用ゲーム。非公認企画で新たなブーム
ゲームマーケットでは,サークル発案による非公認のゲームデザイン企画が立ち上がり,それに応じたサークルが同じテーマで新作を発表する試みが度々行われてきたが,今回もまた,十式ゲームワークスの呼びかけにより,新たな非公認企画が立ち上がっていた。今回のテーマは,ずばりトリックテイキングゲーム※で,これに賛同した12のサークルが参加。多数のトリックテイキングゲームが誕生していた。
※トリックテイキングゲーム……親が決定したルールの元で最も強いカードを出したプレイヤーが勝者となり,以後このサイクルを繰り返すゲーム。トランプの「ハーツ」など。
またそのほかにも,サイ企画の居椿氏の呼びかけで,「いい夫婦の日」に合わせた2人専用ボードゲームという企画もあったようだ。
北米のパブリッシャ,Japanime Gamesがゲームマーケットに参戦。会場にはクラウドファンディングCAMPFIREのブースも
今回は北米のパブリッシャであるJapanime Gamesがゲームマーケットへの出展を果たし,海外のみで販売されていた「たんとくおーれ」の拡張版「たんとくおーれ おくとーばーふぇすと」を,翻訳シール付きの形で販売。日本発のゲームが海外で人気を獲得し,その結果として英語版が先行するというやや変則的な形ではあるが,これもまた国際化の一つの形と言えるのではないだろうか。
同社社長のEric Price(エリック・プライス)氏に話を聞いてみると,日本のボードゲームは欧米のアニメイベントで人気を博しており,世界中で視聴されているアニメの世界観がその原動力になっているとのこと。同社では引き続き日本のゲームに注目しているそうで,FIPFLOPsの「ハートオブクラウン」も,2017年までにJapanime Gamesから発売が決まっているという。
「ハートオブクラウン」は,可愛らしい見た目ながら骨太のゲームシステムで人気を呼んだデッキ構築型カードゲームで,この日も拡張セットとなる「星天前路」が先行発売され,約800人ほどが行列を作っていた。Japanime Gamesの関係者によれば,海外版は生みの親であるFLIPFLOPsの絵柄を尊重し,可能な限り日本版に近い内容で発売したいとのことだった。
「ハート オブ クラウン」公式サイト
また国内最大規模のクラウドファウンディングサイト「CAMPFIRE」もまた,ゲームマーケットに初参戦している。同ブースでは,これまでにCAMPFIREを通じて資金調達に成功したアナログゲームが展示されると共に,クリエーター向けの説明会を実施。
同社広報の矢崎 海氏によれば,CAMPFIREでのアナログゲーム関連のプロジェクトはどれも非常に好調で,これまで目標額の達成に失敗した例はないのだという。また新作のみならず,旧作を増刷するための資金集めに利用する例も多いとのことだった。
CAMPFIRE 公式サイト
拡大するゲームマーケット。事務局では2日開催も検討中
ゲームマーケット事務局の刈谷圭司氏によれば,次回の「ゲームマーケット2016春」は,再び東京ビッグサイトの西ホールに戻り,西3・4ホールを使ったさらに広いスペースが用意されるとのこと。しかし,来場者からは,開催時間が短いため回りきれないという意見も出てきているため,将来的には開催日を2日間にすることも検討しているとのことだ。
また2016年2月21日には,初の兵庫開催となる「ゲームマーケット2016神戸」も予定されている。会場は神戸国際展示場とのことなので,関西のボードゲームファンはこちらも楽しみにしておこう。
オインクゲームズの新作は,指定された模様を作るアクションカードゲーム「ナインテイル」。ゲームマーケット大賞を受賞した「海底探険」には,大賞シールが貼られていた |
2015ドイツゲーム大賞にノミネートされた「街コロ」の制作者である,グランディングの菅沼正夫氏。ブースには賞状も飾られていた。現在は2016年秋の発売を目指し,新作を構想中とのこと |
「惨劇RoopeR X」のBakaFire Partyは,コズミックホラーをテーマにした同作の拡張セット「Weird Mythology」を発売。さらに会場では,開発中の和風対戦型カードゲーム「桜降る代に決闘を」のβ版が試遊できた。格闘ゲーム風ながら,3すくみよりも間合いの管理に重点を置いたゲームになるという |
聖書コレクションの「バイブルリーグ」は,聖人達が野球で対決するボードゲーム。一見するとネタっぽいが,その実かなりちゃんとした野球ゲームになっている |
COLON ARCは,大航海時代をテーマにしたボードゲーム「リスボン、世界への扉」を発売。交易先が隣り合うプレイヤー同士のみアクセスできるミニマップ上に配置されているのが特徴だ |
Power9Gamesの「御用達」は,お武家様の御用達になるために賄賂を贈るという,和風のワーカープレイスメントゲーム。動物がモチーフのカードイラストがいい味を出している |
千葉のゲームショップ「ホビースペース ミスターフィールド」のスペースで販売されていた戦国ミニチュアゲーム「武将列伝ベーシック」。写真中央のミニチュアは,展示用に塗装したものとのこと |
机上の貴族の「ウサギの一撃」は,2012年に発売された「愚民の一撃」を,かわいいウサギのイラストでリメイクしたもの。シンプルながら,格闘ゲームライクな読み合いが楽しめる |
前回に引き続き,TRPG関連の出展も目立っていた。専用の試遊コーナーでは,9月に富士見ドラゴンブックスから発売されたF.E.A.R.の新作「ガーデンオーダー」の卓が用意されていた |
同じくTRPG試遊コーナーから,こちらは12月19日に発売された「神話創生TRPG アマデウス」。判定に使わなかったダイスをプールしておき,ここぞの必殺技のリソースとするシステムが面白い |
こちらはエンターブレインから発売されている「トーキョーN◎VA THE AXLERATION」。試遊卓のそばには,F.E.A.R.の重鎮,鈴吹太郎氏の姿も |
サークル・馬鍬砦では,携帯用の折りたたみ式ホワイトボード「Noteboard」が輸入販売されていた。スマホと同じサイズまで折りたため,TRPGコンベンションなどで役立ちそう |
会場を使ったライブゲームとして行われていた「クトゥルフ神話ライブRPG」。アーカムに見立てたられた会場を歩き回りながら,邪神の復活を阻止するために,さまざまなミッションに挑戦する。約240名が参加したそうだ |
よだかのレコードは,同じくライブゲームの「リアル謎解きゲームマーケット ZOMBIEFUL WORLD」を会場で開催。スタッフ全員がゾンビメイクをしていて,かなり本格的 |
将棋のコマを使用した能登の伝統ゲーム「ごいた」を紹介するスペースも。第2回ごいた都道府県支部交流戦として,同作の猛者達が集まっていた |
午後からは,テキサスホールデムによるポーカーのミニトーナメントが開催された。運営は都内最大規模のゲーム会を運営する「ミスボド」のスタッフが担当 |
ゲームマーケット公式サイト
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